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第6章 アルトラの村役所長代理編
第149話 雨が降った
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役所長代理業務三日目。最終日だ。
今日は朝から雨。久しぶりの結構なザンザン降り。
今日はあまり働くことは無さそうかな。雨が降ってる所為か依頼者が訪問しない。
そういえば朝、家を出てくる時、リディアが凄く嬉しそうに雨の中をクルクル回っていた。ほったらかして家を出て来たけど、もしかしたら今日は一日中外で水浴びしてるかもしれない。
逆に雨に弱いケルベロスは元気無く、犬小屋内でサボタージュ。多分雨が降ってる間は犬小屋から出て来ないだろう。この一人と一匹は見事に好対照ね。
以前レヴィが言ってたっけ、「水棲生物に近い生態だから水分が多い方が調子が良い」って、だとしたら本来海に棲息するクラーケンは雨の時の方がもちろん調子が良いってことになるのかな。
ということは人魚のトーマスも?
フフッ 彼が雨の中ローリングしているのを想像して、少し笑えた。
流石に大人は雨の中クルクル回ったりしないか。
ところで、以前トーマスの妹のリナさんから「腰まで水に浸かったら人魚に変身する」って話を聞いたけど、雨で全身濡れた場合はどうなるんだろう?
路上で脚が尾びれになってしまって、のたうち回ってるなんてことはないよね?
まあ彼の周りに誰かしらいるだろうし、私が様子を見に行く必要も無いか。
それに濡れた程度で変身してたら、水の国で生活するのは大変だ。
「アルトラ様、お茶とお菓子をどうぞ」
「ありがと」
ズズッ
受付嬢のマリリアがお茶とお菓子をを持って来てくれた。今日は人も来ないから、受付を離れてもあまり問題無いらしい。
これ、四日前に私が買って来たやつだ……サンダーブラック美味い。
対して、お茶はあんまり美味しくないな……
「ねえマリリア、このお茶どこで手に入れたの?」
「え~と、確か生態調査組のどなたかがその辺りに生えてる草を使って試飲してみて、美味しかったというものを人伝てに聞いたので、その草を使って作ってみました」
これ、雑草か……美味しくないはずだ……凄く青臭い……お茶の葉とかまだ見つかってないのかな?
「アクアリヴィアで買って来たコーヒーは?」
「もうありませんよ~」
二ヶ月も経ってれば無いか……残念……
それにしても代理業務だって言うのに、こんなに暇してて良いのかしら?
そのうち、「村が水没しております!!」なんて依頼が来なければ良いのだけど……
(第22話参照)
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
そういえばリーヴァントは何も無い時は掃除してるとか言ってたな。
掃除でも始めるか。
今日は湿気があるし、空拭きで良いかな?
机を磨く。こう見ると、書類の数が増えたな。
何ヶ月か前は、紙なんて無くて机以外何も無かったのに。
もっと言うならこの建物すら無かったし。
避難所として私が即席で建てたこの役所は、結局のところそのまま使っている。
ただし、ドワーフによる耐震補強のお蔭で、耐用年数数ヵ月から数年だったものが、数十年から百年保つ仕様に様変わりしたが。
避難所当初は、『一つの大きい箱』という感じの建物だったが、今は区分けされて部屋数が増えた。
私が作った時は、窓はハメ殺しで動かすことができなかったが、窓もちゃんと引き戸にしてもらえて、大分建物らしい建物になった。
先日電気系統も整えてもらっているから、これであとパソコンでもあれば、もう日本と大して変わらない。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
役所内でボーっと外を見ていると、雨の中傘も差さないで家から家の軒下や庇の下を渡る人たちが目立つ。
何で傘差さないのかしら? 結構降ってると思うんだけど……
………………
傘……?
………………
あ、もしかしてこの村ってまだ傘が無い?
ああ、以前レッドドラゴンが雨ざらしの中、外で待っていたことにちょっと違和感を感じてたけど、違和感の正体はこれだったんだ!
彼ら、びしょ濡れだったのに、傘を差さずに外にいた!
(第58話参照)
「ねえ、マリリア、あなたの家ってこの近く?」
「近く……はないと思います。十五分くらい歩きますね」
「エリスリーンとイザベリーズは?」
この二人も受付嬢。この三人で役所の受付嬢をしている。
マリリア同様、他二人も今日は暇してる。
「私たちもそれくらいの時間ですね」
その距離を歩いたら全員家に着いた時にはびしょ濡れね。
「みんな今日はどうやって来たの?」
「普通に濡れながら歩いてきましたよ~」
「私たちもそうですね」
「服、濡れてるようには見えないけど」
「フッフッフ……何を隠そうわたくしマリリアは、火属性と風属性持ちなので、温風作って乾かしました!」
「他二人は?」
「マリリアの魔法のおこぼれを……」
苦笑いしながら話す。
なるほど、雨に濡れた時には適した能力だ。
是非とも人間界にいる間に修得したかった。
「この村って傘あるの?」
「傘って何ですか?」
まあ、雨が降らない土地だったんだからそんなのあるわけないよね……
常闇で日も当たらないから日傘も必要無いし。
「傘ってのは雨が降った時に――」
三人に傘の説明をした。
「雨が降り始めたのもここ最近なんで、そんな便利なものはまだ無いですね~」
「そんなのこの村にもあれば良いんですけど」
あれからも何回か雨降ったのに、ほとんど我が家に居たから全く気付いてなかった!
雷の国でもパラっとしたことはあったけど、雷雲溜まりとかいうのがあったからほとんど雨に降られなかったから傘差す場面が無かったし。
これはちょっと文化を変える時が来たみたいね。
今日は朝から雨。久しぶりの結構なザンザン降り。
今日はあまり働くことは無さそうかな。雨が降ってる所為か依頼者が訪問しない。
そういえば朝、家を出てくる時、リディアが凄く嬉しそうに雨の中をクルクル回っていた。ほったらかして家を出て来たけど、もしかしたら今日は一日中外で水浴びしてるかもしれない。
逆に雨に弱いケルベロスは元気無く、犬小屋内でサボタージュ。多分雨が降ってる間は犬小屋から出て来ないだろう。この一人と一匹は見事に好対照ね。
以前レヴィが言ってたっけ、「水棲生物に近い生態だから水分が多い方が調子が良い」って、だとしたら本来海に棲息するクラーケンは雨の時の方がもちろん調子が良いってことになるのかな。
ということは人魚のトーマスも?
フフッ 彼が雨の中ローリングしているのを想像して、少し笑えた。
流石に大人は雨の中クルクル回ったりしないか。
ところで、以前トーマスの妹のリナさんから「腰まで水に浸かったら人魚に変身する」って話を聞いたけど、雨で全身濡れた場合はどうなるんだろう?
路上で脚が尾びれになってしまって、のたうち回ってるなんてことはないよね?
まあ彼の周りに誰かしらいるだろうし、私が様子を見に行く必要も無いか。
それに濡れた程度で変身してたら、水の国で生活するのは大変だ。
「アルトラ様、お茶とお菓子をどうぞ」
「ありがと」
ズズッ
受付嬢のマリリアがお茶とお菓子をを持って来てくれた。今日は人も来ないから、受付を離れてもあまり問題無いらしい。
これ、四日前に私が買って来たやつだ……サンダーブラック美味い。
対して、お茶はあんまり美味しくないな……
「ねえマリリア、このお茶どこで手に入れたの?」
「え~と、確か生態調査組のどなたかがその辺りに生えてる草を使って試飲してみて、美味しかったというものを人伝てに聞いたので、その草を使って作ってみました」
これ、雑草か……美味しくないはずだ……凄く青臭い……お茶の葉とかまだ見つかってないのかな?
「アクアリヴィアで買って来たコーヒーは?」
「もうありませんよ~」
二ヶ月も経ってれば無いか……残念……
それにしても代理業務だって言うのに、こんなに暇してて良いのかしら?
そのうち、「村が水没しております!!」なんて依頼が来なければ良いのだけど……
(第22話参照)
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
そういえばリーヴァントは何も無い時は掃除してるとか言ってたな。
掃除でも始めるか。
今日は湿気があるし、空拭きで良いかな?
机を磨く。こう見ると、書類の数が増えたな。
何ヶ月か前は、紙なんて無くて机以外何も無かったのに。
もっと言うならこの建物すら無かったし。
避難所として私が即席で建てたこの役所は、結局のところそのまま使っている。
ただし、ドワーフによる耐震補強のお蔭で、耐用年数数ヵ月から数年だったものが、数十年から百年保つ仕様に様変わりしたが。
避難所当初は、『一つの大きい箱』という感じの建物だったが、今は区分けされて部屋数が増えた。
私が作った時は、窓はハメ殺しで動かすことができなかったが、窓もちゃんと引き戸にしてもらえて、大分建物らしい建物になった。
先日電気系統も整えてもらっているから、これであとパソコンでもあれば、もう日本と大して変わらない。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
役所内でボーっと外を見ていると、雨の中傘も差さないで家から家の軒下や庇の下を渡る人たちが目立つ。
何で傘差さないのかしら? 結構降ってると思うんだけど……
………………
傘……?
………………
あ、もしかしてこの村ってまだ傘が無い?
ああ、以前レッドドラゴンが雨ざらしの中、外で待っていたことにちょっと違和感を感じてたけど、違和感の正体はこれだったんだ!
彼ら、びしょ濡れだったのに、傘を差さずに外にいた!
(第58話参照)
「ねえ、マリリア、あなたの家ってこの近く?」
「近く……はないと思います。十五分くらい歩きますね」
「エリスリーンとイザベリーズは?」
この二人も受付嬢。この三人で役所の受付嬢をしている。
マリリア同様、他二人も今日は暇してる。
「私たちもそれくらいの時間ですね」
その距離を歩いたら全員家に着いた時にはびしょ濡れね。
「みんな今日はどうやって来たの?」
「普通に濡れながら歩いてきましたよ~」
「私たちもそうですね」
「服、濡れてるようには見えないけど」
「フッフッフ……何を隠そうわたくしマリリアは、火属性と風属性持ちなので、温風作って乾かしました!」
「他二人は?」
「マリリアの魔法のおこぼれを……」
苦笑いしながら話す。
なるほど、雨に濡れた時には適した能力だ。
是非とも人間界にいる間に修得したかった。
「この村って傘あるの?」
「傘って何ですか?」
まあ、雨が降らない土地だったんだからそんなのあるわけないよね……
常闇で日も当たらないから日傘も必要無いし。
「傘ってのは雨が降った時に――」
三人に傘の説明をした。
「雨が降り始めたのもここ最近なんで、そんな便利なものはまだ無いですね~」
「そんなのこの村にもあれば良いんですけど」
あれからも何回か雨降ったのに、ほとんど我が家に居たから全く気付いてなかった!
雷の国でもパラっとしたことはあったけど、雷雲溜まりとかいうのがあったからほとんど雨に降られなかったから傘差す場面が無かったし。
これはちょっと文化を変える時が来たみたいね。
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