873 / 934
僕の耳に不満かあるの?
しおりを挟む
耳かきの練習台にどうも選ばれてしまった。
(どうして僕に?)
と思ったのだが、金がないのはとても悲しいことだ、何しろ拒否権がないのだから。
細くて長いが、ほぼ一回の耳掃除で使いきってしまう丸み耐久性、この耳かきで、技術をものにしてやると、僕の同級生は思ってるようなのだ。
「耳の中ってどうなってるの?」
「汚いよ、あっ、耳かきが中に入っているときはしゃべらないでね」
コミュニケーションが綿密に必要なのに、耳かきが中を進んでいるときは、話すことを許されないだなんて、歯医者さんでも痛かったら、左手あげてくださいね。
そんなルールが存在しているんだぞ!
「はいはい、じゃあ、動かないでね」
耳の中、毛に耳かきが当たっているのがわかり、それをかき出すためにカリカリっと動き始めた。
おや、なんだか、気持ちいいぞ、もっとガリガリにやられて、痛い思いをするのかと思ったが、これはいい、もっとやれ!
「毛が多いね」
「ほっとけよ」
「ピンとしてて、こういうのは耳の中で伸びてくると痛いぞ」
「なんか前にそういうのあったよ」
「じゃあ、毛も剃ろう」
だがその前に、目に見えている耳垢を全部消し去ってやりたい。
「普段耳掃除するの?」
「しない」
「しないなんてもったいないね」
あぁ、そこ気持ちいい!
「ほら、こんなにカリカリになってるところあるんだから、定期的に耳を掃除した方がいいね」
「自分でやると下手だし、誰かにやってもらうにはお金がかかるんだよ」
「確かにそうだ」
「でしょ?だからお金がない僕にとっては耳かきは贅沢なの」
カサッ
そんなときにそんな音がなったものだから、耳かきの手も止まる。
カチ
ライトをつけて、奥の、その音の正体を探る。
お化けみたいな扱いだな。
むしろそのお化け見たさに、光を当てていのかもしれないが。
「こういうことをしていると、汚い耳の方が燃えてくる時はあるのかな?って思ったんだけども、それは自分にはなかったんだ」
「自分探しのために耳かきでもしているのかい?」
「おもしろいことを言うね」
そんなに面白かったのだろうか。
「耳かきをすると、会話なんてできないし、集中して、耳の中を掃除しなきゃらないと思ってさ、無になるんだよね」
しかし、無は自分を静かな世界に引き込むことはなかった。
「耳に対して独り言が多くなったよ、もちろん心の中だよ」
このお客さんの耳、外側の窪みを何回も往復してもまだ垢が出る、もう少しセーブしないとと思ったら。
「もっと強くやってくれませんかね、ここは確かにのんびりするにはいい場所ですが、私は耳かきが上手いときいて、休日をすごしにきたのです」
「そんな耳かき愛好家っているんですか?」
「いるよ、あんまり感情を外に出さないって言うか、熱心な耳かき愛好家は自分のおすすめの耳かきを渡して、愛情表現してくるから」
「うわ~」
「私はそこまで熱くないんだけどもね、どうも好きであることには違いないんだよね」
「だからこうなったと」
「あなたは口が固いというのも、被験者に選ばれた理由だね」
「それはどういう」
「やはりね、これは少数受けする嗜好なんでね、気持ち悪いという人はいるんだよ」
「僕はそこまではないな」
「でもさ、自分の不快感の限度というのは事前にわかるものもあれば、そうなって初めて出てくる、わかるものもあるから…あなたはそうではないからこそ、正直ホッとしているし」
カサッ
「おや、ちょっと黙っててもらおうか」
音で何かに気がついて、耳の中を改めて覗きこむ。
手は動かないから、おそらく視線を動かしているのだろう。
何かは見つかったようで、耳の中をまたもぞもぞと、さっきとは違って、撫でるように…いや、これは、これは…早く自由にして、見て、僕の足の指、体を動かしたくなる我慢が足の指に出ちゃってるから!
ボロっ
「おお、取れたよ、大きいし、とても汚ならしい」
その表現に恥ずかしくなってしまう。
「すいません、すいません、これからはきちんと耳掃除はいたします」
「そこは個人の自由だから任せるよ」
耳かきをされる、期待してなかったが、終わった後にもらった報酬はとても良かった。
「無駄遣いはしないように、後もしも今後も耳掃除を引き受けてくれるのならば、食事もだそう」
「なんで食事も関係するんですか?」
「それは耳の中にも関係するからだよ」
僕はこうして、食えるようになるまで耳掃除をされることで繋いでた時期がある。
「最近さ、耳掃除に呼ばれなくなったんだけども、僕の耳に不満でもあるの?」
「そっちは仕事で忙しいだろうし、人間関係も充実しているようなら、優先した方がいいよ」
「他の人間の耳を掃除…なんてのはしてないよね?」
「残念ながら、そう簡単には耳掃除をするような相手は見つからないんだよ。今は掃除動画を見ながら心を落ち着かせているが、それでも我慢が出来そうにないなら、耳かき屋でも始めようかな」
「それは…ダメだよ」
「えっ?」
「休みはいつ?僕も合わせるからさ、前の日しっかり長湯してくるから、耳の中も完璧に仕上げて見せるさ」
「私も変わってるが、あなたもかなりだね」
「それは誉め言葉だね、後、ケーキ買っていくから、一緒に食べよう」
「わかった、ではその時間に」
「うん」
今では昔と違い、この二人にとっては耳かきは嗜とバイト以外の意味も持ってる、それが本当によくわかる。
(どうして僕に?)
と思ったのだが、金がないのはとても悲しいことだ、何しろ拒否権がないのだから。
細くて長いが、ほぼ一回の耳掃除で使いきってしまう丸み耐久性、この耳かきで、技術をものにしてやると、僕の同級生は思ってるようなのだ。
「耳の中ってどうなってるの?」
「汚いよ、あっ、耳かきが中に入っているときはしゃべらないでね」
コミュニケーションが綿密に必要なのに、耳かきが中を進んでいるときは、話すことを許されないだなんて、歯医者さんでも痛かったら、左手あげてくださいね。
そんなルールが存在しているんだぞ!
「はいはい、じゃあ、動かないでね」
耳の中、毛に耳かきが当たっているのがわかり、それをかき出すためにカリカリっと動き始めた。
おや、なんだか、気持ちいいぞ、もっとガリガリにやられて、痛い思いをするのかと思ったが、これはいい、もっとやれ!
「毛が多いね」
「ほっとけよ」
「ピンとしてて、こういうのは耳の中で伸びてくると痛いぞ」
「なんか前にそういうのあったよ」
「じゃあ、毛も剃ろう」
だがその前に、目に見えている耳垢を全部消し去ってやりたい。
「普段耳掃除するの?」
「しない」
「しないなんてもったいないね」
あぁ、そこ気持ちいい!
「ほら、こんなにカリカリになってるところあるんだから、定期的に耳を掃除した方がいいね」
「自分でやると下手だし、誰かにやってもらうにはお金がかかるんだよ」
「確かにそうだ」
「でしょ?だからお金がない僕にとっては耳かきは贅沢なの」
カサッ
そんなときにそんな音がなったものだから、耳かきの手も止まる。
カチ
ライトをつけて、奥の、その音の正体を探る。
お化けみたいな扱いだな。
むしろそのお化け見たさに、光を当てていのかもしれないが。
「こういうことをしていると、汚い耳の方が燃えてくる時はあるのかな?って思ったんだけども、それは自分にはなかったんだ」
「自分探しのために耳かきでもしているのかい?」
「おもしろいことを言うね」
そんなに面白かったのだろうか。
「耳かきをすると、会話なんてできないし、集中して、耳の中を掃除しなきゃらないと思ってさ、無になるんだよね」
しかし、無は自分を静かな世界に引き込むことはなかった。
「耳に対して独り言が多くなったよ、もちろん心の中だよ」
このお客さんの耳、外側の窪みを何回も往復してもまだ垢が出る、もう少しセーブしないとと思ったら。
「もっと強くやってくれませんかね、ここは確かにのんびりするにはいい場所ですが、私は耳かきが上手いときいて、休日をすごしにきたのです」
「そんな耳かき愛好家っているんですか?」
「いるよ、あんまり感情を外に出さないって言うか、熱心な耳かき愛好家は自分のおすすめの耳かきを渡して、愛情表現してくるから」
「うわ~」
「私はそこまで熱くないんだけどもね、どうも好きであることには違いないんだよね」
「だからこうなったと」
「あなたは口が固いというのも、被験者に選ばれた理由だね」
「それはどういう」
「やはりね、これは少数受けする嗜好なんでね、気持ち悪いという人はいるんだよ」
「僕はそこまではないな」
「でもさ、自分の不快感の限度というのは事前にわかるものもあれば、そうなって初めて出てくる、わかるものもあるから…あなたはそうではないからこそ、正直ホッとしているし」
カサッ
「おや、ちょっと黙っててもらおうか」
音で何かに気がついて、耳の中を改めて覗きこむ。
手は動かないから、おそらく視線を動かしているのだろう。
何かは見つかったようで、耳の中をまたもぞもぞと、さっきとは違って、撫でるように…いや、これは、これは…早く自由にして、見て、僕の足の指、体を動かしたくなる我慢が足の指に出ちゃってるから!
ボロっ
「おお、取れたよ、大きいし、とても汚ならしい」
その表現に恥ずかしくなってしまう。
「すいません、すいません、これからはきちんと耳掃除はいたします」
「そこは個人の自由だから任せるよ」
耳かきをされる、期待してなかったが、終わった後にもらった報酬はとても良かった。
「無駄遣いはしないように、後もしも今後も耳掃除を引き受けてくれるのならば、食事もだそう」
「なんで食事も関係するんですか?」
「それは耳の中にも関係するからだよ」
僕はこうして、食えるようになるまで耳掃除をされることで繋いでた時期がある。
「最近さ、耳掃除に呼ばれなくなったんだけども、僕の耳に不満でもあるの?」
「そっちは仕事で忙しいだろうし、人間関係も充実しているようなら、優先した方がいいよ」
「他の人間の耳を掃除…なんてのはしてないよね?」
「残念ながら、そう簡単には耳掃除をするような相手は見つからないんだよ。今は掃除動画を見ながら心を落ち着かせているが、それでも我慢が出来そうにないなら、耳かき屋でも始めようかな」
「それは…ダメだよ」
「えっ?」
「休みはいつ?僕も合わせるからさ、前の日しっかり長湯してくるから、耳の中も完璧に仕上げて見せるさ」
「私も変わってるが、あなたもかなりだね」
「それは誉め言葉だね、後、ケーキ買っていくから、一緒に食べよう」
「わかった、ではその時間に」
「うん」
今では昔と違い、この二人にとっては耳かきは嗜とバイト以外の意味も持ってる、それが本当によくわかる。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる