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1021 土に埋もれて
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濛々と立ち込める土煙。
大蛇スターンの落下は、味方の蛇達にも大きな被害を与えていた。
爆風に巻き込まれた蛇達は、樹に叩きつけられ血反吐を吐いて死んでいた。
舞い上がった岩の下敷きや、根本からへし折れた樹に潰されて、ぺしゃんこになった蛇も数多い。
レイマート達を包囲するために集まった蛇達、その実に半数は行動不能となっていた。
息のある蛇達も無傷ではない。吹き飛ばされたダメージで弱っており、とてもフィル達に攻撃できる状態ではなかった。
「・・・うっ・・・ゲホッ!ブハッ!」
頭から被っていた土を払いのけ、フィルは上半身を起こした。
全身が土にまみれ、目にも鼻にも入っていたが、一番は口の中だった。
口の中どころか、喉の奥まで土が入り込んでいる。
呼吸をしようとした瞬間に、咳と同時に口の中の土が唾液と共に吐き出される。
「ブハッ!ゲホッ!ゲホッ!ペッ!ペッ!・・・う、うげぇッ・・・」
乱れた呼吸を落ち着かせようにも咳は治まらず、土の混じった吐しゃ物まで出た。
そこまでしてやっと落ち着いてくると、胸に手を当ててゆっくりと呼吸を繰り返す。
「はぁ・・・ふぅ・・・くそっ、情けねぇ・・・耐え切れなかった・・・」
樹々を薙ぎ倒す程の爆風、大地震と言っていい程の地揺れ、風の盾では耐えきれず、フィルとロゼとエミリーの三人は吹き飛ばされてしまった。
だが大きな怪我をせずに済んだという事は、少なからずの軽減はできたという事だろう。
「・・・ふぅ・・・ロゼ、エミリー、あいつらは・・・ん?」
やっと呼吸が落ち着いたところで、フィルはゆっくり立ち上がると、周囲を見回した。
2~3メートル程離れた場所で、薄っすら積もった土がもぞもぞと動き、人の手が飛び出した。
バタバタと動かして体に積もった土を払うと、赤茶色の髪の女が体を起こした。
「ロゼ!」
「ぺっ、ぺっ・・・はぁ、はぁ、ふぅ・・・口がじゃりじゃりする、気持ち悪いわ」
ロゼは頭と顔の土を両手で払いながら、口に入った土を何度も吐き出している。
フィルの後ろで頭を低くしていたからか、フィル程にはひどい状態ではないようだ。
「あ~、分かる。俺もまだ気持ち悪いわ。大丈夫か?」
フィルはロゼの隣に腰を下ろすと、落ち着かせるように背中を軽くさすった。
「ふぅ・・・・・ええ、だいぶ落ち着いてきたわ。ありがとう、フィル。あなたが風の盾を作ってくれなかったら、この程度じゃすまなかったでしょうね。本当に助かったわ」
ニコリとロゼが微笑んで見せると、フィルは照れを隠すように頬を掻いた。
「そ、そうか、まぁ大丈夫なら良かったよ。あとはエミリー・・・あ!」
キョロキョロと首を回すと、少し離れた場所で、全身の土を払うように頭をブンブン振って、腕をバタバタさせているエミリーを見つけた。
薄緑色の髪にはたっぷりと茶色の土が付き、青いローブもすっかり土で汚れてしまっている。
しきりに唾を吐いているところを見ると、エミリーもだいぶ口に入っていたようだ。
「あ~、エミリーもたっぷり食ったみたいだな」
「辛そうね、大丈夫かしら」
フィルとロゼは腰を上げると、エミリーの名前を呼びながら近づいた。
「ゲホッ!ゲホッ!・・・」
「おい、エミリー、大丈夫か?」
「フィル・・・ロゼも、うっ、ゲホッ・・・ふぅ・・・・・なんとか、ね。ひどい目にあったわ」
ようやく落ち着いたエミリーは、目元の涙を指先で拭うと、フィルとロゼに顔を向けた。
「フィルもロゼもすごい顔ね。土塗れよ」
「エミリー、それ鏡見てから言えよ」
「ふふ、エミリーだって日焼けしたの?ってくらい茶色いわ」
三人は顔を見合わせると、誰が先にというわけでもなく声を出して笑った。
戦場の真っただ中で、気が抜けていると思われるかもしれない。
だが三人とも怪我をせず無事だった事が嬉しくて、笑いが溢れ出した。
「ふぅ・・・あとはレイマート様だけど・・・」
「レイマート様なら大丈夫だと思うわよ。私達とは離れていたし、最後にあっちの奥へ走って行ったのを見たわ」
一息ついてフィルが話し出すと、ロゼが言葉を引き取り、自分達が戦っていた場所とは反対方向の、生い茂る樹々の奥を指した。
「ロゼ、よく見てるわね。まぁ、ここから離れてるんだし、レイマート様なら心配はいらないわね」
エミリーはロゼの指先を目で追って話す。
ゴールド騎士になった今でこそ、敬称に様を付けているが、少し前までレイマートは三人と同じシルバー騎士だった。共に様々な任務に赴き、気心も知れている。
そしてレイマートの実力は、三人ともよく知っている。
偽国王との戦いをえて、レイマートは騎士の頂点ゴールド騎士にまでなった。
その称号さえ得たレイマートが、いかに闇の力を持っているとはいえ、たかが蛇にやられるはずがない。
自然と三人は樹々の奥に目を向けていた。
すると彼らの期待に応えるかのように、遠くから枝葉を踏み鳴らす音が聞こえ、それはだんだんと近づいてきた。
そして・・・・・
「ん?おー、みんな無事だったかー」
挨拶でもするような軽さで右手を挙げて、レイマートが姿を見せた。
青く透明感のあった長い髪は土にまみれ、銀色の肩当てや胸当てにはヒビが入っているし、黒いロングシャツやロングパンツには破れもあるが、怪我らしい怪我は見られない。
ケロっとしたその表情が、大蛇との戦いを問題なく終わらせてきたと物語っていた。
「ほら、やっぱりピンピンしてらぁ」
「ふふ、そうね」
「レイマート様も土まみれ、これでみんなお揃いね」
三人は顔を見合わせると、一人ゆっくり歩いて来るレイマートの元に駆けた。
大蛇スターンの落下は、味方の蛇達にも大きな被害を与えていた。
爆風に巻き込まれた蛇達は、樹に叩きつけられ血反吐を吐いて死んでいた。
舞い上がった岩の下敷きや、根本からへし折れた樹に潰されて、ぺしゃんこになった蛇も数多い。
レイマート達を包囲するために集まった蛇達、その実に半数は行動不能となっていた。
息のある蛇達も無傷ではない。吹き飛ばされたダメージで弱っており、とてもフィル達に攻撃できる状態ではなかった。
「・・・うっ・・・ゲホッ!ブハッ!」
頭から被っていた土を払いのけ、フィルは上半身を起こした。
全身が土にまみれ、目にも鼻にも入っていたが、一番は口の中だった。
口の中どころか、喉の奥まで土が入り込んでいる。
呼吸をしようとした瞬間に、咳と同時に口の中の土が唾液と共に吐き出される。
「ブハッ!ゲホッ!ゲホッ!ペッ!ペッ!・・・う、うげぇッ・・・」
乱れた呼吸を落ち着かせようにも咳は治まらず、土の混じった吐しゃ物まで出た。
そこまでしてやっと落ち着いてくると、胸に手を当ててゆっくりと呼吸を繰り返す。
「はぁ・・・ふぅ・・・くそっ、情けねぇ・・・耐え切れなかった・・・」
樹々を薙ぎ倒す程の爆風、大地震と言っていい程の地揺れ、風の盾では耐えきれず、フィルとロゼとエミリーの三人は吹き飛ばされてしまった。
だが大きな怪我をせずに済んだという事は、少なからずの軽減はできたという事だろう。
「・・・ふぅ・・・ロゼ、エミリー、あいつらは・・・ん?」
やっと呼吸が落ち着いたところで、フィルはゆっくり立ち上がると、周囲を見回した。
2~3メートル程離れた場所で、薄っすら積もった土がもぞもぞと動き、人の手が飛び出した。
バタバタと動かして体に積もった土を払うと、赤茶色の髪の女が体を起こした。
「ロゼ!」
「ぺっ、ぺっ・・・はぁ、はぁ、ふぅ・・・口がじゃりじゃりする、気持ち悪いわ」
ロゼは頭と顔の土を両手で払いながら、口に入った土を何度も吐き出している。
フィルの後ろで頭を低くしていたからか、フィル程にはひどい状態ではないようだ。
「あ~、分かる。俺もまだ気持ち悪いわ。大丈夫か?」
フィルはロゼの隣に腰を下ろすと、落ち着かせるように背中を軽くさすった。
「ふぅ・・・・・ええ、だいぶ落ち着いてきたわ。ありがとう、フィル。あなたが風の盾を作ってくれなかったら、この程度じゃすまなかったでしょうね。本当に助かったわ」
ニコリとロゼが微笑んで見せると、フィルは照れを隠すように頬を掻いた。
「そ、そうか、まぁ大丈夫なら良かったよ。あとはエミリー・・・あ!」
キョロキョロと首を回すと、少し離れた場所で、全身の土を払うように頭をブンブン振って、腕をバタバタさせているエミリーを見つけた。
薄緑色の髪にはたっぷりと茶色の土が付き、青いローブもすっかり土で汚れてしまっている。
しきりに唾を吐いているところを見ると、エミリーもだいぶ口に入っていたようだ。
「あ~、エミリーもたっぷり食ったみたいだな」
「辛そうね、大丈夫かしら」
フィルとロゼは腰を上げると、エミリーの名前を呼びながら近づいた。
「ゲホッ!ゲホッ!・・・」
「おい、エミリー、大丈夫か?」
「フィル・・・ロゼも、うっ、ゲホッ・・・ふぅ・・・・・なんとか、ね。ひどい目にあったわ」
ようやく落ち着いたエミリーは、目元の涙を指先で拭うと、フィルとロゼに顔を向けた。
「フィルもロゼもすごい顔ね。土塗れよ」
「エミリー、それ鏡見てから言えよ」
「ふふ、エミリーだって日焼けしたの?ってくらい茶色いわ」
三人は顔を見合わせると、誰が先にというわけでもなく声を出して笑った。
戦場の真っただ中で、気が抜けていると思われるかもしれない。
だが三人とも怪我をせず無事だった事が嬉しくて、笑いが溢れ出した。
「ふぅ・・・あとはレイマート様だけど・・・」
「レイマート様なら大丈夫だと思うわよ。私達とは離れていたし、最後にあっちの奥へ走って行ったのを見たわ」
一息ついてフィルが話し出すと、ロゼが言葉を引き取り、自分達が戦っていた場所とは反対方向の、生い茂る樹々の奥を指した。
「ロゼ、よく見てるわね。まぁ、ここから離れてるんだし、レイマート様なら心配はいらないわね」
エミリーはロゼの指先を目で追って話す。
ゴールド騎士になった今でこそ、敬称に様を付けているが、少し前までレイマートは三人と同じシルバー騎士だった。共に様々な任務に赴き、気心も知れている。
そしてレイマートの実力は、三人ともよく知っている。
偽国王との戦いをえて、レイマートは騎士の頂点ゴールド騎士にまでなった。
その称号さえ得たレイマートが、いかに闇の力を持っているとはいえ、たかが蛇にやられるはずがない。
自然と三人は樹々の奥に目を向けていた。
すると彼らの期待に応えるかのように、遠くから枝葉を踏み鳴らす音が聞こえ、それはだんだんと近づいてきた。
そして・・・・・
「ん?おー、みんな無事だったかー」
挨拶でもするような軽さで右手を挙げて、レイマートが姿を見せた。
青く透明感のあった長い髪は土にまみれ、銀色の肩当てや胸当てにはヒビが入っているし、黒いロングシャツやロングパンツには破れもあるが、怪我らしい怪我は見られない。
ケロっとしたその表情が、大蛇との戦いを問題なく終わらせてきたと物語っていた。
「ほら、やっぱりピンピンしてらぁ」
「ふふ、そうね」
「レイマート様も土まみれ、これでみんなお揃いね」
三人は顔を見合わせると、一人ゆっくり歩いて来るレイマートの元に駆けた。
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