浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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接触には最適な個体

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…人間関係も希薄、接触には最適な個体と思われる。

外の気温より、熱いと言えるような、快適な空間、それもそのはずだ。
ここには病気や怪我の人たちがいるのだから、そのぐらいの室温にしなければ体にこたえてしまう。
(あ~どうしようか)
そんな言葉を何度思い浮かべても、いい答えなんて出てきやしないのだ。
自分の親がアレである、それはわかっていたが、アレも極まっていたかというだけなのだが、それでも…家族というだけでこうして病院から呼び出されている。
喉も乾く、飲み物の一つも買いたいが、これから先の生活のことを考えると、どうしても躊躇ってしまう。
ここでは呼ばれるまで待ってくださいとのことなので、その時が来るまでおとなしくしているのだが、いつになるかは向こうの都合なのでわもういいやと、自販機から飲み物を買うことにする。
「あの~」
さっきはいなかった人だ、呼び出しにでも来たのだろうか。
「すいません、少し尋ねたいのですが」
「なんですか?」


『人は死ぬとどうなるのですか?』


「そんなことをあそこで聞いてくるのは、人間じゃないね、宇宙人だと思ったね」
「それは今も適切ではなかったと思っています」
男は当時の様子を思い出してか、反省の色を見せている。
「それでお体の方は大丈夫なんですか?」
「それはあなたの方が知ってるでしょう?」
「…そうですね」
「色々と調べたけども、やっぱり間に合わないみたいでさ」
「…」
「あなたは初めて会ったあの日から変わらないね」
「たまにしか、こちらに来ませんから、それとも経年劣化した方が良かったですかね?」
「そういうのは年を経る、重ねるっていうんだよ」
「日本語はとても難しい」
「そうか、宇宙人でも完璧じゃないのか」
「確かにこちらより進んではいますが、出来ない事はできませんよ」
そこにいきなりだ。
意識が飛ぶような、あぁこれはついに来たか、次はないと思いますの次がこれだ。
「宇宙人さん」
「病院の方はすぐに来ると思います、だから…」
「人は死ぬとどうなるのですか?」
「えっ?」
「あの時は答えられなかったのは知らなかったから、だから…」
病室に医師と看護師がかけつけるのだが、患者の側にいる男は、見えていないのだろうか?何も不思議に思われていない。


定期連絡の時間となりました。

本日地球、日本の時間20時6分に長年観察対象でした人間の死を看取り、いえ、確認しました。

他の個体に対象を変えて観察しますか、それとも帰還申請をしますか?

帰還申請でお願いします。

今までの観察対象は死を迎える際に、どのような言葉を口にしてましたか?

意識を失ったので、言葉は残すことはありませんでした。

そうですか、では帰還までそちらで待機してください。


あの時、彼は最後の言葉まで聞いていた。

「人は死ぬとどうなるのですか?」
これは初めて会ったときに彼が聞いてきた言葉だ、それを彼女は聞いてきた。
「えっ?」
なんでここで?と驚いた。
「あの時は答えられなかったのは知らなかったから、だから…」
彼女は最後にこういった。


「人が死んだらどうなるか、あの時は答えられなかったのは知らなかったから、だから確かめてくるわですか」
病院の屋上で、男はその言葉を呟いた。

この世界にはたくさんの人間がいる、でも彼女はもういない。

どうやら時間が来たようだ。
男はその姿を淡い光に変えて、そのまま消えしまった。
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