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一人で海を眺めることはないけども
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私は海を見てた。
灰色の空、特に鳥も飛んでいない、そんな中を過ごしてた。
「あの~」
そしたら声をかけられた。
「はい?」
「大丈夫ですか?」
「えっ?」
「いえ、さっきからずっと海を見ていたので」
楽しそうな顔で見ていたわけではない、思い詰めた顔した女性を見かけた。
でもその時は約束があったので、そのまま急ぎ、話が終わってからの帰り道も、まだ彼女が海を見ていたのだ。
「ちょっと色々とありましたので」
「色々ですか」
「はい、色々です」
「ちゃんと食べてますか?」
「えっ?」
思い起こすが、とりあえず適当に口に入れる、そんな感じだ。
「それはいけない、ちょっと待ってくださいね」
そういって彼は、コンビニに行ってきたらしい、食べ物と飲み物が袋にいっぱい入ってる。
「大変なときこそ、食べてください」
「ありがとうございます」
「人生には辛いことも悲しいこともありますから」
「それは…確かにそうですね」
「僕でよかったら、話も聞きますから!」
「私はそんなひどい顔してます?」
「ええ、悲しそうな顔をしている」
「そうか…うん、悲しいことがあったんです、だからどこかにって、海が見えたら、海ばかり見ていた」
「いつからです?」
「今は…三時間ぐらいかな、はっはっはっ、なんか知らないうちに、こんな時間が経っちゃったよ」
「買ってきたおにぎりまずは食べたら、温かいところにまず行きません?風邪引きますよ、今日の風は少し冷たいし」
「いつもなら、寒いところも嫌いなのにね、不思議ね」
「もう、さっさと行きますよ」
普段ならばこういうのには縁がない、声もかけられることもないし、声をかけられても断るだろう。
たぶんこの時は、どうでも良かったんだろう。
「この辺の…人じゃないですね」
「うん、そうですね、さすがに地元にいたら気が滅入るので」
「あぁ、そういう。こっちは詳しいんですか?」
「駅前辺りはね」
「僕は春から仕事でこっちに住んでます」
「言葉がこちらの人とも違うものね」
「馴染もうと頑張っているんですがね」
「無理しないでもいいと思いますよ、そういうのもちゃんと見てくれると思うし」
「こっちにはまだ友達がいなくて、飲み仲間はいるんですけども」
「お酒は…飲みすぎないでね」
「そうなんですが、美味しいお酒にはちょっと弱いです」
「それでどこに行くの?」
「本屋の隣の…」
「ああ、あの喫茶店ね、あそこはいいお店よ」
「もしかしたら知らない時もすれ違っていたかもしれませんね」
「そうかもね」
「本を買ったあとに、二階の喫茶室で読むのが好きなんです」
「私はケーキセットが好きよ」
「あれもいいですよね、お手頃価格で日替わり三種類のケーキから選べる」
「コーヒー派?それとも紅茶?」
「その時によりますが、あなたは?」
「私は今日は紅茶かしらね、さすがにちょっと体を冷やしすぎたわ」
いつも座る席とは今日は違う、二人できたし、話も積もるだろうからと、奥のシートに座る。
「せっかくだからいつもと違うものも頼むのもいいかもしれませんよ」
「それも面白そうね」
「でしょ?気分を変えることも大事ですから」
「あなたは…優しい人ね」
「そうですかね」
「そうよ、人が良いと言えるわ。普通はこんな人間に話しかけたり、心配したりしないものよ」
「それはあまりにも寂しい」
「寂しいかもしれないけども、もう、どこのお坊っちゃんよ、騙されてからじゃ遅いんだからね。私がそうだったらどうするのよ」
「あなたはそんな風には見えませんよ」
「…あなたは私を助けたのだから、もうそんな目に合ってはいけない」
「なんです?」
「世の中には優しい顔をして、取り入るような人間は多いのよ」
「それはわかります」
「あなたはそんな目に合わないで、もしもなんかあったら、今度は私が助けるわ」
「えっ?」
「そんなもんよ、うん、そのぐらいじゃないとわりに合わないわよ。私は約束する、あなたに何かあったらその時は必ずあなたを助けに行くと…そのぐらいね…嬉しかったのよ」
「そうですか」
すると彼女のお腹が鳴った。
「ごめん」
「いいんですよ、やっぱり抱えているものを話したら、体の方も一区切りついたっていうか」
「そうね、それにはちょっとビックリするし、恥ずかしい…」
「健康的でいいじゃないですか」
サンドイッチセットと、食後に余裕があったらケーキを食べようという話をした。
「ごめんね」
「なんです、急に」
「なんかごめんって言いたくなった」
「なんでですか?」
彼はコーヒーを飲んでいる。
「こういう話ってさ、あんまり聞いてて楽しいわけじゃないじゃない」
「そうですけども」
「でしょ?」
「話すことでスッキリすることもあるし、前向きになることもある」
「あるけどもさ、うん、あるよ、それは、でも聞いたら…ちょっと嫌な気分になる、それを相手に与えてまで、私は解決したいとはあまり思えなくて」
「あなたはいい人ですね」
「そう?そんなでもないわ」
サンドイッチはトマトとレタスとハムだ。野菜は新鮮でしゃきしゃき、マヨネーズもばっちり。
「悩みに対して真面目だから」
「真面目に考えなきゃダメなやつだよ。本来は何も起きないことが望ましい」
「ですけどもね。あなたに抱えられた悩みは幸せですよ」
「話していけばこちらの人ではないのがよくわかるわね、こちらでは育たない考え方の人だもの」
「そうですかね」
「そうよ、というか、こっちに赴任は、本社に戻ると役職つくとかそういうのか、頑張りなさいよ」
「ありがとうございます」
「そういうチャンスはどんどん掴んだ方がいいわ、後からって思っているとね、その話自体も無くなるから」
「あなたもそんな経験が?」
「あるよ、私の場合はちゃんと挑めたからね、そこは後悔はない、ないからこそ、そんな話がある場合は頑張ってほしいかな」
「僕は流されるように来てしまったところがあるから、そんな強さは羨ましいかな」
「そうなの?」
「これがいいんじゃないか?って言われたものに乗ってきた感じですかね」
「それでも上手く行くからすごいと思う。そうやってたとしても、なかなか上手く行かないものよ」
「そうですね、それはありがたいです」
そこで彼女はニッコリと微笑んだ。
「あっ、なんか逆ですね。僕があなたの話を聞くつもりだったのに」
「それでいいんじゃないの?そういうこともあるわよ」
「いやいや、ないですって」
その後は和やかな話になった。
お会計時に彼女は話を聞いてくれたからその分として出すという。
「私、もう一回頑張ってみるよ」
「そうですか、それは良かった」
「じゃあ、行くね」
笑って別れる彼女に手を振る男。
しかし、別れると、寂しさが男の心に生まれていた。
(これは何だろう)
さっきまであったものが、ない。そんな感覚だ。
それでも明日は来てしまうし、仕事、そして休日を挟んで、また仕事になるが。
(連絡先、聞いておけば良かった)
また彼女が海を見ていたら、嫌なんだけども、それでもいないかと見てしまう。
あの時会った曜日の時間になると、彼女がいないか見てしまう。
どこの誰かも知らない女性、だったからこそ、あんなに抱えている話をしてくれたのかもしれないが、もう一度会いたいな…という気分になる。
イルミネーションという奴が、11月を彩り出す、来月はもう12月なのだから、そりゃあ飾り付けられるし。男女で歩く人たちが増えたななんて見ながら、一人歩く。
横断歩道で待っていたら、彼女が、この間話した喫茶室があるケーキ屋に向かうのが見えた。
今すぐケーキ屋さんに行かなくちゃ、今日の予定はある程度考えてはいたが、そこは一人の休日融通がきく。
やきもきしながら信号を待つ、この信号、もう店は前なのに、長いのである。
あぁんもう!
一緒に待っていたお母さんと幼稚園ぐらいの子供がいたが、子供が、そのやきもきしている男のあぁんもう!動きをじっと見ている。
青になる、メロディが流れたら、早足でケーキ屋に、そして階段もかけ上がると、ちょうど日替わりケーキをどうしようかと、冷蔵のショーケースを見ていた彼女と目があった。
「あっ…こんにちは」
「こんにちは、どうしたの?すごい勢いでかけ上がってきて、トイレなら」
「あなたを見かけたので」
「そうなの?よかったら、また一緒に食べる?」
「はい!」
そこで話をして、帰り際勇気をもって連絡先を尋ねて、交換することができた。
そこから、毎日「おはよう」や「おやすみ」、「いってらっしゃい」と「お帰りなさい」と掛け合って、時間が合えば、日替わりケーキセットの喫茶室や、それ以外の場所も二人で行くようになった。
彼女はもう一人で海を眺めることはないけども、まだ抱えているものがある。
それがいつの日か…
「どうしたの?」
「いえ、俺はあなたがいてくれたら幸せだなって」
「そう、ありがとう。私はあなたが好きなことをしてくれたら、幸せよ」
「それって両立すると思いません?」
「そうかもね」
僕はこの人とこれからも上手くやっていけたらいいと思う。
「今から手を繋いでいいですか」
「へぇ?」
驚く彼女は固まっている。
「私の手は冷たいし…」
「俺の手は温かいですよ、ほら」
「ふぁ」
彼女のこんな顔を始めてみるかもしれない。
「なんか得したな」
「何がよ」
「君の意外な一面が見れてさ」
「それはちょっと趣味が悪いわよ」
歩く人たちも男女で楽しそうにしている割合が多くなっている。
まっ、この二人もそれに含まれるわけなのだが…
「クリスマスは、予約しても?」
「他に過ごす人はいないの?」
「俺はあなたと過ごしたいので」
「じゃあ、あけておくわ」
「よろしくお願いします」
そんな話をした次から、彼女がいつもとは違う雰囲気で待ち合わせの場所にいたりするのだ。
「なんかいつもと違いません」
「おかしいかな?」
「いえ、可愛いので」
「それなら良かったんだけども」
「あれ?もしかして…」
「そうね、似合わないとは思ったんだけども、あなたと会うとき服、ちょっと変えたくなったのよ」
「へぇ~」
「やっぱりおかしいんじゃないの」
「可愛いですよ、僕の彼女ですって紹介したくなっちゃう」
「まだ彼女ではないもん」
「じゃあ、なってくださいよ」
「…」
「なんです、意外そうな顔して」
「クリスマスってそういうこと…」
「そうですよ。あれ?気づいてなかったんですか?」
頬笑む彼と、動揺する彼女。
「年始年末は帰省しますから、お土産期待しててくださいね、後、写真撮影しません?」
「えっ?どうして?」
「ラブラブっぷりをアピールしたいんで、後、仕事に疲れたら見たい」
それで体に残っている疲労は目減りすると、体感での測定はでています。
自撮りで撮影するのだが…
「あっ、もっとくっつかないといい感じにならないですね」
彼のペースで構図は決まった。
ドキドキドキドキ…
「あれ?どうしました」
「あわわわわ…」
こういう彼女がとても好きなので、落ち着くまでじっくり待つと。
「じゃあ、気を取り直していきましょう」
と戻る。
「はい、はぐれないようにしようか」
そこで手を繋ぐ。
「あわわわわ…」
こんな調子が二人の関係。
そのうち海を見ていたあの日も笑い話になるのではないか、そう思える素敵な関係であった。
灰色の空、特に鳥も飛んでいない、そんな中を過ごしてた。
「あの~」
そしたら声をかけられた。
「はい?」
「大丈夫ですか?」
「えっ?」
「いえ、さっきからずっと海を見ていたので」
楽しそうな顔で見ていたわけではない、思い詰めた顔した女性を見かけた。
でもその時は約束があったので、そのまま急ぎ、話が終わってからの帰り道も、まだ彼女が海を見ていたのだ。
「ちょっと色々とありましたので」
「色々ですか」
「はい、色々です」
「ちゃんと食べてますか?」
「えっ?」
思い起こすが、とりあえず適当に口に入れる、そんな感じだ。
「それはいけない、ちょっと待ってくださいね」
そういって彼は、コンビニに行ってきたらしい、食べ物と飲み物が袋にいっぱい入ってる。
「大変なときこそ、食べてください」
「ありがとうございます」
「人生には辛いことも悲しいこともありますから」
「それは…確かにそうですね」
「僕でよかったら、話も聞きますから!」
「私はそんなひどい顔してます?」
「ええ、悲しそうな顔をしている」
「そうか…うん、悲しいことがあったんです、だからどこかにって、海が見えたら、海ばかり見ていた」
「いつからです?」
「今は…三時間ぐらいかな、はっはっはっ、なんか知らないうちに、こんな時間が経っちゃったよ」
「買ってきたおにぎりまずは食べたら、温かいところにまず行きません?風邪引きますよ、今日の風は少し冷たいし」
「いつもなら、寒いところも嫌いなのにね、不思議ね」
「もう、さっさと行きますよ」
普段ならばこういうのには縁がない、声もかけられることもないし、声をかけられても断るだろう。
たぶんこの時は、どうでも良かったんだろう。
「この辺の…人じゃないですね」
「うん、そうですね、さすがに地元にいたら気が滅入るので」
「あぁ、そういう。こっちは詳しいんですか?」
「駅前辺りはね」
「僕は春から仕事でこっちに住んでます」
「言葉がこちらの人とも違うものね」
「馴染もうと頑張っているんですがね」
「無理しないでもいいと思いますよ、そういうのもちゃんと見てくれると思うし」
「こっちにはまだ友達がいなくて、飲み仲間はいるんですけども」
「お酒は…飲みすぎないでね」
「そうなんですが、美味しいお酒にはちょっと弱いです」
「それでどこに行くの?」
「本屋の隣の…」
「ああ、あの喫茶店ね、あそこはいいお店よ」
「もしかしたら知らない時もすれ違っていたかもしれませんね」
「そうかもね」
「本を買ったあとに、二階の喫茶室で読むのが好きなんです」
「私はケーキセットが好きよ」
「あれもいいですよね、お手頃価格で日替わり三種類のケーキから選べる」
「コーヒー派?それとも紅茶?」
「その時によりますが、あなたは?」
「私は今日は紅茶かしらね、さすがにちょっと体を冷やしすぎたわ」
いつも座る席とは今日は違う、二人できたし、話も積もるだろうからと、奥のシートに座る。
「せっかくだからいつもと違うものも頼むのもいいかもしれませんよ」
「それも面白そうね」
「でしょ?気分を変えることも大事ですから」
「あなたは…優しい人ね」
「そうですかね」
「そうよ、人が良いと言えるわ。普通はこんな人間に話しかけたり、心配したりしないものよ」
「それはあまりにも寂しい」
「寂しいかもしれないけども、もう、どこのお坊っちゃんよ、騙されてからじゃ遅いんだからね。私がそうだったらどうするのよ」
「あなたはそんな風には見えませんよ」
「…あなたは私を助けたのだから、もうそんな目に合ってはいけない」
「なんです?」
「世の中には優しい顔をして、取り入るような人間は多いのよ」
「それはわかります」
「あなたはそんな目に合わないで、もしもなんかあったら、今度は私が助けるわ」
「えっ?」
「そんなもんよ、うん、そのぐらいじゃないとわりに合わないわよ。私は約束する、あなたに何かあったらその時は必ずあなたを助けに行くと…そのぐらいね…嬉しかったのよ」
「そうですか」
すると彼女のお腹が鳴った。
「ごめん」
「いいんですよ、やっぱり抱えているものを話したら、体の方も一区切りついたっていうか」
「そうね、それにはちょっとビックリするし、恥ずかしい…」
「健康的でいいじゃないですか」
サンドイッチセットと、食後に余裕があったらケーキを食べようという話をした。
「ごめんね」
「なんです、急に」
「なんかごめんって言いたくなった」
「なんでですか?」
彼はコーヒーを飲んでいる。
「こういう話ってさ、あんまり聞いてて楽しいわけじゃないじゃない」
「そうですけども」
「でしょ?」
「話すことでスッキリすることもあるし、前向きになることもある」
「あるけどもさ、うん、あるよ、それは、でも聞いたら…ちょっと嫌な気分になる、それを相手に与えてまで、私は解決したいとはあまり思えなくて」
「あなたはいい人ですね」
「そう?そんなでもないわ」
サンドイッチはトマトとレタスとハムだ。野菜は新鮮でしゃきしゃき、マヨネーズもばっちり。
「悩みに対して真面目だから」
「真面目に考えなきゃダメなやつだよ。本来は何も起きないことが望ましい」
「ですけどもね。あなたに抱えられた悩みは幸せですよ」
「話していけばこちらの人ではないのがよくわかるわね、こちらでは育たない考え方の人だもの」
「そうですかね」
「そうよ、というか、こっちに赴任は、本社に戻ると役職つくとかそういうのか、頑張りなさいよ」
「ありがとうございます」
「そういうチャンスはどんどん掴んだ方がいいわ、後からって思っているとね、その話自体も無くなるから」
「あなたもそんな経験が?」
「あるよ、私の場合はちゃんと挑めたからね、そこは後悔はない、ないからこそ、そんな話がある場合は頑張ってほしいかな」
「僕は流されるように来てしまったところがあるから、そんな強さは羨ましいかな」
「そうなの?」
「これがいいんじゃないか?って言われたものに乗ってきた感じですかね」
「それでも上手く行くからすごいと思う。そうやってたとしても、なかなか上手く行かないものよ」
「そうですね、それはありがたいです」
そこで彼女はニッコリと微笑んだ。
「あっ、なんか逆ですね。僕があなたの話を聞くつもりだったのに」
「それでいいんじゃないの?そういうこともあるわよ」
「いやいや、ないですって」
その後は和やかな話になった。
お会計時に彼女は話を聞いてくれたからその分として出すという。
「私、もう一回頑張ってみるよ」
「そうですか、それは良かった」
「じゃあ、行くね」
笑って別れる彼女に手を振る男。
しかし、別れると、寂しさが男の心に生まれていた。
(これは何だろう)
さっきまであったものが、ない。そんな感覚だ。
それでも明日は来てしまうし、仕事、そして休日を挟んで、また仕事になるが。
(連絡先、聞いておけば良かった)
また彼女が海を見ていたら、嫌なんだけども、それでもいないかと見てしまう。
あの時会った曜日の時間になると、彼女がいないか見てしまう。
どこの誰かも知らない女性、だったからこそ、あんなに抱えている話をしてくれたのかもしれないが、もう一度会いたいな…という気分になる。
イルミネーションという奴が、11月を彩り出す、来月はもう12月なのだから、そりゃあ飾り付けられるし。男女で歩く人たちが増えたななんて見ながら、一人歩く。
横断歩道で待っていたら、彼女が、この間話した喫茶室があるケーキ屋に向かうのが見えた。
今すぐケーキ屋さんに行かなくちゃ、今日の予定はある程度考えてはいたが、そこは一人の休日融通がきく。
やきもきしながら信号を待つ、この信号、もう店は前なのに、長いのである。
あぁんもう!
一緒に待っていたお母さんと幼稚園ぐらいの子供がいたが、子供が、そのやきもきしている男のあぁんもう!動きをじっと見ている。
青になる、メロディが流れたら、早足でケーキ屋に、そして階段もかけ上がると、ちょうど日替わりケーキをどうしようかと、冷蔵のショーケースを見ていた彼女と目があった。
「あっ…こんにちは」
「こんにちは、どうしたの?すごい勢いでかけ上がってきて、トイレなら」
「あなたを見かけたので」
「そうなの?よかったら、また一緒に食べる?」
「はい!」
そこで話をして、帰り際勇気をもって連絡先を尋ねて、交換することができた。
そこから、毎日「おはよう」や「おやすみ」、「いってらっしゃい」と「お帰りなさい」と掛け合って、時間が合えば、日替わりケーキセットの喫茶室や、それ以外の場所も二人で行くようになった。
彼女はもう一人で海を眺めることはないけども、まだ抱えているものがある。
それがいつの日か…
「どうしたの?」
「いえ、俺はあなたがいてくれたら幸せだなって」
「そう、ありがとう。私はあなたが好きなことをしてくれたら、幸せよ」
「それって両立すると思いません?」
「そうかもね」
僕はこの人とこれからも上手くやっていけたらいいと思う。
「今から手を繋いでいいですか」
「へぇ?」
驚く彼女は固まっている。
「私の手は冷たいし…」
「俺の手は温かいですよ、ほら」
「ふぁ」
彼女のこんな顔を始めてみるかもしれない。
「なんか得したな」
「何がよ」
「君の意外な一面が見れてさ」
「それはちょっと趣味が悪いわよ」
歩く人たちも男女で楽しそうにしている割合が多くなっている。
まっ、この二人もそれに含まれるわけなのだが…
「クリスマスは、予約しても?」
「他に過ごす人はいないの?」
「俺はあなたと過ごしたいので」
「じゃあ、あけておくわ」
「よろしくお願いします」
そんな話をした次から、彼女がいつもとは違う雰囲気で待ち合わせの場所にいたりするのだ。
「なんかいつもと違いません」
「おかしいかな?」
「いえ、可愛いので」
「それなら良かったんだけども」
「あれ?もしかして…」
「そうね、似合わないとは思ったんだけども、あなたと会うとき服、ちょっと変えたくなったのよ」
「へぇ~」
「やっぱりおかしいんじゃないの」
「可愛いですよ、僕の彼女ですって紹介したくなっちゃう」
「まだ彼女ではないもん」
「じゃあ、なってくださいよ」
「…」
「なんです、意外そうな顔して」
「クリスマスってそういうこと…」
「そうですよ。あれ?気づいてなかったんですか?」
頬笑む彼と、動揺する彼女。
「年始年末は帰省しますから、お土産期待しててくださいね、後、写真撮影しません?」
「えっ?どうして?」
「ラブラブっぷりをアピールしたいんで、後、仕事に疲れたら見たい」
それで体に残っている疲労は目減りすると、体感での測定はでています。
自撮りで撮影するのだが…
「あっ、もっとくっつかないといい感じにならないですね」
彼のペースで構図は決まった。
ドキドキドキドキ…
「あれ?どうしました」
「あわわわわ…」
こういう彼女がとても好きなので、落ち着くまでじっくり待つと。
「じゃあ、気を取り直していきましょう」
と戻る。
「はい、はぐれないようにしようか」
そこで手を繋ぐ。
「あわわわわ…」
こんな調子が二人の関係。
そのうち海を見ていたあの日も笑い話になるのではないか、そう思える素敵な関係であった。
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