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第八章
9.有り得ない【3】
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「ところで、先程御主は有り得ないと言ったが。あれはあながち嘘ではないのだよ」
「それって……メルが坩堝だって話?」
協会長さんの言葉に、ベンダーツさんが僅かに驚きを見せています。
でもその話題って──あぁ、再びまさかの『私が魔物の親』説でした。もしそれが事実だとするならば、私はもうヴォルと一緒にいられないという事です。
「魔力所持者は自分の伴侶と……。まさか、ない訳ではないだろうな?」
ニヤッと言う笑みを浮かべる協会長さんでした。
怖々と話の流れを伺っている私でしたが、協会長さんの濁した言葉に予測がつきません。疑問符が頭上に湧き出る中、私は小首を傾げてしまいました。
「あぁ、アレも魔力なの。ソレが坩堝と化すって事?」
「そうなのだ。交わすものは魔力所持者の生命力そのものだからな。その伴侶と共にいて己の魔力が回復するのも道理。相手が魔力を持っていなくても、蓄える事は出来るのだからな」
何かに気付いたようなベンダーツさんと協会長さんのやり取りです。
通じ合っているような二人の会話に仲間外れ感満載の私は、とにかくヴォルに悪影響がなければ良いと必死に願っていました。
「それはメルに問題ないのですか」
何故かヴォルは心配そうに協会長さんに問い掛けています。
『アレ』とか『ソレ』とかで何故話が通じているのか不明な私は、残念ながらヴォルの感じている不安に思い至りませんでした。
とりあえず何かは分かりませんが、今のところ私は元気なので問題はないです。しかしながら口を挟む余地はなかったので、ヴォルに何のアピールも出来ませんでした。
「大丈夫さ。魔力所持者と非能力者も子をなす事が出来るし、妻子ともに何事もなく一生を迎えられる。ただ、そういった因果関係があるだけの事なのだよ」
「そうですか。安心しました」
そんな協会長さんの言葉に、急にヴォルから柔らかい瞳を向けられます。
僅かに細められた紺色の瞳は温かく、私は思わずドキッとしてしまいました。何でしょうか、とても嬉しいのですけど──何故だか居心地が悪いです。
「それにしても、俺達の知らない若い職員ばかり残ってるんだなぁ」
そう言いつつ、ベンダーツさんは未だこちらに警戒心を向けている魔力協会の人達を見回しました。
そうでした──確かヴォルとベンダーツさんの素性が知れているからと言う理由で、ケストニアに向かう足を馬車に変えたのです。つまりは見栄えの問題でした。
でも実際は素性を知っているどころか、ヴォルから感じられる魔力に戦く人ばかりです。例外で初めにフラフラと出てきた人だけは、何故だか私達に注意を払う事なく空を見て笑っていました。
「あれから5年以上経っているからの。知っているだろうが、元々魔力所持者は立場上寿命があまり長くないのだ。我々のようにセントラルから離れた場所に配属されれば尚更の事、魔物相手の戦闘は日常茶飯事だらかな」
協会長さんが遠くを見ています。
普通、町や村は教会の結界を守護する人達に守られているのでした。そして一度魔物に襲われれば、教会から魔物討伐に人が派遣されます。
勿論冒険者にも依頼はされますが、報酬があまり高くないのと急な依頼が多い為、受けてくれる冒険者はあまりないのが現状との事でした。
「一番長くいる彼でも、ここに来て3年だからね。君たちを知らぬのも仕方ないのだ、許してやってくれ。だが結果的にこの町が魔法石となってしまった今、我々は再び違う土地へ別々に配属される事になるだろうな」
しみじみと呟く協会長さんです。
あの怒りんぼな魔力協会の人は、ここに3年いるようでした。見る限りでは、他の人達のまとめ役なのだと思われます。
逆に突然の訪問で驚かせてしまったようでした。
「それって……メルが坩堝だって話?」
協会長さんの言葉に、ベンダーツさんが僅かに驚きを見せています。
でもその話題って──あぁ、再びまさかの『私が魔物の親』説でした。もしそれが事実だとするならば、私はもうヴォルと一緒にいられないという事です。
「魔力所持者は自分の伴侶と……。まさか、ない訳ではないだろうな?」
ニヤッと言う笑みを浮かべる協会長さんでした。
怖々と話の流れを伺っている私でしたが、協会長さんの濁した言葉に予測がつきません。疑問符が頭上に湧き出る中、私は小首を傾げてしまいました。
「あぁ、アレも魔力なの。ソレが坩堝と化すって事?」
「そうなのだ。交わすものは魔力所持者の生命力そのものだからな。その伴侶と共にいて己の魔力が回復するのも道理。相手が魔力を持っていなくても、蓄える事は出来るのだからな」
何かに気付いたようなベンダーツさんと協会長さんのやり取りです。
通じ合っているような二人の会話に仲間外れ感満載の私は、とにかくヴォルに悪影響がなければ良いと必死に願っていました。
「それはメルに問題ないのですか」
何故かヴォルは心配そうに協会長さんに問い掛けています。
『アレ』とか『ソレ』とかで何故話が通じているのか不明な私は、残念ながらヴォルの感じている不安に思い至りませんでした。
とりあえず何かは分かりませんが、今のところ私は元気なので問題はないです。しかしながら口を挟む余地はなかったので、ヴォルに何のアピールも出来ませんでした。
「大丈夫さ。魔力所持者と非能力者も子をなす事が出来るし、妻子ともに何事もなく一生を迎えられる。ただ、そういった因果関係があるだけの事なのだよ」
「そうですか。安心しました」
そんな協会長さんの言葉に、急にヴォルから柔らかい瞳を向けられます。
僅かに細められた紺色の瞳は温かく、私は思わずドキッとしてしまいました。何でしょうか、とても嬉しいのですけど──何故だか居心地が悪いです。
「それにしても、俺達の知らない若い職員ばかり残ってるんだなぁ」
そう言いつつ、ベンダーツさんは未だこちらに警戒心を向けている魔力協会の人達を見回しました。
そうでした──確かヴォルとベンダーツさんの素性が知れているからと言う理由で、ケストニアに向かう足を馬車に変えたのです。つまりは見栄えの問題でした。
でも実際は素性を知っているどころか、ヴォルから感じられる魔力に戦く人ばかりです。例外で初めにフラフラと出てきた人だけは、何故だか私達に注意を払う事なく空を見て笑っていました。
「あれから5年以上経っているからの。知っているだろうが、元々魔力所持者は立場上寿命があまり長くないのだ。我々のようにセントラルから離れた場所に配属されれば尚更の事、魔物相手の戦闘は日常茶飯事だらかな」
協会長さんが遠くを見ています。
普通、町や村は教会の結界を守護する人達に守られているのでした。そして一度魔物に襲われれば、教会から魔物討伐に人が派遣されます。
勿論冒険者にも依頼はされますが、報酬があまり高くないのと急な依頼が多い為、受けてくれる冒険者はあまりないのが現状との事でした。
「一番長くいる彼でも、ここに来て3年だからね。君たちを知らぬのも仕方ないのだ、許してやってくれ。だが結果的にこの町が魔法石となってしまった今、我々は再び違う土地へ別々に配属される事になるだろうな」
しみじみと呟く協会長さんです。
あの怒りんぼな魔力協会の人は、ここに3年いるようでした。見る限りでは、他の人達のまとめ役なのだと思われます。
逆に突然の訪問で驚かせてしまったようでした。
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