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第1章 灼熱の火山地帯冷却編

第8話 遂に訪れてしまった“アレ”問題

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 魔界に来て五日目を迎えてちょっと……いや、かなり深刻な問題が起こった。
 現世に居ればなんてことは無い問題。私はそれほど多いわけではないのだが、さすがに四日も経つとキツくなってくる。
 食物を摂取すれば避けて通ることができない問題……
 そう! トイレの問題だ……

 RPGプレイ中に『トイレはどうしているのか?』などと思ったことがある。
 RPGプレイしたことある人は多分みんなが一度は思ったことだと思う。だって、どんなに大きな街に行ってもトイレ存在しないんだもの。
 トイレ技術の素晴らしい国に生まれてしまっているから、水洗設備の無い場所でどうやって処理すれば良いのかがわからない……

 多分デリケートな部分過ぎて漫画やアニメでも中々描かれない部分なんだろう。
 確か少女たちの遭難をコミカルに描いた『ソウナンデ~スカァ?』というアニメで“それ”について言及されたことがあった。それ以外ではあまりお目にかかったことがない。
 街作り系の転生物でトイレについて言及した漫画ってあるのかな?
 私はまだ読んだ覚えが無い。

 正直言って、ホントにどう処理すれば良いかわからない。
 ちなみに『ソウナンデ~スカァ?』のダディは「崖をクライミング中に催したらどうするか」という“娘”の問いに、「そのまま服の中にする、恥を捨てろ!」と答えていた。
 まあ、この選択は論外なわけだけど……

「家の中でするわけにはいかないし、流石に外でするべきか……?」

 流せないなら用を足した後にどうするのか? 土に埋めるのか? 私なら空間魔法で消し去るか? わざわざ用足しする度に魔力消費せにゃあならんのか?
 外で済ませば、この灼熱の外気温で焼尽してくれるかもしれない。しかし、人が全くいないとは言え、外でするのは抵抗がある。それに、燃え残ったカスは結局のところ“アレ”の燃えカスなわけで……正直言って汚い。
 加えてこの場所は草木一本生えてないから私を隠してくれるものが何も無い。ケルベロスアイツが興味を持って寄ってくる可能性大!

「ああぁ~~!! どうしよう!!」

   ◇

 その時! 突如として奇妙な選択肢が頭に浮かぶ。

 そこで問題だ!
 この状態で無事に済ますにはどうするべきか?

   3択─ひとつだけ選びなさい

  答え①キュートのカイは突如
     反撃のアイデアがひらめく

  答え②トイレがきて助けてくれる

  答え③耐えられない。
     現実は非情である。

 いやいやいや! ②と③は選択肢として最初からあり得ないからね! 「トイレがきて助けてくれる」って何だよ!!
 ①しか答えは無いでしょ!
 困難な局面で大分頭が混乱しているな。

   ◇

 そうだ! 家の中に水を使わないトイレを作ってしまおう!
 確かバイオマスとかいうおがくずを利用したバクテリアで分解できたはずだ。
 じゃあ、そのバクテリアを作ってここに置いておけば分解してくれるはずね。
 確か昨日オルシンジテンが、「微生物は作れる」って言ってたはずだ! あの時は「生物兵器作るのに使うくらいしか使い道無いな」みたいに考えてたけど、早くも使える時が来るとは!
 おがくずは片づける手間があるから、バクテリアだけで分解できるようなやつを作ろう。
 どうせなら用を足して、即座に分解してくれるやつをイメージしよう!

 早速土魔法で家の中にトイレと便器に当たるスペースを増設する。便器は和式はやりにくいから、当然洋式だ。
 次に排水溝に当たる部分は水を流すわけではないので少し深めに穴を掘って行き止まりの状態にしておき、その穴の中に“アレ”を分解してくれるバクテリアを創成魔法で作る。

「あ、あと紙も要るんだっけ」

 と言うわけで樹魔法でトイレットペーパーを急遽作る。
 これで大丈夫……なはずだ。

 さて、四日振りの用足し。

   ◇

「ハァ……スッキリした……」

 あとは、放っておけば分解して綺麗にしてくれるはず。もし分解してくれずに残っても、便器は陶器で作ったし炎で焼き尽くしてしまえば良いや。
 そう軽く考えていたが、トイレを出た瞬間――

 キキキ……バキバキバキバキ……ベキベキベキベキッ!!

 という木や陶器が無理矢理壊される時に出る激しい破壊音!
 所詮バクテリアなんて単細胞生物、燃やしてしまえばおしまいだと簡単に考えていたが、作ったバクテリアコイツがかなりヤバイやつだった。
 バクテリアの加減がわからずに作ったけど、私の“アレ”で活性化したのか、トイレを食い荒らし始めた。新設したばかりのトイレがどんどん喰われて塵になっていく!

「ちょ、何これ!? 家がどんどん食べられてる!?」

 急いで空間魔法でバクテリアがいる周囲の空間ごと切り離して消滅させた。
 トイレがあった場所には大穴が!! 家の中から外が見えるくらい破損規模が大きかった。

「お、恐ろしい……バクテリアって知識を知らずに作るとこんなのが生まれるのか……これはかなりの調整が必要だ……もし空間魔法を使えなかったら家だけじゃ済まなかったかもしれない……」

 一応空間魔法で家の周囲の空間ごと消滅させて建て直した方が良いかな?
 さっきのバクテリアが一匹でも残っていたら、魔界全域への脅威となる怪物にまで成長してしまうかもしれない。
 しばらく様子を見よう。

   ◇

 五分ほどが経過したが、家が食い荒らされるような感じはしない。

「……大丈夫そう……かな?」

 かなりホッした。
 しかし、トイレの問題はもうここで生きていく上で絶対に必要不可欠な事柄なので、無視することは出来ない。トイレの度に外に出て用足しするのは嫌だ!
 今は私しかいないから良いが、今後誰か来客があるような事態になったら……来てくれたお客さんに、

『トイレは野ざらしですけど、外でお願いします~』

 何て言わなければならない。
 客相手にそんなこと言えるか!!

「………………うん、研究しよう!」
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