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言葉がない時間
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「お疲れ様でした」
「さすがに疲れるよ、仕事断るのって」
「正直、引き受けるのかと思ってましたよ」
「ないない、こっちは新婚よ、そんなの引き受けたら、大切な時間取られちゃうじゃん」
「それは…そうですが、先方も出来ればというか、引き受けてほしいって感じでしたし」
「本来やらなきゃいけない人間が、大丈夫、大丈夫っていって、実際は何も大丈夫ではなかったってことなんだよ」
「はい、それはわかってますが…」
「あれはね、引き受けた側に何もメリットがない、出せるのにね、そこがわかってない、こういうときにお金使うものだよ」
「なるほど、そういう相手ですか」
「まあ、それでも向こうの手だよ。こっちがダメならばうちもダメになるだろうって、そこはね、必死に回避しましょうってことで、それは考えるけどもさ」
「名案は?」
「しばらくは考えさせて、最終的にはこっちの準備したものを切り崩すが、さすがにそれは奥の手だよ」
「なかなか、難しいことになってるんですね」
「そうそう、まあ、そういうのを何とかするために俺がいるって事さ」
ここで俺という言葉を使ったのに少々驚いた。
(奥様やご家族の前では『俺』
と言われるのに)
今回はそんなに厄介なのか、余裕がないのかもしれないなと思った。
「寒い日でもね、人生、薔薇を眺めることもできるわけだよ」
「それはどういう…」
「旦那様、ちょっとお話が」
「あっ、奥様」
「話は終わったかな?」
「終わりましたので、後はごゆっくり、何かありましたら、お呼びいたします」
「ごめんね、よろしくね」
「ふっふっふっ」
「何ですか、その意味深な」
「いや~そうね、ちょっと思い出したよね」
奥様はベットの上で、あ~だりぃと転がっていたら、衣服がめくれておりまして…
「これからはセクシー路線で行くのかと思いましたよ」
可愛いおヘソと太ももが見えておりました。
「まさかこの目で、実際に見ることが出来るとは思いませんでした」
「忘れてください」
「なんでさ」
「忘れてほしいです」
「心に刻み付けて永久保存決定です」
「…」
「ごめんなさい、とても興奮しました」
「…」
「すいません」
「私の方こそ、こういうときなんて言えば、ただまあ、旦那様に見てほしくてとかではありませんから」
「じゃあなんで!」
「つけ方覚えるためにつけてました」
ガーターベルトのことです。
「誰のためによ!」
「ドレスコードがあるといったじゃないですか、その時のフットウェアがああいう止め方をしているんですよ」
慣れておきなさいと言われたので、練習のためにつけていた。
「そっか、それは…理想としては何もおきないことだけども、そこら辺は慣れておかないとね、慣れてないってことで、苦労しているところを見せるとね」
「あ~やっぱりそこはあるんですか」
「ある、なんだそんなことも知らないのかっていう奴だよ」
「なるほど」
「しかし、そういう話を聞いて、すぐに練習する行動力には少々驚くね、なかなか出来ないよ。さすがはうちのお嫁さん」
「あなたの足手まといにはなりたくないですよ」
「そういってくれるのは嬉しいけども、それでも…辛いとか、大変なのはちょっと嫌だな」
「何をいってるんですか、そこは政略結婚割りきってくださいよ」
「本当にそういうことを言われると、頭が上がらなく、いや、もう上がりません、踏んづけたりする?優しくね!」
「なんか今日も疲れてますね」
「まあね、さっきまで仕事を押し付けられそうになってたもんだからね、嫌になるよ」
「断れましたか?」
「もちろん、あれは…そろそろ天罰が下るべきだ」
「相当ですね」
「相当だね、この忙しいところ、まあ、予定通りに仕事は進んではいますが、この領地、その中の、手をつけていないところをそろそろとね、教育とか、時間がかかるところに手をかけれるかなって時に、恩知らずの現実逃避のツケを払う気はないな」
「それでも無傷ではいられません、どこまで悪くなると思います?」
「結構は悪くはないかな、うちの領地への影響は限定的だと思うけどもさ…」
「後でわかってることみんな教えてください、その上で実際に調べていきますから」
「うん、お願い、こういう時、君の目は役に立つ」
「取りこぼしがなければいいのですが」
「あるよ、たぶんある、君の目からは逃れられないと思う」
「それは言い過ぎ」
「全然言い過ぎじゃないさ、実際に僕は、気づかないことに気づかされている、そういう意味では君が妻で良かったよ、査察だったら、危ないんじゃないの?」
「査察の目は鋭いですよ」
「そうかもしれないが、そんな鋭い目で見られたくはないさ」
「それでどの辺が危ないと思ってます?」
「全体的にってやつ、でも引き受けなければ情報は公開されないから、今は推測だけ、でも推測だけで危ないんじゃないのかな、そんなきはするんだよね」
「ああ、なるほど、いつものやつですね」
「そうそう、いつもの厄介ごとさ」
「あなた一人ならばどう解決しますか?」
「ん?俺?いつものように頑張って」
「なるほど」
「あれ?呆れた?」
「少しね」
「君に俺は何回呆れられるんだろうか?」
「何回も、ずっと、でもまあ、悪くはないでしょうよ、時間はまだありますし、それを考えたらね」
「その言い方もおっかないね」
「私としては先程の薔薇の話をした方が、自分でも知らないぐらいの、腹の底から低い声が出ましたが」
「ごめんなさい」
「旦那様も男性ですからね、美脚と美術に弱いはずなのに、あんなぷにぷにのお腹見てもしょうがないでしょうよ」
「本気でいってる?」
「いってますよ、多少は腰回りのお肉は落ちたつもりでもね、もう少し、細くならないかなって」
「数値はすぐに落ちる、体重は一年かな、でも体型は何年かかるものというよ」
「どこ情報ですか?」
「健康診断の計測してくれたお姉さんが言ってたよ」
たるみ肌はなかなか変わらないんですよね。
「くっ、なんたることだ」
「だからそのまま歩いたり、運動していれば引き締まってくると思うから、そんなに気にすることは…」
「まあ、そこは女心なのかもしれません」
「それを出されたら、男は何も言えなくなるね」
「もう少し私も容姿が整っていればいいんですが…」
「そんなこと思ってるの!」
「思いますよ。私には聞こえてないだけで、陰口は叩いているんじゃありませんかね、実家の時でもそうでしたから」
「実家の時はなんて言われてたの?」
「貧相とかそんなんかな」
「うわ…」
「ただね、その人もね、知らないですからね。そこでなんで地味な格好しているかっていうとね、綺麗な格好してるとね、カモにされるからなんですよ」
「それもまた」
「その怖さを知らないのは、どこからお越しになられたのか、まあ、お嫁に来られたので、詳しくないのはしょうがありませんが、誰にも教えてもらえなかったんですね。私も教える気は在りませんが…になってましたから、いいんですが」
「僕としては君の身が守られていいのか、誤解されるというか、酷い事を言われていることに悲しみたいし、対処したいというか、色んな感情がごちゃ混ぜになるんだけども」
「善も悪もそこにはないんじゃないんですか、それで割りきれないというか、でもね、ああいう人たちってね、悪にもなれないんですよ。ただ自分が優位だと思ってる、それは砂の上であって、風が吹けば飛ぶような儚さなんですよ。本当に何もない、なのに我々は…」
「はい、ストップ、お止まりあそばせ」
「ダメですね、私も、修行が足りない、こんな話がじわじわと出てきてしまう」
「それはしょうがない、僕と君はここで生きているのだから」
「私はしょうがないけども、旦那様は別の道もあったんじゃありませんか?」
「そうだね、何故か選んだね、もうズブズブだなら、抜けれないよ。違う道?何だそれ、俺にそれはないんだよ」
「背水の陣にもほどがあるな、そこは広い視野を持ちましょう、オープンユアアイズ」
「俺の目は君しか見てないから」
「そういうのはいいから」
「ダーメ、それがあるから俺は頑張れるし、格好いいところとか見せたいの」
「そうかもしれないけども、疲れているとかは嫌だな、無理しないでほしい」
「いいね、俺のやる気が充電されていく、何て言うの、ここでやりとげたい、やりとげて見せたい、うぉぉぉぉ俺はやってやるよ!みたいな」
三段活用。
「元気には限りがあるものです、もっと上手く立ち回りましょうよ」
「例えば?」
「基本の徹底、状況の把握、解決のための算盤を弾く、そこからいかに被害を抑えるかですかね。ここで格好いいところ見せようとしないでください、寒いことになる」
「気温は?」
「北緯43度ぐらいですかね」
「そりゃあ寒いね」
現在-3度だそうです。
「君と話していると、さっきまで悩んでいたことが馬鹿馬鹿しくなれる」
「それは…気のせいじゃないですかね」
「気のせいかな?壁があるとしよう、その壁がどっかいってしまった、振り替えったら、あれが壁だったみたいな気持ちになれるのさ」
「考え方が似てる人ばかりと話すと、同じ箇所でぶつかることはありますから、それを考えると、やっぱりこういうのは大事なんじゃないですかね」
「そうだね、本当にそう思うし、君はやはり俺の大事な人なんだよ」
「大事ですか」
「大事だよ、ずっとずっと傍にいてほしい、俺を一人にさせないでほしい」
「寂しがり屋ですもんね」
「そうだよ」
「それなのになんで晩婚に」
「そこは…」
「そんなに寂しいならば、さっさと紹介して結婚するとかで良かったんじゃないですかね」
「考えてないわけじゃぁ、こざいませんよ。でもね…」
「ワケありそうですね」
「そうよ」
「旦那様はその…美女とかお好きですから、若いうちは…」
「夢見てました」
「でしょうね。なんかそんな気がしてたからな…」
だからこそ、なんで私と、でもそこは政略結婚だし、さすがにその手前、失礼はないだろう。それならば…ぐらいの感覚でした。
「でも俺は誰でもいいというわけではないからね」
「そこも私としては複雑ですがね、一応ははい」
「誤解されまくってる」
「どう考えても、私が好みではないのがわかりますからね」
「逆にそういうのがわかる男と知り合いなのがズルい!…けどもさ、それはそれでその男たちは、なんで君にアプローチをしなかったんだろうね」
「ワケありだからじゃないですか」
「それはな…確かに世の中には自分から問題を起こすのはいるよ、でも君の場合はそうじゃないし、そのために、ずっと一人で生きようとしてたんだよね」
「親代わりの方々の中には、そういう生き方はやめた方がいいとは言われましたがね」
なんで年頃の娘さんがいるのに、母親の方がまだ行けるとか思ってるの?
「でもね、そこから逃げても、逃げられないでしょ?その時は親代わりの方々もただ話だけでしたからね」
「そうでなければ…」
「あんなのと一緒にいたいはずがない。そういう意味では人生を無駄に…いえ、それで旦那様と会えましたし、旦那様の傍にいて、まだ日が浅いですけど、十分に無駄にした分は楽しいですからね。満足してますよ」
「君はそうかもしれないが、俺はこれじゃあ終われない」
「そこは妥協しましょうよ」
「しても意味はなくない?」
「ないですが」
「でしょ?俺もね、すんごいそう思うの、たぶんその妥協は、気のせいだっていうのかな、過信というか、間違った謙遜というか。とりあえず正確ではない」
「うちの家族と手を切って、今までの分を返してくださいっていったら、もう私は働かなくてもいいんじゃないかとは思う、ただ支払い能力がない人たちだから」
「本当になんで自由にさせているのって感じじゃん、犠牲にされそうになっている、いや、されている。これもあってないな」
「支払いを回す相手がいる」
「そう、それ、その担当にするのは何かおかしいんだけども」
「そこが普通になってるから、勝手に相手に請求先にするんだもん」
「あ~それはダメだ、許されないよね」
「それで止まらないんですよね」
「困ったね、ろくでもない」
「ごめんなさい、それが私の…」
「君は逆にしっかりしているじゃないか」
「私はよくわからない」
「なんで?」
「すいません」
「君は悪くない」
「そうですか?」
「何が悪いの?」
「わかりません」
「誰も止める人がいなかったのならば、万人の罪では?」
「それは…ないですよ」
「見て見ぬふりは罪ではないと?」
「それは…そうですけども」
「ならば俺の罪でもある」
「旦那様、その理屈だと、騙されますよ」
「誰が騙すの?」
「それならば私も助けてって」
「へぇ~それってどんな奴かな?美人?」
「美人ではないですね」
「じゃあダメ」
「旦那様ったら」
「俺に話を持ってくるなら、美酒美食、美声美女、美脚に美術を揃えてきてね」
「この世にそれが揃うなんてことがあるんですか?」
「えっ?そうなの?じゃあ、俺は君がいいな」
「旦那様、話がずれてますよ」
「ずれてないよ、俺はそういう好みがあるわけよ、媚びるならば、そのぐらいしてくれないとダメでしょ」
「それは…そうかもしれないませんが」
「君はそんなことをしなくていいからね」
「なんでですか?」
「なんでって、僕は毎日の努力を大事にするタイプだよ、そういうことを欠かさない人間には報いるつもりだ」
「それは当たり前では?」
「それがね、そうではないものだよ、今日明日何か結果がでなければ、いつ出るのかわからない結果のためには、頑張れないものだ。その点、君は未来を見ている、そしてそのための準備、たぶん今がそんなに好きだからこそ、そんな事ができるんだろうね」
「確かにずっと現在が嫌いでしたね」
「そうか…」
「そりゃあね、あんな家族がいたら、今日は何も起きなかった、でも明日はどうなるのだろうか、誰かに叫ばれて起きることになるのではないか、実際にろくでもない時は、起きる時間も自分では決めれなかったから」
「それは本当にとんでもない人生だったね」
「今はそうじゃない」
「そうか」
「でもそのうち終わるでしょうからね、良いときに終わらせたい」
「そのいいときって、どっち?」
「旦那様は傷つけたくはない」
「君との別れは、俺は泣くと思う、泣くだけじゃないかな、あ~考えただけでもダメだ、別れたくない、こんな筋書き考えたバカヤローは誰だ?文句があるから出てこいよ」
そんなことを言われましても…
「俺は幸せになりたいんだ。一緒に幸せになりたい人が出来たんだからさ、それを叶えさせてくれよ。夢とかは嫌、でも夢の中の君も可愛いんだよ」
「えっ?」
「俺は君の隣で君の夢を見れている、お得!」
「えっ?」
「あれ、知らなかった?」
「知りませんよ、何ですか?それは…」
「俺もそこはよくわからないけども、夢の中でも君に会えるし、夢の中の君は…その…」
「なんです?あなたの理想の、聞き分けがいい女にでもなってましたか?」
「たまに見せてくれる、心を許した君なんだよ」
「そんな私は存在しませんよ」
「えっ?そう?最初は気の強そうな君も
二人でいると…」
「気のせいですよ」
「俺は君の弱音を聞くのが好きだからな、誰も聞いてこなかったんだなって思えば、思うほどに、独占している気分になれる。油断している君は、いつもの君より隙だらけでね、そこが本当に愛しくなるし、気分が高ぶってくると君の方から…」
「なんでこういうときだか実況上手になるんですか」
「愛は俺を詩人にさせるようだよ」
「そんなん知らねえよ」
「まあ、言葉使いがエレガントではないですわよ」
「私もそう思いますわ、でも感情的にはそれが一番正しいと思いますの」
「くっ!」
「あなたには恩がある、ネタにするなら、からかう材料にするのならば…」
「そういうつもりはないよ、本当に俺もバカだな、指摘されてから、バカなことしているって気づくんだから」
「そこまでご自分を責めないでくださいよ、こういうのを理解すれば、間違いは起こさない人だと言うことは知ってますから」
「君を犠牲にするつもりはない、何さ、次の結婚に向けてのトレーニングでもしているわけ?冗談じゃない、そんなことしてたまるかよ」
「旦那様って不器用ですね」
「そうかな…」
「そうですよ、もう少し上手くやればよろしいのに」
「そういうのは苦手…なんだよ」
「拗ねたところは可愛いですね」
「可愛いって、年上の男に使うものじゃないだろう」
「あら?いけませんか?」
「そこはさ、こう…そんな年なのに子供って言われたくないんだけどもさ」
「そういう振る舞いをしているのが悪いですが、旦那様の場合は、ストレスがあると、そうなりがちだからな」
「やっぱり俺は向いてないのかな」
「旦那様のような人は必要ですよ」
「でも向いてないんだよ」
「どうして?」
「感情に振り回される。今だってそうだ、不快な気分を自分の力だけで消化できてないのだから」
「なんでも自分の力だけで解決できる人なんていないでしょうよ」
「それはそうかもしれないよ、でもさ」
「無理はしない」
「はい」
「無茶もしないで、見てると心配になるから」
「…はい」
「何が問題かわかりますか?」
「今の構造、あの構造のままならば、実力不足の人間にも仕事が割り振られる」
「ではどうしましょうか」
「そのシステムを作り直すとか、何か起きたときの政策を用意する」
「その辺が無難かな」
「でも意識を変えないとやっぱりダメだろうね」
「その辺はね、悪いことだってわかったなきゃ無理でしょうね」
「やっぱりか」
「ただこのままこなしていくのもメリットはある」
「うちが引き受けることで、余裕をもってノウハウを蓄積できるか」
「何しろ最初っから解決しないとわかっているのだから、時間もゆっくり、解決しないよりはマシですからね」
「なるほど、見えてないものが見えてきたか…その選択肢はないなって思っていても、洗い出していくと悪くない、この一点だけ注目するのならばそれもありなのね」
「だから最悪なのは最悪じゃないんですよ」
「こういうところが君はすごい、僕はそこまでわからない、わからないものにも価値があるのを教えてくれるから、見過ごされていたものを愛せるようになるんだろうな」
「そこは旦那様だからですよ、あなたはそこを拾い上げて、それも素敵だと誉めてくれるのだから」
「俺の愛は限られているよ」
「人間、そんなもんじゃないですか」
「それでも愛してる」
「それならばその愛をいくらかもらいますよ」
「全部でもいいのに」
「それは重すぎますから」
おおっと、あんなに近距離にいるのに目を合わせ始めたぞ、しかも笑みまで浮かべてやがる。
今日も長い長い話の後で、言葉がない時間が始まるのである。
「さすがに疲れるよ、仕事断るのって」
「正直、引き受けるのかと思ってましたよ」
「ないない、こっちは新婚よ、そんなの引き受けたら、大切な時間取られちゃうじゃん」
「それは…そうですが、先方も出来ればというか、引き受けてほしいって感じでしたし」
「本来やらなきゃいけない人間が、大丈夫、大丈夫っていって、実際は何も大丈夫ではなかったってことなんだよ」
「はい、それはわかってますが…」
「あれはね、引き受けた側に何もメリットがない、出せるのにね、そこがわかってない、こういうときにお金使うものだよ」
「なるほど、そういう相手ですか」
「まあ、それでも向こうの手だよ。こっちがダメならばうちもダメになるだろうって、そこはね、必死に回避しましょうってことで、それは考えるけどもさ」
「名案は?」
「しばらくは考えさせて、最終的にはこっちの準備したものを切り崩すが、さすがにそれは奥の手だよ」
「なかなか、難しいことになってるんですね」
「そうそう、まあ、そういうのを何とかするために俺がいるって事さ」
ここで俺という言葉を使ったのに少々驚いた。
(奥様やご家族の前では『俺』
と言われるのに)
今回はそんなに厄介なのか、余裕がないのかもしれないなと思った。
「寒い日でもね、人生、薔薇を眺めることもできるわけだよ」
「それはどういう…」
「旦那様、ちょっとお話が」
「あっ、奥様」
「話は終わったかな?」
「終わりましたので、後はごゆっくり、何かありましたら、お呼びいたします」
「ごめんね、よろしくね」
「ふっふっふっ」
「何ですか、その意味深な」
「いや~そうね、ちょっと思い出したよね」
奥様はベットの上で、あ~だりぃと転がっていたら、衣服がめくれておりまして…
「これからはセクシー路線で行くのかと思いましたよ」
可愛いおヘソと太ももが見えておりました。
「まさかこの目で、実際に見ることが出来るとは思いませんでした」
「忘れてください」
「なんでさ」
「忘れてほしいです」
「心に刻み付けて永久保存決定です」
「…」
「ごめんなさい、とても興奮しました」
「…」
「すいません」
「私の方こそ、こういうときなんて言えば、ただまあ、旦那様に見てほしくてとかではありませんから」
「じゃあなんで!」
「つけ方覚えるためにつけてました」
ガーターベルトのことです。
「誰のためによ!」
「ドレスコードがあるといったじゃないですか、その時のフットウェアがああいう止め方をしているんですよ」
慣れておきなさいと言われたので、練習のためにつけていた。
「そっか、それは…理想としては何もおきないことだけども、そこら辺は慣れておかないとね、慣れてないってことで、苦労しているところを見せるとね」
「あ~やっぱりそこはあるんですか」
「ある、なんだそんなことも知らないのかっていう奴だよ」
「なるほど」
「しかし、そういう話を聞いて、すぐに練習する行動力には少々驚くね、なかなか出来ないよ。さすがはうちのお嫁さん」
「あなたの足手まといにはなりたくないですよ」
「そういってくれるのは嬉しいけども、それでも…辛いとか、大変なのはちょっと嫌だな」
「何をいってるんですか、そこは政略結婚割りきってくださいよ」
「本当にそういうことを言われると、頭が上がらなく、いや、もう上がりません、踏んづけたりする?優しくね!」
「なんか今日も疲れてますね」
「まあね、さっきまで仕事を押し付けられそうになってたもんだからね、嫌になるよ」
「断れましたか?」
「もちろん、あれは…そろそろ天罰が下るべきだ」
「相当ですね」
「相当だね、この忙しいところ、まあ、予定通りに仕事は進んではいますが、この領地、その中の、手をつけていないところをそろそろとね、教育とか、時間がかかるところに手をかけれるかなって時に、恩知らずの現実逃避のツケを払う気はないな」
「それでも無傷ではいられません、どこまで悪くなると思います?」
「結構は悪くはないかな、うちの領地への影響は限定的だと思うけどもさ…」
「後でわかってることみんな教えてください、その上で実際に調べていきますから」
「うん、お願い、こういう時、君の目は役に立つ」
「取りこぼしがなければいいのですが」
「あるよ、たぶんある、君の目からは逃れられないと思う」
「それは言い過ぎ」
「全然言い過ぎじゃないさ、実際に僕は、気づかないことに気づかされている、そういう意味では君が妻で良かったよ、査察だったら、危ないんじゃないの?」
「査察の目は鋭いですよ」
「そうかもしれないが、そんな鋭い目で見られたくはないさ」
「それでどの辺が危ないと思ってます?」
「全体的にってやつ、でも引き受けなければ情報は公開されないから、今は推測だけ、でも推測だけで危ないんじゃないのかな、そんなきはするんだよね」
「ああ、なるほど、いつものやつですね」
「そうそう、いつもの厄介ごとさ」
「あなた一人ならばどう解決しますか?」
「ん?俺?いつものように頑張って」
「なるほど」
「あれ?呆れた?」
「少しね」
「君に俺は何回呆れられるんだろうか?」
「何回も、ずっと、でもまあ、悪くはないでしょうよ、時間はまだありますし、それを考えたらね」
「その言い方もおっかないね」
「私としては先程の薔薇の話をした方が、自分でも知らないぐらいの、腹の底から低い声が出ましたが」
「ごめんなさい」
「旦那様も男性ですからね、美脚と美術に弱いはずなのに、あんなぷにぷにのお腹見てもしょうがないでしょうよ」
「本気でいってる?」
「いってますよ、多少は腰回りのお肉は落ちたつもりでもね、もう少し、細くならないかなって」
「数値はすぐに落ちる、体重は一年かな、でも体型は何年かかるものというよ」
「どこ情報ですか?」
「健康診断の計測してくれたお姉さんが言ってたよ」
たるみ肌はなかなか変わらないんですよね。
「くっ、なんたることだ」
「だからそのまま歩いたり、運動していれば引き締まってくると思うから、そんなに気にすることは…」
「まあ、そこは女心なのかもしれません」
「それを出されたら、男は何も言えなくなるね」
「もう少し私も容姿が整っていればいいんですが…」
「そんなこと思ってるの!」
「思いますよ。私には聞こえてないだけで、陰口は叩いているんじゃありませんかね、実家の時でもそうでしたから」
「実家の時はなんて言われてたの?」
「貧相とかそんなんかな」
「うわ…」
「ただね、その人もね、知らないですからね。そこでなんで地味な格好しているかっていうとね、綺麗な格好してるとね、カモにされるからなんですよ」
「それもまた」
「その怖さを知らないのは、どこからお越しになられたのか、まあ、お嫁に来られたので、詳しくないのはしょうがありませんが、誰にも教えてもらえなかったんですね。私も教える気は在りませんが…になってましたから、いいんですが」
「僕としては君の身が守られていいのか、誤解されるというか、酷い事を言われていることに悲しみたいし、対処したいというか、色んな感情がごちゃ混ぜになるんだけども」
「善も悪もそこにはないんじゃないんですか、それで割りきれないというか、でもね、ああいう人たちってね、悪にもなれないんですよ。ただ自分が優位だと思ってる、それは砂の上であって、風が吹けば飛ぶような儚さなんですよ。本当に何もない、なのに我々は…」
「はい、ストップ、お止まりあそばせ」
「ダメですね、私も、修行が足りない、こんな話がじわじわと出てきてしまう」
「それはしょうがない、僕と君はここで生きているのだから」
「私はしょうがないけども、旦那様は別の道もあったんじゃありませんか?」
「そうだね、何故か選んだね、もうズブズブだなら、抜けれないよ。違う道?何だそれ、俺にそれはないんだよ」
「背水の陣にもほどがあるな、そこは広い視野を持ちましょう、オープンユアアイズ」
「俺の目は君しか見てないから」
「そういうのはいいから」
「ダーメ、それがあるから俺は頑張れるし、格好いいところとか見せたいの」
「そうかもしれないけども、疲れているとかは嫌だな、無理しないでほしい」
「いいね、俺のやる気が充電されていく、何て言うの、ここでやりとげたい、やりとげて見せたい、うぉぉぉぉ俺はやってやるよ!みたいな」
三段活用。
「元気には限りがあるものです、もっと上手く立ち回りましょうよ」
「例えば?」
「基本の徹底、状況の把握、解決のための算盤を弾く、そこからいかに被害を抑えるかですかね。ここで格好いいところ見せようとしないでください、寒いことになる」
「気温は?」
「北緯43度ぐらいですかね」
「そりゃあ寒いね」
現在-3度だそうです。
「君と話していると、さっきまで悩んでいたことが馬鹿馬鹿しくなれる」
「それは…気のせいじゃないですかね」
「気のせいかな?壁があるとしよう、その壁がどっかいってしまった、振り替えったら、あれが壁だったみたいな気持ちになれるのさ」
「考え方が似てる人ばかりと話すと、同じ箇所でぶつかることはありますから、それを考えると、やっぱりこういうのは大事なんじゃないですかね」
「そうだね、本当にそう思うし、君はやはり俺の大事な人なんだよ」
「大事ですか」
「大事だよ、ずっとずっと傍にいてほしい、俺を一人にさせないでほしい」
「寂しがり屋ですもんね」
「そうだよ」
「それなのになんで晩婚に」
「そこは…」
「そんなに寂しいならば、さっさと紹介して結婚するとかで良かったんじゃないですかね」
「考えてないわけじゃぁ、こざいませんよ。でもね…」
「ワケありそうですね」
「そうよ」
「旦那様はその…美女とかお好きですから、若いうちは…」
「夢見てました」
「でしょうね。なんかそんな気がしてたからな…」
だからこそ、なんで私と、でもそこは政略結婚だし、さすがにその手前、失礼はないだろう。それならば…ぐらいの感覚でした。
「でも俺は誰でもいいというわけではないからね」
「そこも私としては複雑ですがね、一応ははい」
「誤解されまくってる」
「どう考えても、私が好みではないのがわかりますからね」
「逆にそういうのがわかる男と知り合いなのがズルい!…けどもさ、それはそれでその男たちは、なんで君にアプローチをしなかったんだろうね」
「ワケありだからじゃないですか」
「それはな…確かに世の中には自分から問題を起こすのはいるよ、でも君の場合はそうじゃないし、そのために、ずっと一人で生きようとしてたんだよね」
「親代わりの方々の中には、そういう生き方はやめた方がいいとは言われましたがね」
なんで年頃の娘さんがいるのに、母親の方がまだ行けるとか思ってるの?
「でもね、そこから逃げても、逃げられないでしょ?その時は親代わりの方々もただ話だけでしたからね」
「そうでなければ…」
「あんなのと一緒にいたいはずがない。そういう意味では人生を無駄に…いえ、それで旦那様と会えましたし、旦那様の傍にいて、まだ日が浅いですけど、十分に無駄にした分は楽しいですからね。満足してますよ」
「君はそうかもしれないが、俺はこれじゃあ終われない」
「そこは妥協しましょうよ」
「しても意味はなくない?」
「ないですが」
「でしょ?俺もね、すんごいそう思うの、たぶんその妥協は、気のせいだっていうのかな、過信というか、間違った謙遜というか。とりあえず正確ではない」
「うちの家族と手を切って、今までの分を返してくださいっていったら、もう私は働かなくてもいいんじゃないかとは思う、ただ支払い能力がない人たちだから」
「本当になんで自由にさせているのって感じじゃん、犠牲にされそうになっている、いや、されている。これもあってないな」
「支払いを回す相手がいる」
「そう、それ、その担当にするのは何かおかしいんだけども」
「そこが普通になってるから、勝手に相手に請求先にするんだもん」
「あ~それはダメだ、許されないよね」
「それで止まらないんですよね」
「困ったね、ろくでもない」
「ごめんなさい、それが私の…」
「君は逆にしっかりしているじゃないか」
「私はよくわからない」
「なんで?」
「すいません」
「君は悪くない」
「そうですか?」
「何が悪いの?」
「わかりません」
「誰も止める人がいなかったのならば、万人の罪では?」
「それは…ないですよ」
「見て見ぬふりは罪ではないと?」
「それは…そうですけども」
「ならば俺の罪でもある」
「旦那様、その理屈だと、騙されますよ」
「誰が騙すの?」
「それならば私も助けてって」
「へぇ~それってどんな奴かな?美人?」
「美人ではないですね」
「じゃあダメ」
「旦那様ったら」
「俺に話を持ってくるなら、美酒美食、美声美女、美脚に美術を揃えてきてね」
「この世にそれが揃うなんてことがあるんですか?」
「えっ?そうなの?じゃあ、俺は君がいいな」
「旦那様、話がずれてますよ」
「ずれてないよ、俺はそういう好みがあるわけよ、媚びるならば、そのぐらいしてくれないとダメでしょ」
「それは…そうかもしれないませんが」
「君はそんなことをしなくていいからね」
「なんでですか?」
「なんでって、僕は毎日の努力を大事にするタイプだよ、そういうことを欠かさない人間には報いるつもりだ」
「それは当たり前では?」
「それがね、そうではないものだよ、今日明日何か結果がでなければ、いつ出るのかわからない結果のためには、頑張れないものだ。その点、君は未来を見ている、そしてそのための準備、たぶん今がそんなに好きだからこそ、そんな事ができるんだろうね」
「確かにずっと現在が嫌いでしたね」
「そうか…」
「そりゃあね、あんな家族がいたら、今日は何も起きなかった、でも明日はどうなるのだろうか、誰かに叫ばれて起きることになるのではないか、実際にろくでもない時は、起きる時間も自分では決めれなかったから」
「それは本当にとんでもない人生だったね」
「今はそうじゃない」
「そうか」
「でもそのうち終わるでしょうからね、良いときに終わらせたい」
「そのいいときって、どっち?」
「旦那様は傷つけたくはない」
「君との別れは、俺は泣くと思う、泣くだけじゃないかな、あ~考えただけでもダメだ、別れたくない、こんな筋書き考えたバカヤローは誰だ?文句があるから出てこいよ」
そんなことを言われましても…
「俺は幸せになりたいんだ。一緒に幸せになりたい人が出来たんだからさ、それを叶えさせてくれよ。夢とかは嫌、でも夢の中の君も可愛いんだよ」
「えっ?」
「俺は君の隣で君の夢を見れている、お得!」
「えっ?」
「あれ、知らなかった?」
「知りませんよ、何ですか?それは…」
「俺もそこはよくわからないけども、夢の中でも君に会えるし、夢の中の君は…その…」
「なんです?あなたの理想の、聞き分けがいい女にでもなってましたか?」
「たまに見せてくれる、心を許した君なんだよ」
「そんな私は存在しませんよ」
「えっ?そう?最初は気の強そうな君も
二人でいると…」
「気のせいですよ」
「俺は君の弱音を聞くのが好きだからな、誰も聞いてこなかったんだなって思えば、思うほどに、独占している気分になれる。油断している君は、いつもの君より隙だらけでね、そこが本当に愛しくなるし、気分が高ぶってくると君の方から…」
「なんでこういうときだか実況上手になるんですか」
「愛は俺を詩人にさせるようだよ」
「そんなん知らねえよ」
「まあ、言葉使いがエレガントではないですわよ」
「私もそう思いますわ、でも感情的にはそれが一番正しいと思いますの」
「くっ!」
「あなたには恩がある、ネタにするなら、からかう材料にするのならば…」
「そういうつもりはないよ、本当に俺もバカだな、指摘されてから、バカなことしているって気づくんだから」
「そこまでご自分を責めないでくださいよ、こういうのを理解すれば、間違いは起こさない人だと言うことは知ってますから」
「君を犠牲にするつもりはない、何さ、次の結婚に向けてのトレーニングでもしているわけ?冗談じゃない、そんなことしてたまるかよ」
「旦那様って不器用ですね」
「そうかな…」
「そうですよ、もう少し上手くやればよろしいのに」
「そういうのは苦手…なんだよ」
「拗ねたところは可愛いですね」
「可愛いって、年上の男に使うものじゃないだろう」
「あら?いけませんか?」
「そこはさ、こう…そんな年なのに子供って言われたくないんだけどもさ」
「そういう振る舞いをしているのが悪いですが、旦那様の場合は、ストレスがあると、そうなりがちだからな」
「やっぱり俺は向いてないのかな」
「旦那様のような人は必要ですよ」
「でも向いてないんだよ」
「どうして?」
「感情に振り回される。今だってそうだ、不快な気分を自分の力だけで消化できてないのだから」
「なんでも自分の力だけで解決できる人なんていないでしょうよ」
「それはそうかもしれないよ、でもさ」
「無理はしない」
「はい」
「無茶もしないで、見てると心配になるから」
「…はい」
「何が問題かわかりますか?」
「今の構造、あの構造のままならば、実力不足の人間にも仕事が割り振られる」
「ではどうしましょうか」
「そのシステムを作り直すとか、何か起きたときの政策を用意する」
「その辺が無難かな」
「でも意識を変えないとやっぱりダメだろうね」
「その辺はね、悪いことだってわかったなきゃ無理でしょうね」
「やっぱりか」
「ただこのままこなしていくのもメリットはある」
「うちが引き受けることで、余裕をもってノウハウを蓄積できるか」
「何しろ最初っから解決しないとわかっているのだから、時間もゆっくり、解決しないよりはマシですからね」
「なるほど、見えてないものが見えてきたか…その選択肢はないなって思っていても、洗い出していくと悪くない、この一点だけ注目するのならばそれもありなのね」
「だから最悪なのは最悪じゃないんですよ」
「こういうところが君はすごい、僕はそこまでわからない、わからないものにも価値があるのを教えてくれるから、見過ごされていたものを愛せるようになるんだろうな」
「そこは旦那様だからですよ、あなたはそこを拾い上げて、それも素敵だと誉めてくれるのだから」
「俺の愛は限られているよ」
「人間、そんなもんじゃないですか」
「それでも愛してる」
「それならばその愛をいくらかもらいますよ」
「全部でもいいのに」
「それは重すぎますから」
おおっと、あんなに近距離にいるのに目を合わせ始めたぞ、しかも笑みまで浮かべてやがる。
今日も長い長い話の後で、言葉がない時間が始まるのである。
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