1,033 / 1,263
1022 形
しおりを挟む
「レイマート様、蛇使いは?」
「ああ、さっきの揺れと爆風で、崖下に落ちたのは見た」
フィルの質問にレイマートは、視線を後ろ、自分が出て来た樹々の奥に向けながら答えた。
「あの男・・・見るからに体力型では無さそうだし、そのまま死んだって事も・・・」
エミリーが腕を組んで考えるように話すと、レイマートは首を横に振って答えた。
「いや、その可能性は低いな。あの男は偽国王やトレバーと同類で、闇の力を宿していた。崖から落ちた程度で死んだとは考えにくい」
「闇・・・そうでしたか、いえ、それは当たり前と思うべきですよね。闇の蛇の主人なんですから、当然闇を持っていますよね」
偽国王やトレバーと同類という言葉に、エミリーは一瞬驚いた反応を見せたが、すぐに頷いて言葉を並べながら自分を納得させた。
「レイマート様、ところで黒い蛇と黄色の蛇は倒されたのですか?」
エミリーとの会話の区切りがついたところで、ロゼが問いかけた。
黄色の蛇を追って行ったレイマートが、一人で戻って来たのだから、当然蛇は始末したのだろう。
だが状況は正確に確認しておかなければならない。
「黄色の蛇は始末した。だが黒い蛇は分からない。蛇使いと一緒に俺を追いかけてきたんだが、あの揺れと爆風で見失ってそれっきりだ。蛇使いと一緒に崖下に落ちたのかもしれないが、見た限りではいなかったな」
「そうでしたか・・・あれだけ大きな蛇ですから、近くにいたら気付くと思います。見えないという事は、どこかに隠れてこちらの様子をうかがっているのかもしれません。ここは敵地ですし気を付けましょう」
ロゼの言う通り、この山にいる限り決して油断はできない。
蛇使いの死体も確認していない以上、敵はまだ生きていると考え行動するべきだ。
「そうだな、ロゼの言う通り油断はできない。ヤツらは生きていると思って警戒するべきだな。ところで、この揺れと爆風の原因はなんだ?お前達が何かしたんじゃないのか?」
レイマートは自分の前に立つ三人を、順に見ながら問いかけた。
黄色い大蛇トランを追って行ったレイマートは、フィルが大蛇スターンを風魔法で空高く上げて、落下させたところは見ていない。
「ああ、それは・・・」
この事態を引き起こした張本人のフィルが、レイマートに事の経緯を説明すると、レイマートは呆れたように眉をしかめて苦笑いした。
「・・・おいおい、フィルよぉ、相変わらずムチャすんなぁ。あんだけでけぇのを空から落としたんなら、そりゃこうなっても不思議じゃねぇな。俺は山が崩壊したかと思ったんだぜ?びびらせんなよ」
「はは、まぁ結果的に蛇共を一層できたんだし、良かったじゃないですか」
後ろ手に頭を掻きながら、ごまかすように笑うフィルに、レイマートは溜息をついた。
「はぁ・・・まぁいいや。それで、その蛇は死んだのか?」
「あ、まだ確認はしてないです。俺らもさっき起きたばかりなんで」
フィルの返事を聞いて、レイマートはフィル達の背中越しに、大蛇の落下地点と思われる大穴に目を向けた。
10メートル級の大蛇スターンが落下した事で、完全に山の地形が変わっていた。
大きく抉れた地面から濛々と立ち昇る土煙は、未だ治まる気配を見せない。落下点を中心に放射状に伸びた地割れは、人一人が挟まる事ができるくらいの間隔幅があり、底の方は肉眼では見えないくらい暗くて深い。
「フィル、あの土煙を風で飛ばせるか?いるとしたらあそこだろ?」
蛇の生死を確認したいが、土煙のせいで見る事ができない。レイマートの要求にフィルはコクリと頷いた。
「そのくらいの魔力は残ってますよ・・・っと!」
空まで立ち昇る土煙に向かって右手を出すと、フィルが風の魔力を撃ちこむ。
風を叩きつけられた煙は一瞬だけ大きく歪むと、空気に混ぜられるように散り散りに散らされ、そして消えて行った。
煙が消えると、大蛇の落下地点が鮮明に見えるようになる。
「どうです?あ、あれじゃないですかって・・・あれ?」
土を被ってはいるが、巨大な胴体や尻尾は隠しきれない。
大蛇を見つけたフィルは指を差してレイマートに教えようとして、そして眉間にシワを寄せて目を細めた。
「・・・こいつは・・・どういう事だ?」
レイマートもフィルと同じく、大蛇を見て怪訝な声を出した。
レイマートとフィルの一歩後ろに立っていたエミリーとロゼも、大蛇を見て首を傾げている。
「え、なんで・・・だって、あの高さだったんだよ・・・」
「これが、闇の力なの?・・・あの高さから落ちて、あれだけの衝撃だったのに・・・・・」
エミリーとロゼは、今は自分達が目にしているものがとても信じられなかった。
何十メートルもの高さから落下した大蛇。その衝撃は山の一角を崩壊させ、地割れを起こし、爆風は樹々を薙ぎ倒す程の破壊力だった。
それなのに・・・・・
「形がそっくり残ってやがる・・・しかも無傷だ」
レイマート達四人の目に映っているものは、原型をそっくりそのまま残した茶褐色の大蛇だった。
「ああ、さっきの揺れと爆風で、崖下に落ちたのは見た」
フィルの質問にレイマートは、視線を後ろ、自分が出て来た樹々の奥に向けながら答えた。
「あの男・・・見るからに体力型では無さそうだし、そのまま死んだって事も・・・」
エミリーが腕を組んで考えるように話すと、レイマートは首を横に振って答えた。
「いや、その可能性は低いな。あの男は偽国王やトレバーと同類で、闇の力を宿していた。崖から落ちた程度で死んだとは考えにくい」
「闇・・・そうでしたか、いえ、それは当たり前と思うべきですよね。闇の蛇の主人なんですから、当然闇を持っていますよね」
偽国王やトレバーと同類という言葉に、エミリーは一瞬驚いた反応を見せたが、すぐに頷いて言葉を並べながら自分を納得させた。
「レイマート様、ところで黒い蛇と黄色の蛇は倒されたのですか?」
エミリーとの会話の区切りがついたところで、ロゼが問いかけた。
黄色の蛇を追って行ったレイマートが、一人で戻って来たのだから、当然蛇は始末したのだろう。
だが状況は正確に確認しておかなければならない。
「黄色の蛇は始末した。だが黒い蛇は分からない。蛇使いと一緒に俺を追いかけてきたんだが、あの揺れと爆風で見失ってそれっきりだ。蛇使いと一緒に崖下に落ちたのかもしれないが、見た限りではいなかったな」
「そうでしたか・・・あれだけ大きな蛇ですから、近くにいたら気付くと思います。見えないという事は、どこかに隠れてこちらの様子をうかがっているのかもしれません。ここは敵地ですし気を付けましょう」
ロゼの言う通り、この山にいる限り決して油断はできない。
蛇使いの死体も確認していない以上、敵はまだ生きていると考え行動するべきだ。
「そうだな、ロゼの言う通り油断はできない。ヤツらは生きていると思って警戒するべきだな。ところで、この揺れと爆風の原因はなんだ?お前達が何かしたんじゃないのか?」
レイマートは自分の前に立つ三人を、順に見ながら問いかけた。
黄色い大蛇トランを追って行ったレイマートは、フィルが大蛇スターンを風魔法で空高く上げて、落下させたところは見ていない。
「ああ、それは・・・」
この事態を引き起こした張本人のフィルが、レイマートに事の経緯を説明すると、レイマートは呆れたように眉をしかめて苦笑いした。
「・・・おいおい、フィルよぉ、相変わらずムチャすんなぁ。あんだけでけぇのを空から落としたんなら、そりゃこうなっても不思議じゃねぇな。俺は山が崩壊したかと思ったんだぜ?びびらせんなよ」
「はは、まぁ結果的に蛇共を一層できたんだし、良かったじゃないですか」
後ろ手に頭を掻きながら、ごまかすように笑うフィルに、レイマートは溜息をついた。
「はぁ・・・まぁいいや。それで、その蛇は死んだのか?」
「あ、まだ確認はしてないです。俺らもさっき起きたばかりなんで」
フィルの返事を聞いて、レイマートはフィル達の背中越しに、大蛇の落下地点と思われる大穴に目を向けた。
10メートル級の大蛇スターンが落下した事で、完全に山の地形が変わっていた。
大きく抉れた地面から濛々と立ち昇る土煙は、未だ治まる気配を見せない。落下点を中心に放射状に伸びた地割れは、人一人が挟まる事ができるくらいの間隔幅があり、底の方は肉眼では見えないくらい暗くて深い。
「フィル、あの土煙を風で飛ばせるか?いるとしたらあそこだろ?」
蛇の生死を確認したいが、土煙のせいで見る事ができない。レイマートの要求にフィルはコクリと頷いた。
「そのくらいの魔力は残ってますよ・・・っと!」
空まで立ち昇る土煙に向かって右手を出すと、フィルが風の魔力を撃ちこむ。
風を叩きつけられた煙は一瞬だけ大きく歪むと、空気に混ぜられるように散り散りに散らされ、そして消えて行った。
煙が消えると、大蛇の落下地点が鮮明に見えるようになる。
「どうです?あ、あれじゃないですかって・・・あれ?」
土を被ってはいるが、巨大な胴体や尻尾は隠しきれない。
大蛇を見つけたフィルは指を差してレイマートに教えようとして、そして眉間にシワを寄せて目を細めた。
「・・・こいつは・・・どういう事だ?」
レイマートもフィルと同じく、大蛇を見て怪訝な声を出した。
レイマートとフィルの一歩後ろに立っていたエミリーとロゼも、大蛇を見て首を傾げている。
「え、なんで・・・だって、あの高さだったんだよ・・・」
「これが、闇の力なの?・・・あの高さから落ちて、あれだけの衝撃だったのに・・・・・」
エミリーとロゼは、今は自分達が目にしているものがとても信じられなかった。
何十メートルもの高さから落下した大蛇。その衝撃は山の一角を崩壊させ、地割れを起こし、爆風は樹々を薙ぎ倒す程の破壊力だった。
それなのに・・・・・
「形がそっくり残ってやがる・・・しかも無傷だ」
レイマート達四人の目に映っているものは、原型をそっくりそのまま残した茶褐色の大蛇だった。
0
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる