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ヒスイと一緒に、いつものアイスクリームを
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一日ぶりに返ってきた自室には、やっぱり彼が待ってくれていた。
「レン! やっと俺の番だね!」
緑の瞳を輝かせ、逞しい腕を広げて飛びついてくるその姿はやっぱり大型犬にしか見えない。
申し訳ないっていう気持ちが可愛いっていうときめきに潰されそうになってしまう。頬が自然と緩んでしまう。
「ごめんな、ヒスイ……待たせちゃって」
「レンが謝ることじゃないよ。先輩達とちゃんと話し合って決めたことだし。ジャンケンに負けたのは俺だしね」
完全勝利を収めた任務の後、始まったのはまたしてもジャンケン大会だった。
決めたのは俺と二人っきりで過ごす順番。そして、ヒスイは負け残ってしまった訳で。
「そもそも俺達がレンの恋人になってなくても、博士の訓練計画だと……今日から時間を決めて順々にレンとの絆を深めていく予定だったんだし」
頼もしい大きな手が俺の頭を、頬をよしよし撫でる。逆転してる。今は俺の方が犬になった気分だ。
「だから一緒に楽しもう? 今だけは、俺にレンの全部を頂戴?」
柔らかく微笑みかけられて、そわそわしていた鼓動が大きく跳ねた。
皆からヒスイから貰ってばっかの俺に何があげられるのかは分からないけれど。
「うん……俺のあげられるものなら何でもあげるから……もらって、欲しい……」
どうしたらいい? と尋ねようとして見上げた瞬間今度は違う方向性で心臓が跳ねた。
目に飛び込んで来たんだ。大柄の身体を丸め胸を押さえ、苦しそうに唸るヒスイの姿が。
「ひ、ヒスイ!?」
ど、どうしたらいいんだ? 背中を撫でる、とか? いや、とにかく横になってもらった方がいいんじゃないか?
「大丈夫……」
わたわたしている俺の頭を宥めるように優しい手つきで撫でてくれる。ヒスイの方が大変そうなのに。
「俺が悪かったよ、うっかりしてた……レンは素直だもんね……でも、そういうこと……先輩達には言っちゃ駄目だからね?」
「? 分かった。こういうことはヒスイだけにするよ」
「ぐっ」
「ヒスイ!?」
また苦しめてしまったのに、大丈夫だよ、と微笑んで抱き締めてくれた。それだけじゃない。
「レンの為に用意して貰ったんだ」
冷凍庫から取り出しテーブルに置かれたピンクの星柄の箱には、馴染みが有りすぎる店のロゴ。
お陰で開ける前からテンションが鰻登りになっていたのに、中には俺の好きなフレーバーのアイスばかりが六つも並んでいたもんだから大変だ。
「キャラメルチョコ! ストロベリーチーズもある!」
「全部チョコはどうかなって……苺のは、前ハマってたでしょ?」
「ありがとう! ヒスイ!」
「どういたしまして。一緒に食べよ?」
「うんっ!」
箱についてたピンクのスプーンを取ろうとして、大きな手に先を越される。
「ヒスイ?」
ぼんやり見ている内に、いそいそとキャラメルチョコを盛り盛りに掬った匙が、俺の前に差し出された。
「はい、あーん」
「……ん」
含んだ途端に広がるこってりした甘さと心地のいい冷たさ。美味しい。美味しいんだけど恥ずかしい。
つい、いつものクセで食べちゃったけど、よく今まで平気でしてたよな。
「レン……照れてるの?」
「し、仕方がないだろ! 意識しちゃうんだよ……」
「ふふ、可愛いね」
撫でてくれるのは嬉しいけれど……やっぱり子供扱いされてるみたいだ。今はもう恋人、なのに。
俺だって、とゴツゴツした手が持つアイスとスプーンへ手を伸ばす。お見通しだったんだろうか、何の抵抗もなく取れてしまった。
「……一緒に食べるんだろ? 今度は俺がする」
「……ありがとう」
嬉しそうだ。余裕たっぷりだ。俺が食べさせたアイスをごくごく普通に楽しんでいる。
「俺ばっかりだな。ドキドキしてるの……」
つい、ぼやいてしまっていた。
カッコいい横顔が見る見るうちに真っ赤に染まり、ソファーに預けていたガッシリとした身体が前のめりに迫ってくる。
「ど、ドキドキしてくれてるの? 俺に? レンが?」
「あ、当たり前だろ……恋人とか……俺、初めてなんだからさ……ヒスイは慣れてるみたいだけど」
「俺も初めてだよ? だってレンだもん、俺の初恋」
「へ?」
ぽかんと口を開けたままの俺からアイスとスプーンを奪っていく。手早く箱に戻したかと思えば、空いた手を指を絡めて握られた。
「ほ、ホントに?」
「うん。出会ってすぐに好きになって、それからずっと」
すぐって……会ったの小学一年の時だから……え? 十年? 十年間も俺のこと想ってくれてたのか?
「だから言ったでしょ? ずっと好きだったって」
花が咲きこぼれたみたいに微笑む唇がゆっくり近づいてくる。
「……ヒスイ……んっ、ん……は、ふ……」
背を支えてもらいながら体重をかけられて、抱き合うような形のまま俺達はソファーに倒れ込んだ。
「ま、待って……アイス、溶けちゃう……」
見下ろす瞳が嬉しそうに細められる。
「大丈夫……保冷剤入れたままだから……ふふ、そんなにいっぱいするつもりだったの?」
「あぅ……」
確かに期待してるって取られても仕方がないか。ていうか、してたんだろうな……無自覚で。
喜びを隠しきれていない声が甘く囁く。
「ねぇ、して欲しかったの?」
「……うん……キス、いっぱいしたい……ヒスイと……」
「っ……レン」
鮮やかな緑の瞳がじわりと滲んだかと思えば、筋肉質な腕に勢いよく抱き締められて閉じ込められた。
素直に言えたからだろうか。優しいヒスイは俺の望みを叶えてくれた。アイスは無事だった。少しだけゆるくなっていたけれど。
「レン! やっと俺の番だね!」
緑の瞳を輝かせ、逞しい腕を広げて飛びついてくるその姿はやっぱり大型犬にしか見えない。
申し訳ないっていう気持ちが可愛いっていうときめきに潰されそうになってしまう。頬が自然と緩んでしまう。
「ごめんな、ヒスイ……待たせちゃって」
「レンが謝ることじゃないよ。先輩達とちゃんと話し合って決めたことだし。ジャンケンに負けたのは俺だしね」
完全勝利を収めた任務の後、始まったのはまたしてもジャンケン大会だった。
決めたのは俺と二人っきりで過ごす順番。そして、ヒスイは負け残ってしまった訳で。
「そもそも俺達がレンの恋人になってなくても、博士の訓練計画だと……今日から時間を決めて順々にレンとの絆を深めていく予定だったんだし」
頼もしい大きな手が俺の頭を、頬をよしよし撫でる。逆転してる。今は俺の方が犬になった気分だ。
「だから一緒に楽しもう? 今だけは、俺にレンの全部を頂戴?」
柔らかく微笑みかけられて、そわそわしていた鼓動が大きく跳ねた。
皆からヒスイから貰ってばっかの俺に何があげられるのかは分からないけれど。
「うん……俺のあげられるものなら何でもあげるから……もらって、欲しい……」
どうしたらいい? と尋ねようとして見上げた瞬間今度は違う方向性で心臓が跳ねた。
目に飛び込んで来たんだ。大柄の身体を丸め胸を押さえ、苦しそうに唸るヒスイの姿が。
「ひ、ヒスイ!?」
ど、どうしたらいいんだ? 背中を撫でる、とか? いや、とにかく横になってもらった方がいいんじゃないか?
「大丈夫……」
わたわたしている俺の頭を宥めるように優しい手つきで撫でてくれる。ヒスイの方が大変そうなのに。
「俺が悪かったよ、うっかりしてた……レンは素直だもんね……でも、そういうこと……先輩達には言っちゃ駄目だからね?」
「? 分かった。こういうことはヒスイだけにするよ」
「ぐっ」
「ヒスイ!?」
また苦しめてしまったのに、大丈夫だよ、と微笑んで抱き締めてくれた。それだけじゃない。
「レンの為に用意して貰ったんだ」
冷凍庫から取り出しテーブルに置かれたピンクの星柄の箱には、馴染みが有りすぎる店のロゴ。
お陰で開ける前からテンションが鰻登りになっていたのに、中には俺の好きなフレーバーのアイスばかりが六つも並んでいたもんだから大変だ。
「キャラメルチョコ! ストロベリーチーズもある!」
「全部チョコはどうかなって……苺のは、前ハマってたでしょ?」
「ありがとう! ヒスイ!」
「どういたしまして。一緒に食べよ?」
「うんっ!」
箱についてたピンクのスプーンを取ろうとして、大きな手に先を越される。
「ヒスイ?」
ぼんやり見ている内に、いそいそとキャラメルチョコを盛り盛りに掬った匙が、俺の前に差し出された。
「はい、あーん」
「……ん」
含んだ途端に広がるこってりした甘さと心地のいい冷たさ。美味しい。美味しいんだけど恥ずかしい。
つい、いつものクセで食べちゃったけど、よく今まで平気でしてたよな。
「レン……照れてるの?」
「し、仕方がないだろ! 意識しちゃうんだよ……」
「ふふ、可愛いね」
撫でてくれるのは嬉しいけれど……やっぱり子供扱いされてるみたいだ。今はもう恋人、なのに。
俺だって、とゴツゴツした手が持つアイスとスプーンへ手を伸ばす。お見通しだったんだろうか、何の抵抗もなく取れてしまった。
「……一緒に食べるんだろ? 今度は俺がする」
「……ありがとう」
嬉しそうだ。余裕たっぷりだ。俺が食べさせたアイスをごくごく普通に楽しんでいる。
「俺ばっかりだな。ドキドキしてるの……」
つい、ぼやいてしまっていた。
カッコいい横顔が見る見るうちに真っ赤に染まり、ソファーに預けていたガッシリとした身体が前のめりに迫ってくる。
「ど、ドキドキしてくれてるの? 俺に? レンが?」
「あ、当たり前だろ……恋人とか……俺、初めてなんだからさ……ヒスイは慣れてるみたいだけど」
「俺も初めてだよ? だってレンだもん、俺の初恋」
「へ?」
ぽかんと口を開けたままの俺からアイスとスプーンを奪っていく。手早く箱に戻したかと思えば、空いた手を指を絡めて握られた。
「ほ、ホントに?」
「うん。出会ってすぐに好きになって、それからずっと」
すぐって……会ったの小学一年の時だから……え? 十年? 十年間も俺のこと想ってくれてたのか?
「だから言ったでしょ? ずっと好きだったって」
花が咲きこぼれたみたいに微笑む唇がゆっくり近づいてくる。
「……ヒスイ……んっ、ん……は、ふ……」
背を支えてもらいながら体重をかけられて、抱き合うような形のまま俺達はソファーに倒れ込んだ。
「ま、待って……アイス、溶けちゃう……」
見下ろす瞳が嬉しそうに細められる。
「大丈夫……保冷剤入れたままだから……ふふ、そんなにいっぱいするつもりだったの?」
「あぅ……」
確かに期待してるって取られても仕方がないか。ていうか、してたんだろうな……無自覚で。
喜びを隠しきれていない声が甘く囁く。
「ねぇ、して欲しかったの?」
「……うん……キス、いっぱいしたい……ヒスイと……」
「っ……レン」
鮮やかな緑の瞳がじわりと滲んだかと思えば、筋肉質な腕に勢いよく抱き締められて閉じ込められた。
素直に言えたからだろうか。優しいヒスイは俺の望みを叶えてくれた。アイスは無事だった。少しだけゆるくなっていたけれど。
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