「結婚しよう」

まひる

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第四章

8.歩み寄って【4】

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「ありがとう、ございました」

 私は恐る恐るガルシアさんに深く頭を下げます。
 一人でモヤモヤしていても何も解決しなくて、更に深くはまり込んでいただけでしたから。

「いいえ、私はメルシャ様と少々お話をさせて頂いただけですから」

 そうやってにこやかに答えるだけのガルシアさんは、本当に素敵な女性です。
 私も彼女のようになりたいと思いました。

 とにかく、今日の夜にでもヴォルと話せたら良いのですけど──なんて、すぐには行動に移せない弱気な私です。

「では、今から語学の勉強をしましょうか。今の腫れたお顔ではヴォルティ様が心配なさりますし、本日はご公務の為にお忙しいですからね」

「はい……」

 何も言わずとも、ガルシアさんは察してくれているようでした。私の後ろ向きな考えも否定したりしません。
 そしてガルシアさんに言われて思い出しましたが、そう言えば朝にヴォルからその様な事を言われていました。
 行き先だけは毎回教えてくれるので、夜まで顔を見なくても不安にはならないのですよね──って。もしかしなくても私が不安にならないように、ヴォルが声を掛けてくれているとか?

 改めて思い出します。
 毎日必ず声を掛けてくれるヴォルの無い優しさに、ようやく気付いた鈍い私でした。
 本当に私は自分の事でいっぱいいっぱいで、全く周りが見えていなかったようです。

「どうかしましたか?」

「あ……、いえ。恥ずかしいです。私、自分の事ばかりでした」

「ほら、また自己嫌悪して落ち込んでしまう。悩むより行動ですよ、メルシャ様」

 ポンと背中を叩かれ、温かい笑みを向けられました。
 私は再び浮かんできた涙を拭いながら、ガルシアさんに大きく頷いて見せたのでした。



 しかしながら気持ちを新たにしたのは良いのですが、それ以降ヴォルに会わなくなりました。その日の夜も次の日の朝も、全くヴォルの姿を見なかったのです。
 寝る為に部屋に帰って来てはいるのでしょうけど、私が起きる頃には既にいません。

「メルシャ様。本日もヴォルティ様はご公務との事です」

「はい……。ありがとうございます、ガルシアさん」

 ガルシアさんに返答をしながらも、私は寂しい──と思っていました。
 同時にそれ程まで仕事をしては、身体を壊さないかとヴォルが心配にもなりました。

「あの……、ヴォルは食事や休憩をきちんととっているのでしょうか」

「……私には分かりかねます。ベンダーツが補佐をしている筈ですので、一度確認をして参りましょうか?」

「あ……、いえ。その……」

 お仕事の邪魔をしてしまっては申し訳ないと思い、言い淀みます。
 それに、ベンダーツさんがついているのであれば安心な気がします。

「大丈夫です。あの、私の今日の予定はどうなっていますか?」

 ヴォルの事はベンダーツさんに任せる事にしまして、私は私の出来る事をしようと思います。
 私は真っ直ぐガルシアさんに視線を向け、問い掛けました。
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