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第2章 トロル集落の生活改善編
第56話 再び襲来レヴィアタン(死後の世界、地獄送りではなく星送りだった!?)
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「それにしてもここって明るくて良いわね」
「太陽のこと?」
「あれが人間界にあるって噂に聞く太陽か、この魔界で自然な光があるところなんて無いからね」
「まあ、地下深くにある場所だし、太陽なんか見えなくてもしょうがないよね」
「地下深く? 地獄や魔界が? 何か勘違いしてない?」
「え、違うの? 人間界では地獄って地下深くにあるってのが常識だけど……」
「その常識は間違ってるね、ここは月と一緒で地球の周囲を公転してる衛星の一つよ」
「そんなバカな!? 地球からこんな星見えたことないよ!?」
この星が衛星だとしたら地球や月が見えててもおかしくない。
しかし、ここの空はいつ見ても真っ暗で、星一つ見えたことがない。
「地球も月も見えないんだけど……?」
「私も見えないよ。とある人から教えてもらって知識として知ってるだけ。あの闇の帳を超えた先には地球や月や太陽や星々が存在しているって。この星は全部が精神体……人間界で言うところの……う~ん、霊体ってところかしら。でも触れることが出来るから半霊体かな?で出来ているから、普通の人間には見えないのよ」
衝撃的事実……
「あ、そういえばあなたたちの世界にもこの星が認識できる人がいたっけ。確か……レイノウリョクシャ? とか言われてたような……」
一気に胡散臭くなった……
「その人たちには、衛星が三つあるように見えてるかもしれない」
「三つ? 二つじゃないの?」
「地球で死んだ人はどうなると思う?」
「そりゃあ良い人は空の天国へ、悪い人は地中深く地獄へでしょ?」
「地球で死んだ悪人はこの星、私たちは魔界って呼んでるところへ来る。この星の正式名称は『冥球』って名前でね、この冥球で地球から来た亡者が活動できるのは地獄とだけ定められているから通常は地獄から出ることはできないわ。脱走する者はたまにはいるけど」
脱走者の扱いはケルベロスの仕事ね。脱走する亡者を食べるだけの簡単なお仕事です。
「そして善人はもう一つの衛星、『天球』ってところへ行くことになってるの。これがあなたたちの言うところの『天国』に当たる星ね。死んだ直後の人をこの二つの星へ送る前段階が三途の川と閻魔の審判。これらは地球にあるけど、普通の人は見えない。ここで下された判決によってどっちへ送られるか決定される」
死後の常識感がひっくり返るな……
「ちなみにここに住んでる人たちや生物も精神体、つまり半霊体ね。これは肉体と霊体の間にあるもので、あなたたちの世界で時折見られる幻想世界の住人はほとんどが半霊体。例えばユニコーンとかドラゴンとかがそう。こっちの世界に異世界への穴が出来ることがあってたまにあっちの世界に迷い込むのよ。だから見える人には見えるし、見えない人には見えない。『半霊』だから触れられる人もたまにいる」
「だとすると、ここで死んだ場合どうなるの?」
「さあ? それは死んだことがないからわからないわ。地球に住んでる時に自分が死んだ後のことなんてわからなかったでしょ? それと同じよ。予想の範疇でしかないんだけど、地球とそれほど違いが無いんじゃないかと思ってる」
ここは地球で死んだ人間が来るから、地球の死後の転生過程はある程度わかるけど、ここの死後はわからないってわけね。もしかしたらこの冥球にも三途の川や閻魔の審判に当たるものがあるかもしれないってことかな?
「この星では地獄の中だけ唯一例外で、地獄内部で死んだ場合はそのままの形で再生され、再び拷問を受け続ける。これは地球にも伝わってる話なんじゃない?」
「うん、聞いたことあるね」
「あの場所は、言い伝えでは魔界とは別の星って云われてて、あそこだけルールが違うのよ。冥球に別の小さい星、仮に『地獄星』っていうのが埋まってると考えたら良いかな。あそこだけはこの星全体のルールとは切り離された場所と考えた方が良いわ。で、地獄の刑期が済んだ者のみ地球へ送られ人間として転生するって伝えられてる。これも実際確認出来てるわけじゃないからどこまで本当なのかわからないけど」
なるほど、地獄については地球で云われてることとそれほど差異は無いかな。
まあ、その刑期が物凄い長いってのを聞いたことあるけど……確か、「地獄での一日が地球での五百年に相当し、それを千年繰り返す」みたいな途方もない話だった。
刑期が済むのも大変な話だな……罪が特別重いヤツは下手したら次に転生する時は人類絶滅してるか、地球そのものが無くなってるもしれない。これもどこまで誇張された話かわからないけど……
「また魔界に転生することもあるのかな?」
「あなたはそのケースなんじゃないの?」
そうでした、私出戻り組なんだ。
「私ここでは死んでる扱いらしいんだけど……」
「それはおかしいわね……魔界では、人間界で死んでる人は地獄に行ってるはずだけど……」
「私、『疑似生者』って能力で生きているように見せかけられてるらしいんだけど……」
「だとしたら、あなたはどちらかと言ったらもう亡者みたいだから、地獄の外でもう一度死んだら消滅しちゃうかもしれないよ?」
そういえばオルシンジテンもそう言ってたな……死なないように気を付けておかないと……
もしくはこの身体で死ぬ前に『蘇生耐性Lv10』を解除して何とか生き返らないと。『蘇生耐性』って項目があるということは、多分蘇生魔法も存在するんだろうし。
しかし、もしこの冥球が地球の衛星だとしたら太陽が見えないのはおかしい。
「何で地球の周りを回ってる衛星なのに太陽が見えないの?」
「太古の昔、超大昔は見えていたらしいよ、でもある時から空が闇に覆われてしまったって話が伝わってる。数千年前のこととして伝説で残ってるだけだから、あの闇の先にホントに空があるのかどうかも確認しようがないけど」
「この闇は何が原因なの?」
「もう大分時間が経ちすぎてるから噂や伝説でしかないんだけど、傲慢の大罪ルシファーを閉じ込めるために神が闇で覆い隠したって伝説よ。ルシファーは堕天する前は『明けの明星』と言われるほどの光の天使だったから、その対極属性である闇で封印したのかもね。今も唯一光を使う魔王として有名だし。その頃にルシファーが堕天してきたって伝説も併せて残ってるからね。その後にその他の六つの大罪も堕とされてきたんだってさ」
「もしかして、私が魔界へ来る時に落下してきた細長い穴みたいなところってその闇の中だったってことかな?」
「そんなところを通って来たの? 穴を落下してここに来たって話は今まで聞いたことないわね。人間界で死んだ後は七日間は死んだ場所に留まり、その後に一日一回の審判を受けながら四十二日かけて暗い道をゆっくり歩いて地獄へ来るって聞いてたんだけど……」
俗にいう四十九日ってやつかな。
「ベルゼビュートが落下してきた、この暗い道ってのが闇の中を歩いてくることだと思ってたけど……亡者が出現するポイントって決まってるのよね?」
「場所は人によってそれぞれ少しずつズレることはあるけど、大体同じ場所に空間の裂け目が出現してそこから歩いて出てくる。私みたいに空から落下してきた事例は私が見た限りでは見たことがない」
「多分、その落下してきた穴は闇の中で間違いはないとは思うんだけど……そこまで状況に違いがあるのは不思議ね……」
ってことは、私はやっぱり特別待遇で落下させられたんだな……
ん? そういえば今までの話は地球で死んだ人間にしかわからないのに、どうやって誰に聞いたんだ?
「ちょっと待って、それって誰から聞いたの? 地獄に行って聞いたの? ここは中立地帯で不干渉なんじゃないの? それに生者って地獄に入れるの?」
「生者は基本入れないよ。入る寸前のところで極卒に止められるから。まあ一度地獄の門の先へ行っちゃったらケルベロスに食われちゃうかもしれないけど」
ああ、あれか……私も門入ってから戻って来た時に口の中に入ることになったっけ…… (第3話参照)
「亡者の中にはケルベロスから逃げおおせて、魔界で暮らしてるヤツがたまにいるのよ、うちの国にも何人かいるし。消滅のリスクを背負っても拷問を受け続ける地獄にいるよりはマシってことかしらね。まあそのまま死んで消滅後どういう扱いになるのか知らないけど」
ケルベロス……やっぱり脱走されてるじゃん!
「まあ、周りは強い亜人や魔人ばかりだから、大抵は大人しく生活してるよ。人間より弱い魔界の生物は中々いないしね。人間の亡者はドワーフほど器用じゃないけどそれなりに器用で、私たちよりも多くの知識を蓄えてる場合もあるから結構いろんなところで重宝されてるのよ」
魔界で働いてる死人がいるんだな……極悪人が人間界に戻って来ないなら良いか。
「あれ? でも人間の知識って、元々は悪魔とか天使が授けたものなんじゃないの?」
「そこから何千年経ってると思ってるの? 人間は欲深い……良い言い方をすれば向上心があるから、私たちより知識を持ってることもままあるよ」
欲深い……か……悪魔は欲深くないのかしら?
「地球に関しても色々知ってるみたいだけど、それらも亡者に聞いてるってこと?」
「そういうこと。ただ、霊体とか半霊体とかの話は別の知り合いから聞いたんだけどね。私たち自身が半霊体なんてことは知らなかったしね。だから正式には半霊体であったとしても私たちは『肉体』って呼称してる。地球で幻想生物なんて言われてることももちろん知らなかったよ」
「じゃあそれらは誰に聞いたの?」
「私たちとは違う高位の者よ。魔王ともなるとこの星の外のことも色々と知る機会があるのよ。中々有意義な話だったわ」
魔王より上がいるのか?
「あ、現在のところはボカしておくけど、この魔界の生物じゃないよ。ベルゼビュートなら近いうちに遭遇するかもね。あなたそういう身体してるみたいだから」
どういう身体!?
そいつが来るかどうかは、私の身体に関係するってこと!?
「もう一つ疑問が出来た、亡者は冥球へ来るんだから、その時に空を覆う闇にも穴が開くはずよね? ルシファーはそこを狙ってここから出ようとしたりはしないの?」
「この星を出られたところで、宇宙空間しかないからいくら最強の魔王でも生きてられないんじゃない?」
「それもそうか……」
今聞いたことをまとめると、大まかに考えて三つ。
一つ目、私が魔界や地獄があると思っていた場所は地中深くにあるのではなく、実は地球の周囲を回る衛星『冥球』だった。そして天国に当たるものは『天球』と呼ばれている。この二つは地球の衛星だが、半霊体なので普通の地球人には見えない。霊能力者は見えている可能性がある。そして魔界の生物は自身の身体が『半霊体』であったとしても『肉体』と呼称している。
二つ目、魔界で死んだ場合は、多分魔界の三途の川に当たるところへ送られ、閻魔の審判を受けるというレヴィアタンの予想。その結果によってそれぞれの場所へ転生する。ただし地獄にいる亡者のみ例外で刑期終了後の転生先は地球。
三つ目、空を覆う闇は魔王ルシファーを閉じ込めるために作られた可能性が伝説として残っているため、ルシファーの大罪を無効化させられれば闇が晴れて、太陽を拝めるようになるかもしれない。
こんな感じかしら。
何か一気に追加設定が増えた気がする……
三つ目を聞くと、私がここへ送られて来た理由がわかった気がする……多分神様にとって厄介なルシファーを何とかするために、元々の悪魔の力に天使の力をプラスされて送り込まれたんだ。だから転生直後からこんな規格外の力を持ってると考えるとある程度納得できる。『神の恩寵』もそのプラスされた能力のうちだろう。
ただ私以外にも歴代ベルゼビュートがいるのに、なぜ私に白羽の矢が立ったのかはわからないけど……
と言うことは、私の最終目標はルシファーを倒して神の憂いを晴らすこと?
やりたくねぇ~……魔王に手出したくないわ~。私は魔王に手を出さず、トロル集落の人々とここで細々とスローライフ送れれば良いや。
「太陽のこと?」
「あれが人間界にあるって噂に聞く太陽か、この魔界で自然な光があるところなんて無いからね」
「まあ、地下深くにある場所だし、太陽なんか見えなくてもしょうがないよね」
「地下深く? 地獄や魔界が? 何か勘違いしてない?」
「え、違うの? 人間界では地獄って地下深くにあるってのが常識だけど……」
「その常識は間違ってるね、ここは月と一緒で地球の周囲を公転してる衛星の一つよ」
「そんなバカな!? 地球からこんな星見えたことないよ!?」
この星が衛星だとしたら地球や月が見えててもおかしくない。
しかし、ここの空はいつ見ても真っ暗で、星一つ見えたことがない。
「地球も月も見えないんだけど……?」
「私も見えないよ。とある人から教えてもらって知識として知ってるだけ。あの闇の帳を超えた先には地球や月や太陽や星々が存在しているって。この星は全部が精神体……人間界で言うところの……う~ん、霊体ってところかしら。でも触れることが出来るから半霊体かな?で出来ているから、普通の人間には見えないのよ」
衝撃的事実……
「あ、そういえばあなたたちの世界にもこの星が認識できる人がいたっけ。確か……レイノウリョクシャ? とか言われてたような……」
一気に胡散臭くなった……
「その人たちには、衛星が三つあるように見えてるかもしれない」
「三つ? 二つじゃないの?」
「地球で死んだ人はどうなると思う?」
「そりゃあ良い人は空の天国へ、悪い人は地中深く地獄へでしょ?」
「地球で死んだ悪人はこの星、私たちは魔界って呼んでるところへ来る。この星の正式名称は『冥球』って名前でね、この冥球で地球から来た亡者が活動できるのは地獄とだけ定められているから通常は地獄から出ることはできないわ。脱走する者はたまにはいるけど」
脱走者の扱いはケルベロスの仕事ね。脱走する亡者を食べるだけの簡単なお仕事です。
「そして善人はもう一つの衛星、『天球』ってところへ行くことになってるの。これがあなたたちの言うところの『天国』に当たる星ね。死んだ直後の人をこの二つの星へ送る前段階が三途の川と閻魔の審判。これらは地球にあるけど、普通の人は見えない。ここで下された判決によってどっちへ送られるか決定される」
死後の常識感がひっくり返るな……
「ちなみにここに住んでる人たちや生物も精神体、つまり半霊体ね。これは肉体と霊体の間にあるもので、あなたたちの世界で時折見られる幻想世界の住人はほとんどが半霊体。例えばユニコーンとかドラゴンとかがそう。こっちの世界に異世界への穴が出来ることがあってたまにあっちの世界に迷い込むのよ。だから見える人には見えるし、見えない人には見えない。『半霊』だから触れられる人もたまにいる」
「だとすると、ここで死んだ場合どうなるの?」
「さあ? それは死んだことがないからわからないわ。地球に住んでる時に自分が死んだ後のことなんてわからなかったでしょ? それと同じよ。予想の範疇でしかないんだけど、地球とそれほど違いが無いんじゃないかと思ってる」
ここは地球で死んだ人間が来るから、地球の死後の転生過程はある程度わかるけど、ここの死後はわからないってわけね。もしかしたらこの冥球にも三途の川や閻魔の審判に当たるものがあるかもしれないってことかな?
「この星では地獄の中だけ唯一例外で、地獄内部で死んだ場合はそのままの形で再生され、再び拷問を受け続ける。これは地球にも伝わってる話なんじゃない?」
「うん、聞いたことあるね」
「あの場所は、言い伝えでは魔界とは別の星って云われてて、あそこだけルールが違うのよ。冥球に別の小さい星、仮に『地獄星』っていうのが埋まってると考えたら良いかな。あそこだけはこの星全体のルールとは切り離された場所と考えた方が良いわ。で、地獄の刑期が済んだ者のみ地球へ送られ人間として転生するって伝えられてる。これも実際確認出来てるわけじゃないからどこまで本当なのかわからないけど」
なるほど、地獄については地球で云われてることとそれほど差異は無いかな。
まあ、その刑期が物凄い長いってのを聞いたことあるけど……確か、「地獄での一日が地球での五百年に相当し、それを千年繰り返す」みたいな途方もない話だった。
刑期が済むのも大変な話だな……罪が特別重いヤツは下手したら次に転生する時は人類絶滅してるか、地球そのものが無くなってるもしれない。これもどこまで誇張された話かわからないけど……
「また魔界に転生することもあるのかな?」
「あなたはそのケースなんじゃないの?」
そうでした、私出戻り組なんだ。
「私ここでは死んでる扱いらしいんだけど……」
「それはおかしいわね……魔界では、人間界で死んでる人は地獄に行ってるはずだけど……」
「私、『疑似生者』って能力で生きているように見せかけられてるらしいんだけど……」
「だとしたら、あなたはどちらかと言ったらもう亡者みたいだから、地獄の外でもう一度死んだら消滅しちゃうかもしれないよ?」
そういえばオルシンジテンもそう言ってたな……死なないように気を付けておかないと……
もしくはこの身体で死ぬ前に『蘇生耐性Lv10』を解除して何とか生き返らないと。『蘇生耐性』って項目があるということは、多分蘇生魔法も存在するんだろうし。
しかし、もしこの冥球が地球の衛星だとしたら太陽が見えないのはおかしい。
「何で地球の周りを回ってる衛星なのに太陽が見えないの?」
「太古の昔、超大昔は見えていたらしいよ、でもある時から空が闇に覆われてしまったって話が伝わってる。数千年前のこととして伝説で残ってるだけだから、あの闇の先にホントに空があるのかどうかも確認しようがないけど」
「この闇は何が原因なの?」
「もう大分時間が経ちすぎてるから噂や伝説でしかないんだけど、傲慢の大罪ルシファーを閉じ込めるために神が闇で覆い隠したって伝説よ。ルシファーは堕天する前は『明けの明星』と言われるほどの光の天使だったから、その対極属性である闇で封印したのかもね。今も唯一光を使う魔王として有名だし。その頃にルシファーが堕天してきたって伝説も併せて残ってるからね。その後にその他の六つの大罪も堕とされてきたんだってさ」
「もしかして、私が魔界へ来る時に落下してきた細長い穴みたいなところってその闇の中だったってことかな?」
「そんなところを通って来たの? 穴を落下してここに来たって話は今まで聞いたことないわね。人間界で死んだ後は七日間は死んだ場所に留まり、その後に一日一回の審判を受けながら四十二日かけて暗い道をゆっくり歩いて地獄へ来るって聞いてたんだけど……」
俗にいう四十九日ってやつかな。
「ベルゼビュートが落下してきた、この暗い道ってのが闇の中を歩いてくることだと思ってたけど……亡者が出現するポイントって決まってるのよね?」
「場所は人によってそれぞれ少しずつズレることはあるけど、大体同じ場所に空間の裂け目が出現してそこから歩いて出てくる。私みたいに空から落下してきた事例は私が見た限りでは見たことがない」
「多分、その落下してきた穴は闇の中で間違いはないとは思うんだけど……そこまで状況に違いがあるのは不思議ね……」
ってことは、私はやっぱり特別待遇で落下させられたんだな……
ん? そういえば今までの話は地球で死んだ人間にしかわからないのに、どうやって誰に聞いたんだ?
「ちょっと待って、それって誰から聞いたの? 地獄に行って聞いたの? ここは中立地帯で不干渉なんじゃないの? それに生者って地獄に入れるの?」
「生者は基本入れないよ。入る寸前のところで極卒に止められるから。まあ一度地獄の門の先へ行っちゃったらケルベロスに食われちゃうかもしれないけど」
ああ、あれか……私も門入ってから戻って来た時に口の中に入ることになったっけ…… (第3話参照)
「亡者の中にはケルベロスから逃げおおせて、魔界で暮らしてるヤツがたまにいるのよ、うちの国にも何人かいるし。消滅のリスクを背負っても拷問を受け続ける地獄にいるよりはマシってことかしらね。まあそのまま死んで消滅後どういう扱いになるのか知らないけど」
ケルベロス……やっぱり脱走されてるじゃん!
「まあ、周りは強い亜人や魔人ばかりだから、大抵は大人しく生活してるよ。人間より弱い魔界の生物は中々いないしね。人間の亡者はドワーフほど器用じゃないけどそれなりに器用で、私たちよりも多くの知識を蓄えてる場合もあるから結構いろんなところで重宝されてるのよ」
魔界で働いてる死人がいるんだな……極悪人が人間界に戻って来ないなら良いか。
「あれ? でも人間の知識って、元々は悪魔とか天使が授けたものなんじゃないの?」
「そこから何千年経ってると思ってるの? 人間は欲深い……良い言い方をすれば向上心があるから、私たちより知識を持ってることもままあるよ」
欲深い……か……悪魔は欲深くないのかしら?
「地球に関しても色々知ってるみたいだけど、それらも亡者に聞いてるってこと?」
「そういうこと。ただ、霊体とか半霊体とかの話は別の知り合いから聞いたんだけどね。私たち自身が半霊体なんてことは知らなかったしね。だから正式には半霊体であったとしても私たちは『肉体』って呼称してる。地球で幻想生物なんて言われてることももちろん知らなかったよ」
「じゃあそれらは誰に聞いたの?」
「私たちとは違う高位の者よ。魔王ともなるとこの星の外のことも色々と知る機会があるのよ。中々有意義な話だったわ」
魔王より上がいるのか?
「あ、現在のところはボカしておくけど、この魔界の生物じゃないよ。ベルゼビュートなら近いうちに遭遇するかもね。あなたそういう身体してるみたいだから」
どういう身体!?
そいつが来るかどうかは、私の身体に関係するってこと!?
「もう一つ疑問が出来た、亡者は冥球へ来るんだから、その時に空を覆う闇にも穴が開くはずよね? ルシファーはそこを狙ってここから出ようとしたりはしないの?」
「この星を出られたところで、宇宙空間しかないからいくら最強の魔王でも生きてられないんじゃない?」
「それもそうか……」
今聞いたことをまとめると、大まかに考えて三つ。
一つ目、私が魔界や地獄があると思っていた場所は地中深くにあるのではなく、実は地球の周囲を回る衛星『冥球』だった。そして天国に当たるものは『天球』と呼ばれている。この二つは地球の衛星だが、半霊体なので普通の地球人には見えない。霊能力者は見えている可能性がある。そして魔界の生物は自身の身体が『半霊体』であったとしても『肉体』と呼称している。
二つ目、魔界で死んだ場合は、多分魔界の三途の川に当たるところへ送られ、閻魔の審判を受けるというレヴィアタンの予想。その結果によってそれぞれの場所へ転生する。ただし地獄にいる亡者のみ例外で刑期終了後の転生先は地球。
三つ目、空を覆う闇は魔王ルシファーを閉じ込めるために作られた可能性が伝説として残っているため、ルシファーの大罪を無効化させられれば闇が晴れて、太陽を拝めるようになるかもしれない。
こんな感じかしら。
何か一気に追加設定が増えた気がする……
三つ目を聞くと、私がここへ送られて来た理由がわかった気がする……多分神様にとって厄介なルシファーを何とかするために、元々の悪魔の力に天使の力をプラスされて送り込まれたんだ。だから転生直後からこんな規格外の力を持ってると考えるとある程度納得できる。『神の恩寵』もそのプラスされた能力のうちだろう。
ただ私以外にも歴代ベルゼビュートがいるのに、なぜ私に白羽の矢が立ったのかはわからないけど……
と言うことは、私の最終目標はルシファーを倒して神の憂いを晴らすこと?
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