浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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いつまでも麦茶の色にならねえな

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「こっちだ」
手を降る祖父の姿。
「この辺大分変わったね」
「そうだな、この店だって、改装したから、お前の子供の頃とは違うものな、じゃあ入るか」
「うん」
私は離婚して実家がある地域に戻ってきたところ、祖父からも連絡があり、こうして子供の頃連れられた店に行くことになった。
「オシャレカフェみたいになってる」
「ここで珈琲を今でも飲みに来るんだよ、何を食べる?かき氷?」
「子供の頃を思い出すからそれにする」
テーブル席にて。
「こっちに戻ってきて慣れた?」
「まだですね、幸い仕事は転属が認められたので」
上司夫妻と会食して推薦状などももらったりしました。
「人生、色々あるわな」
「あるけどもさ」
かき氷とアイスコーヒーが運ばれてくる。
「とりあえずかき氷に集中しないさい、服にこぼして、お母さんに叱られたことあったし」
「それはいつの…」
ポロ
そこでかき氷が崩れたので。
「ではお言葉に甘えて」
それを見ながら祖父はアイスコーヒーを飲む。
子供の頃を思い出して、そこからこうやってあちこちに出掛けて、進学、就職、結婚…
(そして離婚か)
「って食べるの早いくないか?」
「なんだろう、暑いからかな、アタシ、今、水分足りなかったのかな?」
「はっはっはっはっ」
「じいちゃん、何よ」
「いや、そういうところは全く変わっちゃいないなって思って」
「子供っぽいよね」
そこでため息だ。
「何、そういうの言われたの?」
「やはり男の方は、おとなしい、清楚、綺麗が好きなんですよ、私とは全く逆の」
「君は元気があっていいとは思うんだがな」
「そんなことなかった」
「辛かったのならば終わって良かったじゃないか」
「それが楽しかったことも結構あったから、結婚は一度はしてみるもんだ」
「なんだそれ、おじいちゃんもお母さんも結婚は一回しかしてないぞ」
「それはそうだけどもさ、なんかここまで来たらそういうしかないじゃない!」
「はっはっはっはっ」
「何を笑ってるのさ」
「見る影もなく落ち込んでいるかと思ってた」
「私もそうなるかと思ってた」
「他の人たちに支えられたか」
「うん、やっぱりその話になった当日は全然でさ、職場の先輩から顔を見ただけでどうしたの!って」
話を聞かれたら、こっちでやっておくし、休みを取ってくださいと言われた。
「やめるつもりが転属になったしね、そこも助けられたよ、だから頑張らなくちゃって思ってる」
「でも無理はしない」
「…」
「もうしてたか」
「ちょっとね、さすがに今回のは悲しすぎた」
「おじいちゃんもお前さんのそんな顔は見たくはなかったよ、そこだけは本当に罪深いことをしてくれたよ」
「まっ、でも恨まないであげてください」
「どうして?」
「あの人はあの人で苦労をしてたから」
「そうはいっても、それじゃあダメなんだよ、理由にはならないよ」
「私はもうあの人には関わらないで生きていく」
「そうしなさい」
「でも格好をつけたけども、たまに思い出す」
「はっはっはっはっ」
「早く忘れたいはずなんだけどもな、この辺は難しいよ」
そこに連絡が来る。
「あっ、なんかお母さんが、帰りに買ってきてほしいって」
「何を?」
「素麺のつゆ、なんか今ある分じゃ心もとないみたい」
「じゃあ、帰りはスーパーによってからにしようか」
「うん」
祖父が椅子から立ち上がると、少し歩行が気になったので。
「はい、手を繋ぐ」
「これじゃあ、おじいちゃんみたいじゃないか」
「おじいちゃんは私のおじいちゃんでは?」
「そういう意味ではなくてさ、もう…」
「じいちゃんには定期的に孫とお出掛けを命じます」
「なんだいそりゃ」
「そうすりゃ、行きたいところ行けるよ」
「世の中にはこんな優しい孫をふった男がいるらしいよ」
「優しいだけでは結婚生活は上手く行かないと悟った」
「悟ったら、優しさはとても大事なことで、それがわからぬ男なら帰ってきて正解さ」
「でもまだ一緒にいたかった」
「好きなのはわかるが、そこまで行くと本気で止めるからね」
「ごめん」
「はい、つゆ、素麺のつゆ、でもうちのって別に出汁を取って合わせているよね」
「そう、今の時期だと麦茶ポットを使ってるから」
「これ、いつまでも麦茶の色にならねえな、ちゃんと入れた?とか聞いたことある」
「それは私もある」
うちの家族あるある
「はっはっはっはっ」
「ふっふっふっふっ」
店を出て、スーパーで買い物し、実家に帰ってきてからも、ずっと楽しそうに話をしていたのである。


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