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第1章 灼熱の火山地帯冷却編

第7話 万能書物『オルシンジテン』

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 昨夜は何でも教えてくれる人がいれば良いなと思ったから、それに相当するようなスキルを作ってみようと思ったけど……どうやら私の魔法で高度なスキルは作れないようだ。
 ケルベロスへの【スキルドレイン】で、スキルを盗む (私の場合はコピーが正しいのかな?)ことは出来たものの、魔法にも限界があって、ああいった高度な特殊スキルは自作することができないらしい。
 ちなみに【三つ首の業火トリプルフレイム】も無理矢理首が三つに増える効果があるってことで、高度な特殊スキルに属するらしい。

 なので、体内に作り出せないならと、外部に作ってみた!
 何度か試してみたところ、私の魔法は物質を作り出すことができるようなので、何にでも答えてくれる本をイメージして作ってみた。
 呼びかけると、空中に浮いてページが開き、質問による答えをホログラムで表示してくれるように作った。残念なのは見栄え重視で辞典並みの大きさに作ってしまったため、おいそれと持ち歩ける厚さじゃないところ。
 名前は『万物』を英語にした『all things』と『辞典』を足して少し捻って付けた。
 その名も

 『オルシンジテン』

「じゃあ、早速。オルシンジテン、私のステータスを知りたい」
「了解しました」

────────────────────────────────────────
 ▼名前:地野 改 (チノ・カイ) ▼種族:天使?
 MP:152346
 ATK:225
 DEF:11021

 ▼使用可能な武器系統
短剣Lv10、包丁Lv10、剣Lv10、大剣Lv10、槍Lv10、三節槍Lv10、矛Lv10、槌Lv10、手斧Lv10、斧Lv10、大斧Lv10、刀Lv10、大太刀Lv10、ヌンチャクLv10、棍Lv10、三節棍Lv10、杖Lv10、ロッドLv10、メイスLv10、鎌Lv10、大鎌Lv10、鞭Lv10、フレイルLv10、弓Lv10、自動弓Lv10、連弩Lv10、銃Lv10、マシンガンLv10、重火器Lv10、円月輪Lv10、ブーメランLv10、投擲術Lv10、盾術Lv10、体術Lv10、二刀流術Lv10、三刀流術Lv10、複刀流術Lv10

 ▼使用可能な魔法系統
火Lv10、水Lv10、土Lv10、風Lv10、雷Lv10、氷Lv10、【光Lv10】、闇Lv10、樹Lv10、物質Lv10、時間Lv10、空間Lv10
全系統使用可能特典として創成魔法が使用可能
防御魔法Lv10、変異魔法Lv10、身体強化魔法Lv10

 ▼防御耐性
物理攻撃耐性Lv10、魔法攻撃耐性Lv10
斬撃Lv10、打撃Lv10、刺突Lv10、射撃Lv10、体術Lv10、魔法Lv10
火Lv10、水Lv10、土Lv10、風Lv10、雷Lv10、氷Lv10、光Lv10、闇Lv10、樹Lv10、物質Lv10、時間Lv10、空間Lv10

 ▼状態耐性
毒耐性Lv10、麻痺耐性Lv10、石化耐性Lv10、混乱耐性Lv10、暗闇耐性Lv10、沈黙耐性Lv10、睡眠耐性Lv10、音波耐性Lv10、火傷耐性Lv10、凍傷耐性Lv10、酸耐性Lv10、アルカリ耐性Lv10、身体弱化耐性Lv10、身体強化耐性Lv0、外部からの変化耐性Lv10、内部からの変化耐性Lv0、外部からの時間耐性Lv10、内部からの時間耐性Lv0、外部からの強制老化耐性Lv10、内部からの強制老化耐性Lv0、外部からの強制若返り耐性Lv10、内部からの強制若返り耐性Lv0、魅了耐性Lv10、精神支配耐性Lv10、魔法封印耐性Lv10、呪詛耐性Lv10、即死耐性Lv10、蘇生耐性Lv10

 ▼現在使用可能スキル
スキルドレイン、エナジードレイン、マジックドレイン、パワードレイン、千里眼リモート・アイ

 ▼コピーしたスキル
三つ首の業火トリプルフレイム

 ▼常時発動スキル・非常時発動スキル
神の恩寵おんちょう
熱感知、水感知、風感知、土感知、微電流感知、冷気感知、光感知、闇感知、接触感知、臭気感知、音感知、味感知、睡眠耐性無効睡眠、言語翻訳
物理障壁 (永久)、魔法障壁 (永久)、再生力強化 (極大)、自動転生 (無効化中)
疑似生者、冥獄めいごくかせ
天使の翼、堕天使の翼
────────────────────────────────────────

 何か数字だけで見ると、めちゃくちゃ強いな。
 MPの量が凄い……これがどの程度かわからないけど、数値だけで見ればこんなにあったのか……
 と思ったら防御力も凄い……
 攻撃力だけ他より少ないな。身体が小さいから?
 『種族:天使 (?)』って、やっぱり悪魔の特徴が混じってるからかな?
 使用可能な魔法系統の光に【 】が付いてるってのは、多分基本属性 (=得意属性)だからだろう。
 扱える武器の数が凄い……私この中で一つたりとも経験したことないけど……ホントに扱えるの?

 ……ちょっと待って、三刀流術って何? それ使ってる人、ゴム人間ルヒィが出てくる海賊漫画『ワンピィス』でしか見たことないけど……
 それより、その次の複刀流術って何よ!? まさかの三本以上!? 片足も使うのかしら……それって逆に弱くならない?

 この特典の『創成魔法』って何だろう?

「オルシンジテン、『創成魔法』って何?」
「イメージ出来るものであれば、あらゆる物質を作り出せる魔法です。イメージが明確に出来れば出来るほど高度に、強固になり壊れにくくなります」

 そんな凄い能力持ってたんか、私!
 布団とかベッドとか時計とか作った時に、どこの属性に属してるのかわからなかったけど、あれが創成魔法だったのね。

「ただし、命を作り出すことは出来ません。この世界の命の定義は『それ単体が意思を持って動くことができること』、『脳または脳に類似する機能・神経系統を持った器官を有していること』、そこに『動力源となるもの』が入っていることを基準としています。つまり要約してしまえばあなた方が『魂』と認識している存在を作り出すことができません。そのため、動物、魚、昆虫などは脳に当たる器官を持つため生成できません」

 何だ……犬や猫は作れないのか……
 日々の癒しになるかと思ったのに……

「微生物、ウィルスなどは記憶領域があるものもいるものの意思を持たず、脳に当たる器官を持たないため生成可能です」

 う~ん……微生物やらウィルスやら作れてもなぁ……そんなの作れたって生物兵器くらいしか思い浮かばない……流石にそんなバカなことに使えないし。

「あ、じゃあ植物は?」
「それは樹魔法の領分です、しかし命のルールは同様で、脳に当たる器官を持つ場合は生成不可能です。そのため、それ自体が意思を持って捕食していると思われる自由移動が可能な植物は、脳に当たる器官を備えている可能性が高いため生成不可能な場合が多いということになります」

 その言い草から考えると、魔界には自由移動して、獲物を捕食する植物がいるってことなのか?
 積極的に捕食する生物って言ったら……よくファンタジー物で見るマンイーターってやつとか?

「じゃあ人間を作り出すのは不可能ってことなのね?」
「可能です」
「は?」

 何だどういうことだ、ちょっと何言ってるかわからん。今命は作れないって言ったばかりじゃないの?

「人間を作り出すこと自体は可能です。ただし命=魂いのちを作り出すことができないため、自力で動くことはありません。命の無い人間はただの肉の塊ですので、そのままにしておけば腐敗して朽ちていきます」

 ああ、なるほど身体自体は『物』と考えられるから作成可能だけど、動くためには『魂』が必要だから動く人間を作ることはできないってことか。
 それって意味ある?
 逆に考えれば、動物の肉を生成すれば、自分で肉を作って食べられるってことかしら?

「魂は作り出せないの?」
「不可能です。魂の生成には、更に上位の『命生魔法』のスキルが必要です」
「それって私が修得可能なの?」
「いかなる場合でも不可能です。『命生魔法』は主神にしか使用出来ない至高クラスの専用スキルです」
「魂を作り出せるのは神様だけってことか」

 『神の恩寵おんちょう』って何だろ?

「『神の恩寵おんちょう』ってなに?」
「………………お答えできません」

 答えられない?
 どんな質問にも答えられるイメージで作ったけど、やっぱり人間の想像力には限界があるのね。
 それとも、何かしらの力でロックがかかってるのかな?
 見た目は天使だけど、悪魔のツノと羽持って魔界に居るのに『神の恩寵おんちょう』?
 改めて考えてもゴチャゴチャと設定詰め込み過ぎ!
 やっぱり何者かの思惑でここに送り込まれたのかな?

「樹、物質、時間、空間の属性ってどんな属性?」
「樹魔法は植物を生育する魔法、物質魔法は金属類、ガラス類、石材、木材などを操る魔法です」

 つまり『動植物と他の十一属性以外は全部これですよ』って属性か。

「ただし、一言に物質と言っても幅広いため、そこに得手不得手が生まれることがあります。例えば鉄を作るのは得意でもガラスは不得意など。石や宝石は土属性、木材は樹属性と一部重複することがあります。土と物質属性、樹と物質属性を合わせることでより強固な物質へと変化する可能性があります。また、他の十一属性とは違い、使用するのに大きく魔力を消費するため連発はお勧めしません」

 あまりポンポン簡単に作ることはできないってことね。
 土と樹が一部重複するなら、代用も可能だろうから、大き目のものを作りたい時はこの二つを使えば十分ね。

「時間魔法は時間に関係するものを操る魔法です」
「過去や未来に行くことって出来るの?」
「出来ません、効果範囲は自分の周囲十メートルほどに限られ、時間の壁を飛び越えることは出来ません。対象の老若を操ったり、自らの移動速度を高めたりなどの用途が考えられます」
「空間魔法は?」
「空間を操る魔法です。ある程度の空間干渉能力を有し、小規模な範囲・十分な魔力があれば景色ごと書き変えることも可能です。重力操作などもここに属します。また、空間に穴を開けている間は距離を飛び越えて移動することが可能です」
「おお! それってまさに『どこにでもドア』じゃない!」

 この感知系ってのは何だろ?

「感知系のスキルってなに?」
「皮膚感覚です」
「はい?」
「例えば『火耐性』がLv10の場合、熱自体が感知出来なくなるため、それとは別に『熱感知』のスキルで補っています」
「感知する範囲ってどの程度?」
「熱感知は二十度から三十六度ほど、水感知の温度は液体で零度から四十三度ほどです。ただし口内は液体で七十度ほどまで感じられます、気体で百度ほど、冷気感知はマイナス二十度ほど、微電流感知は静電気程度です。いずれも直ちに生命に危機が及ばない程度までを上限として感知します。それ以上が発生した場合、強制的に生命の危機が及ばない感知範囲まで抑え込まれます」

 ああ、だから炎は熱くなくても、猛暑日に相当する暑さは感じるのね。
 便利な体ねぇ~……

「ちなみに、攻撃された時には『物理防御耐性』が、ただ触れられただけの時には『接触感知』が働きますので、攻撃された時には肌が鋼のように硬く、触れられた時には普通の肌の感触になります」

 それを自動で選別してくれるってこと?
 便利な体ねぇ~……

「その次にある『睡眠耐性無効睡眠』は?」
「カイ様は睡眠耐性がLv10のため、そのままだと眠ることができません。それを無効化するスキルで補っています。このスキル効果により、睡眠魔法や睡眠ガスなどで眠らされることはありませんが、身体が疲れを感じると眠気が来るようになっています」

 睡眠耐性を無効にしておいて、その無効効果を無効にして睡眠って……何てややこしい名前だ……

「『言語翻訳』は?」
「この世界で言葉を発する生物の言葉を日本語に、この世界の生物へは現地の言葉に訳すスキルです。話し方やニュアンスによって、日本の方言のようになることもあるかもしれません。こちらに来た地球人に標準搭載されるスキルです」
「ああ、だから先日遭遇したトロルの言葉が分かったわけね」
「書かれている文字も日本語に当てはめて読めますが、地球の文字がこの世界の生物に伝わるわけではないので注意してください」

 ああ、この世界にはこの世界の文字があるってことなのね。

 そして、『神の恩寵おんちょう』と並んで気になるスキルトップ3に入る『疑似生者』。
 疑似ってことは、生きてないってことになるのかな?

「オルシンジテン、『疑似生者』ってなに?」
「死者を生者のように仕立てているスキルです。生者のように三大欲求である、食欲もありますし、睡眠欲もあります。せいよ……」
「そこから先は言わなくて良い」
「食物の摂取を必要とするため、汗や排泄などの生理現象も起こり、痛覚や五感もあります。地獄行きに決定された死者は一定期間、または、恒久的にほとんどの思考能力を無くしますが思考能力も正常に働きます。要するに死者の国にありながら生きている時と同じ状態を保つスキルです」
「やっぱり私死んでるのね…」

 度々何度も確認させられるが、死んでいることには変わりないらしい。

 そして、同じく気になるトップ3『冥獄めいごくかせ』。

「『冥獄めいごくかせ』ってなに?」
「スキル所持者を死の国に繋ぎ止めるためのスキルです。これを所持している場合、何があっても死の国から出ることができません。空間魔法による魔界・地獄以外への空間移動も無効化されます」

 私をこの場に繋ぎ止める意図があるってことか。
 やっぱり誰かの意思によって、私に何かを成し遂げさせようとしている?

 これもちょっと気になる、『蘇生耐性』。

「オルシンジテン、『蘇生耐性』はなに?」
「蘇生魔法で生き返れるかどうかを判定します」
「Lv10ってことは、蘇生させようとした場合は確実に生き返れるってこと?」
「いいえ、その逆で確実に失敗することを意味しています」
「生き返れない耐性……」

 私が既に死んでるからってことなのかな? いや、死んでるのを生き返らせるのが蘇生なんだから、私が死んでるかどうかは関係無いか。
 生き返れない耐性って、RPGでは一番要らないスキルね。
 現実でも要らないよこんなの。例えば心臓麻痺になって、心臓マッサージ受けても絶対に蘇生できないってことだよね?

 その少し下にある『自動転生』って何だろ?

「『自動転生』ってなに?」
「死んだ後に自動的に転生します。天使は蘇生はせず、天界にて転生します。天使全員に備わった能力です。」
「ってことは私にはやっぱり天使の特性があるってことなのね? それでこの (無効化中)ってのは?」
「『蘇生耐性Lv10』により無効化されています」

 この『蘇生耐性』ってのが邪魔だな!
 いずれにせよ死んだらそれまでってことか。まあ、現実でもそうだけど……
 と言うか、私死んでるのに、これ以上死ぬことがあるのか?

「私ってこれ以上死ぬことがあるの?」
「亡者は地獄内でのみ何度でも生き返って罰を受けます。ここは地獄の外で魔界と呼ばれるところなので、魔界にいるカイ様が死んだ場合、魂が消滅します」

 何度も死ねるかと思ったけど、そう都合良くはないのね……

「ってことはケルベロスに食べられてる亡者は……?」
「消滅していると考えて良いでしょう。ただし……カイ様は『神のおんちょ……ガガガピーガガーー」

 なに!? 機械でもないのに何だこのノイズ音!?

「申し訳ありません、お答えできる範囲を逸脱しました」

 明確な情報のロックキタ!
 現時点では教えてもらえないってことか。
 私が作ったものなのに情報のロック! どう考えても人知を超えた者の介入があったとしか思えない。

「『冥獄めいごくかせ』や『疑似生者』とか、『自動転生』の (無効化中)とか、それらって消すことできるの?」
「………………お答えできません」

 これも答えられないか……
 う~ん、これはもう肯定と取って良い気がする。
 私が魔界から出るには、『冥獄めいごくかせ』と『疑似生者』のスキルを解除し、『蘇生耐性Lv10』を消して、蘇生魔法で生き返らないといけないわけだ。蘇生魔法なんていう都合の良い魔法があるかどうかは分からないが……
 もしかしたら『疑似生者』と『蘇生耐性Lv10』は連動リンクしている可能性すらある。

「『天使の翼』と『堕天使の翼』はなに? 『天使の翼』は常に見えてるんだけど、『堕天使の翼』はどこにも無いよ?」
「どちらも飛ぶために存在します。見えてないということは収納状態になっているのだと思われます。工夫次第で、飛ぶこと以外に使うことができます」

 収納状態?
 この羽って収納出来るのか。
 堕天使の翼を出してみる。あ、ホントに出た。天使の羽とは別に黒い羽が四枚増えた。これってもしかして飛行能力かなり上がる?
 でも、禍々しいから普段は天使の翼だけで良いか。緊急時だけ使うようにしよう。
 堕天使の翼が収納できてるってことは……じゃあ、天使の翼の収納も可能?
 全ての翼を収納してみる。
 すると……背中に吸い込まれるように消えた。

「こんなことできたんだ」

 飛べるのは便利だけど、寝る時に正直かなり邪魔だと思っていた。
 これからは寝るのが少し快適になるかな。
 同じように角を収納しようとしてみたが……こちらはできなさそうだ。
 この角も、羽ほどではないが寝る時に邪魔になることがある。当たりどころが悪いとゴリゴリする。
 人間だった時はこんなの無かったから、収納出来れば便利だったんだけど……

「邪魔とは言っても、折ったりとかは……」

 下手したら血がドバっと出そうだから止めておこう。ちなみに頭上に浮いてる天使の輪は収納できた。

「なお、収納状態であっても、見える者には見えるので、そのたぐいの者たちに対しては完全に隠すことは出来ません」

 まあ、別に隠さないといけない理由も無いし良いか。
 あ、今気づいた。このステータス、HPの項目が見当たらない……

「オルシンジテン、HPの項目が見当たらないんだけど何で?」
「HPとは何ですか?」
「何って……ゲームなんかでは、生命力を数値化したものだと思うけど……」
「しかし、生物の生命力を数値化するのは難しく思います。例を挙げてみましょう。今自分は最大HPが十万で、全快しており、体調も絶好調の状態と仮定します。そして現在対峙している相手は遥か格下で負けるはずがなく、攻撃を受けてもせいぜいHPが五百減る程度だったとしましょう。この状態でも、たまたま当たりどころが悪く、心臓を一突きされる、あるいは、首をねられるなどすれば、多くの場合死に至ります。本来なら五百程度のダメージしか受けないはずの相手なのに、当たりどころが悪かっただけで一撃で十万のダメージを受けて即死するのですか? クリティカルヒット=即死ですか?」

 ド正論過ぎる……

「生物はその時にどんなに絶好調な状態だったとしても、当たりどころが悪ければ簡単に死んでしまうため、単純に数値で推し量ることは難しいと考えます」

 RPGはご都合主義って言いたいのか。
 確かにHPが一しかない状態って、瀕死も瀕死のド瀕死の状態だものね。
 こんなに瀕死の状態ならきっと出血も酷いし、放っておくだけで死んでしまうはずなのに、RPGだと平気で長距離歩いて移動してるし、攻撃受けないと死なないし。そうかと思えば今までは平気で歩いてたはずなのに、かすり傷一つで突然死するんだものね……
 そういえば、HPがどれだけ残っててもクリティカルヒットで即死する『ウィザードラー』ってゲームがあったな……確かあのゲームはクリティカルヒット=首チョンパだった。

「持続力という形でなら表現可能ですが、いかがいたしますか?」
「……じゃあそれで表示をお願い」
「では、今後HPをスタミナ(stamina)の略称STMで表現することにします」
「カイ様の現在の持続力はSTM:一万九千二百六十四です」

 この数値が凄いのかどうかわからん……

「この数値ってどんな基準なの?」
「人間の大人は一般的に四百から五百程度、子供は八百から千二百程度、フルマラソンを五時間で走れる人を千五百程度と仮定しました」

 一万九千って破格じゃん。

「フルマラソン程度の速度なら十日間走り続けても大丈夫なスタミナ量です」

 今の私の身体凄かった……

「また、MP、ATK、DEFについても目安でしかありません」

 曖昧だな……
 この場合だと、ATKは攻撃力じゃなくて、腕力とか身体的筋肉量とかだと考えた方が良いのかな?
 DEFはそのまま防御力と考えて良いかな? 私めっちゃ頑丈だし。
 そうだ、これも聞いておかないと。

「MPがゼロになったら死んじゃう?」
「問題ありません、代わりに今算出したSTMを消費して魔法を使えます」
「じゃあ、STMがゼロになった場合は?」
「特別な条件でもない限りは死に至ります。最低限、百は残すように努めてください」

 あぶな……聞いておいて良かった……

「どうすれば回復できるの?」
「カイ様の場合は睡眠時間一時間につき五千ほど回復します」

 MPゼロになったら、完全回復するには三十時間超寝ないといけない計算になるのか。

「なお、STMについては消費し過ぎると人間の時同様、長時間の休息が必要になります」

 そんなこんなで今日は『オルシンジテン』の試験運用で一日を費やした。
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