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編みぐるみ作りは順調。友達として仲良くなる計画も、順調……だよな?
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この歳で? すでに結婚相手が?
なんかもう色々全部吹き飛んだ。必死に意識しないようとしていた俺の努力をあっさり上回る爆弾発言によって。
思わず大きな声を上げたどころか、離れようとしていた俺の手を白い手が縋るように力を込めてくる。
「違うんだ……僕達自身は互いを兄妹としか思っていない。そもそも僕達が生まれてすぐに親同士がお酒の席で決めた口約束で……それに彼女には恋人が居るんだ。だから」
「えっと……じゃあ義理の妹さんって感じ、なんですね」
いきなり情報量が多すぎる。
正直まだ処理が出来ていない。けれども俺は二人の関係を、最初に彼が言った妹という言葉で結論づけることにした。
だって、あんまりにも必死だったんだ。言葉を重ねる彼の表情が、声が、眼差しが、今にも泣き出してしまいそうで。だから。
「ああ、そうなんだ……僕達は出会った時からお互いに心から好きな相手を見つけようと約束していたんだが、よく誤解されてしまってね」
心の底から安堵したような笑みに俺もホッと息を吐いていた。
少しだけ手の力が緩んだ。けれども離されることはなく指を絡めて繋がれる。たったそれだけなのに少し跳ねてしまった自分の心臓が恨めしい。
不意に絡んだ視線、柔らかく微笑んでいた瞳にまた少しだけ寂しさが滲む。
「……今まではそれでも構わなかった。でも君には、君だけには分かって欲しくて……」
「大丈夫ですよ……伝わりましたから。青岩さんがその方のことをホントの家族みたいに大切に思ってるんだなって」
「……ありがとう」
空気は変わった。
ただし、ますます微妙な方向へ。嬉しそうに目尻を下げ、見つめてくる彼の視線が擽ったい。
またしてもどうしたもんか。このまま手に手を取り合い、くっついていたら間違いなくあらぬ勘違いをしてしまう。俺が。
今度こそは友愛路線を目指したいってのに、どうすれば……ああ、そうだ! いい方法があるじゃないか!
「あ、あの、良ければ教えてくれませんか? 編みぐるみの作り方。こういうの、やったことなくて」
編みぐるみ作りならば、今よりは自然な友達の距離感が保てるだろう。更には趣味を共有することで仲も深められるハズ。
まさに一石二鳥なナイスアイデアだな! と自画自賛していた俺にずずいと整った顔が迫ってくる。
「いいのかい?」
青岩さんなら快く引き受けてくれそうだな、とは思っていたけど……まさかここまで食いつきが良いとは。
その疑問はすぐさま解消されることになった。期待に輝く瞳を伏せ頬をほんのり染めた彼の言葉によって。
「本当は僕も誘うつもりだったんだ。一緒に作らないかって……ただ、遊びとしてはその……大人し過ぎるだろう? だから……僕が好きだというだけで押しつけるのは良くないだろうと……」
「……俺は、知りたいなって思いましたよ」
「え?」
はたとかち合った瞳がきょとんと丸くなる。コロコロ変わる目の表情に自然と頬が緩んでいた。
「青岩さん、さっき俺の好きを知ってくれようとしてましたよね? だから、俺も知りたいなって。青岩さんの好きなこと……知りたいし、やってみたいんです。一緒に」
「……天音君」
また、キラキラと輝いた。青空みたいに透き通った瞳が。
「だから教えて下さい。あ、後、今度一緒にアイスクリーム屋さん行きましょう。カラオケとゲーセンも」
「ああ、宜しく頼む……一緒に行こう。君の好きな場所へ」
柔らかく微笑んだ瞳と一緒に、今度は口元にも静かな笑みが浮かぶ。約束ですからね? と小指を差し出せば、約束だ、と絡めてくれた。
千里の道も一歩から。その言葉を体験しているみたいだ。
テーブルの上に広げられたのは今まで触れる機会のなかった編み物セットとカラフルな毛糸玉達。初めて手にした細いかぎ針と細い毛糸に、目を頭をぐるぐる回している俺を優しい瞳が見守っている。
「かぎ針を三本の糸の下にくぐらせて……うん、いいね。次にその糸を引っ掛けてゆっくり引き出すんだ……よし、いい調子だよ。そこから細編みを今作った輪に巻きつけて……」
懇切丁寧な指導の元、中指と薬指に巻きつけた毛糸に黙々と針の先を引っ掛けては編んでを繰り返す。米粒くらいのちっちゃな一目が徐々に連なっていき、そして。
「やったっ出来ましたよ! 一段目!」
「ああ、筋がいいね」
作ることになったのは基本だという丸い編みぐるみ。完成までは程遠く、十円玉サイズしか編めていないのだけれど、達成感が半端ない。
だってこんな細い糸が、こんなに小さな編み目が形になっていくんだから。これは確かに夢中になっちゃうな。
「じゃあ、次は二段目を編んでいこうか。さっきと同じように細編みを繰り返していくんだ。いいね?」
「はい!」
その後も編みぐるみ作りは順調に進んだ。
青岩さんがつきっきりでってのもあるけれど、ほんの一歩でも進めたらすかさず良く出来たね、と褒めてくれるから頑張れたんだと思う。
そして、もう一つの計画。青岩さんと友達として仲良くなるっていう計画も順調なハズだった。
なんかもう色々全部吹き飛んだ。必死に意識しないようとしていた俺の努力をあっさり上回る爆弾発言によって。
思わず大きな声を上げたどころか、離れようとしていた俺の手を白い手が縋るように力を込めてくる。
「違うんだ……僕達自身は互いを兄妹としか思っていない。そもそも僕達が生まれてすぐに親同士がお酒の席で決めた口約束で……それに彼女には恋人が居るんだ。だから」
「えっと……じゃあ義理の妹さんって感じ、なんですね」
いきなり情報量が多すぎる。
正直まだ処理が出来ていない。けれども俺は二人の関係を、最初に彼が言った妹という言葉で結論づけることにした。
だって、あんまりにも必死だったんだ。言葉を重ねる彼の表情が、声が、眼差しが、今にも泣き出してしまいそうで。だから。
「ああ、そうなんだ……僕達は出会った時からお互いに心から好きな相手を見つけようと約束していたんだが、よく誤解されてしまってね」
心の底から安堵したような笑みに俺もホッと息を吐いていた。
少しだけ手の力が緩んだ。けれども離されることはなく指を絡めて繋がれる。たったそれだけなのに少し跳ねてしまった自分の心臓が恨めしい。
不意に絡んだ視線、柔らかく微笑んでいた瞳にまた少しだけ寂しさが滲む。
「……今まではそれでも構わなかった。でも君には、君だけには分かって欲しくて……」
「大丈夫ですよ……伝わりましたから。青岩さんがその方のことをホントの家族みたいに大切に思ってるんだなって」
「……ありがとう」
空気は変わった。
ただし、ますます微妙な方向へ。嬉しそうに目尻を下げ、見つめてくる彼の視線が擽ったい。
またしてもどうしたもんか。このまま手に手を取り合い、くっついていたら間違いなくあらぬ勘違いをしてしまう。俺が。
今度こそは友愛路線を目指したいってのに、どうすれば……ああ、そうだ! いい方法があるじゃないか!
「あ、あの、良ければ教えてくれませんか? 編みぐるみの作り方。こういうの、やったことなくて」
編みぐるみ作りならば、今よりは自然な友達の距離感が保てるだろう。更には趣味を共有することで仲も深められるハズ。
まさに一石二鳥なナイスアイデアだな! と自画自賛していた俺にずずいと整った顔が迫ってくる。
「いいのかい?」
青岩さんなら快く引き受けてくれそうだな、とは思っていたけど……まさかここまで食いつきが良いとは。
その疑問はすぐさま解消されることになった。期待に輝く瞳を伏せ頬をほんのり染めた彼の言葉によって。
「本当は僕も誘うつもりだったんだ。一緒に作らないかって……ただ、遊びとしてはその……大人し過ぎるだろう? だから……僕が好きだというだけで押しつけるのは良くないだろうと……」
「……俺は、知りたいなって思いましたよ」
「え?」
はたとかち合った瞳がきょとんと丸くなる。コロコロ変わる目の表情に自然と頬が緩んでいた。
「青岩さん、さっき俺の好きを知ってくれようとしてましたよね? だから、俺も知りたいなって。青岩さんの好きなこと……知りたいし、やってみたいんです。一緒に」
「……天音君」
また、キラキラと輝いた。青空みたいに透き通った瞳が。
「だから教えて下さい。あ、後、今度一緒にアイスクリーム屋さん行きましょう。カラオケとゲーセンも」
「ああ、宜しく頼む……一緒に行こう。君の好きな場所へ」
柔らかく微笑んだ瞳と一緒に、今度は口元にも静かな笑みが浮かぶ。約束ですからね? と小指を差し出せば、約束だ、と絡めてくれた。
千里の道も一歩から。その言葉を体験しているみたいだ。
テーブルの上に広げられたのは今まで触れる機会のなかった編み物セットとカラフルな毛糸玉達。初めて手にした細いかぎ針と細い毛糸に、目を頭をぐるぐる回している俺を優しい瞳が見守っている。
「かぎ針を三本の糸の下にくぐらせて……うん、いいね。次にその糸を引っ掛けてゆっくり引き出すんだ……よし、いい調子だよ。そこから細編みを今作った輪に巻きつけて……」
懇切丁寧な指導の元、中指と薬指に巻きつけた毛糸に黙々と針の先を引っ掛けては編んでを繰り返す。米粒くらいのちっちゃな一目が徐々に連なっていき、そして。
「やったっ出来ましたよ! 一段目!」
「ああ、筋がいいね」
作ることになったのは基本だという丸い編みぐるみ。完成までは程遠く、十円玉サイズしか編めていないのだけれど、達成感が半端ない。
だってこんな細い糸が、こんなに小さな編み目が形になっていくんだから。これは確かに夢中になっちゃうな。
「じゃあ、次は二段目を編んでいこうか。さっきと同じように細編みを繰り返していくんだ。いいね?」
「はい!」
その後も編みぐるみ作りは順調に進んだ。
青岩さんがつきっきりでってのもあるけれど、ほんの一歩でも進めたらすかさず良く出来たね、と褒めてくれるから頑張れたんだと思う。
そして、もう一つの計画。青岩さんと友達として仲良くなるっていう計画も順調なハズだった。
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