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第9章 七大国会談編

第237話 帰還、結果報告

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 翌朝――

 世界の頂で一泊後、私担当の空間魔術師・ルイスさんの転移魔法にて、地獄の門前広場わたしんちの庭に帰って来た。

「今回は送り迎えありがとうございました、レヴィアタンによろしくお伝えください」
「はい、それではこれにて失礼致します」

 ルイスさんはそのままアクアリヴィアへと帰って行った。

「うおっ、寒ッ!」

 帰って来て、すぐさまフレアハルトが寒暖差に反応。

「ホントだ! 世界の頂と違って、ここは気温が低いね」
「アルトラ、我はもう家に帰って良いか? お主はどうせ今から役所へ向かうのだろ? 我は七大国会談の大体の事の顛末は分かっておるからもう帰って良いよな? な?」

 凄く帰りたそうね……
 寒いから一刻も早く家に帰ってぬくぬくしたいのだろう。
 じゃあ、アリサとレイアにはフレアハルトから伝えてもらおうか。彼女らも寒いとこわざわざ招集されたくはないだろうし。

「じゃあ、帰って良いよ。アリサとレイアにはどういう扱いになったか報告しておいて。護衛任務ありがとうね」
「ああ、ではまたな」

 走って帰って行った。

「さてカイベル、私たちは役所へ報告に行きましょうか」

   ◇

 まずは役所長室へ行ってリーヴァントに報告。

「アルトラ様、お帰りなさいませ」
「うん、ただいま」
「それで、どういった結果になったのですか?」
「うん、まあ想定してたより良い結果だったかな」
「それは朗報ですね!」
「う~ん、ただね……今後は面倒なことが増えるかもしれない」
「ど、どういうことですか!? 良い結果だったのに?」
「良い結果がイコール良いことばかりとは限らないものよ? とりあえず、結果報告したいから、種族代表を集めてもらえる? あ、フレハルたちはもう分かってるから集めなくて良い、わざわざ寒いところへ来させるのも忍びないし」
「わかりました」


   ◇


 以前集まってもらった時同様、レッドドラゴン三人を除いた、リーヴァント以下、副リーダー四人、異種族代表のドワーフのフィンツさん、人魚族のトーマスとリナさん、レッドトトロル族ジュゼルマリオ、カイベル、あと代表ではないが以前もこのメンバーの中に混じって話を聞いていたエルフィーレ、それと今後のことを考えて、ルサールカ族の銀行員シーラさん、建築部総務のダイクーにも来てもらうよう頼んだ。
 全員が集まるまでの時間、少々の雑談。
 シーラさんに話しかけられた。

「七大国会談出席お疲れ様でした」
「ありがとうございます」
「あの……アルトラ様、私はこの町の住人ではないですが……会議に呼んでいただいてよろしいのでしょうか?」
「そうですね。七大国会談前は想定してなかったことなんですけど、今後、もしかしたら経済事情が変わるかもしれないということで、シーラさんにもご参加いただけるとありがたく思います」
「わかりました」

 シーラさんは正式な住人ではないとは言え、現在のこの町の銀行の要であることは間違いないから、会談結果を話しておいた方が良いと判断した。

「アルトラ様、俺まで招集されたのは何だ? 町の運営に携わったことはないが……」

 突然集められたダイクーが疑問を口にする。

「それはこの会議中においおい説明するからちょっと待ってて」

 リナさんに声をかける。

「リナさん、リディア預かってくれてありがとう。大人しくしてた?」
「そうですね。会ったばかりの頃は活発な子だと思ってましたけど、夜は寝るまで絵を描いてましたね」
「どんな絵を?」
「私には何が何やら、女の子の絵を描いていて、何を描いてるのか聞いたらパリピュア?とかいうのを描いてたみたいです。その後何だか変身セットがどうのこうのという話を聞かされ、『クラーケンに変身できるじゃないですか』って答えたら、『あんなイカじゃなくて魔法少女が良いんダ、カッコ可愛いんだゾ!』とちょっとした剣幕で怒られ、その後パリピュア?のカッコ可愛いところを滔々とうとうと語られました」

 と、ちょっと困ったような笑顔で話された。
 アイデンティティであるイカの姿を否定するのか……今後に悪影響が無ければ良いけど……
 普段夜はアニメ見てるから、私がいなくて見られなかったために自分で描いてたって感じかしら?
 私の影響ですっかりオタクらしくなってきてしまったな……

「それで、リディアちゃんの描いてたアレは何なんですか?」
「え~と……私の作った空想のキャラ……かな?」

 流石に地球のアニメキャラとは言えない。
 私は地球出身だと話しているからみんなが知っていてもおかしくないが、地球に行ったことすらないリディアが知っているのは明らかにおかしいからね。


   ◇


 全員が役所会議室に集まり、結果報告をする。
 まず、七大国間でこの中立地帯の扱いが変わったことを報告。

「「「えっ!? 国として認められた!?」」」
「うん」

 ……
 …………
 ………………

 あれ? 何か思ったよりも反応薄いな……

「そもそも、我々は国というものが何なのかイマイチよくわかっていないので、そこから説明をお願いできますか?」

 まあ、それもそうか。彼らにとってはこの地域アルトレリアが全てだしな。

「国って言うのは……え~と……」

 ……あれ? 『国』って何なんだ? 当たり前のように日本国に住んでいたから、定義が分からない。

「……カイベル、説明をお願い」
「はい。国というのは、一般的には住民・領土・主権及び外交能力を備えた地域のことを指します。七大国会談までのアルトレリアは『住民』は有しているものの、『領土』と『主権及び外交能力』を有していなかったため、国家としてのていを成していませんでした」
「『主権及び外交能力』については私たちにはよく分かりませんが、『領土』が無いってどういうことですか? 私たちが住んでいる場所は『領土』とは言わないんですか?」
「はい、アルトレリアが国の扱いではないため今までは『領土』ではありませんでした。そこへ此度こたびの七大国会談での提議により、他国に認められ、主権及び外交能力を獲得したため、正式に国家として承認され、その結果この場所がアルトレリアの正式な領土になったという形になります」

 へぇ~、国ってそういうことだったんだ。私の水の国アクアリヴィア雷の国エレアースモとの個人的な関わりは外交とは見なされなかったってわけか。
 じゃあ、今までの私の職業は外交官ではなく、アクティブニートだったってわけかしら?

「そういうわけで、今後は外国との関わりも多くなると思う」
「それはこの町にとって良いことなのですか?」
「まあ、悪いことも中にはあるかもしれないけど、全体的に見たら良いことなんだと思う。多分、生活が今以上に豊かになると思うよ」
「「「おお~~!!」」」
「それは良いことですね!」
「今後は外から訪れる人たちも増えると思う」

 ただ……懸念があるとすれば……他種族間の軋轢あつれきが生まれる可能性が高くなるということと、この町を訪れる者が増える分、悪いことしようとする者も一定数流入してしまうということか……
 面倒だと思って考えないようにしていた、司法・立法・行政も作らないといけない時が来てしまったかもしれない。とは言え……たった千四百人しかいない場所で、それが必要かと言うと……現状はまだ必要ではないと思う。
 それに……そんな知識は私には無い! これも手探りで行くしかないかな。
 防衛のための警察署は良いとして、考えたくなかった刑務所とかも作らないといけない時が来てしまったかもしれないわね……
 でもまあ、これはもう少し町の規模が大きくなった後に考えれば良いことかな?

「外から訪れる人が増えるとどうなるんですか?」
「まず、この町の人数が増えるよね。レッドトロルを受け入れた時に急激に増えたでしょ? あんな感じのことが今後起こってくるかも」
「なるほど~、それは楽しみですね!」

 『楽しみ』と言えるのは、この町の亜人たちに悪いことを考える者が少ないからだろう。悪く言うと「平和ボケしている」と言えるかもしれない。平和なことって本来なら良いことなんだけどな……

「あと、物資の流通も増えるから、見たこともないものがここで売られるようになることもあるかもね」
「それ良いですね! みんな目新しい物を求めるようになってきましたし」

 でも、まだまだ先行きは不透明だから、あまり期待させない方が良いか。
 まだ国として認められただけで、国が活気づくかどうかは別問題だ。現時点では判断のしようもない。
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