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第八章
9.有り得ない【4】
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「魔法石化現象の事を知っている他の連中はいないの?」
「魔力協会であれば何処の支所でも知っておる。その為の監視魔法石があるからな。我々ですら、ここから出られずとも他の二ヶ所で起きた現象を把握しているのだ。ただ、いつ何処に発生するか知れぬ現象でもある。恐怖を必要以上に与えないように、魔力協会以外に知っている者は王都でもごく僅かであり、民草は知らぬが仏とも言えるな」
ベンダーツさんの問いに、協会長さんは静かに答えました。
そして監視魔法石と言う物が、魔力の存在を把握出来るようです。話からするに、これがヴォルや他の魔力所持者を認識する物のようでした。
更に今の話は極秘事項であり、言葉尻から他言無用と伝わってきます。
「でも魔法石が出来たって事は、ヴォルの身の安全が暫くは保証されたって思って良いのかな?」
ベンダーツさんの言葉に、私もハッとヴォルを見上げました。
身の安全とは勿論、ヴォルが魔法石にされないで済むと言う事です。
犠牲者の方達には申し訳ないと思いますが、ベンダーツさんや私にとって大切なのはヴォルでした。
「ふむ、セントラルの魔法石とは質が違うがな。この町の生きとし生けるもの全ての魔法石をセントラルに持っていけば、確かに暫くは補えるだろう。だがそれすらも我々には決定権がないのだよ。魔法石にするかの判断は皇帝様にある」
「なら大丈夫じゃね?だって、親父じゃん」
「その親父さんの判断で、腕を無くしたのではないのか?違うかね、ツヴァイス殿。おや、怖い顔をされるな。私も魔力所持者だぞ?その左腕、見れば分かるのだよ」
協会長さんとベンダーツさんの話がヴォルに向けられます。
ですが、まさか左腕の事を知っているとは驚きました。魔力を持っている人は、見るだけでそれが義手だと分かるようです。
「俺が動く時間を得る為の担保です。あの時はもう、セントラルに魔法石がありませんでしたから」
表情を隠してしまったヴォルの、淡々とした返答でした。それはまるで、それ以上の追求を拒んでいるかのようです。
私は『あの時』を思い出してゾッとしました。もう二度とない事を強く願うばかりですが、その為に他の誰かが犠牲になれば良いと思う訳でもありません。
しかしながらそれが偽善だという事も分かってはいました。
「まぁ、他の町の魔法石も合わせて少しは何とかなりそうだがな。我々はこの現象を止める事すら出来ないが、魔法石が必要なのは何処の町や村でも同じ。魔物から身を守る結界を維持する道具として、これ等の人々の命は無駄にはされまい」
協会長さんが町を見回します。
教会の周りにも勿論、魔法石化した人がたくさんいました。表情は様々でしたが、セントラルの地下で見た苦痛を浮かべる魔法石は見当たりません。
人の力で強制的になされる魔法石化と違い、自然の脅威による現象は異なるのだと思われました。
「苦しまずに逝った事だけが、何よりの救いだろう。我々は何も出来ず、ただ事態が収まるまで教会の中で身を固くしていただけなのだ。魔力所持者と言えども所詮はただの人。自然の力には敵うまい」
「……大地が揺れて赤い光が吹き出したと言われましたが」
苦い表情を浮かべる協会長さんに、ヴォルが再び問い掛けます。
その瞳には先程の感情を圧し殺した様な苦みが感じられず、強い意思が伝わってきました。
そうです、これって本当に逃れられない事なのでしょうか。原因は自然の力だと、諦めてしまうだけで良いとは思えませんでした。
長い時間の中で繰り返されるとはいえ、本当に何処でいつ起こるかも分からないものなのでしょうか。
「魔力協会であれば何処の支所でも知っておる。その為の監視魔法石があるからな。我々ですら、ここから出られずとも他の二ヶ所で起きた現象を把握しているのだ。ただ、いつ何処に発生するか知れぬ現象でもある。恐怖を必要以上に与えないように、魔力協会以外に知っている者は王都でもごく僅かであり、民草は知らぬが仏とも言えるな」
ベンダーツさんの問いに、協会長さんは静かに答えました。
そして監視魔法石と言う物が、魔力の存在を把握出来るようです。話からするに、これがヴォルや他の魔力所持者を認識する物のようでした。
更に今の話は極秘事項であり、言葉尻から他言無用と伝わってきます。
「でも魔法石が出来たって事は、ヴォルの身の安全が暫くは保証されたって思って良いのかな?」
ベンダーツさんの言葉に、私もハッとヴォルを見上げました。
身の安全とは勿論、ヴォルが魔法石にされないで済むと言う事です。
犠牲者の方達には申し訳ないと思いますが、ベンダーツさんや私にとって大切なのはヴォルでした。
「ふむ、セントラルの魔法石とは質が違うがな。この町の生きとし生けるもの全ての魔法石をセントラルに持っていけば、確かに暫くは補えるだろう。だがそれすらも我々には決定権がないのだよ。魔法石にするかの判断は皇帝様にある」
「なら大丈夫じゃね?だって、親父じゃん」
「その親父さんの判断で、腕を無くしたのではないのか?違うかね、ツヴァイス殿。おや、怖い顔をされるな。私も魔力所持者だぞ?その左腕、見れば分かるのだよ」
協会長さんとベンダーツさんの話がヴォルに向けられます。
ですが、まさか左腕の事を知っているとは驚きました。魔力を持っている人は、見るだけでそれが義手だと分かるようです。
「俺が動く時間を得る為の担保です。あの時はもう、セントラルに魔法石がありませんでしたから」
表情を隠してしまったヴォルの、淡々とした返答でした。それはまるで、それ以上の追求を拒んでいるかのようです。
私は『あの時』を思い出してゾッとしました。もう二度とない事を強く願うばかりですが、その為に他の誰かが犠牲になれば良いと思う訳でもありません。
しかしながらそれが偽善だという事も分かってはいました。
「まぁ、他の町の魔法石も合わせて少しは何とかなりそうだがな。我々はこの現象を止める事すら出来ないが、魔法石が必要なのは何処の町や村でも同じ。魔物から身を守る結界を維持する道具として、これ等の人々の命は無駄にはされまい」
協会長さんが町を見回します。
教会の周りにも勿論、魔法石化した人がたくさんいました。表情は様々でしたが、セントラルの地下で見た苦痛を浮かべる魔法石は見当たりません。
人の力で強制的になされる魔法石化と違い、自然の脅威による現象は異なるのだと思われました。
「苦しまずに逝った事だけが、何よりの救いだろう。我々は何も出来ず、ただ事態が収まるまで教会の中で身を固くしていただけなのだ。魔力所持者と言えども所詮はただの人。自然の力には敵うまい」
「……大地が揺れて赤い光が吹き出したと言われましたが」
苦い表情を浮かべる協会長さんに、ヴォルが再び問い掛けます。
その瞳には先程の感情を圧し殺した様な苦みが感じられず、強い意思が伝わってきました。
そうです、これって本当に逃れられない事なのでしょうか。原因は自然の力だと、諦めてしまうだけで良いとは思えませんでした。
長い時間の中で繰り返されるとはいえ、本当に何処でいつ起こるかも分からないものなのでしょうか。
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