「結婚しよう」

まひる

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第九章

7.共にありたい【2】

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「……そうか。メルの料理もうまかった」

 少しだけ視線をらしたヴォルです。
 雰囲気から少しの照れを感じました。ありがとうございますいただきました、珍しいヴォルの表情です。

「何ですか。いつ、メルシャ様の手作りを頂いたのです?」

 先程のヴォルの言葉に、すぐに反応をしたベンダーツさんでした。問い掛けるように私にも視線を送ってきます。
 そうでした。あの時はベンダーツさんはその場にいなかったのです。

「あの、誰もいなかったお城の食堂です」

「誰も?……そうですか。普段の城内で人気ひとけがなくなる訳はないのですから、催眠魔法事件の時ですね」

 私の言葉から足りない情報を推測されたようでした。
 さすがはベンダーツさんです。わずかな情報から、すぐにそこまで辿り着いてしまいました。

「そうだ。あれは俺とメルには効果がなかったからな」

「それはそうでしょう。無意識下でセントラル中を覆う結界を張れるヴォルティ様です。貴方様に不意をついてでも魔法を掛ける事など、通常の魔力所持者では不可能ですよ。同じくメルシャ様がおそばにいらっしゃるのであれば、束になって掛かっても通用しようがないではありませんか」

 お皿などを収納し終えたベンダーツさんは、当たり前のように答えます。
 そしていつの間にか荷物が全て纏まっていました。いつでも宿を立つ事が出来そうです。
 ところで今のベンダーツさんの話では、私が別行動をしていたら分からないと言う事のようでした。確かに、私には戦うすべがありません。

「メルは俺の精霊をつけている。離れた場所にいようと、精霊と腕輪が守る」

 ヴォルはベンダーツさんの言葉を直ぐ様否定しました。
 私が一人で行動する事はあまりないですが、その時は十分に注意しなくてはならないです。

「そうですね。ですがメルシャ様、くれぐれも浅慮せんりょな行動は慎んでくださいませ。サガルットの時の二の舞はゴメンですよ?」

 私が意気込みを新たにしていると、ベンダーツさんから静かに指摘されました。
 釘を刺されてしまいましたが、私の単独行動がゼロでない事も確かなのです。

「はい……、気を付けます」

 素直に頭を下げました。
 勿論あの時は、私も深く考えていなかったです。単にゼブルさんを捜せば良いと、短絡的に思ったのでした。しかしながら感情のままに、顔も知らない人を捜しに結界を一人で出てしまったのです。
 提案としてヴォルやベンダーツさんに相談すれば問題なかった筈ですが、独断で単独行動をした結果、ものの見事に騙されて拘束されるという失態を犯してしまったのでした。

「ヴォルティ様も魔法で移動出来るとはいえ、万能ではないのです。ご本人が確実な安全を選択して頂けるようでなければ、また同じ事が起こらないとも限りません」

 ベンダーツさんは何気なにげに根に持っているようです。
 考えなしですみませんでした。あれは私が全面的に悪かったので、この場は素直に頭を下げる事しか出来ないです。

「……メルばかり責めるな。お前もだろ」

 ヴォルのその言葉にベンダーツさんが止まりました。
 頭を下げていた私でしたが、疑問に思って少しだけ顔を上げてベンダーツさんをうかがいます。けれども見ただけでは、彼の表情に判断がつきませんでした。

「はい。心得ています」

「それならば良い」

 淡々と交わされる言葉です。
 相変わらず二人だけで分かり合っている感じでした。状況について行けていなくて、首をかしげているのは私だけのようです。
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