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第6章 アルトラの村役所長代理編

第148話 父、バレる

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 そのまま、トーリョの建築中の家の前に来た。

「おう、フレハルじゃねぇか! 今日はアルトラ様から休みって聞いてるが」
「ああ、こちらの方が我の働いている場所に興味があるというのでな」
「おう、どうだい、この家は! ドワーフには負けるが中々のもんだろ?」
「この村では随分と燃えやすいものを使っているのですな。すぐに焼失したりはしませぬか? 我が村では石で作られているものが多いのですが」
「いや、昔ならいざ知らず、今は別に燃えやすいものも無いしな。その以前は石や土で作ってたからほこりっぽくていけねぇ。加工もし易いから木は重宝してるよ」
「なるほど、ここでは石を使わないのですな」

「家を木で作るのに何か引っかかることでも?」
「いや、我の常識外だったので新鮮に映っただけですよ」
 まあレッドドラゴンの町あそこの住宅事情と比較したら、『何でそんな燃えやすい素材を使ってるの?』とは思うよね……

「………………」
 今度は何かフレアハルトの様子がおかしいな。考え込んでいるように見える。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 次は村を出て川 (予定地)を見に行く。
「ここが先程話していた川です。まだ水は流れてませぬが、もう少しで開通する予定です。これは我の考えた土魔法強化による掘削技術で短時間の間に終わらせました!」
 フフンというドヤ顔。
 あの時は、予定してた距離をたった三日で九割方掘り進めたって聞いて、本当に脱帽したよ。

「ほう、それは凄い! 流石我がむす……ゴホンゴホン!」
「ワガムス……?」
 今、「流石我が息子」って言いかけたな……

「……いや素晴らしい働きですな!」
「そうでしょうとも! 珍しくあのアルトラが褒めたほどですからな!」

 私ってそんなにフレアハルトを褒めないのね……
 と言うか、そもそも私は他人を褒める立場なのだろうか? 私の方が随分年下だと思うけど、小娘に褒められてる構図になると思うけど、それは良いのかな?
 一応、彼より (戦闘力的に)強い立場だからってことかな?

「そんなに褒めないのですか? それはイカン、我からアルトラ殿に進言しておきましょう!」
 いや、別に私フレアハルトのこと部下とか思ってないからね。

「ところで、フレハル殿はどこに住んでいるのですか?」
「我が? なぜそんなにただの案内人のことを聞きたがるのですか?」
「ただの興味ですよ、ホッホッホッ」
 何だか口調が水戸のご老公様みたいね……

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 フレアハルトの借家へ移動。
「この家を借りて住まわせてもらってます」
「あまり大きくはないですな」
 それは大きなお世話よ! これでもみんな頑張って造ってくれてるんだから!

「まあ、我々の暮らすところは宮殿ですから、それと比べれば小さいのは仕方のないことかと」
 今何か変なこと言ったぞ? 『宮殿』なんて言ったらまずいんじゃ……?

「アリシェ……アリサとレイアも?」
「ええ、そうですよ、やつらは我の側近ですので。まあ我は二階、やつらには一階で寝泊りしてもらってますが」
「そうですか」
「ところで父上」
「何だ………………あっ……」
「やはり父上でしたか」

 あれ? 何だバレてるじゃないの。族長さん隠すの下手だなぁ……

「いつから気付いておった?」
「最初からおかしいと思っておりました。生物にしては魔力が全く感じられなくて、最初は得体の知れないナニカが変化しているのかと。それに三人一緒に来たなら一緒に見て回れば良いものをバラバラに案内させるのもどう考えても不自然。ところどころにレッド……おっと、我々の町を連想させるような言葉が見え隠れしましたので、もしやと思い」
「流石我が息子だ」

「今日はどうされたのですか? なぜこの村に?」
「お前がこの村でどういう扱いを受けているのか、一度見てみてかった」
「それでどうでしたか?」
「我らはアルトラ殿に敗北しているからな、隷属はしなくて良いと口では言いながらも、村でのお前たちの扱いは我々には知ることができぬからな。あまりにも酷い扱いを受けているようなら命を賭けてでも我が町へ引き上げさせようと思っておった。だが、嬉々としてこの村のことを話すお前を見て安心したわ。それに……亜人とも上手くやっているようだしな。このままアルトラ殿にお任せすることにしよう、改めて『自由にすると良い』」

 その顔は笑顔だった。
 『自由にすると良い』、赤龍峰では突き放したように見えながらも気にかけていたのね。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 最後は食堂へ。最終的には役所に戻ってくると思ったので、一応先回りして貸し切りにしてもらった。

「我が村自慢の食堂に着きましたぞ。今は残念ながら店長は休暇中でおりませんが、副店長の作る料理も絶品です。是非食べて帰ってください」

 食堂でしばらく二人の様子を見てたら、アリサ組とレイア組も入って来た。

「族長様とはお話できましたか?」
「何だ、アリサも気付いておったのか」
「ええ、わたくしのお父様は自分の癖を全く隠すつもりが無かったので、フレハル様と別れてからすぐに気付きました。生きているのに魔力が全く無いというのも変ですし」
「何だ、ランジはすぐに見破られてしまったのか?」
「面目ございません……やはり娘は可愛いものですので……それが滲み出てしまったのでしょう……」
「……恥ずかしいのでそういうのは人前で言わないようお願い申し上げます……」

「お父様って何?」
「レイアは気付けなんだのだな……」
「お父さんは悲しいぞレイア……」
「え? え? お父様なの? 普通に村の中案内しちゃったよ! その顔は? 全然別人じゃん!」
「アルトラ殿の魔法で一時的に変えてもらった」
「えー! 魔力が全く無いってのは?」
「それもアルトラ殿の魔法だ」
「私、ホントにそういう種族なのかと思った! アルトラ様の話鵜呑みにしてた! 騙された!」
「まあ我々がそのようにお願いしたのだ、責めるなら我々を責めろ」

 アリサは勘が良く、レイアは勘が悪かったわけね。フレアハルトはその中間くらいってとこか。
 この後、食堂にて夕食を楽しんだようだが、ここで分身体は私の下へ帰って来たらしい。
 その後のことは当人たちしか知らない。






 食後、族長以下お付きの方々が、別れの挨拶に来た。

「フレハルとはちゃんと話せましたか?」
「はい、お蔭様で。あの者も中々この村の暮らしが気に入っているようです。我が息子を今後ともよろしくお願い致します」
「アリサをよろしくお願いします」
「レイアをお願いします」

 火山に帰ると言うので、レッドドラゴンの町までゲートで送り届けた。
「わざわざ送っていただきありがとうございます」
「では、私はこれで」
「あ、ちょっと待たれよ! フレアハルトのことですが」
「はい?」
「もっと褒めてやってくだされ。あの子は褒めて伸びる子ですので」
「あ、はい……善処します……」

 まさか、ホントに進言されるとは……

 そういえば、この方々、トロル村に来る時どうやって来たんだろう? まさか50km以上ある道のりを歩いてくるわけないし……
 まさかあの図体で飛んできたのか? でも、村の誰にも見つからずに? どうやって?
 認識阻害の魔法? いや、それなら村の中を行動するためにわざわざ私に頼る必要は無いし……
 その方法は、この後しばらく謎だった。
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