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第四章
8.歩み寄って【5】
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あれから三日。
食事の時もヴォルに会う事はなく、部屋で寝ているかも怪しいくらいになってきました。
ただ着替えが置いてあるので、帰ってきている事は確かなようで。
「……大丈夫……なのでしょうか」
お昼御飯を食べ、私は自由時間になりました。ボンヤリと椅子に座っていると、どうしてもヴォルの事ばかり考えてしまいます。
不意にガルシアさんの言葉が甦りました。悩むより、即行動──ですね。
「行ってみましょう!今日も一日公務だってガルシアさんが教えてくれましたし。執務室に行ってみて、話せなくても姿を見るくらいは出来る筈ですっ」
私は一人で拳を握り、意気込みました。──って言うか、それくらい気合いを入れないと弱気な自分に負けそうになりますから。
私は勢い良く立ち上がり、ヴォルに会う為に部屋を出ました。
「あの……ヴォルの執務室って、何処でしょうか?」
廊下を進む途中で気が付きました。私、ヴォルの執務室を知りません。
そこで一度は気持ちが折れ掛けましたが、再度奮い立たせて通りすがりの衛兵さんに聞いてみます。
勿論知らない男の人に話し掛ける事は物凄く怖かったですし、色々な方々から意地悪されてきた事を思い出しもしましたが負けませんよ。
衛兵さんは親切にもヴォルの執務室の前まで送って下さいました。
優しいです。実は少しだけ疑ってしまってごめんなさい。
私は何度もお礼を言いましたよ、逆に恐縮されてしまいましたが。
では、改めて。
コンコン。
静かにノックします。──ドキドキしますね。
「入れ」
中からヴォルの声です。
ん?誰何の声もなく、入室を許可されました。執務室って、そんなものなのでしょうか。
多少の戸惑いもありましたがここまで来て帰る訳にもいかず、私は二呼吸程おいてから扉を開けます。
「……失礼します」
すぐ正面にヴォルがいました。
こちらを見る事なく、目を通している書類にサインをしているようです。というか、ヴォルのお仕事風景を初めて見ました。
「何だ」
顔を上げる事なく、再度ヴォルの声が静かに執務室に響きます。何も話さない私に対し、用件を問うような淡々とした声でしたが。
私の方は、ついヴォルに見とれてしまっていました。お忙しいのでしたら、お顔を見る事は出来たので退散した方が良さそうです。
「す……すみません、ヴォル。お忙しいのでしたら帰……」
慌てて頭を下げ、退室しようと僅かに震えた声を発しました。
ですが顔を上げた瞬間、こちらを真っ直ぐに見つめるヴォルと視線がぶつかります。
驚いたような表情で、彼の青緑色の瞳が向けられていました。──ど、どうしたのでしょうか。
静かにヴォルが歩み寄って来ますが、私の身体は石化したかのように動きません。
お、怒っています?お仕事を邪魔してしまったから、怒っています?ど、どうしましょう。な、何か言わないと──。
私はもうパニックでした。
即行動は良いですけど、多少の考えも必要ですよね。咄嗟にどうすれば良いかなんて、今の私は混乱するばかりで全く思い浮かばなかったのですから。
食事の時もヴォルに会う事はなく、部屋で寝ているかも怪しいくらいになってきました。
ただ着替えが置いてあるので、帰ってきている事は確かなようで。
「……大丈夫……なのでしょうか」
お昼御飯を食べ、私は自由時間になりました。ボンヤリと椅子に座っていると、どうしてもヴォルの事ばかり考えてしまいます。
不意にガルシアさんの言葉が甦りました。悩むより、即行動──ですね。
「行ってみましょう!今日も一日公務だってガルシアさんが教えてくれましたし。執務室に行ってみて、話せなくても姿を見るくらいは出来る筈ですっ」
私は一人で拳を握り、意気込みました。──って言うか、それくらい気合いを入れないと弱気な自分に負けそうになりますから。
私は勢い良く立ち上がり、ヴォルに会う為に部屋を出ました。
「あの……ヴォルの執務室って、何処でしょうか?」
廊下を進む途中で気が付きました。私、ヴォルの執務室を知りません。
そこで一度は気持ちが折れ掛けましたが、再度奮い立たせて通りすがりの衛兵さんに聞いてみます。
勿論知らない男の人に話し掛ける事は物凄く怖かったですし、色々な方々から意地悪されてきた事を思い出しもしましたが負けませんよ。
衛兵さんは親切にもヴォルの執務室の前まで送って下さいました。
優しいです。実は少しだけ疑ってしまってごめんなさい。
私は何度もお礼を言いましたよ、逆に恐縮されてしまいましたが。
では、改めて。
コンコン。
静かにノックします。──ドキドキしますね。
「入れ」
中からヴォルの声です。
ん?誰何の声もなく、入室を許可されました。執務室って、そんなものなのでしょうか。
多少の戸惑いもありましたがここまで来て帰る訳にもいかず、私は二呼吸程おいてから扉を開けます。
「……失礼します」
すぐ正面にヴォルがいました。
こちらを見る事なく、目を通している書類にサインをしているようです。というか、ヴォルのお仕事風景を初めて見ました。
「何だ」
顔を上げる事なく、再度ヴォルの声が静かに執務室に響きます。何も話さない私に対し、用件を問うような淡々とした声でしたが。
私の方は、ついヴォルに見とれてしまっていました。お忙しいのでしたら、お顔を見る事は出来たので退散した方が良さそうです。
「す……すみません、ヴォル。お忙しいのでしたら帰……」
慌てて頭を下げ、退室しようと僅かに震えた声を発しました。
ですが顔を上げた瞬間、こちらを真っ直ぐに見つめるヴォルと視線がぶつかります。
驚いたような表情で、彼の青緑色の瞳が向けられていました。──ど、どうしたのでしょうか。
静かにヴォルが歩み寄って来ますが、私の身体は石化したかのように動きません。
お、怒っています?お仕事を邪魔してしまったから、怒っています?ど、どうしましょう。な、何か言わないと──。
私はもうパニックでした。
即行動は良いですけど、多少の考えも必要ですよね。咄嗟にどうすれば良いかなんて、今の私は混乱するばかりで全く思い浮かばなかったのですから。
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