【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき

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28、行きたくない

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*オレオール目線

「……。」
「……オレ……ル……っ。」
テル、テルだよな……。
全身から込み上げるような何かが
私の身体を駆けめぐり、毛穴という
毛穴がぶわぁっと開きなぜだか
鳥肌がが立ってしまっていた。
これは感動なのか、それとも喜びなのだろうか?
私の名を呼んでくれているのか、テル。
思わず嬉しくなって私自身の口角が
上がった気がした。
何なんだろうか、この気持ち……。
ニホンにいたはずのテルとは、もう
会えないかと思っていたのに
本当にまた会えたんだよな?!
ドクドクと脈打つ心臓の音が自分の
身体の中で反響し、やけに大きく聞こえた。
訳もわからず背中がしっとり濡れた気がした。
本当にこの人物が本物のテルならば
信じていなかった神に感謝したいくらいだ。
だが、ニホンにいるはずのテルがなぜこの国、
フェーリス国にいるのだろうか?
私のように世界を渡ったのか?!
身体に負担はなかったのか?!
いつ?いつからこの国に……本当に?
本当に日本にいたテルなんだのな?
……黒い髪のテル。
目は眠っているから見えないが
黒い瞳なんだよな?
1年…約1年半前にニホンで初めて
出会った頃より幼げで今にも消えそうなテルが
ベッドに眠りながら涙を流していた。
前より、痩せてしまったのか……?
オレオールの視線は、テルの濡れた
目元を注視したまま動かなかった。
「……テル。」
思わず、震えた自分の声がこぼれてしまった。
フェニーチェ兄上が心配気に私の肩を
ポンポンとし、ハンカチを差し出してくれていた。
気づかないうちに私は、涙を流していた様だった。

「この子が私を君だと思ったのか
君の名前を言うから、優しい弟思いのお兄様が
可愛い弟君に手紙をしたためたのさ。」
「……感謝します。ありがとうございます
フェニーチェお、お兄様。」
「どういたしまして。この子も
君に会いたかったかもね。」
後で話してくれるか?というような
目線を送ってきたが、私は早朝には
魔物討伐に行かなければならないのだ。
「なぜこんな時に……。」
「今度の討伐は、どのくらいだい?」
「約2週間の予定…です。」
片道約3日約1週間程の滞在で数カ所の村々を
根拠にしながらの魔物討伐だった。
魔物討伐に行かなければと思いながらも
テルに再び逢えた喜びからか、起きてるテルと
ニホンにいた頃のように、色々
話したいと思ってしまった。
「……行きたくない。」
「気持ちはわかるが、こればかりは
私もどうしようもない。この国の
人たちを魔物から守るための討伐だし、
この子が居る場所を魔物から守る為
きっちり仕事してこい。」
「……。」
「仕事に行きたくないって、オレオールの
口から初めて聞いたよ。……ふふっ。
いい傾向だな。」
「なぜ、いい傾向なんですか?こんなことなら
今回の討伐に志願しなければよかった。」
「ププッ…オレオール、私の提案なんだがね、
この公爵邸にこの子をなるべく、長く
引きとめといてあげるよ。オレオールの為と
この子の為…色々とね。」

テルの魔力と体力がかなり減っていたらしく
公爵邸の侍医に3週間は療養した方がいいと
診断書を書くようにするよ、と言ってくれた
フェニーチェ兄上に頭が上がらなかった。
「ありがとう。フェニーチェ兄上感謝します。」

        ***

*フェニーチェ目線

夜明け前、オレオールは公爵邸の
マモノのお店ハキダメの秘蔵っ子"テル様"がいる
客室にギリギリまでいた。オレオールは
うなされていた"彼"の手を握ったり
柔らかな黒髪を撫でたりしていた。
私はそっと抜け出し、2人のことを
寝ずの番の侍従に後を任せた。
私は自室にいる愛する美しい我が妻マリーが
眠っているベッドに戻った。
数時間後、まだ日が昇る前の暗い朝に
落ち込んでいるオレオールを見送った後
忘れないうちに我が家の侍医に
3週間療養する旨を記した指示書を書いた。
最低でも2週間と言っていたんだし
1週間伸びるくらいはいいだろう。
どうせ、我が家に可愛い"弟"が増えそうな
気配がするし、これくらい大差ないさ。
それよりも、オレオールも公爵の息子という
肩書きを使えば今回の討伐の任務も外したり
日程をずらす事も可能なはずなのに、
なぜ、権力を使わないんだろうか?
騎士団では腫れ物に触るような対応を
されているときいているのに
不器用で優しい子だ。

それにしても"彼"が来た時の我が家の
可愛いすぎる姫の行動に驚いたよ。
我が美しい妻のマリーと乳母たちを
振り切るかのように、まだ1歳半の
レイラが客室に行き、マモノのお店
ハキダメの御二方を通り越した。そして
ベッドに横たわった"少女"と間違えてしまった
"彼"から離れなかったレイラには
かなり……いや、本当に驚いてしまった。
侍医の診断中も手を握っていたらしいし
いくら"女の子同士"としても
少しお父さんはさみしかったよ。
家令も"お嬢様"と思ってたらしいし
不思議な子だよ。

侍医が診断の結果、それぞれの
回復薬を準備している間に
もう一度診断してみると、不思議な事に
なぜだか枯渇気味だった魔力と体力は
少しだけ回復したそうだ。
我が家の可愛い小さな姫であるレイラは、
そんな"彼"のベッドで手を繋いだまま
眠ってしまっていた。
さらに驚く報告には、我が家の姫レイラが
闇の力の一種、安らぎ、癒し、回復を
したようだった。
レイラは魔力は非常に安定していたのだった。

レイラは産まれた時から闇の力が非常に高く、
身体から溢れた魔力を友人であるドゥペールの
アクセサリー型の魔道具で魔石に作り替えていた。
レイラのベッドにも同じ様な魔道具があり
成長とともに多くなる力を吸い上げていた。
3日に一度大人の子指の爪ほどの大きさの
闇の魔石が出来上がるのだったが
"彼"が来てから2日経っても魔石にレイラの
闇の力は貯まる事がなかった。
"彼"はほぼほぼ眠ったままで、栄養も
ろくにとれてない状態にも関わらず
回復薬なしで、驚くほどの魔力回復が
出来ていた。
"彼"が我が家の可愛い姫であるレイラの
魔力を無意識に吸い上げているのか、
それとも、可愛い…いや、可愛いすぎる
レイラが"彼"に魔力を分け与えているのかは
わからない。
まだ2日、今日で3日目だがレイラの
魔力は魔道具なしに安定していた。
オレオールにとっても、レイラにとっても
"彼"は必要な人物かもしれない。

ぜひ我が家の為"彼"と話がしてみたいと
心から思った。
願わくばオレオールにとっても
必要な人物として側にいてあげて欲しい。
人形の様な弟がやっと感情ある
"人"になろうとしているからね。
協力してもらおうか、マモノのお店
ハキダメの秘蔵っ子"テル様"。
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