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弱い僕をお許しください
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「とても嫌なものを見ました」
手を祈るように組みながら、気丈にその場を去る。
「後はこちらで」
「では報告は逐一」
「かしこまりました」
急に領主の妻として振る舞わなければならない、そんな時でもこの女性はやりきってくれるのには定評がある。
バタンと車両の扉が閉まり走り出すと、急に力が抜けた。
「奥様、大丈夫ですか?」
「怖かった」
「はい、それは、まだ熊の方が道理があったかもしれません」
「それもそうね、しかし…危険だけども動かないわけにはいきませんでした」
「あのような方々の横暴な振る舞いは、どこから来たのでしょうか?」
「執事がその裏取りもしてくれることでしょう」
残ったのは三男執事であったため、帰宅してかや何故に三男がいないかと話を聞くと、執事長は顔色を変えて、屋敷のまず防犯体制を見回りにいった。
「心配したよ」
「これはこれは旦那様、ご心配おかけしました」
「気にしないで、君は妻の仕事をしたのだから」
「かもしれませんが」
「むしろ、怖いかもしれないな、あそこで引く方が逆効果だからな、力押しでどうかしようと思ってしまう、そういうタイプはいるし、もちろん君も僕も怪我をする気はないよ」
「それは私めが許しません」
険しい顔の執事が戻ってきた。
「奥様はご無事てしょうか?」
「ええ、問題なく」
「それは良かった…息子がついているとはいえ、確かに信用はできますが、それでも…という気持ちですので」
「申し訳ございません」
「ダメです、そのような謝罪は、私にはしてはいけません」
「しかし」
「立場がありますから、それは目上の方への謝罪です。確かにあなたはみんなそれで通ると思っているでしょうが…それを見ると痛々しく思う時はあります」
「ごめんなさい」
「それでいいのです、旦那様の3日以内の納期はみな終わってますから、もう今日は奥様と一緒にいてあげてください」
「ひゃっほー!」
「旦那様ったら」
「それとも、僕と一緒にいるのはいや?」
「そんなことはありませんけどもね…」
「何が不安なの?」
「なんでしょうかね」
「君の怖いものが現れたら、僕がなんとかしてあげるよ」
(本当にしそうなんだよな)
「でもそういうものとも上手くやらなければなりませんから」
心を無にしていると、あちらは興味を失うのだ。
「そんな顔して今日も過ぎていくのを待つのかい?」
「あぁ、そんな顔してました?」
「してたね、早くつまない授業終わらないかなみたいな顔に似てるから、嫌な時間と感じたとき、人はそういう顔をするんだろうね」
「嫌な時間といえば、嫌な時間ですよね、あまり考えるのが得意な方ではありませんので」
「えっ?」
「頑張ってはいるんですけどもね」
「…」
「どうしました?旦那様」
「才能があるってすごいことなんだね、僕と同じぐらい読めるし、わからないことは聞いてくるし」
「旦那様は聞いても起こりませんからね」
「…怒ったらそこはダメでしょ、確かに負担になりすぎる、そこは自分でやんなきゃねは困るけども、聞いてわからなくて、これにはどういうものが前提、どういったものが理解できている人向けなのですか?って聞いてくるとは思わなかったよ、君は良い生徒になるし、見込みもあるし、教える方も面白くなるんだよね」
「きちんとできることが大事でしょ」
「それはそうだ、でも僕が見てきた人の中ではかなりスゴい方だよ」
「それでもまだ足りませんよ」
「どうして?君は一人ではないし、俺も傍にいるとおもうんた」
「旦那様を支えるのが私の仕事です」
「そうだね」
「だからやれることはどんどん増やさなければなりませんから」
「それでちょっとづつでもいいからって、やってくれるわけ?ちょっとそれは幸せなんだけども、僕のため?僕のためか?」
「調子に乗らないでくださいよ、旦那様」
「え~やっぱり嬉しいよ、こんな僕だからか、昔から、はい、これやっておいてねとか、やらなきゃいけないことがあるのに、結局雑務まで自分でやることになっちゃってるとかさ、時間と体力がいくらあっても足りないなんてよくあった、僕はバカだからさ、本来は他の人の仕事でも、ここで喧嘩する、言い争いになるのも嫌だからって、自分でやってたんだ」
「それはバカとは言いませんよ、しかし、本来の業務をないがしろにして、どこにいってたんですか?なんで旦那様の仕事増えるんですか?もう!」
「今はいないよ、領主になる前のことだから、うん、もう終わったよ」
「終わったね~」
「まだ引きずってるように見える?」
「見えますよ、だって表情を見れば、まだあるじゃないですか」
「いつかそんなこともあったね、なんて言えたらいいんだけども…いや~そこは領主やってよかったかもしれない、少なくとも君も執事長たちもサボる人ではない、仕事を減らしてくれるぐらい有能だからね、そういう意味では人生の運を使いすぎたかもしれない」
「あなたの運はこれからですよ」
「そう?」
「そうですよ、このぐらいの幸運で満足してはいけませんよ」
「そうか…でもそれは君も言えることでしょ?」
「私もですか…」
「そう、君も…」
「全部忘れてしまえは出来ないわけじゃん」
「たぶんそれは無理」
「愛してるよ」
「ここで愛ですか」
「聞いてくれそうなときに愛してるって言いたいから、ここがベストタイミングじゃないですかね」
「何をいってるの?」
「だって、普通に『はいはい』って流すじゃん、そういうクールさも素敵なの、でもね、たまにはビックリするほどバカップルとかもね…」
「そんなことを考えてたんですか?」
「お揃いの服で、美味しいケーキ屋さんに行きたいとかさ」
「旦那様の方が私よりサイズ小さいの着るじゃないですか」
「僕はぺったんだから特に厚みがないから、腹筋とか欲しいけどもさ」
「根性なしって訳でもないんですけどもね」
「やっぱり体を鍛えている方が好きなの」
「そういう訳ではありませんが」
「こう筋肉を前面に出してくるような」
「実用的な筋肉があればそれでいいと思います」
「くっ、やっぱり好きなタイプはあの辺か」
「自然厳しいところ生まれ育ちだと、そうじゃないと生き延びれないからってだけですよ」
体力が求められる地域出身。
「ここほど寒くはないんですがね」
「そちらの実家と仲が悪くなければ交流はあっただろうね」
「そうでしょうね、ありましたね」
奥さんの実家とは交流してないが、奥さんの実家と交流が昔からあったところで、奥さんが独身時代窓口になっていた業者などは今も付き合いがある。
「ああいう家だと、○○は何とか屋ってみんな決まっていますから、私が窓口になってたときは、そういうのも不況で大分変わりましたが」
そういう業者は高いので、お金がいくらあっても足りないから、冠婚葬祭の時だけはそこは頼むが、そうじゃない場合は、コストパフォーマンスを意識して、安いお店で買い物していたりする。
「ただその…その付き合いも大変でしたからね、そういうのがわからないお家の方もおりましたから」
あなたはこんなお店で買い物しているの?
「私は絶対にしないわよっていってるんですが、その方はこちらの方ではありませんので、そのお店を贔屓している人たちが実はどういう人たちなのかとか、わざわざそのお店は本店に頼み込んでこちらに支店だしてもらっているとかもしないんだろうなって、店の土地を貸している人は価値が高くなると思って、依頼しているのに、そこがわかってませんとね」
「商売人目線だね」
「そうですね、その辺が子供の頃から当たり前で、まさかそれが特殊なものだとは思いもしませんでした。まあ、大人になる途中でこれが実に古くさいやり方でになりつつありましたが、不況になったら見直されてきましたね」
「君のような人たちがいるから、助かってるんだよ」
「そうですかね、あんまりそうは思えなかったな、嫌な気持ちになったし」
「切り替えていこうよ」
「そうですか?」
「そうだよ、その方がいいさ、人生は限られているんだぜ」
「そうなんですよね、なんで若くて100年ぐらいの自由時間とかないんですかね」
「えっ?そういうの欲しいの?」
「そしたら色んなところを見に行けるじゃないですか」
「見に行きたいところはあるの?」
「見に行きたいところですか?」
「あるなら教えてよ」
「このブローチってあるじゃないですか」
防寒用のケープを止めているブローチ、これは偽物なんですけども、色合いが好きな宝石に似てるので好きなのです。
「深い、夜中のような青なので、夜の真ん中って石なんですよ、これは昔から贈り物として愛されてきました、この色合いが夜の真ん中の特徴ではあります」
「その色が好きなの?」
「汚れが目立ちませんし」
「そういうことじゃなくて」
「気に入ってはいます、本物の石はもっと美しいのかもしれませんが、私はこれで十分に楽しくはなりますから、たぶん私の人生ではかないませんけども、この産地には旅行して見たかった」
「じゃあ、新婚旅行そこにする?」
「いや、そういうので選ばないでくださいよ、旦那様の今後に、あいさつ回りに出向くためにそういったカードは選ぶべきですよ」
「でも俺は君の喜ぶ顔がみたいよ」
「大丈夫ですって、十分楽しめますから」
「君が心から楽しんでくれたらいいなっては思うよ」
「それが領主の義務を放棄することに繋がっても?」
「そういうことじゃないさ、それはしながらも上手いこと楽しんで欲しいかなって」
「旦那様は楽しんでます?」
「僕は…」
「まずはご自分のことを大事に考えて、旦那様が大変ならばみんなも気を使ってしまうのだから、あなたが心から笑顔を、そして誰かに優しさを…幸せを分け与えれるようになってください」
「君はそこにはいないの?」
「えっ?だって私はこんなんですよ」
「そうはいうかもしれないけどもね、君はもうちょっと自分を、そんなことをいうと、俺は君が自分を愛さない分の百倍は君を愛するからね」
「愛が重そうですね」
「重いと思う」
「歴代の彼女さんたちはそれについてどのような」
「ノーコメントで…というか、ここまで心の底を出しているのは君にぐらいだし、こう…君は何か、そういう僕を惹き付けるものがあるよね」
「またたびみたいな臭いしてますかね」
「にゃーん」
「にゃーんじゃなくて」
「さすがに起きたときにビックリしますもん」
なんか引っ付いているなって
「引っ付きたい、なんだったら腕枕したい」
「手が痺れると思うし、公務になりませんよ」
「それでもしたい男心」
「優先するべきは執務ですよ」
「くっ…ここでまさか…でもいいんだい、思ったより、いや、とんでもない時間は確保しているからな」
「体はどうですか?」
「経過は報告しているけども、本当に体が疲れなくなった、そんな疲れている体でもできるようなスケジュール体制、これを変えてないから特にね」
さっさと仕事を終わらせて、サンドイッチ食べる余裕さえある。
「作りたてのタマゴサンドは美味しいと思う」
「それが好きなら、玉子焼サンドも試してみてくださいよ、レタスとか挟んだやつ」
「いいね、それで温かくなったら、外で食べたいね」
「ピクニックでいいんですか?」
「そうそう、庭先でもいいし、ちょっと遠出するのもいいかもしれない、花の時期とかに合わせてさ、その日はロマンチックに行きたいね」
「旦那様は私とどこかに行くのが嬉しいのですか?」
「君は嬉しくないの?」
「私にはよくわかりません」
「よく…か…」
「ええ、まあ、その言葉が的確ですかね」
「嫌な思いでがそこにもあるんだね」
「ないものってあったかな」
「それは残念、でもつまりは俺が全部そこを書き換えてしまえば、楽しい思い出みんな俺になるんではないか…」
「旦那様は何をしたいんですか?」
「君に好かれたいね、その可愛らしい瞳でじっとこっちを見つめて欲しい。…うん、今みたいに」
そこで妻は微笑みを浮かべるので。
「ここで笑顔は反則だよ」
「そうですかね」
「そうだよ、もう~…君が戸惑って、表情が強張るのはしょうがないところがある、それだけのことが君にはあった、でもそこも変えていけると思ってるんだ」
「変われますかね」
「変われるんじゃないかな」
「甘えたら、そんなはずじゃなかった、もう無理だとか言われたら、もう私は人間を信じれないと思います」
「そんなことを考えていたわけ」
「それとは別に、笑顔で無理してもうダメになるのも見たくはありませんから、たぶんどっちかが旦那様に起きるから、さらっとした付き合いでいいと思うんですよ」
そう、それはお互いのために。
「じゃあ、考えて」
「えっ?」
「俺と君が上手くやれる方法」
「私が考えるんですか?」
「こういうのは君の方が上手く考えれる」
「実際に用意しても、それは出来ないからで終わりになりそうだしな」
「それは君の信頼を傷つける行為だし、また逆に俺が出来ないことを君がわざと考えるのも、信用問題じゃん?」
「そうですね」
「それともそれよりも大事なものはある?」
「旦那様に対してはそれはありませんよ、あなたは私の大切な人…」
「その客観的なのが気になるが、今のもう一回聞かせてくれるかな」
「?」
これが無自覚、人の心を的確に揺らしてくる才能。
「そういうのはラブラブチュチュする相手にしか言ってはいけないんだぞ!」
「あれ?旦那様とは違うんでしたっけ?」
よくある疑問。
「違いません!」
ベスト解答
「そうでしたか…」
「そう、ですです!僕は君と歩むことに恐れてはいないよ」
「私は怖いですけどもね」
「なんでさ」
「たまにありません?知らない方が幸せだったみたいなやつ」
「俺は君を知らない人生は嫌だな、もしもそうなるのならば、何としても、こう掻い潜るようにさ、出し抜いてやるぜってなっちゃう」
「それでも私は見ない振りはしますよ」
「なんでさ」
「こうして話を聞くよりも、優秀な旦那様は…」
「朝起きたら体力が回復しているから目覚めがいい、適切な食事、栄養も兼ね備えた有意義な時間を、疲れ目や肩凝りが本当に皆無になったし、不安な激務での腱鞘炎っぽいものも起きてないから、君がここまで変えたんだよね、君しか変えれない、他の人にも変えれたかもしれないけども、最初に変えたのは君である」
「それは良かった」
「その功績は思った以上にでかいし、時間が経過するたびに、これからこの時間と体力で作られた成果は加速していくと思うんだ、その時君は今よりもっと評価される」
「評価は入りませんよ、旦那様が手柄として取ってください」
「どうして?」
「だって教えてありますから、自分でもできるでしょ?」
「君はいらないの?」
「いらない」
「わかった」
「それで名前が上がるのは真っ平ごめんだ」
「では何か欲しいものを言って?そこは必ず必いるし」
「ではこれからも支えさせてください、皆様に善政をお願いします」
「そういうんじゃなくて、君の個人的な奴さ、善政はがんばる、支えるのは…」
「やっぱり困ってますか?」
「困るよ、君を手放せなくなりそうで、いやもうそうなんだけどもね」
困るの理由が違う。
子供のように、影に隠れるように拗ねていると。
「それはダメ」
といって彼女は僕に触れてくる。
どうか弱い僕をお許しください。
そう言ったあとに目を閉じた。
手を祈るように組みながら、気丈にその場を去る。
「後はこちらで」
「では報告は逐一」
「かしこまりました」
急に領主の妻として振る舞わなければならない、そんな時でもこの女性はやりきってくれるのには定評がある。
バタンと車両の扉が閉まり走り出すと、急に力が抜けた。
「奥様、大丈夫ですか?」
「怖かった」
「はい、それは、まだ熊の方が道理があったかもしれません」
「それもそうね、しかし…危険だけども動かないわけにはいきませんでした」
「あのような方々の横暴な振る舞いは、どこから来たのでしょうか?」
「執事がその裏取りもしてくれることでしょう」
残ったのは三男執事であったため、帰宅してかや何故に三男がいないかと話を聞くと、執事長は顔色を変えて、屋敷のまず防犯体制を見回りにいった。
「心配したよ」
「これはこれは旦那様、ご心配おかけしました」
「気にしないで、君は妻の仕事をしたのだから」
「かもしれませんが」
「むしろ、怖いかもしれないな、あそこで引く方が逆効果だからな、力押しでどうかしようと思ってしまう、そういうタイプはいるし、もちろん君も僕も怪我をする気はないよ」
「それは私めが許しません」
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「奥様はご無事てしょうか?」
「ええ、問題なく」
「それは良かった…息子がついているとはいえ、確かに信用はできますが、それでも…という気持ちですので」
「申し訳ございません」
「ダメです、そのような謝罪は、私にはしてはいけません」
「しかし」
「立場がありますから、それは目上の方への謝罪です。確かにあなたはみんなそれで通ると思っているでしょうが…それを見ると痛々しく思う時はあります」
「ごめんなさい」
「それでいいのです、旦那様の3日以内の納期はみな終わってますから、もう今日は奥様と一緒にいてあげてください」
「ひゃっほー!」
「旦那様ったら」
「それとも、僕と一緒にいるのはいや?」
「そんなことはありませんけどもね…」
「何が不安なの?」
「なんでしょうかね」
「君の怖いものが現れたら、僕がなんとかしてあげるよ」
(本当にしそうなんだよな)
「でもそういうものとも上手くやらなければなりませんから」
心を無にしていると、あちらは興味を失うのだ。
「そんな顔して今日も過ぎていくのを待つのかい?」
「あぁ、そんな顔してました?」
「してたね、早くつまない授業終わらないかなみたいな顔に似てるから、嫌な時間と感じたとき、人はそういう顔をするんだろうね」
「嫌な時間といえば、嫌な時間ですよね、あまり考えるのが得意な方ではありませんので」
「えっ?」
「頑張ってはいるんですけどもね」
「…」
「どうしました?旦那様」
「才能があるってすごいことなんだね、僕と同じぐらい読めるし、わからないことは聞いてくるし」
「旦那様は聞いても起こりませんからね」
「…怒ったらそこはダメでしょ、確かに負担になりすぎる、そこは自分でやんなきゃねは困るけども、聞いてわからなくて、これにはどういうものが前提、どういったものが理解できている人向けなのですか?って聞いてくるとは思わなかったよ、君は良い生徒になるし、見込みもあるし、教える方も面白くなるんだよね」
「きちんとできることが大事でしょ」
「それはそうだ、でも僕が見てきた人の中ではかなりスゴい方だよ」
「それでもまだ足りませんよ」
「どうして?君は一人ではないし、俺も傍にいるとおもうんた」
「旦那様を支えるのが私の仕事です」
「そうだね」
「だからやれることはどんどん増やさなければなりませんから」
「それでちょっとづつでもいいからって、やってくれるわけ?ちょっとそれは幸せなんだけども、僕のため?僕のためか?」
「調子に乗らないでくださいよ、旦那様」
「え~やっぱり嬉しいよ、こんな僕だからか、昔から、はい、これやっておいてねとか、やらなきゃいけないことがあるのに、結局雑務まで自分でやることになっちゃってるとかさ、時間と体力がいくらあっても足りないなんてよくあった、僕はバカだからさ、本来は他の人の仕事でも、ここで喧嘩する、言い争いになるのも嫌だからって、自分でやってたんだ」
「それはバカとは言いませんよ、しかし、本来の業務をないがしろにして、どこにいってたんですか?なんで旦那様の仕事増えるんですか?もう!」
「今はいないよ、領主になる前のことだから、うん、もう終わったよ」
「終わったね~」
「まだ引きずってるように見える?」
「見えますよ、だって表情を見れば、まだあるじゃないですか」
「いつかそんなこともあったね、なんて言えたらいいんだけども…いや~そこは領主やってよかったかもしれない、少なくとも君も執事長たちもサボる人ではない、仕事を減らしてくれるぐらい有能だからね、そういう意味では人生の運を使いすぎたかもしれない」
「あなたの運はこれからですよ」
「そう?」
「そうですよ、このぐらいの幸運で満足してはいけませんよ」
「そうか…でもそれは君も言えることでしょ?」
「私もですか…」
「そう、君も…」
「全部忘れてしまえは出来ないわけじゃん」
「たぶんそれは無理」
「愛してるよ」
「ここで愛ですか」
「聞いてくれそうなときに愛してるって言いたいから、ここがベストタイミングじゃないですかね」
「何をいってるの?」
「だって、普通に『はいはい』って流すじゃん、そういうクールさも素敵なの、でもね、たまにはビックリするほどバカップルとかもね…」
「そんなことを考えてたんですか?」
「お揃いの服で、美味しいケーキ屋さんに行きたいとかさ」
「旦那様の方が私よりサイズ小さいの着るじゃないですか」
「僕はぺったんだから特に厚みがないから、腹筋とか欲しいけどもさ」
「根性なしって訳でもないんですけどもね」
「やっぱり体を鍛えている方が好きなの」
「そういう訳ではありませんが」
「こう筋肉を前面に出してくるような」
「実用的な筋肉があればそれでいいと思います」
「くっ、やっぱり好きなタイプはあの辺か」
「自然厳しいところ生まれ育ちだと、そうじゃないと生き延びれないからってだけですよ」
体力が求められる地域出身。
「ここほど寒くはないんですがね」
「そちらの実家と仲が悪くなければ交流はあっただろうね」
「そうでしょうね、ありましたね」
奥さんの実家とは交流してないが、奥さんの実家と交流が昔からあったところで、奥さんが独身時代窓口になっていた業者などは今も付き合いがある。
「ああいう家だと、○○は何とか屋ってみんな決まっていますから、私が窓口になってたときは、そういうのも不況で大分変わりましたが」
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「ただその…その付き合いも大変でしたからね、そういうのがわからないお家の方もおりましたから」
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「私は絶対にしないわよっていってるんですが、その方はこちらの方ではありませんので、そのお店を贔屓している人たちが実はどういう人たちなのかとか、わざわざそのお店は本店に頼み込んでこちらに支店だしてもらっているとかもしないんだろうなって、店の土地を貸している人は価値が高くなると思って、依頼しているのに、そこがわかってませんとね」
「商売人目線だね」
「そうですね、その辺が子供の頃から当たり前で、まさかそれが特殊なものだとは思いもしませんでした。まあ、大人になる途中でこれが実に古くさいやり方でになりつつありましたが、不況になったら見直されてきましたね」
「君のような人たちがいるから、助かってるんだよ」
「そうですかね、あんまりそうは思えなかったな、嫌な気持ちになったし」
「切り替えていこうよ」
「そうですか?」
「そうだよ、その方がいいさ、人生は限られているんだぜ」
「そうなんですよね、なんで若くて100年ぐらいの自由時間とかないんですかね」
「えっ?そういうの欲しいの?」
「そしたら色んなところを見に行けるじゃないですか」
「見に行きたいところはあるの?」
「見に行きたいところですか?」
「あるなら教えてよ」
「このブローチってあるじゃないですか」
防寒用のケープを止めているブローチ、これは偽物なんですけども、色合いが好きな宝石に似てるので好きなのです。
「深い、夜中のような青なので、夜の真ん中って石なんですよ、これは昔から贈り物として愛されてきました、この色合いが夜の真ん中の特徴ではあります」
「その色が好きなの?」
「汚れが目立ちませんし」
「そういうことじゃなくて」
「気に入ってはいます、本物の石はもっと美しいのかもしれませんが、私はこれで十分に楽しくはなりますから、たぶん私の人生ではかないませんけども、この産地には旅行して見たかった」
「じゃあ、新婚旅行そこにする?」
「いや、そういうので選ばないでくださいよ、旦那様の今後に、あいさつ回りに出向くためにそういったカードは選ぶべきですよ」
「でも俺は君の喜ぶ顔がみたいよ」
「大丈夫ですって、十分楽しめますから」
「君が心から楽しんでくれたらいいなっては思うよ」
「それが領主の義務を放棄することに繋がっても?」
「そういうことじゃないさ、それはしながらも上手いこと楽しんで欲しいかなって」
「旦那様は楽しんでます?」
「僕は…」
「まずはご自分のことを大事に考えて、旦那様が大変ならばみんなも気を使ってしまうのだから、あなたが心から笑顔を、そして誰かに優しさを…幸せを分け与えれるようになってください」
「君はそこにはいないの?」
「えっ?だって私はこんなんですよ」
「そうはいうかもしれないけどもね、君はもうちょっと自分を、そんなことをいうと、俺は君が自分を愛さない分の百倍は君を愛するからね」
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「歴代の彼女さんたちはそれについてどのような」
「ノーコメントで…というか、ここまで心の底を出しているのは君にぐらいだし、こう…君は何か、そういう僕を惹き付けるものがあるよね」
「またたびみたいな臭いしてますかね」
「にゃーん」
「にゃーんじゃなくて」
「さすがに起きたときにビックリしますもん」
なんか引っ付いているなって
「引っ付きたい、なんだったら腕枕したい」
「手が痺れると思うし、公務になりませんよ」
「それでもしたい男心」
「優先するべきは執務ですよ」
「くっ…ここでまさか…でもいいんだい、思ったより、いや、とんでもない時間は確保しているからな」
「体はどうですか?」
「経過は報告しているけども、本当に体が疲れなくなった、そんな疲れている体でもできるようなスケジュール体制、これを変えてないから特にね」
さっさと仕事を終わらせて、サンドイッチ食べる余裕さえある。
「作りたてのタマゴサンドは美味しいと思う」
「それが好きなら、玉子焼サンドも試してみてくださいよ、レタスとか挟んだやつ」
「いいね、それで温かくなったら、外で食べたいね」
「ピクニックでいいんですか?」
「そうそう、庭先でもいいし、ちょっと遠出するのもいいかもしれない、花の時期とかに合わせてさ、その日はロマンチックに行きたいね」
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「君は嬉しくないの?」
「私にはよくわかりません」
「よく…か…」
「ええ、まあ、その言葉が的確ですかね」
「嫌な思いでがそこにもあるんだね」
「ないものってあったかな」
「それは残念、でもつまりは俺が全部そこを書き換えてしまえば、楽しい思い出みんな俺になるんではないか…」
「旦那様は何をしたいんですか?」
「君に好かれたいね、その可愛らしい瞳でじっとこっちを見つめて欲しい。…うん、今みたいに」
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「ここで笑顔は反則だよ」
「そうですかね」
「そうだよ、もう~…君が戸惑って、表情が強張るのはしょうがないところがある、それだけのことが君にはあった、でもそこも変えていけると思ってるんだ」
「変われますかね」
「変われるんじゃないかな」
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「そんなことを考えていたわけ」
「それとは別に、笑顔で無理してもうダメになるのも見たくはありませんから、たぶんどっちかが旦那様に起きるから、さらっとした付き合いでいいと思うんですよ」
そう、それはお互いのために。
「じゃあ、考えて」
「えっ?」
「俺と君が上手くやれる方法」
「私が考えるんですか?」
「こういうのは君の方が上手く考えれる」
「実際に用意しても、それは出来ないからで終わりになりそうだしな」
「それは君の信頼を傷つける行為だし、また逆に俺が出来ないことを君がわざと考えるのも、信用問題じゃん?」
「そうですね」
「それともそれよりも大事なものはある?」
「旦那様に対してはそれはありませんよ、あなたは私の大切な人…」
「その客観的なのが気になるが、今のもう一回聞かせてくれるかな」
「?」
これが無自覚、人の心を的確に揺らしてくる才能。
「そういうのはラブラブチュチュする相手にしか言ってはいけないんだぞ!」
「あれ?旦那様とは違うんでしたっけ?」
よくある疑問。
「違いません!」
ベスト解答
「そうでしたか…」
「そう、ですです!僕は君と歩むことに恐れてはいないよ」
「私は怖いですけどもね」
「なんでさ」
「たまにありません?知らない方が幸せだったみたいなやつ」
「俺は君を知らない人生は嫌だな、もしもそうなるのならば、何としても、こう掻い潜るようにさ、出し抜いてやるぜってなっちゃう」
「それでも私は見ない振りはしますよ」
「なんでさ」
「こうして話を聞くよりも、優秀な旦那様は…」
「朝起きたら体力が回復しているから目覚めがいい、適切な食事、栄養も兼ね備えた有意義な時間を、疲れ目や肩凝りが本当に皆無になったし、不安な激務での腱鞘炎っぽいものも起きてないから、君がここまで変えたんだよね、君しか変えれない、他の人にも変えれたかもしれないけども、最初に変えたのは君である」
「それは良かった」
「その功績は思った以上にでかいし、時間が経過するたびに、これからこの時間と体力で作られた成果は加速していくと思うんだ、その時君は今よりもっと評価される」
「評価は入りませんよ、旦那様が手柄として取ってください」
「どうして?」
「だって教えてありますから、自分でもできるでしょ?」
「君はいらないの?」
「いらない」
「わかった」
「それで名前が上がるのは真っ平ごめんだ」
「では何か欲しいものを言って?そこは必ず必いるし」
「ではこれからも支えさせてください、皆様に善政をお願いします」
「そういうんじゃなくて、君の個人的な奴さ、善政はがんばる、支えるのは…」
「やっぱり困ってますか?」
「困るよ、君を手放せなくなりそうで、いやもうそうなんだけどもね」
困るの理由が違う。
子供のように、影に隠れるように拗ねていると。
「それはダメ」
といって彼女は僕に触れてくる。
どうか弱い僕をお許しください。
そう言ったあとに目を閉じた。
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