810 / 1,093
いつまでも麦茶の色にならねえな
しおりを挟む
「こっちだ」
手を降る祖父の姿。
「この辺大分変わったね」
「そうだな、この店だって、改装したから、お前の子供の頃とは違うものな、じゃあ入るか」
「うん」
私は離婚して実家がある地域に戻ってきたところ、祖父からも連絡があり、こうして子供の頃連れられた店に行くことになった。
「オシャレカフェみたいになってる」
「ここで珈琲を今でも飲みに来るんだよ、何を食べる?かき氷?」
「子供の頃を思い出すからそれにする」
テーブル席にて。
「こっちに戻ってきて慣れた?」
「まだですね、幸い仕事は転属が認められたので」
上司夫妻と会食して推薦状などももらったりしました。
「人生、色々あるわな」
「あるけどもさ」
かき氷とアイスコーヒーが運ばれてくる。
「とりあえずかき氷に集中しないさい、服にこぼして、お母さんに叱られたことあったし」
「それはいつの…」
ポロ
そこでかき氷が崩れたので。
「ではお言葉に甘えて」
それを見ながら祖父はアイスコーヒーを飲む。
子供の頃を思い出して、そこからこうやってあちこちに出掛けて、進学、就職、結婚…
(そして離婚か)
「って食べるの早いくないか?」
「なんだろう、暑いからかな、アタシ、今、水分足りなかったのかな?」
「はっはっはっはっ」
「じいちゃん、何よ」
「いや、そういうところは全く変わっちゃいないなって思って」
「子供っぽいよね」
そこでため息だ。
「何、そういうの言われたの?」
「やはり男の方は、おとなしい、清楚、綺麗が好きなんですよ、私とは全く逆の」
「君は元気があっていいとは思うんだがな」
「そんなことなかった」
「辛かったのならば終わって良かったじゃないか」
「それが楽しかったことも結構あったから、結婚は一度はしてみるもんだ」
「なんだそれ、おじいちゃんもお母さんも結婚は一回しかしてないぞ」
「それはそうだけどもさ、なんかここまで来たらそういうしかないじゃない!」
「はっはっはっはっ」
「何を笑ってるのさ」
「見る影もなく落ち込んでいるかと思ってた」
「私もそうなるかと思ってた」
「他の人たちに支えられたか」
「うん、やっぱりその話になった当日は全然でさ、職場の先輩から顔を見ただけでどうしたの!って」
話を聞かれたら、こっちでやっておくし、休みを取ってくださいと言われた。
「やめるつもりが転属になったしね、そこも助けられたよ、だから頑張らなくちゃって思ってる」
「でも無理はしない」
「…」
「もうしてたか」
「ちょっとね、さすがに今回のは悲しすぎた」
「おじいちゃんもお前さんのそんな顔は見たくはなかったよ、そこだけは本当に罪深いことをしてくれたよ」
「まっ、でも恨まないであげてください」
「どうして?」
「あの人はあの人で苦労をしてたから」
「そうはいっても、それじゃあダメなんだよ、理由にはならないよ」
「私はもうあの人には関わらないで生きていく」
「そうしなさい」
「でも格好をつけたけども、たまに思い出す」
「はっはっはっはっ」
「早く忘れたいはずなんだけどもな、この辺は難しいよ」
そこに連絡が来る。
「あっ、なんかお母さんが、帰りに買ってきてほしいって」
「何を?」
「素麺のつゆ、なんか今ある分じゃ心もとないみたい」
「じゃあ、帰りはスーパーによってからにしようか」
「うん」
祖父が椅子から立ち上がると、少し歩行が気になったので。
「はい、手を繋ぐ」
「これじゃあ、おじいちゃんみたいじゃないか」
「おじいちゃんは私のおじいちゃんでは?」
「そういう意味ではなくてさ、もう…」
「じいちゃんには定期的に孫とお出掛けを命じます」
「なんだいそりゃ」
「そうすりゃ、行きたいところ行けるよ」
「世の中にはこんな優しい孫をふった男がいるらしいよ」
「優しいだけでは結婚生活は上手く行かないと悟った」
「悟ったら、優しさはとても大事なことで、それがわからぬ男なら帰ってきて正解さ」
「でもまだ一緒にいたかった」
「好きなのはわかるが、そこまで行くと本気で止めるからね」
「ごめん」
「はい、つゆ、素麺のつゆ、でもうちのって別に出汁を取って合わせているよね」
「そう、今の時期だと麦茶ポットを使ってるから」
「これ、いつまでも麦茶の色にならねえな、ちゃんと入れた?とか聞いたことある」
「それは私もある」
うちの家族あるある
「はっはっはっはっ」
「ふっふっふっふっ」
店を出て、スーパーで買い物し、実家に帰ってきてからも、ずっと楽しそうに話をしていたのである。
手を降る祖父の姿。
「この辺大分変わったね」
「そうだな、この店だって、改装したから、お前の子供の頃とは違うものな、じゃあ入るか」
「うん」
私は離婚して実家がある地域に戻ってきたところ、祖父からも連絡があり、こうして子供の頃連れられた店に行くことになった。
「オシャレカフェみたいになってる」
「ここで珈琲を今でも飲みに来るんだよ、何を食べる?かき氷?」
「子供の頃を思い出すからそれにする」
テーブル席にて。
「こっちに戻ってきて慣れた?」
「まだですね、幸い仕事は転属が認められたので」
上司夫妻と会食して推薦状などももらったりしました。
「人生、色々あるわな」
「あるけどもさ」
かき氷とアイスコーヒーが運ばれてくる。
「とりあえずかき氷に集中しないさい、服にこぼして、お母さんに叱られたことあったし」
「それはいつの…」
ポロ
そこでかき氷が崩れたので。
「ではお言葉に甘えて」
それを見ながら祖父はアイスコーヒーを飲む。
子供の頃を思い出して、そこからこうやってあちこちに出掛けて、進学、就職、結婚…
(そして離婚か)
「って食べるの早いくないか?」
「なんだろう、暑いからかな、アタシ、今、水分足りなかったのかな?」
「はっはっはっはっ」
「じいちゃん、何よ」
「いや、そういうところは全く変わっちゃいないなって思って」
「子供っぽいよね」
そこでため息だ。
「何、そういうの言われたの?」
「やはり男の方は、おとなしい、清楚、綺麗が好きなんですよ、私とは全く逆の」
「君は元気があっていいとは思うんだがな」
「そんなことなかった」
「辛かったのならば終わって良かったじゃないか」
「それが楽しかったことも結構あったから、結婚は一度はしてみるもんだ」
「なんだそれ、おじいちゃんもお母さんも結婚は一回しかしてないぞ」
「それはそうだけどもさ、なんかここまで来たらそういうしかないじゃない!」
「はっはっはっはっ」
「何を笑ってるのさ」
「見る影もなく落ち込んでいるかと思ってた」
「私もそうなるかと思ってた」
「他の人たちに支えられたか」
「うん、やっぱりその話になった当日は全然でさ、職場の先輩から顔を見ただけでどうしたの!って」
話を聞かれたら、こっちでやっておくし、休みを取ってくださいと言われた。
「やめるつもりが転属になったしね、そこも助けられたよ、だから頑張らなくちゃって思ってる」
「でも無理はしない」
「…」
「もうしてたか」
「ちょっとね、さすがに今回のは悲しすぎた」
「おじいちゃんもお前さんのそんな顔は見たくはなかったよ、そこだけは本当に罪深いことをしてくれたよ」
「まっ、でも恨まないであげてください」
「どうして?」
「あの人はあの人で苦労をしてたから」
「そうはいっても、それじゃあダメなんだよ、理由にはならないよ」
「私はもうあの人には関わらないで生きていく」
「そうしなさい」
「でも格好をつけたけども、たまに思い出す」
「はっはっはっはっ」
「早く忘れたいはずなんだけどもな、この辺は難しいよ」
そこに連絡が来る。
「あっ、なんかお母さんが、帰りに買ってきてほしいって」
「何を?」
「素麺のつゆ、なんか今ある分じゃ心もとないみたい」
「じゃあ、帰りはスーパーによってからにしようか」
「うん」
祖父が椅子から立ち上がると、少し歩行が気になったので。
「はい、手を繋ぐ」
「これじゃあ、おじいちゃんみたいじゃないか」
「おじいちゃんは私のおじいちゃんでは?」
「そういう意味ではなくてさ、もう…」
「じいちゃんには定期的に孫とお出掛けを命じます」
「なんだいそりゃ」
「そうすりゃ、行きたいところ行けるよ」
「世の中にはこんな優しい孫をふった男がいるらしいよ」
「優しいだけでは結婚生活は上手く行かないと悟った」
「悟ったら、優しさはとても大事なことで、それがわからぬ男なら帰ってきて正解さ」
「でもまだ一緒にいたかった」
「好きなのはわかるが、そこまで行くと本気で止めるからね」
「ごめん」
「はい、つゆ、素麺のつゆ、でもうちのって別に出汁を取って合わせているよね」
「そう、今の時期だと麦茶ポットを使ってるから」
「これ、いつまでも麦茶の色にならねえな、ちゃんと入れた?とか聞いたことある」
「それは私もある」
うちの家族あるある
「はっはっはっはっ」
「ふっふっふっふっ」
店を出て、スーパーで買い物し、実家に帰ってきてからも、ずっと楽しそうに話をしていたのである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる