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でも大丈夫
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「あれ?珍し、あいつらいないの?」
「なんでも、教官としてのお仕事と、誇りをかけた大事な戦いがあるとか言ってましたね」
「なんだよ、誇りをかけた大事な戦いって、でもまあ、あいつらのことだから、またくだらないことなんだろうな」
「違いない」
なんてbarの常連さんには言われていた。
「それを汚すものは誰も許されない」
「本当にそれだね」
覆木(おおうき)と瀬旭(せきょく)であるが、二人は満身創痍、傷もあちらこちらにあるではないか。
「今の俺たちに点数をつけるなら?」
「6、70点かな」
瀬旭の質問に覆木は苦笑いしながら答える。
「それは上手くいってる方だよ」
二人は若手の指導という形で、それぞれの技術を教えるてほしいと頼まれてここにいたのだが。
「その後、夜には世紀の一戦でも観戦しようかなんて話をしていたのに」
「珍しくそんなこと約束したからじゃないの?」
「だからこういうことが起きたって、それはなんか嫌だな」
「嫌だって言ってもさ、実際に起こってしまったんだからしょうがないじゃない?」
カツーンカツーン
「わざと足音立ててません?」
「相手を追い詰めるのが好きなんだろうね」
その指導を頼まれた生徒の中に、二人を狙う刺客が混ざっていたようだ。
いつもの武装はボディチェックで預けてしまっている。
「だから逃げていると思われるんだろうな」
「こういう業界は、緊急のための隠し武器っていうのがこっそりと用意されているものさ」
何回かハズレを引いたが、ようやく二人が欲しいものが手に入ったので。
「それじゃあ、反撃開始と行きましょうか」
「いいね、向こうもビックリするんじゃないの」
「魔法が解ける前にお家に戻ると約束したわけだからさ、ここは頑張りましょうね」
軽口は叩かれるが、空気は張りつめている。
今日もそんな感じで、二人は楽しむ。
「パーティーですか」
「はい、でも正式なものではなく、カジュアルなものなんで」
腰木(こしぎ)と秋澄(あきすみ)は吸血鬼のとあるグループから、そんな招待を受けた。
「そちらがいいというのでしたら、こちらからは断りませんが」
などと腰木がいったのだが、そのカジュアルなパーティーに着ていくような衣装を二人は持ってなかったので。
「申し訳ありませんが…」
と断ろうとすると。
「大丈夫ですよ、担当のスタイリストもおりますし」
急に説明をしてくれる人のテンションが上がった。
「実はですね、ほとんどこういうパーティーに招待される方は、スタイリストがついている方ばかりでして、そうではない方のスタイリストやプランナーの私というのはあまり出番がないのですよ」
それでもお給料はちゃんと出るのだが。
「こう…やりがいがですね、欲しいんですよ」
そういってスタイリストが今までゲストを着飾った写真などを見せてくれて。
「前職に比べたら予算とかかなり使えるんですけども、スタイリストがいないフリーのゲストって、今年になってからまだ一人もおられなくて」
今年はもう10月です。
「ですから出来ればその…」
「そういう理由ならさ、しょうがなくない?俺は男だからそうでもないが、秋澄はどうよ?」
「ある程度ならば付き合いますよ」
「いいんですか、任せてください、スタイリストにも連絡します。何かこの機会に着てみたいドレスとか、色とか形とかありますかね!」
「そういうのは特にありませんが」
「えっ?じゃあ、お任せとかは可能ですか」
「私はそういうのはわかりませんので、よろしければお任せを」
「ヒャッホー!」
プランナーは弾け飛びそうだ。
そしてスタイリストが合流すると。
「この方ですか?」
「はい、こちらの秋澄さんがお任せで…」
「首元、出したいぐらいお綺麗ですが、どうしますか?」
「?」
「ええっと相手を募集したい方は、首元を強調するといいんですよ、そうでもない場合は未婚も既婚も首元は出さないようにするって感じですね」
「では出さない方向で」
「ドレスのサイズも、かなり色んなものが用意されている号でいけるので、あ~何を着てもらおうか」
秋澄本人より、プランナーとスタイリストが毎日寝不足になり、こういうのはどうだ、いや、これは?あ~迷うと。
その日に合わせて、趣味と実益を兼ねた暑い討論が繰り広げられた。
「というわけで互いのプレゼンをぶつけ合わせた結果決まりましたのが、こちらになります」
ドレスの写真が送られてきた。
「一度衣装合わせもしたいので、いつお時間がよろしいでしょうか?」
腰木と秋澄は時間を取り、衣装を合わせに言ったのだが。
「衣装を合わせましたが、どうしよう、実際に着てもらったら、また悩んじゃう」
「わかる、まだ行ける気がしてきた」
次、ゲストがいつ来るかわからないプランナーとスタイリストは、悔いが残らないようにというか、自分達が抱える欲求を消化させようと。
「アクセサリーもこの色より、控えめにしたほうが映えるんじゃないかしら」
「わかる」
秋澄はそれにきっちりと付き合う感じ。
「すいませんね」
他のスタッフが腰木に話しかける。
「構いませんよ」
「彼女たちは若くて腕もいいのでスカウトされたのですが、なかなかフリーのゲスト様というのがおられないので、どうしてもお仕事になると力を入れすぎてしまうって感じで」
「その方がいいんですよ」
「そうですかね」
「そうです、そうです、そういう女性の方が輝いて見える」
「あなたは珍しいお方のようだ、てっきり、その~付き合っておられるのかと」
「いやいや、それはないですよ。んでもってどっちも付き合ってる相手は今はいませんし」
「その話はパーティーでしてもよろしいですかね?」
「それぐらいは、でもだからといって相手を紹介するとか、そこは勘弁してくださいよ」
「これは手強い、あなた方二人ならば、良縁を結びたい一族もいると思うのですが、気が変わったらいつでもおっしゃってくださいね」
ピッ
「あら?どうしたの?」
シャドウスワローが衣装合わせの休憩中に遊びに来た。
ピッ?
なんか今日はいつもと違うねというニュアンスの鳴き方をした。
「私が珍しい格好をしているからかな、いつもはこんな格好をしないものね」
ピッ
ああそれでか…
「秋澄さん~!休憩終わりましたら、またお願いしますね」
声をかけられたので、返事をしてから。
「ごめんね、今はお仕事なの」
そういって、休憩中に食べていたチョコレートのお菓子をシャドウスワローに食べさせてから、放したのである。
シャドウスワローが帰ってきたら甘い匂いがしていた。
「秋澄におやつでももらったのかな?」
伽羅磁(きゃらじ)はそんな感じだったのだが。
カッカッカッ
器用にシャドウスワローは嘴で、スマホを操作した。
すると出てきたのは、ドレスのカタログである。
「これは?どういう?」
カッ
「モデルの人、美人さんだね」
なんて感想をもらしたが、シャドウスワローはドレスに注目してもらいたいらしい。
「秋澄のところに行ってきたら、なんでドレスのカタログを…えっ?まさか秋澄がドレスアップしてたの?」
ピッ
「ああ、そうなんだ、秋澄がね…こういうのを着るんだ…」
そこまで考えると。
「えっ?何のために?」
実際に秋澄が着てるものとは若干違うが、こういう感じのを着ていたということを伝えてくると、点をどこかに繋げようとしたら、繋げようとした先に不安が生まれたのだ。
「結婚?いや、聞いてない。でも結婚ならばウエディングドレスとかだろ、これはそういう奴じゃないし、春の野にある一輪を思い起こさせるような…秋澄が着たら、そりゃあもう可愛らしいのは間違いないだろうけどもさ」
そこで思考が停止した。
「いかん、ダメだ、悪い方にしか考えられないし、俺はなんで今、秋澄のそばに居れないんだろう」
また思考は停止する。
「どういうことか説明を聞いても、たぶん理解しきれない気がする」
思考は鈍ってくる。
「ダンスパーティーとか?いやそれならば俺も参加して、お嬢さん、私と一曲お願いできますかって誘うけど、俺はパーティーに呼ばれてないし、なんだろう、この世の終わりが来たのかな?」
秋澄に確認を取るなどをすればすぐに終わるのではないか、外野からはそうは思っても、ひたすら自分の中だけで答えを探そうとしている。
で、結局伽羅磁がしたことというのは…
(伽羅磁さんまたあの写真を見てるよ)
(写真のモデルさんが気に入ったんじゃないの?)
秋澄が着ていたであろうドレスのカタログ写真を、たまに職場でも眺めている姿が見受けられた。
本物が拝めないのならば、せめて気持ちだけでもというやつだ。
だから…
「伽羅磁くん、実はね、君に一度会ってもらいたいという女性がいるのですが」
「どういうことでしょうか?」
「いや、何、年寄りのお節介というやつだよ。ただまあ、お食事だけでもここは私の顔を立てて行ってやってくれないか?」
「そういうことでしたら」
と思っていたら、そのお相手というのが、伽羅磁がよく見ていたドレスのカタログ、モデル当人であった。
「初めまして」
「こちらこそ、初めまして」
そんな挨拶をかわす二人を見ながら、後ろの方で。
「これはなかなか良い話ではあるとは思っています」
「そうですね、いや~こんな形で派閥が纏まるのならば悪くはないですよ」
その話からこれは政略であることがわかる。
もちろん、伽羅磁も相手の女性もそういうものだということは察しているし、ただ誤算があるとすればだ。
相手の女性が伽羅磁の好みではないということだけだろうか。
それがわかってるのは伽羅磁本人だけで、後はみな、ドレスのカタログ写真、モデルの当人が着てるのだから、伽羅磁の好みはドストライクだろうから、話は上手くまとまるだろう。
難物である伽羅磁もさすがに婚姻関係のある状態ならば、意見を突っぱねることも難しく、中立を維持することはできないだろう。
今回の話はそこが一番の目的であった。
そのため向こうも押せばいけると思ってるのか、関係性を築こうとしてくるのである。
伽羅磁さんもどうやら年貢をおさめる時が来たのではないか、みたいな話は秋澄にも聞こえてきたので。
「そこんところ秋澄はどう思ってるのさ」
腰木が聞いてきたので。
「やっぱり伽羅磁さんは魔が差しただけなんだよ、あの人の好みがああいった美人さんだったら、私にかけてきたのはただのちょっかいだったのが、これでよくわかったよ」
「なるほどな」
そんなもんで話は終わった。
プライベートの時間を、紹介された女性との食事やら何やらで削られまくり、やっと一段落ついた伽羅磁は、家に帰ったらすぐに横になるぐらいの日々になっていた。
ピッ
「ああ、さすがに紹介された手前、エスコートしないわけにもね、行かないんだよな」
紳士的な振る舞いをしていた。
「あ~俺はこういうのは向いてない」
完璧な対応をしようと振る舞い、それが相手にも悪くないと反応をいただくが、伽羅磁の無理は見えてないようだ。
「無茶苦茶疲れる」
でもとりあえずは区切りをつけたので、しばらくは予定はない。
「女性の相手は大変だよ」
ピッ
「君もそのうち好きな子が出来たらわかると思うけどもさ」
ピッ
「俺は気を使ってることに気づかない、当たり前だと思ってる女性よりは、気を許せるような…甘えたり、甘えられたりする子の方がいいというか、まっ、そんなの俺には一人しかいないんですがね!」
急に元気を取り戻したので、秋澄に連絡すると。
「あら?彼女が出来たのではないのですか?」
「えっ?」
「お見合いをしたと聞いてますから、誤解されては困りますので、連絡はしない方がいいですよ」
「いや、ちょっと待ってよ。あれは紹介されただけで、俺は何とも、エスコートは確かにしたけどもさ、あくまで社交辞令の対応しただけだし、それ以上の深いことはしてませんから」
そのメッセージに返信は来なかった。
「秋澄さん?」
そのメッセージにも返信は来なかった。
「すいませんが、お話はなかったことにしてください」
「どうして?君の好みの女性だと聞いていたのだが…まあ、実際に話したらなんかちょっと違うというのはあることだから、わかった、先方にもそのような話はしておこう」
「ありがとうございます、お願いします」
そういって断ったあとも、秋澄とは連絡しようとしても返信はなく。
「仕事の延長とはいえ、俺はとんでもないことをしてしまった」
悔やんでも遅いが、悔やんでしまう。
もう今までのように話をすることも出来ないのかとショボンとしたところを。
「あっ」
出先で秋澄と会った。
その時の伽羅磁は本物の秋澄なのか実感はなく。
「とうとう会いたいがあまり、幻覚を見てしまったのかな」
なんて呟いた。
「それは病院に行った方がいいのではないかと」
「その辛辣さ、本物の秋澄だ」
「そこで私を見分けないでください」
「えっ?それが一番わかりやすいというか、言い放つ言葉の一つ一つが俺を刺していくっていうのかな」
「私は酷い人間ですね…」
「いや、本当に酷くはない、君は優しい人間だし、俺の方が君の言葉にうたれているというか、心を射抜かれているだけで、蜂の巣になってる」
「穴だらけ、傷ついてません?それは?」
「それがね、愛の痛みは喜びでもあるんだよ、知ってた?」
「知りませんよ、そういうのは」
「へぇ~」
なんか伽羅磁は嬉しそうだ。
「君が知らないことはこの世にはまだたくさんあるんだよ」
「それはわかります」
「出来ればそれを一緒に体験していきたいんだよね、君がいれば苦労もたぶん苦労と感じない、トゲの多い花でさえも美味しく食べれる」
「喉に刺さっても知りませんよ」
「それすらも喜びになるんじゃないかな」
「変わった人だな」
「何を今さら」
「花はアザミですか?」
「そうそう、その花を青虫は、トゲを困難にも思わない、若いっていいよね」
「あなたもまだお若いのでは」
「君に若いと言われるのはうれしいんだけども、実際には年の差はあるからな」
「そうですね、もっと敬語で話した方がよろしいですね」
「おいおい、君と俺との仲だぜ、親密に愛を込めて名前を呼んでくれよ」
今日も絶好調だなと。
「ご紹介された女性との話をなんでお断りになったのですか?」
「う~ん、確かに美人だったけどもね、こちらが気を使ってることに気づかないとなると、一緒にいるのは無理だよ。たぶん頑張っていることもわからないだろうし、それは何をご褒美に生きていけばいいのかな?」
「美人さんならそばにいるのがご褒美では?」
「そういう考えもあるかもしれないが、何?秋澄って美形を紹介されたら、喜んじゃうわけ?」
「私にまず美形が紹介されることはない、されるとしたら、話に裏があるでしょうし。私は人をそういうので判断しませんから」
「えっ?そうなの?じゃあ、俺もワンチャンあるとか?」
「何をいってるんです?伽羅磁さんは男前ではありませんか?」
「…」
「あっ、すいません、用事があるんで、行きますね」
伽羅磁は秋澄に言われた言葉が理解しきれなくてしばらく固まったという。
そこからしばらくしたら、伽羅磁は前のように秋澄にアプローチを行うようになった。
「秋澄さ、今度いつ暇かな?」
と、ある日時の予定を聞いてきた。
「…その日ですか?」
「ダメかな?」
「なんであなたの誕生日に誘ってくるんですか」
「やだぁ、誕生日覚えててくれたの?…そりゃあ一緒に過ごしたい相手だからに決まってるでしょ」
「お断りしますよ」
そういって断られたのはしょうがないなと思ったら、その日はとんでもなくアクシデントが続き、目茶苦茶忙しかった。
でも帰宅したら、秋澄がお誕生日おめでとうございますというケーキの写真を送ってきてくれたので、まあ、悪くない誕生日だななんて思っていたら。
シャドウスワローから甘い匂いがした。
お菓子でももらったのかなって思ったら。
コンコン
そのケーキの写真だと教えてくれた。
「えっ?これってそういう写真素材じゃないの?」
そのまま確認する度胸はなかったので、次の日だ。
「もしかして、あのケーキって写真だけじゃないの?かな?うちの子がそんな感じで教えてくれるんだけども」
「ああ、そうですね、せっかくなので焼きました」
「焼き…ま…し…た」
「久しぶりなので上手く出来るかわかりませんでしたが、クリームの味もぶれてなくて良かったかなと」
「それは…俺には…」
「元々上手く出来るかわからなかったので、写真だけでいいかなって思ってたんですよ」
ただ撮影が終わったあとに、シャドウスワローが訪ねてきたので、味見を兼ねてもらったら、美味しそうに食べたいたから、自信はなかったけども、ちゃんとできて良かったなとホッとしたという。
「俺、秋澄の手作りのケーキ食べたい」
「しばらくはちょっと無理ですかね」
「100年ぐらいなら待つよ」
「何年生きるつもりですか」
「頑張れば後、100年ぐらいはいけるんじゃないかなって、その頃にはお互いも理解が大分進んで」
「気が長い話ですね」
「そのぐらいの年数、君への愛はたぶん冷めないよ」
「それもどうなんですか」
「えっ?何?愛はすぐに冷めるものだと思ってるの?そう思ってるなら、そうじゃないことを俺が証明して見せるよ」
「下手に返事をすると、また盛り上がりそうだから、答えませんよ」
「でもさ、秋澄」
「なんです?」
「悪いけども誕生日にケーキとか焼いてくれるんだったら、俺は勘違いするからね」
「じゃあ、もう焼きませんよ」
「あっ、それは待った無し、謝るから、焼いてください、というか、出来れば、クリスマスとかバレンタインとかも俺と過ごすことをご一考願えればなと」
「たぶん私はその日は仕事すると思いますよ」
理由、みんな休みたがるから、手当てがすごい出る。
「というか、秋澄は仕事しすぎじゃないの?」
「そのためにこちらの世界に来てますから」
「もうちょっと人生楽しもうよ」
「私はそういうのはあんまり、それに十分楽しんでますから」
「あのさ…」
「なんです?」
「秋澄、この間、ドレス着たって話さ」
「ああ、来ましたね、カジュアルなパーティーですって言われて、説明聞いたら、手持ちの服装ではいけなくて、馬子にも衣装ですかね、大分いい格好をさせてもらいましたよ」
「あの時たまたまうちの子が行ってたから」
「そうですね、いつも違うからちょっとビックリしてたかもしれません」
「家に帰ってから、こういうの着てたってカタログを教えてくれて」
「えっ?そんなことまでできるんですか?」
「ああ、本当は、実際の格好、とても素敵なんだと思うけども、見ることがかなわないから、うちの子が教えてくれたカタログ見ながら、秋澄ってこういうドレス着たのかなって、職場でもそれ見てたんだよ」
「それって大分不思議そうな顔で見られません?」
「見られたよ。そしたらさ、君に紹介したい人がいるって呼び出されんだよね」
「話というのはどこに繋がるかわからないものですね」
「俺はさっきも言った通り、秋澄がこういうドレスを着てたんだなっていうことでカタログ見てたの」
わざわざ紙のカタログも有料で取り寄せました。
「そうしたら紹介された女性がその秋澄が着てたんだろうなってドレスの、モデルさんでね」
「美人を紹介されたと聞いてましたが、モデルさんならそりゃあ、美人でしょうね」
良かったですねのニュアンス。
「でも俺は凄く困った」
「えっ?なんでです?」
「向こうは、先方さんは、その~その人の事を、俺がタイプだと思っていたから」
「タイプじゃないんですか?」
「美人さんですよ、美人さんだとは思いますがね」
その力説具合で、あっ、これは大変だったんだなと察した。
「それならば好みがを最初からお伝えになれば、そのような事故が起きなかったのでは?」
「伝えて、秋澄が来てくれるんだったら、さっさと伝えてる」
「そういう場には私は出てきませんよ」
「どうしてさ」
「出てくるわけがない、ああいうのは容姿がよろしくて、素性が確かな女性が優先されるんですよ、私みたいな女はそういうところじゃ、自分の意見を言うから、相手にされませんよ」
「そんなに自分の意見を言うことが悪いことなのか?」
「悪いことではないでしょうが、好かれませんよ、おとなしい方が受けは良い」
「そういうのは好みじゃないんだよな」
「だからそういうのを相手に伝えてくださいよ」
「だったら、今度から秋澄を名指しで伝えることにするね」
「ちょっと、それは事故に繋がるからやめてくださいよ」
「やだよ、それなら秋澄も道連れにしてやるんだい!」
「いきなり子供みたいな事を言い出したよ」
「君が絡むとそういうところが俺にはあります」
「そこに付き合う私は大変なんですが」
「それは…ごめん」
「もうしょうがない人だな」
「俺は思った以上にしょうがない人間だよ、他の人から真面目そうに見られるが、実は中身こんなんだし、気を使ってるのに気づかれないんだもん」
「だからってお酒に逃げないでくださいよ」
「逃げたくもなるよ、後ね、知ってる?お酒って美味しいんだよ」
「それは知ってますけども」
「でも最近はお酒より楽しいこと覚えたからいいんだけどもさ」
「それが健康的なご趣味ならそっちの方がよろしいですよ」
「秋澄好きだ!」
「もう酔ってませんか?」
「素面だよ」
「なんで素面なのに、酔っぱらいみたいなこもをするんですか」
「勢いもある」
「そのうち大失敗しますよ」
「君に誤解されるという失敗はもう幾度もしているから…」
「懲りない人だな」
「そうだね、でも拒絶されたら怖いはいつでも抱えてる、ほら、俺って結構調子に乗るとね」
「あ~ちょっとやらかしますもんね」
「そうなんだよ、だからそこが怖いよ」
「こうしておとなしくしていると男前度が上がるのにな、中身は子供みたいなところあるから」
「それを言われると弱い」
「背伸びしているのに、それに気づかないというのは悲しいことですよ」
「そうだね、君はそこも見抜くからな、最初は凄く驚いたけども、今はとても嬉しいんだよ」
………
………
沈黙の後に。
「あっ、俺、この後、家事しなきゃならないから、切るね」
「はい、最後に…」
「何?」
「誕生日おめでとうございます」
「うん、ありがとう」
通話終了後。
「あああああ、あああああ」
伽羅磁はベットで転がった。
冷たい対応ならば一貫して冷たくすればいいのに。
「誕生日おめでとうございますってあの声、録音してれば良かった!!!!!!!!!」
でも大丈夫、俺の心のメモリにはしっかり刻んでおいたから!
「なんでも、教官としてのお仕事と、誇りをかけた大事な戦いがあるとか言ってましたね」
「なんだよ、誇りをかけた大事な戦いって、でもまあ、あいつらのことだから、またくだらないことなんだろうな」
「違いない」
なんてbarの常連さんには言われていた。
「それを汚すものは誰も許されない」
「本当にそれだね」
覆木(おおうき)と瀬旭(せきょく)であるが、二人は満身創痍、傷もあちらこちらにあるではないか。
「今の俺たちに点数をつけるなら?」
「6、70点かな」
瀬旭の質問に覆木は苦笑いしながら答える。
「それは上手くいってる方だよ」
二人は若手の指導という形で、それぞれの技術を教えるてほしいと頼まれてここにいたのだが。
「その後、夜には世紀の一戦でも観戦しようかなんて話をしていたのに」
「珍しくそんなこと約束したからじゃないの?」
「だからこういうことが起きたって、それはなんか嫌だな」
「嫌だって言ってもさ、実際に起こってしまったんだからしょうがないじゃない?」
カツーンカツーン
「わざと足音立ててません?」
「相手を追い詰めるのが好きなんだろうね」
その指導を頼まれた生徒の中に、二人を狙う刺客が混ざっていたようだ。
いつもの武装はボディチェックで預けてしまっている。
「だから逃げていると思われるんだろうな」
「こういう業界は、緊急のための隠し武器っていうのがこっそりと用意されているものさ」
何回かハズレを引いたが、ようやく二人が欲しいものが手に入ったので。
「それじゃあ、反撃開始と行きましょうか」
「いいね、向こうもビックリするんじゃないの」
「魔法が解ける前にお家に戻ると約束したわけだからさ、ここは頑張りましょうね」
軽口は叩かれるが、空気は張りつめている。
今日もそんな感じで、二人は楽しむ。
「パーティーですか」
「はい、でも正式なものではなく、カジュアルなものなんで」
腰木(こしぎ)と秋澄(あきすみ)は吸血鬼のとあるグループから、そんな招待を受けた。
「そちらがいいというのでしたら、こちらからは断りませんが」
などと腰木がいったのだが、そのカジュアルなパーティーに着ていくような衣装を二人は持ってなかったので。
「申し訳ありませんが…」
と断ろうとすると。
「大丈夫ですよ、担当のスタイリストもおりますし」
急に説明をしてくれる人のテンションが上がった。
「実はですね、ほとんどこういうパーティーに招待される方は、スタイリストがついている方ばかりでして、そうではない方のスタイリストやプランナーの私というのはあまり出番がないのですよ」
それでもお給料はちゃんと出るのだが。
「こう…やりがいがですね、欲しいんですよ」
そういってスタイリストが今までゲストを着飾った写真などを見せてくれて。
「前職に比べたら予算とかかなり使えるんですけども、スタイリストがいないフリーのゲストって、今年になってからまだ一人もおられなくて」
今年はもう10月です。
「ですから出来ればその…」
「そういう理由ならさ、しょうがなくない?俺は男だからそうでもないが、秋澄はどうよ?」
「ある程度ならば付き合いますよ」
「いいんですか、任せてください、スタイリストにも連絡します。何かこの機会に着てみたいドレスとか、色とか形とかありますかね!」
「そういうのは特にありませんが」
「えっ?じゃあ、お任せとかは可能ですか」
「私はそういうのはわかりませんので、よろしければお任せを」
「ヒャッホー!」
プランナーは弾け飛びそうだ。
そしてスタイリストが合流すると。
「この方ですか?」
「はい、こちらの秋澄さんがお任せで…」
「首元、出したいぐらいお綺麗ですが、どうしますか?」
「?」
「ええっと相手を募集したい方は、首元を強調するといいんですよ、そうでもない場合は未婚も既婚も首元は出さないようにするって感じですね」
「では出さない方向で」
「ドレスのサイズも、かなり色んなものが用意されている号でいけるので、あ~何を着てもらおうか」
秋澄本人より、プランナーとスタイリストが毎日寝不足になり、こういうのはどうだ、いや、これは?あ~迷うと。
その日に合わせて、趣味と実益を兼ねた暑い討論が繰り広げられた。
「というわけで互いのプレゼンをぶつけ合わせた結果決まりましたのが、こちらになります」
ドレスの写真が送られてきた。
「一度衣装合わせもしたいので、いつお時間がよろしいでしょうか?」
腰木と秋澄は時間を取り、衣装を合わせに言ったのだが。
「衣装を合わせましたが、どうしよう、実際に着てもらったら、また悩んじゃう」
「わかる、まだ行ける気がしてきた」
次、ゲストがいつ来るかわからないプランナーとスタイリストは、悔いが残らないようにというか、自分達が抱える欲求を消化させようと。
「アクセサリーもこの色より、控えめにしたほうが映えるんじゃないかしら」
「わかる」
秋澄はそれにきっちりと付き合う感じ。
「すいませんね」
他のスタッフが腰木に話しかける。
「構いませんよ」
「彼女たちは若くて腕もいいのでスカウトされたのですが、なかなかフリーのゲスト様というのがおられないので、どうしてもお仕事になると力を入れすぎてしまうって感じで」
「その方がいいんですよ」
「そうですかね」
「そうです、そうです、そういう女性の方が輝いて見える」
「あなたは珍しいお方のようだ、てっきり、その~付き合っておられるのかと」
「いやいや、それはないですよ。んでもってどっちも付き合ってる相手は今はいませんし」
「その話はパーティーでしてもよろしいですかね?」
「それぐらいは、でもだからといって相手を紹介するとか、そこは勘弁してくださいよ」
「これは手強い、あなた方二人ならば、良縁を結びたい一族もいると思うのですが、気が変わったらいつでもおっしゃってくださいね」
ピッ
「あら?どうしたの?」
シャドウスワローが衣装合わせの休憩中に遊びに来た。
ピッ?
なんか今日はいつもと違うねというニュアンスの鳴き方をした。
「私が珍しい格好をしているからかな、いつもはこんな格好をしないものね」
ピッ
ああそれでか…
「秋澄さん~!休憩終わりましたら、またお願いしますね」
声をかけられたので、返事をしてから。
「ごめんね、今はお仕事なの」
そういって、休憩中に食べていたチョコレートのお菓子をシャドウスワローに食べさせてから、放したのである。
シャドウスワローが帰ってきたら甘い匂いがしていた。
「秋澄におやつでももらったのかな?」
伽羅磁(きゃらじ)はそんな感じだったのだが。
カッカッカッ
器用にシャドウスワローは嘴で、スマホを操作した。
すると出てきたのは、ドレスのカタログである。
「これは?どういう?」
カッ
「モデルの人、美人さんだね」
なんて感想をもらしたが、シャドウスワローはドレスに注目してもらいたいらしい。
「秋澄のところに行ってきたら、なんでドレスのカタログを…えっ?まさか秋澄がドレスアップしてたの?」
ピッ
「ああ、そうなんだ、秋澄がね…こういうのを着るんだ…」
そこまで考えると。
「えっ?何のために?」
実際に秋澄が着てるものとは若干違うが、こういう感じのを着ていたということを伝えてくると、点をどこかに繋げようとしたら、繋げようとした先に不安が生まれたのだ。
「結婚?いや、聞いてない。でも結婚ならばウエディングドレスとかだろ、これはそういう奴じゃないし、春の野にある一輪を思い起こさせるような…秋澄が着たら、そりゃあもう可愛らしいのは間違いないだろうけどもさ」
そこで思考が停止した。
「いかん、ダメだ、悪い方にしか考えられないし、俺はなんで今、秋澄のそばに居れないんだろう」
また思考は停止する。
「どういうことか説明を聞いても、たぶん理解しきれない気がする」
思考は鈍ってくる。
「ダンスパーティーとか?いやそれならば俺も参加して、お嬢さん、私と一曲お願いできますかって誘うけど、俺はパーティーに呼ばれてないし、なんだろう、この世の終わりが来たのかな?」
秋澄に確認を取るなどをすればすぐに終わるのではないか、外野からはそうは思っても、ひたすら自分の中だけで答えを探そうとしている。
で、結局伽羅磁がしたことというのは…
(伽羅磁さんまたあの写真を見てるよ)
(写真のモデルさんが気に入ったんじゃないの?)
秋澄が着ていたであろうドレスのカタログ写真を、たまに職場でも眺めている姿が見受けられた。
本物が拝めないのならば、せめて気持ちだけでもというやつだ。
だから…
「伽羅磁くん、実はね、君に一度会ってもらいたいという女性がいるのですが」
「どういうことでしょうか?」
「いや、何、年寄りのお節介というやつだよ。ただまあ、お食事だけでもここは私の顔を立てて行ってやってくれないか?」
「そういうことでしたら」
と思っていたら、そのお相手というのが、伽羅磁がよく見ていたドレスのカタログ、モデル当人であった。
「初めまして」
「こちらこそ、初めまして」
そんな挨拶をかわす二人を見ながら、後ろの方で。
「これはなかなか良い話ではあるとは思っています」
「そうですね、いや~こんな形で派閥が纏まるのならば悪くはないですよ」
その話からこれは政略であることがわかる。
もちろん、伽羅磁も相手の女性もそういうものだということは察しているし、ただ誤算があるとすればだ。
相手の女性が伽羅磁の好みではないということだけだろうか。
それがわかってるのは伽羅磁本人だけで、後はみな、ドレスのカタログ写真、モデルの当人が着てるのだから、伽羅磁の好みはドストライクだろうから、話は上手くまとまるだろう。
難物である伽羅磁もさすがに婚姻関係のある状態ならば、意見を突っぱねることも難しく、中立を維持することはできないだろう。
今回の話はそこが一番の目的であった。
そのため向こうも押せばいけると思ってるのか、関係性を築こうとしてくるのである。
伽羅磁さんもどうやら年貢をおさめる時が来たのではないか、みたいな話は秋澄にも聞こえてきたので。
「そこんところ秋澄はどう思ってるのさ」
腰木が聞いてきたので。
「やっぱり伽羅磁さんは魔が差しただけなんだよ、あの人の好みがああいった美人さんだったら、私にかけてきたのはただのちょっかいだったのが、これでよくわかったよ」
「なるほどな」
そんなもんで話は終わった。
プライベートの時間を、紹介された女性との食事やら何やらで削られまくり、やっと一段落ついた伽羅磁は、家に帰ったらすぐに横になるぐらいの日々になっていた。
ピッ
「ああ、さすがに紹介された手前、エスコートしないわけにもね、行かないんだよな」
紳士的な振る舞いをしていた。
「あ~俺はこういうのは向いてない」
完璧な対応をしようと振る舞い、それが相手にも悪くないと反応をいただくが、伽羅磁の無理は見えてないようだ。
「無茶苦茶疲れる」
でもとりあえずは区切りをつけたので、しばらくは予定はない。
「女性の相手は大変だよ」
ピッ
「君もそのうち好きな子が出来たらわかると思うけどもさ」
ピッ
「俺は気を使ってることに気づかない、当たり前だと思ってる女性よりは、気を許せるような…甘えたり、甘えられたりする子の方がいいというか、まっ、そんなの俺には一人しかいないんですがね!」
急に元気を取り戻したので、秋澄に連絡すると。
「あら?彼女が出来たのではないのですか?」
「えっ?」
「お見合いをしたと聞いてますから、誤解されては困りますので、連絡はしない方がいいですよ」
「いや、ちょっと待ってよ。あれは紹介されただけで、俺は何とも、エスコートは確かにしたけどもさ、あくまで社交辞令の対応しただけだし、それ以上の深いことはしてませんから」
そのメッセージに返信は来なかった。
「秋澄さん?」
そのメッセージにも返信は来なかった。
「すいませんが、お話はなかったことにしてください」
「どうして?君の好みの女性だと聞いていたのだが…まあ、実際に話したらなんかちょっと違うというのはあることだから、わかった、先方にもそのような話はしておこう」
「ありがとうございます、お願いします」
そういって断ったあとも、秋澄とは連絡しようとしても返信はなく。
「仕事の延長とはいえ、俺はとんでもないことをしてしまった」
悔やんでも遅いが、悔やんでしまう。
もう今までのように話をすることも出来ないのかとショボンとしたところを。
「あっ」
出先で秋澄と会った。
その時の伽羅磁は本物の秋澄なのか実感はなく。
「とうとう会いたいがあまり、幻覚を見てしまったのかな」
なんて呟いた。
「それは病院に行った方がいいのではないかと」
「その辛辣さ、本物の秋澄だ」
「そこで私を見分けないでください」
「えっ?それが一番わかりやすいというか、言い放つ言葉の一つ一つが俺を刺していくっていうのかな」
「私は酷い人間ですね…」
「いや、本当に酷くはない、君は優しい人間だし、俺の方が君の言葉にうたれているというか、心を射抜かれているだけで、蜂の巣になってる」
「穴だらけ、傷ついてません?それは?」
「それがね、愛の痛みは喜びでもあるんだよ、知ってた?」
「知りませんよ、そういうのは」
「へぇ~」
なんか伽羅磁は嬉しそうだ。
「君が知らないことはこの世にはまだたくさんあるんだよ」
「それはわかります」
「出来ればそれを一緒に体験していきたいんだよね、君がいれば苦労もたぶん苦労と感じない、トゲの多い花でさえも美味しく食べれる」
「喉に刺さっても知りませんよ」
「それすらも喜びになるんじゃないかな」
「変わった人だな」
「何を今さら」
「花はアザミですか?」
「そうそう、その花を青虫は、トゲを困難にも思わない、若いっていいよね」
「あなたもまだお若いのでは」
「君に若いと言われるのはうれしいんだけども、実際には年の差はあるからな」
「そうですね、もっと敬語で話した方がよろしいですね」
「おいおい、君と俺との仲だぜ、親密に愛を込めて名前を呼んでくれよ」
今日も絶好調だなと。
「ご紹介された女性との話をなんでお断りになったのですか?」
「う~ん、確かに美人だったけどもね、こちらが気を使ってることに気づかないとなると、一緒にいるのは無理だよ。たぶん頑張っていることもわからないだろうし、それは何をご褒美に生きていけばいいのかな?」
「美人さんならそばにいるのがご褒美では?」
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「えっ?そうなの?じゃあ、俺もワンチャンあるとか?」
「何をいってるんです?伽羅磁さんは男前ではありませんか?」
「…」
「あっ、すいません、用事があるんで、行きますね」
伽羅磁は秋澄に言われた言葉が理解しきれなくてしばらく固まったという。
そこからしばらくしたら、伽羅磁は前のように秋澄にアプローチを行うようになった。
「秋澄さ、今度いつ暇かな?」
と、ある日時の予定を聞いてきた。
「…その日ですか?」
「ダメかな?」
「なんであなたの誕生日に誘ってくるんですか」
「やだぁ、誕生日覚えててくれたの?…そりゃあ一緒に過ごしたい相手だからに決まってるでしょ」
「お断りしますよ」
そういって断られたのはしょうがないなと思ったら、その日はとんでもなくアクシデントが続き、目茶苦茶忙しかった。
でも帰宅したら、秋澄がお誕生日おめでとうございますというケーキの写真を送ってきてくれたので、まあ、悪くない誕生日だななんて思っていたら。
シャドウスワローから甘い匂いがした。
お菓子でももらったのかなって思ったら。
コンコン
そのケーキの写真だと教えてくれた。
「えっ?これってそういう写真素材じゃないの?」
そのまま確認する度胸はなかったので、次の日だ。
「もしかして、あのケーキって写真だけじゃないの?かな?うちの子がそんな感じで教えてくれるんだけども」
「ああ、そうですね、せっかくなので焼きました」
「焼き…ま…し…た」
「久しぶりなので上手く出来るかわかりませんでしたが、クリームの味もぶれてなくて良かったかなと」
「それは…俺には…」
「元々上手く出来るかわからなかったので、写真だけでいいかなって思ってたんですよ」
ただ撮影が終わったあとに、シャドウスワローが訪ねてきたので、味見を兼ねてもらったら、美味しそうに食べたいたから、自信はなかったけども、ちゃんとできて良かったなとホッとしたという。
「俺、秋澄の手作りのケーキ食べたい」
「しばらくはちょっと無理ですかね」
「100年ぐらいなら待つよ」
「何年生きるつもりですか」
「頑張れば後、100年ぐらいはいけるんじゃないかなって、その頃にはお互いも理解が大分進んで」
「気が長い話ですね」
「そのぐらいの年数、君への愛はたぶん冷めないよ」
「それもどうなんですか」
「えっ?何?愛はすぐに冷めるものだと思ってるの?そう思ってるなら、そうじゃないことを俺が証明して見せるよ」
「下手に返事をすると、また盛り上がりそうだから、答えませんよ」
「でもさ、秋澄」
「なんです?」
「悪いけども誕生日にケーキとか焼いてくれるんだったら、俺は勘違いするからね」
「じゃあ、もう焼きませんよ」
「あっ、それは待った無し、謝るから、焼いてください、というか、出来れば、クリスマスとかバレンタインとかも俺と過ごすことをご一考願えればなと」
「たぶん私はその日は仕事すると思いますよ」
理由、みんな休みたがるから、手当てがすごい出る。
「というか、秋澄は仕事しすぎじゃないの?」
「そのためにこちらの世界に来てますから」
「もうちょっと人生楽しもうよ」
「私はそういうのはあんまり、それに十分楽しんでますから」
「あのさ…」
「なんです?」
「秋澄、この間、ドレス着たって話さ」
「ああ、来ましたね、カジュアルなパーティーですって言われて、説明聞いたら、手持ちの服装ではいけなくて、馬子にも衣装ですかね、大分いい格好をさせてもらいましたよ」
「あの時たまたまうちの子が行ってたから」
「そうですね、いつも違うからちょっとビックリしてたかもしれません」
「家に帰ってから、こういうの着てたってカタログを教えてくれて」
「えっ?そんなことまでできるんですか?」
「ああ、本当は、実際の格好、とても素敵なんだと思うけども、見ることがかなわないから、うちの子が教えてくれたカタログ見ながら、秋澄ってこういうドレス着たのかなって、職場でもそれ見てたんだよ」
「それって大分不思議そうな顔で見られません?」
「見られたよ。そしたらさ、君に紹介したい人がいるって呼び出されんだよね」
「話というのはどこに繋がるかわからないものですね」
「俺はさっきも言った通り、秋澄がこういうドレスを着てたんだなっていうことでカタログ見てたの」
わざわざ紙のカタログも有料で取り寄せました。
「そうしたら紹介された女性がその秋澄が着てたんだろうなってドレスの、モデルさんでね」
「美人を紹介されたと聞いてましたが、モデルさんならそりゃあ、美人でしょうね」
良かったですねのニュアンス。
「でも俺は凄く困った」
「えっ?なんでです?」
「向こうは、先方さんは、その~その人の事を、俺がタイプだと思っていたから」
「タイプじゃないんですか?」
「美人さんですよ、美人さんだとは思いますがね」
その力説具合で、あっ、これは大変だったんだなと察した。
「それならば好みがを最初からお伝えになれば、そのような事故が起きなかったのでは?」
「伝えて、秋澄が来てくれるんだったら、さっさと伝えてる」
「そういう場には私は出てきませんよ」
「どうしてさ」
「出てくるわけがない、ああいうのは容姿がよろしくて、素性が確かな女性が優先されるんですよ、私みたいな女はそういうところじゃ、自分の意見を言うから、相手にされませんよ」
「そんなに自分の意見を言うことが悪いことなのか?」
「悪いことではないでしょうが、好かれませんよ、おとなしい方が受けは良い」
「そういうのは好みじゃないんだよな」
「だからそういうのを相手に伝えてくださいよ」
「だったら、今度から秋澄を名指しで伝えることにするね」
「ちょっと、それは事故に繋がるからやめてくださいよ」
「やだよ、それなら秋澄も道連れにしてやるんだい!」
「いきなり子供みたいな事を言い出したよ」
「君が絡むとそういうところが俺にはあります」
「そこに付き合う私は大変なんですが」
「それは…ごめん」
「もうしょうがない人だな」
「俺は思った以上にしょうがない人間だよ、他の人から真面目そうに見られるが、実は中身こんなんだし、気を使ってるのに気づかれないんだもん」
「だからってお酒に逃げないでくださいよ」
「逃げたくもなるよ、後ね、知ってる?お酒って美味しいんだよ」
「それは知ってますけども」
「でも最近はお酒より楽しいこと覚えたからいいんだけどもさ」
「それが健康的なご趣味ならそっちの方がよろしいですよ」
「秋澄好きだ!」
「もう酔ってませんか?」
「素面だよ」
「なんで素面なのに、酔っぱらいみたいなこもをするんですか」
「勢いもある」
「そのうち大失敗しますよ」
「君に誤解されるという失敗はもう幾度もしているから…」
「懲りない人だな」
「そうだね、でも拒絶されたら怖いはいつでも抱えてる、ほら、俺って結構調子に乗るとね」
「あ~ちょっとやらかしますもんね」
「そうなんだよ、だからそこが怖いよ」
「こうしておとなしくしていると男前度が上がるのにな、中身は子供みたいなところあるから」
「それを言われると弱い」
「背伸びしているのに、それに気づかないというのは悲しいことですよ」
「そうだね、君はそこも見抜くからな、最初は凄く驚いたけども、今はとても嬉しいんだよ」
………
………
沈黙の後に。
「あっ、俺、この後、家事しなきゃならないから、切るね」
「はい、最後に…」
「何?」
「誕生日おめでとうございます」
「うん、ありがとう」
通話終了後。
「あああああ、あああああ」
伽羅磁はベットで転がった。
冷たい対応ならば一貫して冷たくすればいいのに。
「誕生日おめでとうございますってあの声、録音してれば良かった!!!!!!!!!」
でも大丈夫、俺の心のメモリにはしっかり刻んでおいたから!
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