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第五章
7.俺の腕を拒否するのか【5】
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あ~──色々と体験はしたいですが、魔物の種類を知りたい訳ではありません。
私は今、少し前のゆったりとした生活を思い出していました。──えぇ、勿論現状からかけ離れているからこその現実逃避です。
どうしてこうも次から次へとひっきりなしに、多くの魔物の歓迎を受けなくてはならないのでしょうか。
「切りがないですね。ヴォルティ様、魔物を呼んでいませんか?」
うんざりしたような表情ながらも、ベンダーツさんの剣捌きには淀みがありません。
──はい、現在の状況を説明します。まずは私。えぇ、戦力外なので一人でヴォルの張った結界の中にお留守番でした。
そしてヴォルとベンダーツさんですが、お二人は揃って結界の外で魔物の討伐をしています。
「闇の剣があるからな」
そんな風にベンダーツさんの問いにしれっと答えるヴォルも、ガラスのような透明な剣と真っ黒な炭のような剣で応戦中でした。
しかしながらこの黒い剣は曲者で、迷惑な事に魔物を寄せ付ける力があるのだとか。
「止めていただけませんか。疲れます」
「この辺りは魔物の量が多い。一通り討伐すれば落ち着く。呼んでおいた方が早く片付くだろ」
二人は魔物と戦闘中でありながらも言い合いをしています。──何処からそんな余裕が生まれるのでしょうか。
「それは分かりますけどね。天の剣一本でも事足りるでしょう。何故わざわざ二刀流にする必要があるのですか」
「この方がバランスが良い」
そう言い切り、ヴォルは天の剣で魔物を打ち払いました。
透明な剣は魔物の魔力を奪い、光に変えます。これが『命の浄化』らしい事はヴォルから旅の最中に聞きました。
「私はその様な教えを説いた覚えがありません」
「あぁ。ちょうど二本、剣があったからな」
等々、魔物を相手にしながら世間話でもするかのような彼等です。──あ、二刀流はベンダーツさんの教えではなかったのですね。
ウマウマさん二頭も同じく結界内に避難していました。でもなんだか私は見物客状態なのに、二人を見ていてハラハラしないではいられません。
「も、もう少し真面目にですねっ。二人共戦闘に集中してくださいっ」
気が気でないので、思わず叫んでしまいました。
二人の動きはとても素晴らしく、まるでダンスを踊っているかのような剣捌きなんですけどもね。
「問題ない。この程度の小型の魔物はウォーミングアップ程度だ。俺のリハビリにもなる」
「そうですね。特に不自由をしている訳ではないようなので、私も安心して身体を動かせます」
──とまぁ、そんな事を言って相手にしてくれませんでしたよ。確かにヴォルの左腕が機能しているのは良いのですがね?
二人は声を張り上げる事もなく、息を切らしている様子もありません。男の人って、身体を動かす事が出来れば相手が何でも気にならないのでしょうか。
その後の私は、ただハラハラと二人を見守るしかありませんでした。しかも今戦闘中の魔物は小型とはいえども四足歩行タイプの獣型で、このタイプは群れで襲い掛かって来るのです。
一度攻撃を仕掛けたならば、群れのリーダーを討伐しない限り相手の撤退はないという執念深い魔物なのでした。
「やっと終わりですね」
「あぁ」
二人の動きが緩やかになったと思ったら、周りには動いている魔物の姿は見えなくなっていましたです。えぇ、動いているのは──ですね。
周囲には物凄い数の肉塊が転がっていまして、もうそれは何と言うか──。
「ベンダーツ、お前はもう少し綺麗に討伐出来ないのか」
「仕方がありません。私はヴォルティ様のような『命の浄化能力』がある武器を持っていませんので」
呆れたようなヴォルに対し、ベンダーツさんは軽く首を竦めるだけでした。
はい。ベンダーツさんの討伐した魔物はそのままでして、周囲を埋め尽くさんばかりに無惨な光景となって散っていたのです。──私、気持ち悪くなってきました。
私は今、少し前のゆったりとした生活を思い出していました。──えぇ、勿論現状からかけ離れているからこその現実逃避です。
どうしてこうも次から次へとひっきりなしに、多くの魔物の歓迎を受けなくてはならないのでしょうか。
「切りがないですね。ヴォルティ様、魔物を呼んでいませんか?」
うんざりしたような表情ながらも、ベンダーツさんの剣捌きには淀みがありません。
──はい、現在の状況を説明します。まずは私。えぇ、戦力外なので一人でヴォルの張った結界の中にお留守番でした。
そしてヴォルとベンダーツさんですが、お二人は揃って結界の外で魔物の討伐をしています。
「闇の剣があるからな」
そんな風にベンダーツさんの問いにしれっと答えるヴォルも、ガラスのような透明な剣と真っ黒な炭のような剣で応戦中でした。
しかしながらこの黒い剣は曲者で、迷惑な事に魔物を寄せ付ける力があるのだとか。
「止めていただけませんか。疲れます」
「この辺りは魔物の量が多い。一通り討伐すれば落ち着く。呼んでおいた方が早く片付くだろ」
二人は魔物と戦闘中でありながらも言い合いをしています。──何処からそんな余裕が生まれるのでしょうか。
「それは分かりますけどね。天の剣一本でも事足りるでしょう。何故わざわざ二刀流にする必要があるのですか」
「この方がバランスが良い」
そう言い切り、ヴォルは天の剣で魔物を打ち払いました。
透明な剣は魔物の魔力を奪い、光に変えます。これが『命の浄化』らしい事はヴォルから旅の最中に聞きました。
「私はその様な教えを説いた覚えがありません」
「あぁ。ちょうど二本、剣があったからな」
等々、魔物を相手にしながら世間話でもするかのような彼等です。──あ、二刀流はベンダーツさんの教えではなかったのですね。
ウマウマさん二頭も同じく結界内に避難していました。でもなんだか私は見物客状態なのに、二人を見ていてハラハラしないではいられません。
「も、もう少し真面目にですねっ。二人共戦闘に集中してくださいっ」
気が気でないので、思わず叫んでしまいました。
二人の動きはとても素晴らしく、まるでダンスを踊っているかのような剣捌きなんですけどもね。
「問題ない。この程度の小型の魔物はウォーミングアップ程度だ。俺のリハビリにもなる」
「そうですね。特に不自由をしている訳ではないようなので、私も安心して身体を動かせます」
──とまぁ、そんな事を言って相手にしてくれませんでしたよ。確かにヴォルの左腕が機能しているのは良いのですがね?
二人は声を張り上げる事もなく、息を切らしている様子もありません。男の人って、身体を動かす事が出来れば相手が何でも気にならないのでしょうか。
その後の私は、ただハラハラと二人を見守るしかありませんでした。しかも今戦闘中の魔物は小型とはいえども四足歩行タイプの獣型で、このタイプは群れで襲い掛かって来るのです。
一度攻撃を仕掛けたならば、群れのリーダーを討伐しない限り相手の撤退はないという執念深い魔物なのでした。
「やっと終わりですね」
「あぁ」
二人の動きが緩やかになったと思ったら、周りには動いている魔物の姿は見えなくなっていましたです。えぇ、動いているのは──ですね。
周囲には物凄い数の肉塊が転がっていまして、もうそれは何と言うか──。
「ベンダーツ、お前はもう少し綺麗に討伐出来ないのか」
「仕方がありません。私はヴォルティ様のような『命の浄化能力』がある武器を持っていませんので」
呆れたようなヴォルに対し、ベンダーツさんは軽く首を竦めるだけでした。
はい。ベンダーツさんの討伐した魔物はそのままでして、周囲を埋め尽くさんばかりに無惨な光景となって散っていたのです。──私、気持ち悪くなってきました。
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