「結婚しよう」

まひる

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第二章

9.メルに触れていると【3】

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「あ、あの……」

 怖くなります。私が青ざめた事に気付いたのか、ヴォルがまた自らの胸に抱き寄せました。
 ……ええっ?!これはどういう事なんですか?私は混乱のあまり、頭が真っ白になってしまいました。

「落ち着け、メル。俺は……話が上手くない、から……。どう言えば良いか分からない」

「ふぇ……?」

 混乱している私には、ヴォルの苦しそうな言葉の意味が読み取れません。けれど、必死に何か伝えようとしているのは分かりました。

「だが……メルを、……っ」

 突然荒々しく髪をき上げました。濃紺の髪がサラサラと額にかかります。……色っぽいですね。普段おでこなんて見えないので尚更です。
 でも眉間を寄せ、辛そうな表情をしていました。普段無表情の彼にこんな顔があったなんて……。私は思わず、ヴォルの眉間のシワに人差し指で触れました。

「……何をしている」

「あ……、シワが……ですね?」

 不思議なものを見るような瞳を向けられてしまいましたよ。私、おかしな事をしてます?っていうか今更ですけど、物凄くシリアスな場面でしたよね?

「これだから……」

 困ったようなおかしいような、複雑な表情です。今日のヴォルは、いつになく表情が豊かですね。

「あの……?」

「いや……、メルに会えて良かった」

「はい?」

「人間嫌いな俺だから」

 んん?以前問い掛けに返事をしてもらった事がありますが、初めてはっきりと言葉にして聞きましたよ。
 そして女の人が苦手なんですよね。……人とあまり話さないっていうのは、女性だけではなく全般的にそう言うことなのですか?

「あの……私も人間なんですけど」

「あぁ、分かっている」

 何でしょう。こんなにも穏やかな表情を向けられると、良く分からなくてもこっちまで幸せな気持ちになりますね。っていうか、旅の途中のヴォルはそれで言うと別人ですか。

「とにかく、俺はメルを手放す気はない。セントラルに行く気になるまで待つ」

 えっ?!待っていて良いのですか?期限とか、言っていませんでした?心の中で一人突っ込みを入れる私です。
 ヴォルは言うだけ言って何だか満足したようで、再びベッドに腰掛けてしまいました。あ、何故か抱き留められたままの私もですけど。

「あの……、この体勢は……」

 に落ちないですね。と言うか、恥ずかしいです。何故私、ヴォルに膝だっこされているのでしょう。

「どうかしたか、メル」

 どうかも何も……普通におかしくないですか?
 先程の質問と言うか質疑応答が何処かにいってしまいました。

「何故だろう」

 はい?ヴォルが私の肩に額をつけます。私が膝の上にいるので、私の方がわずかに頭の位置が高い状態なのです。

「メルに触れていると……安心する」

「っ?!」

 何と言う爆弾発言なのでしょう。この人、で言っています?いくら恋愛経験ほぼゼロと言って良い私でも、この発言はどうかと思いますよ。だって、気のない相手に言う言葉ではないですよね?
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