15 / 589
第1章 灼熱の火山地帯冷却編
第14話 活火山冷却成功?
しおりを挟む
雨が降り始めてから更に三日が経った。
豪雨は七日七晩続いている。
私の生活範囲となっている地獄の門前広場と、トロル集落のあるエリアは防御魔法:水吸収の結界のお蔭で水没は免れている。この結界の外は大洪水だ。
もしかしたらかなりの数死者が出ているかもしれない。
死者の国で死者が出てるってのもおかしな話だけど……
仮にトロルたちを妖精や精霊であり、妖精や精霊が生者であると考え、アンデッドや亡者を死者と考えるなら、死者と生者が一緒にいるのも、それほど矛盾していない気がする。
つまり、人間界で妖精や精霊は見ることができないが、この死の国で生者という扱いであるなら、この洪水で死んでる可能性があるということ。
「私、とんでもないことしちゃったかもしれない……」
MP:十五万の水魔法は伊達じゃなかったらしい。早くMP分降り尽くしてくれることを祈る、マジで!
余談だけど、亡者 (死者)は地獄内に限っては、死んでも風が吹けば元の状態で蘇るらしい。どんなに小さく細切れにされても蘇る。死んで終わりなんて慈悲深いものではなく、死んでも蘇らされて、また地獄の痛苦を味わなければならないとか。
これは人間界のとある書物の情報。
一応オルシンジテンに確認取ったところ、概ね合ってるらしい。
ケルベロスに食われた亡者はオルシンジテンによると魂ごと消滅してしまうらしい。
そうなると、脱走を試みて魂ごと消滅する方が楽なのか、痛苦を永劫に味わってでも地獄で罪を償うのが楽なのか、どちらが良いのかわからなくなってくる。
しかし、『消滅』の苦痛がどの程度のものかはわからない。とは言え地獄に堕とされた罪に加え、脱走の罪が加わるのだから地獄に比べて易いものとは思えない。もしかしたら未来永劫絶えることのない更なる苦痛が襲う状態が消滅した状態なのかもしれない。
消滅したことがないからわからないが、そういう万が一がある“かもしれない”ってことを考えると、絶対に死なないようにしないといけない。
更に二日が経過。
豪雨は未だ止まず、今日で九日目。
結界の外は水が上がり切って、中から見ると最早水族館状態だ……水の下にあるこの場所は、さながら竜宮城。
早めに防御魔法で結界を張っておいたのが功を奏した。
ただ……ある時期から土埃が上から降ってくるようになった。
どうやら水吸収の結界で、水だけは吸い取られているが、泥水の中の泥の部分だけが通過して降って来てるらしい。
仕方ないので水吸収結界の内側に土吸収の結界を施した。これで土も降ってくることはないだろう。
ケルベロスは上空に溜まった水を恐がって犬小屋から出てこない。
絶賛サボタージュ中。
豪雨降り始めから十日。
ようやく雨が止んだらしい。
“らしい”というのは、まだこのエリアが水の底状態で確認が出来ないから。
上を見ると結界の上部だけ濁った水が、少しだけ透明になってきているため、雨が止んだと判断した。実際降ってないかどうかは、外が見えないからわからないと言わざるを得ない。
私の予想通り雨が止んでいるなら、ここは火山地帯で水はけがすこぶる良いから、明後日にはもうほぼ引いていることだろう。
雨が止んでから二日が経った。
豪雨降り始めから十二日。水がほぼ引いた。
結界を防御魔法:水吸収で作ったのは怪我の功名だったらしい。水吸収で作ったお蔭で、結界が降った雨を徐々に吸収していってくれた。これをもし、水無効で作っていたら、降った雨を結界が弾いてしまい、最早どうすることも出来なかったかもしれない。まあ、水はけは良いから時間か経てば何とかなったかもしれないけど……それでも数倍から数十倍の日数が必要だったかもしれない。
「さて、肝心の火山地帯はどうなったかな?」
防御魔法を解除し、火山上空を飛んでみる。
「海の中でも火が消えない海底火山って現象もあるし、鎮火してない可能性もあるかもしれない」
七つの火山地帯を見回ってみる。
火山周辺に流れ出したマグマは、もうすっかり冷えて固まっていた。
「火口はどうだろ?」
火口もほとんどの火山が沈静化。火口内で溶岩が燃えているのは七つ中一つだけになった。
「十分な成果ね」
これだけ火山が沈静化すれば、外気温も大分下がってるでしょ。
体感的には少し肌寒いくらいだけど、私の身体の気温感知はアテにならない。
スキル『熱感知』で感知出来る温度が二十度が下限だから、仮に氷点下になっていても私にはわからないのだ。
「そこで、先日作った温度計の出番よ!」
温度計で現在の気温を確認してみる。
マグマが冷える前は木が自然発火する温度だったから、推定四百五十度を超えていたはず。
さて、何度まで下がったかな?
「気温五度。
………………
……ご……ど……?
…………五度!?
え!? どういうこと!?」
マグマが冷える前は推定四百五十度以上で、今は五度? 極端に下がり過ぎじゃない?
「ケルベロス大丈夫か!?」
あれ? いつもの位置にいない?
ああ……今日も門番はサボりか……
犬小屋を見る。
中で包まって震えている。
床暖房 (極大)完備なのに……
この寒さ、何がいけなかったんだろう?
「もしかして太陽の熱が無いから?」
上空に輝いている疑似太陽は、時間魔法と光魔法だけを組み合わせて作ってあり、火属性を混ぜていないため熱を発していない。
火属性が無いことによって、光輝いてはいても熱が発生せず、気温が上がらない状態なのかもしれない。
「一応まだ一つ冷え切ってない活火山が残ってるから、地熱で零度より上は維持できてるみたいだけど……あれが無かったら、もしかしたら氷点下を大きく下回ていたかも」
急いで疑似太陽に火属性を足して、熱を発するように作り変える。
温度計を見ながら、ちょうど良い温度に調整する。二十から三十六度の間で推移するように調整。
これでももしかしたらこの地の生物にとっては寒いかもしれない。
もう少し上限を上げたいところだけど、これを逸脱するような温度になると育たない作物は多い。
寒がってたケルベロスは……というと。少し温かくなったからか、いつもの位置に出てきた。まだ寒そうだ。
後で何か温かく包めるものを巻いてやろう。
豪雨は七日七晩続いている。
私の生活範囲となっている地獄の門前広場と、トロル集落のあるエリアは防御魔法:水吸収の結界のお蔭で水没は免れている。この結界の外は大洪水だ。
もしかしたらかなりの数死者が出ているかもしれない。
死者の国で死者が出てるってのもおかしな話だけど……
仮にトロルたちを妖精や精霊であり、妖精や精霊が生者であると考え、アンデッドや亡者を死者と考えるなら、死者と生者が一緒にいるのも、それほど矛盾していない気がする。
つまり、人間界で妖精や精霊は見ることができないが、この死の国で生者という扱いであるなら、この洪水で死んでる可能性があるということ。
「私、とんでもないことしちゃったかもしれない……」
MP:十五万の水魔法は伊達じゃなかったらしい。早くMP分降り尽くしてくれることを祈る、マジで!
余談だけど、亡者 (死者)は地獄内に限っては、死んでも風が吹けば元の状態で蘇るらしい。どんなに小さく細切れにされても蘇る。死んで終わりなんて慈悲深いものではなく、死んでも蘇らされて、また地獄の痛苦を味わなければならないとか。
これは人間界のとある書物の情報。
一応オルシンジテンに確認取ったところ、概ね合ってるらしい。
ケルベロスに食われた亡者はオルシンジテンによると魂ごと消滅してしまうらしい。
そうなると、脱走を試みて魂ごと消滅する方が楽なのか、痛苦を永劫に味わってでも地獄で罪を償うのが楽なのか、どちらが良いのかわからなくなってくる。
しかし、『消滅』の苦痛がどの程度のものかはわからない。とは言え地獄に堕とされた罪に加え、脱走の罪が加わるのだから地獄に比べて易いものとは思えない。もしかしたら未来永劫絶えることのない更なる苦痛が襲う状態が消滅した状態なのかもしれない。
消滅したことがないからわからないが、そういう万が一がある“かもしれない”ってことを考えると、絶対に死なないようにしないといけない。
更に二日が経過。
豪雨は未だ止まず、今日で九日目。
結界の外は水が上がり切って、中から見ると最早水族館状態だ……水の下にあるこの場所は、さながら竜宮城。
早めに防御魔法で結界を張っておいたのが功を奏した。
ただ……ある時期から土埃が上から降ってくるようになった。
どうやら水吸収の結界で、水だけは吸い取られているが、泥水の中の泥の部分だけが通過して降って来てるらしい。
仕方ないので水吸収結界の内側に土吸収の結界を施した。これで土も降ってくることはないだろう。
ケルベロスは上空に溜まった水を恐がって犬小屋から出てこない。
絶賛サボタージュ中。
豪雨降り始めから十日。
ようやく雨が止んだらしい。
“らしい”というのは、まだこのエリアが水の底状態で確認が出来ないから。
上を見ると結界の上部だけ濁った水が、少しだけ透明になってきているため、雨が止んだと判断した。実際降ってないかどうかは、外が見えないからわからないと言わざるを得ない。
私の予想通り雨が止んでいるなら、ここは火山地帯で水はけがすこぶる良いから、明後日にはもうほぼ引いていることだろう。
雨が止んでから二日が経った。
豪雨降り始めから十二日。水がほぼ引いた。
結界を防御魔法:水吸収で作ったのは怪我の功名だったらしい。水吸収で作ったお蔭で、結界が降った雨を徐々に吸収していってくれた。これをもし、水無効で作っていたら、降った雨を結界が弾いてしまい、最早どうすることも出来なかったかもしれない。まあ、水はけは良いから時間か経てば何とかなったかもしれないけど……それでも数倍から数十倍の日数が必要だったかもしれない。
「さて、肝心の火山地帯はどうなったかな?」
防御魔法を解除し、火山上空を飛んでみる。
「海の中でも火が消えない海底火山って現象もあるし、鎮火してない可能性もあるかもしれない」
七つの火山地帯を見回ってみる。
火山周辺に流れ出したマグマは、もうすっかり冷えて固まっていた。
「火口はどうだろ?」
火口もほとんどの火山が沈静化。火口内で溶岩が燃えているのは七つ中一つだけになった。
「十分な成果ね」
これだけ火山が沈静化すれば、外気温も大分下がってるでしょ。
体感的には少し肌寒いくらいだけど、私の身体の気温感知はアテにならない。
スキル『熱感知』で感知出来る温度が二十度が下限だから、仮に氷点下になっていても私にはわからないのだ。
「そこで、先日作った温度計の出番よ!」
温度計で現在の気温を確認してみる。
マグマが冷える前は木が自然発火する温度だったから、推定四百五十度を超えていたはず。
さて、何度まで下がったかな?
「気温五度。
………………
……ご……ど……?
…………五度!?
え!? どういうこと!?」
マグマが冷える前は推定四百五十度以上で、今は五度? 極端に下がり過ぎじゃない?
「ケルベロス大丈夫か!?」
あれ? いつもの位置にいない?
ああ……今日も門番はサボりか……
犬小屋を見る。
中で包まって震えている。
床暖房 (極大)完備なのに……
この寒さ、何がいけなかったんだろう?
「もしかして太陽の熱が無いから?」
上空に輝いている疑似太陽は、時間魔法と光魔法だけを組み合わせて作ってあり、火属性を混ぜていないため熱を発していない。
火属性が無いことによって、光輝いてはいても熱が発生せず、気温が上がらない状態なのかもしれない。
「一応まだ一つ冷え切ってない活火山が残ってるから、地熱で零度より上は維持できてるみたいだけど……あれが無かったら、もしかしたら氷点下を大きく下回ていたかも」
急いで疑似太陽に火属性を足して、熱を発するように作り変える。
温度計を見ながら、ちょうど良い温度に調整する。二十から三十六度の間で推移するように調整。
これでももしかしたらこの地の生物にとっては寒いかもしれない。
もう少し上限を上げたいところだけど、これを逸脱するような温度になると育たない作物は多い。
寒がってたケルベロスは……というと。少し温かくなったからか、いつもの位置に出てきた。まだ寒そうだ。
後で何か温かく包めるものを巻いてやろう。
1
あなたにおすすめの小説
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!
966
ファンタジー
「錬金術士様だ!この村にも錬金術士様が来たぞ!」
最低ランク錬金術士エリセフィーナは錬金術士の学校、|王立錬金術学園《アカデミー》を卒業した次の日に最果ての村にある|工房《アトリエ》で一人生活することになる、Fランクという最低ランクで錬金術もまだまだ使えない、モンスター相手に戦闘もできないエリナは消えかけている前世の記憶を頼りに知り合いが一人もいない最果ての村で自分の夢『みんなを幸せにしたい』をかなえるために生活をはじめる。
この物語は、最果ての村『グリムホルン』に来てくれた若き錬金術士であるエリセフィーナを村人は一生懸命支えてサポートしていき、Fランクという最低ランクではあるものの、前世の記憶と|王立錬金術学園《アカデミー》で得た知識、離れて暮らす錬金術の師匠や村でできた新たな仲間たちと一緒に便利なアイテムを作ったり、モンスター盗伐の冒険などをしていく。
錬金術士エリセフィーナは日本からの転生者ではあるものの、記憶が消えかかっていることもあり錬金術や現代知識を使ってチート、無双するような物語ではなく、転生した世界で錬金術を使って1から成長し、仲間と冒険して成功したり、失敗したりしながらも楽しくスローライフをする話です。
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
※タイトルはそのうち変更するかもしれません※
※お気に入り登録お願いします!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる