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くらしっくな車
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伊予柑が盛られている八百屋の皿が崩れる。
「あらあら」
お客さんや通りがかった人たちまで、伊予柑を拾ってくれるのだが、その中の一人を見ると…
「あなた…もしかして照(テル)さん?」
「あっ、そうですけども」
でも、この老婦人とは面識はない。
「いつもうちの子や孫、それに瑠梨(るり)ちゃんからもお話は聞いているんですよ」
そうこの人は組合長のお母さんである。
ついでに、Tさんは本名照という。
「どういう人かはわからなかったけども、あなたのような人なら安心ね、瑠梨ちゃんのことよろしくお願いしますね」
そんな事があった後に、姉からの連絡。
お母さんがどうしても行きたい!というイベントがあるので、それに合わせて旅行を計画中、その時に家族で食事をしたいから、予定あけておいてといってた。
姉の名前は晴(はる)という。
自分の姉は悪い人ではない、だがどうも悪のり、これはTさんの地元で見られがちな悪癖で、注意されれば止まるが、注意されるようなことを行ってしまうところがあり。
こういうところが嫌なので、Tさんは別の地域に就職することにしたのだ。
「ホテル高っ!」
思いに更けていると、そんな姉のメッセージがおくられてきた。
そういえばホテルが値上がりしているといってたな、自分も良いところはないか探しておこうかな。
「何をしているんだい?Tさん」
「あ~黒舌さん、うちの両親と姉がこっちに旅行を考えてるらしいんだけども、ホテルが高いっていってて」
「そういえばそんな話してたね」
「実際にかなり値上がりしてますね」
「どれどれ…」
黒舌さん、こたつサイズが顔を近づけてくる。
ドキドキ…
「あ~ここまで値上がりしているのか、ホテルってどういうのをお考えなの?」
「う~ん、せっかくの家族の旅行だし、快適でくつろいでもらえるのならば…」
「古くてもいい?」
「どのぐらいですかね?」
そういうと黒舌さんが資料を見せてくれるが。
「こういうの」
「これは古いというよりクラシックっていうんですよ、なんですか?これ」
「元々は偉い人の持ち物、それをこの地域で譲り受けて宿泊施設にしたんだけどもね、一回リフォームして、今は商店街関係の取引先が泊まったり、研修の時に使っているんだ。一般の人は予約受け付けてないんだよ」
「へぇ、なんて名前なんですか?」
「…会館」
「すいません、全部聞き取れませんでした」
「第一るりりん会館」
「そこに決めましょう」
「なんで即答しちゃうんだよ、まだご家族に聞いてないでしょ、お値段とか聞かずに決めちゃダメでしょ」
ここで黒舌さんこと「瑠璃鱗(るりりん)」は人の姿になった。
「縁起がいいし、可愛い名前だなって」
「もう!Tさんは組合のお仕事も手伝ってくれているし」
いわゆる黒舌さん関係の事務処理の手伝い。
「まずは聞いてみないかだけども、予定の日取りとか、ざっとわかってるの教えてくれる?」
「はーい」
そこで問い合わせしてみたところ。
「Tさんのご家族はokだって、その時期だと商談会とかもないから、ええっと空室の案内はこれね」
そういって予約のページを案内してくれた。
「ありがとうございます。でも僕からは提示するだけですし、両親と姉が気に入ってくれたらいいなとは思いますが」
「それはそうだよ」
「僕もいくらか出そうかと思っててます、黒舌さん家にほぼ住んでいるようなもんですからね」
前年の電気代も表記されているが、家に帰ってない人の料金になりつつある。
「宿泊費はこちらだよ」
バン!
「えっ?なんですか?どこの…何年前の料金ですか?」
「Now料金だよ」
しかも朝食付き。
「ここはご飯は美味しい、研修(ご飯つき)になると参加人数が増えるぐらい美味しい」
「そこまで…言わせますか…」
「くっくっくっ、しかもだ、リニューアル後に現在のオーナーになったのだが、くらしっくな車で良ければ送迎もしてくれるぞ」
この商店街までは直線距離としては立地は悪くはないが、公共の交通機関だと乗り換えが必要になる。
「オーナーは『くらしっくな車』とやらが大好きでね」
当時車が珍しかった時代、お客さんを送迎するために使われていた車があるのだが、こちらがまだ現役で維持されております。
「元々は組合長のお母さんのお父さんの車なんだってさ」
つまり組合長の祖父にあたる。
その車を手放す時に、ちゃんと面倒見ますからで次の所有者になったのが、ホテルオーナー。
その時はなんでそんな古い車を…と思っていたら、時代は過ぎ、実際に動く状態を維持して、送迎に使われるようになると、駅などで目立つ目立つ、送り迎えされるとなんだかいい気分になるという。
「…これはたぶん決まるのではないでしょうか」
「それならば嬉しいけどもさ」
「もしダメならば、一緒にご飯でもここに食べにいきませんか?」
「いいね」
姉に第一るりりん会館の資料を送ったところ。
「ここにします」
「むしろ私だけ1日早く泊まりにいきます」
平日だとさらに安く泊まれるから!
「というか、本当にこの価格でいいの?」
「瑠梨さんでいいのよね?あんた絶対に喧嘩するんじゃないわよ、もし自分が悪くなくてもとりあえず謝っておきなさいよ」
というメッセージが続けてやってきた。
これはかなり浮かれている。
ため息をついた。
やはりこの姉とは相容れない。
「どうしたのさ」
「姉さんは相変わらずだなって」
「そう…」
「だからあんまり実家や地元に帰りたくないんですよ」
「じゃあ、ずっとこっちにいればいいさ」
「そうしたいですね」
「Tさんは居たいと思う場所にいるといいんだよ、私はそれを願っているよ」
「黒舌さん…」
言葉もなくその後しばらく沈黙を共にした。
「あらあら」
お客さんや通りがかった人たちまで、伊予柑を拾ってくれるのだが、その中の一人を見ると…
「あなた…もしかして照(テル)さん?」
「あっ、そうですけども」
でも、この老婦人とは面識はない。
「いつもうちの子や孫、それに瑠梨(るり)ちゃんからもお話は聞いているんですよ」
そうこの人は組合長のお母さんである。
ついでに、Tさんは本名照という。
「どういう人かはわからなかったけども、あなたのような人なら安心ね、瑠梨ちゃんのことよろしくお願いしますね」
そんな事があった後に、姉からの連絡。
お母さんがどうしても行きたい!というイベントがあるので、それに合わせて旅行を計画中、その時に家族で食事をしたいから、予定あけておいてといってた。
姉の名前は晴(はる)という。
自分の姉は悪い人ではない、だがどうも悪のり、これはTさんの地元で見られがちな悪癖で、注意されれば止まるが、注意されるようなことを行ってしまうところがあり。
こういうところが嫌なので、Tさんは別の地域に就職することにしたのだ。
「ホテル高っ!」
思いに更けていると、そんな姉のメッセージがおくられてきた。
そういえばホテルが値上がりしているといってたな、自分も良いところはないか探しておこうかな。
「何をしているんだい?Tさん」
「あ~黒舌さん、うちの両親と姉がこっちに旅行を考えてるらしいんだけども、ホテルが高いっていってて」
「そういえばそんな話してたね」
「実際にかなり値上がりしてますね」
「どれどれ…」
黒舌さん、こたつサイズが顔を近づけてくる。
ドキドキ…
「あ~ここまで値上がりしているのか、ホテルってどういうのをお考えなの?」
「う~ん、せっかくの家族の旅行だし、快適でくつろいでもらえるのならば…」
「古くてもいい?」
「どのぐらいですかね?」
そういうと黒舌さんが資料を見せてくれるが。
「こういうの」
「これは古いというよりクラシックっていうんですよ、なんですか?これ」
「元々は偉い人の持ち物、それをこの地域で譲り受けて宿泊施設にしたんだけどもね、一回リフォームして、今は商店街関係の取引先が泊まったり、研修の時に使っているんだ。一般の人は予約受け付けてないんだよ」
「へぇ、なんて名前なんですか?」
「…会館」
「すいません、全部聞き取れませんでした」
「第一るりりん会館」
「そこに決めましょう」
「なんで即答しちゃうんだよ、まだご家族に聞いてないでしょ、お値段とか聞かずに決めちゃダメでしょ」
ここで黒舌さんこと「瑠璃鱗(るりりん)」は人の姿になった。
「縁起がいいし、可愛い名前だなって」
「もう!Tさんは組合のお仕事も手伝ってくれているし」
いわゆる黒舌さん関係の事務処理の手伝い。
「まずは聞いてみないかだけども、予定の日取りとか、ざっとわかってるの教えてくれる?」
「はーい」
そこで問い合わせしてみたところ。
「Tさんのご家族はokだって、その時期だと商談会とかもないから、ええっと空室の案内はこれね」
そういって予約のページを案内してくれた。
「ありがとうございます。でも僕からは提示するだけですし、両親と姉が気に入ってくれたらいいなとは思いますが」
「それはそうだよ」
「僕もいくらか出そうかと思っててます、黒舌さん家にほぼ住んでいるようなもんですからね」
前年の電気代も表記されているが、家に帰ってない人の料金になりつつある。
「宿泊費はこちらだよ」
バン!
「えっ?なんですか?どこの…何年前の料金ですか?」
「Now料金だよ」
しかも朝食付き。
「ここはご飯は美味しい、研修(ご飯つき)になると参加人数が増えるぐらい美味しい」
「そこまで…言わせますか…」
「くっくっくっ、しかもだ、リニューアル後に現在のオーナーになったのだが、くらしっくな車で良ければ送迎もしてくれるぞ」
この商店街までは直線距離としては立地は悪くはないが、公共の交通機関だと乗り換えが必要になる。
「オーナーは『くらしっくな車』とやらが大好きでね」
当時車が珍しかった時代、お客さんを送迎するために使われていた車があるのだが、こちらがまだ現役で維持されております。
「元々は組合長のお母さんのお父さんの車なんだってさ」
つまり組合長の祖父にあたる。
その車を手放す時に、ちゃんと面倒見ますからで次の所有者になったのが、ホテルオーナー。
その時はなんでそんな古い車を…と思っていたら、時代は過ぎ、実際に動く状態を維持して、送迎に使われるようになると、駅などで目立つ目立つ、送り迎えされるとなんだかいい気分になるという。
「…これはたぶん決まるのではないでしょうか」
「それならば嬉しいけどもさ」
「もしダメならば、一緒にご飯でもここに食べにいきませんか?」
「いいね」
姉に第一るりりん会館の資料を送ったところ。
「ここにします」
「むしろ私だけ1日早く泊まりにいきます」
平日だとさらに安く泊まれるから!
「というか、本当にこの価格でいいの?」
「瑠梨さんでいいのよね?あんた絶対に喧嘩するんじゃないわよ、もし自分が悪くなくてもとりあえず謝っておきなさいよ」
というメッセージが続けてやってきた。
これはかなり浮かれている。
ため息をついた。
やはりこの姉とは相容れない。
「どうしたのさ」
「姉さんは相変わらずだなって」
「そう…」
「だからあんまり実家や地元に帰りたくないんですよ」
「じゃあ、ずっとこっちにいればいいさ」
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「Tさんは居たいと思う場所にいるといいんだよ、私はそれを願っているよ」
「黒舌さん…」
言葉もなくその後しばらく沈黙を共にした。
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