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第二章
9.メルに触れていると【2】
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「……すまない」
ええっ、いきなり謝罪ですかっ?
話せないからごめんなさいって事なのですか?もしかしなくても今までヴォルに寄せてきた信頼は、私の一方通行なものだったのですね。
「悲しいです」
俯いた途端零れるように告げられた言葉に、僅かながらヴォルが息を呑んだのが分かりました。
本当に何かしらの理由があるのかもしれません。でも、針の筵に立つのは私なんです。『悲劇の主人公』なんて物語の中では良いですけど、実際に体験したい人なんていないですよね。
「メル」
ヴォルの声が頭の上から聞こえます。いつの間にか、物凄く近くに立っていたようですね。でもでも、納得出来ないじゃないですか。私は知らずに唇を噛み締めていました。
「俺は…………」
言葉を止めたヴォルの指が顎に触れます。俯いていた顔を持ち上げられました。……駄目ですよ、泣いてしまいそうなのが見られてしまうではないですか。
しかしながら私の微かな抵抗は、全く受け入れられませんでした。もう溢れないのが不思議な程、私の目には涙が溜まっていましたし。
「……すまない」
ヴォルと目が合いました。青緑の瞳が揺れた気がします。そしてギュッと抱き締められた途端、大粒の涙が溢れ落ちました。
私、何故こんなにも悲しいのでしょう。片眼鏡に酷い事を言われて傷付いたから?ヴォルが何も話してくれないから?信頼が一方向だと……気付いたから?
もう、自分でも何が何だか分からない状態でした。それでも涙は溢れます。
ヴォルもこんな私の対応に困ってしまいますよね。ごめんなさい。涙が止まらないのです。
「……すみません、でした……」
どれくらい泣いたのか、私の涙が落ち着いた頃にはかなり陽が高くなっていました。
うぅ……っ、瞼が腫れぼったいです。はっ!?私、みっともない顔をしてますよね。
「…………」
ヴォルは何も言わず、私の背中を軽くポンポンと叩いてくれていました。お、お子様ですか?……んん?何か忘れているような……。
「あっ!!」
勢い良く顔を上げた私は、思い出した事項に青くなりました。どうしましょう!船に乗るんでしたよね?!
「どうした、メル」
僅かに目を見開いたヴォルの驚いた顔。これはこれで珍しいですが、今は。
「あ、あの……っ。船、どうしましょうっ!?」
手続きを済ませてあると言っていました。いつ出港だか分かりませんが、明らかに時間が経ちすぎてますよね?
「問題ない」
「あ、あの……でもっ」
「落ち着け、メル」
いえいえ。ヴォルは何故か凄く落ち着いていますが、私は自分がやらかしてしまった感がとてもあるんですけどっ。
「俺はメルが必要だ。メルの気持ちが落ち着いていないのに、セントラルには連れていけない」
え……っ。それって、どういう意味ですか?私はヴォルの言葉の真意が分からず、首を傾げてしまいました。
あれ?連れていけない……って?
ええっ、いきなり謝罪ですかっ?
話せないからごめんなさいって事なのですか?もしかしなくても今までヴォルに寄せてきた信頼は、私の一方通行なものだったのですね。
「悲しいです」
俯いた途端零れるように告げられた言葉に、僅かながらヴォルが息を呑んだのが分かりました。
本当に何かしらの理由があるのかもしれません。でも、針の筵に立つのは私なんです。『悲劇の主人公』なんて物語の中では良いですけど、実際に体験したい人なんていないですよね。
「メル」
ヴォルの声が頭の上から聞こえます。いつの間にか、物凄く近くに立っていたようですね。でもでも、納得出来ないじゃないですか。私は知らずに唇を噛み締めていました。
「俺は…………」
言葉を止めたヴォルの指が顎に触れます。俯いていた顔を持ち上げられました。……駄目ですよ、泣いてしまいそうなのが見られてしまうではないですか。
しかしながら私の微かな抵抗は、全く受け入れられませんでした。もう溢れないのが不思議な程、私の目には涙が溜まっていましたし。
「……すまない」
ヴォルと目が合いました。青緑の瞳が揺れた気がします。そしてギュッと抱き締められた途端、大粒の涙が溢れ落ちました。
私、何故こんなにも悲しいのでしょう。片眼鏡に酷い事を言われて傷付いたから?ヴォルが何も話してくれないから?信頼が一方向だと……気付いたから?
もう、自分でも何が何だか分からない状態でした。それでも涙は溢れます。
ヴォルもこんな私の対応に困ってしまいますよね。ごめんなさい。涙が止まらないのです。
「……すみません、でした……」
どれくらい泣いたのか、私の涙が落ち着いた頃にはかなり陽が高くなっていました。
うぅ……っ、瞼が腫れぼったいです。はっ!?私、みっともない顔をしてますよね。
「…………」
ヴォルは何も言わず、私の背中を軽くポンポンと叩いてくれていました。お、お子様ですか?……んん?何か忘れているような……。
「あっ!!」
勢い良く顔を上げた私は、思い出した事項に青くなりました。どうしましょう!船に乗るんでしたよね?!
「どうした、メル」
僅かに目を見開いたヴォルの驚いた顔。これはこれで珍しいですが、今は。
「あ、あの……っ。船、どうしましょうっ!?」
手続きを済ませてあると言っていました。いつ出港だか分かりませんが、明らかに時間が経ちすぎてますよね?
「問題ない」
「あ、あの……でもっ」
「落ち着け、メル」
いえいえ。ヴォルは何故か凄く落ち着いていますが、私は自分がやらかしてしまった感がとてもあるんですけどっ。
「俺はメルが必要だ。メルの気持ちが落ち着いていないのに、セントラルには連れていけない」
え……っ。それって、どういう意味ですか?私はヴォルの言葉の真意が分からず、首を傾げてしまいました。
あれ?連れていけない……って?
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