浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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失恋一日目なんですけど!

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『失恋一日目なんですけど!』


なんでこうなった。
「じゃあ、次、これお願いね」
笑顔で、眼鏡がそう言ってくる。
「だって暇でしょ?」
「暇だけどもさ」
「俺としては、いい労働力が見つかってよかったなって思いまして、失恋してくれてよかったなって」
「ソウデスネ。あっ、この部分はこんな感じでいいですかね?」
「どれどれ見せてみて…いや、いいんじゃない、このぐらいならば負担がないし、悪くないし」
「ただこれって間に合うんですかね」
「間に合わせる」
「そういってやってもらえなかったら、泣きを見ることになります」
「そういう奴等じゃないよ、そんな奴等だったら俺はここまでやらない」
「わかりました」
「なんだ、もっと追求してくるのかなと思った」
「真面目にやっているのならば茶化すものではないでしょ」
「そうだけどもさ、本当さ、なんでフラれたの?」
「急に刺しに来るな…それは相手に聞いてみないと、いや、私の事はそういう対象ではなかったんでしょうね」
「えっ?可愛いのに?」
後ろから不意を打つ、私はこの人は何をいっているんだろうと思いながら。
「お疲れ様です」
「お疲れ、疲れてない?冷たい飲み物とか買ってきたから、一回休憩しよう」
ちらっと私は眼鏡を見て。
「じゃあ、そうしようか」
男二人は何やら専門用語を混ぜた話をしている、私はよくわからないので、自分の役目について考えていた。
あれもしよう、これもしようと浮かんでくる。が、全部できるわけではないのだ。
どうやって一番いい方法を見つけるか、こういうときスッ!といいアイディアが浮かんでくる人は羨ましいものだと思う。
今回はたまたまだ、たまたまあの人のために、成果に繋がるように準備をしていたら、失恋を味わって、予定がなくなった私はぼぉっとしたら、声をかけられたのだ。
もちろんナンパではなく。
「労働力をゲットだぜ」
そういうのは笑いながらいうものではないとは思うが、たぶんその時の心境はもうどうでもいいやで付き合うことにしたのだ。
全く知らないわけではなかったし、むしろ、渡されたものを見て、こんなに成長したのかと驚いたものである。
「というか、これ部外者の私に見せていいんですか?」
「口は固いって知ってるから」
「はいはい、信頼に応えれるように頑張りますよ」
それを見ていたら質問が来た。
「君はいつもそのしゃべり方なの?」
「えっ?任されたのならば真面目に答えるべきでは?」
「なるほど、確かにこれは真面目だね」
「惚れた相手も堅物だったから、ちょうど良かったのかな」
「あの人は堅物っぽく見えるだけであって、中身はそうではないですよ」
そういうと二人は少し驚いている。
「後は思った以上に美人に弱い」
「なるほどそれが敗因か」
「でもさ、それだけで間柄が上手く行くわけないよ」
「さて、そこまでは知りませんよ、ただまあ、下手にいると、すがられそうで、ええっと前に私にそうなったことがあるんで」
「ろくな男と恋愛してないな」
「その人とは恋愛すらしてないですから、そのいきなりですね…目の前で彼女にさようならされてですね、とんでもなく落ち込んでたんで、さすがに…助けたら、なんかこう、それからずっと…」
「うわ…」
そのうわ…の顔が楽しげだぞ。
「辛いね、それは…」
「私のことをちゃんと知らない人から、同棲しないかって言われてね、逃げたよね」
「そりゃあ、逃げるよ」
「何、男をダメにする何かを持ってたりするの」
「やめてよ。いや、もうここまで来ちゃうと持ってるのかもしれない」
「情けないね、そういう男ってさ」
「でもそうなる理由があるんじゃないですか、寂しかったとか、耐えれなかったとか」
「修行が足りないんじゃないの」
「そういう人は少数派ですよ、いや、それでも脱落する、目標に向けてがんばっていたり、努力できる人だったから、いいなって思ってたんですが、そこで疲れているときに、その声をかけてきた子がね、いてね」
「そっちを選んだと」
「そういうことです、だからフラれたんですよ、最初から脈はなかったんだと思いますよ」
「ちゃんと関係性は作ってた」
「作ってた、段階は踏まないと無理でしょ、遊びの相手じゃあるまいし」
「ああそれなら相手が悪いな」
「だといいんですがね、本当にたまたまですよ、私があそこにいたのは、たぶん一日ずれててもここで労働力として引っ張られることはなかった」
「ラッキーだな」
「酷い男だな」
「さっさと言い返せるのもなかなかいないんだよね」
「さすがにいつもは言わないですよ、言ったら、人間関係ぶち壊しになる、そういう日もある」
「そういう日なのに、いや、キレはいつも以上な気がする、容赦なく俺の欠点をついてくるし」
「あくまで提案ですよ、受け入れるかは任せますし、ただちゃんと裏付けはありますから」
「その裏付けを持ってくるから怖いんだよ」


他の人に今日からしばらく手伝ってくれますという紹介をされた後。
「失恋したから暇なんだってさ」
余計なものをとってつけられた。
ほら、聞いている人、みんなひきつってるよ。
だまくらかして連れてきたって思われている顔だ。
「あの、失恋したって大丈夫なんですか?どういう人なんですか」
なんだろう、直球が一番きついかもしれない。
「えっ?真面目な人、ただ美人に弱かったかな」
「それは…ダメだと思う」
「そうかな、きれいな人とかいると、しんみりしてたから、元々そういう人が好みなんじゃないかな」
「それはそうですけども、どういう男性が元々好みなんですか?」
私?私に聞いているのか、これは私に興味があるタイプじゃないな、恋の話が好きで盛り上がれるやつか。
「真面目で、ちゃんど努力の意味と価値がわかる人、結果はすぐにでなくてもら諦めないで打ち込む人かな、ただ私はそう思っても、相手はそうじゃなかったりすることが多い、私の目は節穴ですよ」
「今は彼氏とか探したりするんですか?」
「ごめん、さっき失恋したばっかりなんで、さすがにそれは…」
「良かったら、紹介するぞ」
「あなたの紹介は嫌だ」
「どうしてさ」
「えっ?的確に好みをついてきそうで」
「そうね」
「やっぱり!んじゃあ、顔合わせも終わったんで、書類作りに戻っていいですか?進められるところまでは進めておきたいんで」
「ああ、わかった」
「無理はしないでね」


間違えてはいけない、固有名詞のチェックが地味に大変。
この漢字、今まで書いたこともないし、読み方が間違っていたら問題である。
メモをし、読み仮名をつけていって、必要な情報を集めていく。
しかし、本当にさっきショック受けているのが嘘みたいだな、私はこうして仕事をしてる。
忘れた方がいい恋だとは思う、けども浸る時間を作ったはずなのに、人生はわからないものだな…
文章というのはわかりやすく作る、疲れた時に読みやすいものにすると、やはり夜にリリースした際に反応が違うのだ。
そこに面白さを加えたいが、さすがに無理、それができる人はすごいと思うし、私はそこからはぶつからないようにしてる。
読みたいものは何なのか、聞きたいことはなんだっただろうか。
その質問から、自分で文章を作り上げていく。
「すいません、チェックお願いします。とりあえず今日は帰りますので、お疲れ様でした」
とメッセージを送り終わらせた。


ああ、本当に今日はなんて日だ。
あっ、そうか、なんかおかしいと思ったら、食事取るの忘れてないか。
さっき差し入れで確かに食べたけども、いつもより全く食べてはいない。
なんか食べるにしてもな、この辺は…店がないというか暗いのだ。

「そうだったんだ、それならみんなみたいに持ち込んで作ったりするか、誰かが作ったものを食べればいいんじゃない?」
次の日顔をだすとそんなことを言われた。
「口に合えばいいんだがな」
ジムに通っている人がいたので、その人から、主菜を分けてもらう。
「そんな量で足りるの?」
「後は米と豆ですよ、仕事が立て込んでいるとき、だいたいこれ、いえ、主菜が豪華な分だけいつもよりいいかな」
ご飯はあったので茶碗一杯分と、冷奴をさっさと食べて、最後は麦茶でぷはーして、食器洗って、また書類作成に戻る。
「昨日のはどうでしたか?」
「あれってテンプレととかあったりするの?」
「実は前に似たようなことをやったときに、参考にした資料があって、そこから崩して使ってますね」
「なんだろう、いいアンケートだと思った」
「答えてくれる人増えないと、やっぱりアンケートにはならないし、でも…足りないかな」
「何が?」
「解答者、長文で重い感情をぶつけてくれる人はたまにはいますが、それだとな、一般の層が掴めないし」
「謝礼をつけるとかは?」
「それだとこのパターンは上手く行かないんですよ」
「それは真っ先に考えたりはするが、やはり正確にレポートを出せる人間が何人もいないと難しい」
「そこまで行くと技術ですよ。でもそれがないと改善ができないんで、ええっと改善するためには問題点が見えなければならない」
話を聞いて、全部良かったと答えてしまうと、まるで見えなくなってしまう。
「そりゃあ、満足してくれている人はいい、それは感謝する、でもそれだけじゃこっちはないってところでしょ」
「もちろん、じゃなきゃこんなこと、アクセス数を増やすにはどうしたらいいかとか真面目に考えたりはしないでしょ?」
「何が理想ですか」
「お客さんに満足をはもちろんだけどもね、もっと増えてくれたらいいなっては思ってるよ」
「それをやるためには結構しんどいですよ」
「そこはもちろん覚悟の上だよ」
「背負いすぎでは?あなたに必要なのは任せれる相手をもっと探しておきなさい、専念できるときに専念することは大事ですよ」
「話していると面白いね、自分の視野の狭さが見えてくるようで」
「えっ?」
「それはあるよな、というかここまでできるのに、なんで向こうはその有効性が未だにわかってないんだ」
「訴えてはいたんだけどもな」
「そこはラッキー、もう返さないでいいでしょ」
「悪い顔してるね、まっ、そこは賛成だが」
「はいはい」
「その言い方は諦めた?」
「いえ、まさか」
「じゃあ何かな」
「まさかこちらの意見を聞き入れてくれる相手だとは思わなかったから」
「えっ?前は不遇だったとか」
「不遇は当たり前ですよ、それでもわかってやっていた、そのつもりなんですが…でも意見が通るということに嬉しさを感じてもいます」
「どれだけ実力者が的確な判断されない環境だったんだよ」
「そんなところなんてたくさんあるよ」
「強いね」
「本当に強かったらそんな生き方はしないよ」
「はっはっ、こういうことを言われると痺れちゃうよ」
(この言い方、本当に気にいってんだな)
「あっ、それで次に結果を出すとしたらの準備って何かしているんですか?」
「それはどっちの?ああそれか、そこまで用意はしているが、手は回るかなって」
「どこまでわかってますか?」
「どこまでって…」
判明している部分を話すと。
「じゃあ、まずはそこまで、そこは事実だから変わりませんから、観察日記をつけるようなもので、この話題に関することはこれから追加でメモしておけばいいし、期日が近づいてきたら、それを見て、改めて意見を出せばいい」
「実際にどうやるの?」
「ああ、今、質問作るので、それに対してまずは答えてもらえますか」
「わかった、それまで待つことになりそうだから、コーヒーでも用意するよ、それとも紅茶」
「コーヒーで」
「アイスがいい?」
「お願いします」
「わかった、用意するね」
「実はここミルがあるんだ」
「喫茶店にあるようなのが出てきましたが」
「煩いんだけどもね、いい仕事はするんだよ」
ウィーーーーーン
工事現場のような音がした。
キリがいいところでまずは終わらせたので、そのままコーヒーを待つ。
「こだわり症なんですか?」
「そうかもね、一度はまるとそんな感じで人生来てるかな」
いい匂いが漂う。
「はい、俺のおすすめのシングルオリジンで」
「喫茶店が出来るクオリティで来ちゃった」
「飲食店はさすがにできないな、出したいもの扱いたいから、経営にならないよ。だからこうして楽しむぐらいがちょうどいいんじゃないかな」
豆は大変香り高く。
(この豆、なんだろう、たぶんブランドだろうな、スペシャリティかな?)
当たりである。


彼女がいない時に。
「で、彼女はずっとここにとは言わないけども、これからも手伝ってくれそうなのかな?」
手伝ってくれたら嬉しいなというニュアンスである。
「もっと昔の男が追いかけてくるかなって思ったけども、それがないから、まあ、来てももううちの子ですにしちゃうつもりだけども」
「それは…」
「えっ?でもさ、その昔の男、今ちょっとトラブル抱えているんだよね」
「えっ?」
「第三者の責任のある証言、または調査が必要になっている状態である」
「ええっとそれは…」
「彼女はどっちも出来る、どっちかっていうと、証言者としてはほしいと思うんだよ、有利な発言をしてくれるというかね。ただそれは向こうの相手の思うツボっていうか、ん~俺が言うのもなんだが、美人にら気を付けておけよなっていう相手に引っ掛かったぽい」
「そうなの?」
「『これから大変になる』って言ってだろう」
「うん、なんかそんなニュアンスでは口にしてた」
「確実になるよ、あれ。バカだな、上手く行くと思ったんだろうな、そんなに世の中甘くないし…相手の女は、お前の将来とかどうでも良かったんだよ、そういう相手を選んだら、私と○○どっちが大事って常に突きつけられるぜ」
「それでその子って答えちゃったのかな」
「これもまた難しいな、けどもさ、遊びでも本気でも責任とらなきゃね!」
「彼女が証言者として呼ばれる可能性は高いの?」
「俺だけが気づいている、いやあっちもそれがあるから離れようとしたから知っているな、それでお前と三人ということかな、もしも俺ならば…まずはそんなこと起こさないが、わかっているから、離れるのはちょっと待ってくれぐらいはいる」
「本当にそんなことしたらダメだからね」
「しないって、するわけがない、まずこんなことを自分が原因で起こしたら破滅する、ちゃんと付き合わない相手と、段階を踏まず飛び越えたら、そりゃあな、トラブルしか起きない、それは人生捨ててるようなもんだ、いや、本気でラッキーだな、あそこで声をかけて正解だ」
「でも無理はさせないでほしい」
「そこは、自分のペース守って動ける人間だから、心配もしてない、食事の内容を見ただろう、自炊しないでも、他の人間が作ったものを上手く取り入れて、管理ができているし」
「成分表みたいな数値をつけるのならば、だいたいいつも同じカロリー、脂質、塩分、野菜、食物繊維は気を付けている感じがする」
パロメーターを作ってくれた。
「これは平均的な食事と比べらたら?」
「大分落としているね、それにトレーニングしている人たちと同じような、ええっといつと同じメニューであっても食べ続けるから、才能もあるんだと思う」
「つくづく、手放しがたい人間ですね」
「是非ともこっちを選んでほしい…」
「…」
「この環境の事だよ」
「いや、気に入っているから、手放したくないのかなって」
「彼女は魅力的ではないかな?なんというか、劣勢でもずっといるというか」
「ああ、それはわかる、確かにそういうのには弱いものだよ。しかしな、前の男って言えばいいの、見る目ないというか、なんというか、彼女は選ばなくても、美人を選んでなかったら、たぶん人生問題なく生きていけたんだぜ、あれは自分はまだイケると思ってたんだろうな」
「ああ、そういうやつか」
「モテたいとか、そういう欲求はあると思うが」
「俺はあんまり…」
「何か夢中になっているものがあればそれとは縁が薄いが、あるんだよ、そういうのがどっかにな、それに定期的に人は陥るというか、その…な、中学の時にさ」
耳打ちすると。
「それはダメでしょ!」
「だよな、そいつそこで自分はモテると思いまして、それが止まらなくなってしまったんですよ」
「破滅しかないじゃん」
「それがね、その時はね、なんていうのです?万能感あれがね、出てきちゃってね、いろんな人を傷つけて、信頼失ったあとだという。また高校の時にはね…」
「そういう話には事欠きそうもないね」
「耳に入ってくるんだよ」
「集めにいってるんじゃなくて」
「そういうこともあるけどもさ、ついでだよ、ついで」
 「で、今後の方針としては?」
「このペースで質も量もこなしてもらうのがいいかな、それである程度溜まる前に、昔の男が反応するかどうか、ここが一つの勝負どころにある」
「来るか、来ないかってこと」
「そう、来ないのが一番いい、来ないのに越したことはない、ないが、来る場合のことも考えなきゃならないので、完了までの時間がその分伸びるんだよ。ただでさえ、専門用語や背景に苦戦しているから、時間はかかるんだけどもね」
「食事とか全部こっちで見ようよ」
「あ~それもいいかもしれないな」
そんな感じで食事を面倒見てもらえることになった。


「ちょっといいですか?」
休憩中に声をかけられた。
「なんでしょうか?」
「言いにくいことかもしれませんが、その騙されてませんよね」
「あ~」
騙されてここにいると思われている。
「失恋の話は本当だしな、あそこでこれからやろうかなとか、予定たてたの、そのままやるわけにはいかなくなっちゃって」
「それならいいんですが、本当に騙されてませんよね?」
「どれだけ裏があると思われているんだろう」
「いや、だって」
「わかるけどもね、知らないわけではないし、その…相手にすると厄介すぎるが、身内になったら心強い相手というか」
「それはわかる」
「ただその敵なのか、身内なのかの判定が向こうが決めているから、ここにいてもいつそれが変わるかわからないのであって」
「そういう人だからな」
「そうなんだけどもさ」
そういって笑った。
「失恋って、そんなに好きだったんですか?」
「そりゃあね、まっ、途中から私の方が好きすぎたからかもしれない、惚れた弱味、その言葉は似合うよ」
「弱味に漬け込みそうな人でしたか?」
「いや、それはない、ないとは思うんだけだもね…でもわからない、ならば…って感じ、どちらにしろ、ええっと上手く行くにしろ、行かないにしろ、これから苦労は凄まじいんだよね、私はそれを支えれないし」
「なんでです?愛してないから?」
「愛か…愛でそこは支えれなくないか?だって、覚めたら、もうどうでもいいやになるんだぜ」
「じゃあ、なんで?」
「将来性はあったのかな、この人は今は惜しいけども、もうちょっとで花が開くんじゃないかなみたいなのはあった」
「結局どうなりそうなんです?」
「そのまま腐って落ちるんじゃないかな、せっかくの花も台無しだし、それはね、私の好みではない」
「男性を才能で見てます?」
「いや、男性だけではないよ、一緒に組む人ならば老若男女、何が得意で、苦手で出来ないかを見て、得意なことを掛け合わせて結果を出す方がいいし、これでも人に合わせるのはそこそこやる方なんでな」
「でも失敗したと」
「なんかオレスゲー感っていうなかな、出るみたいよ、男女ともに」
「あっ、失恋以外のケースもあったんですね」
「あるよ、自分はすごいと思ってもらうのは大事だが、それだけではダメなんだよね、それはそれ、そんな感じで」
「あなたがどういう人なのか話してみたかった、あの説明ではただの興味本意なのか、それとも本当に何とかしようと思っているのかわからないところだったから」
「まあ、口ではなんとでも言えるよ」
「俺は何をすればいいですか?」
「そうだね、やりたくないことはある?」
「えっ?」
「これはやりたくないはあるでしょ?それはまず外して考えるからさ」
「そうですね」
そういってこれはやりたくないなを聞き出す。
「とりあえずそれで見込みがありそうなものを組んでみるから、その時は見てくれると、それもダメならば…」
「いいですよ、その話は受けます」
「ダメだよ、即答しちゃ、うれしいけどもさ、確認してからもう一回聞かせて、ああ、じゃあ、戻るから、もしもいい案があったら、教えてほしい」
「わかりました」

そのまま座らずに。
「これ使ってもいいですか?」
「いいよ」
シートクリーナーで掃除をし始める。
「えっ?なんで掃除しているの?そんなのこっちでするよ」
それを見かけたら止められた。
「ちょっと体動かしたいんですよね」
同じ体制だと肩がつらい。
拭き取ったシートを見る。
(ん~)
「あのさ」
「ひゃい!」
「もしかして、あれいる?」
「まさか、あなたも…」
「私物だけどもね、はい、これ」
無香料シート用クリーナースプレー。
「無香料なのがわかってるって感じですよね」
「臭いは人によって好き嫌いあるからさ」
「ウェットシートでは拭けない、でもドライだと取れないをね、本当に上手に、痒いところにこれは手が届くんですよね」
壁紙に染みとかつかないタイプ。
「安いドライシートの力が上がるよね」
「そう!だから100円ショップのドライシートに、このスプレー吹き付けで、空調の、風の通り道を拭いているんですよ。これやってから風が違う」
「えっ?そうなんだ、それは試してみようかな」
「是非!ずっと座って仕事できたらいいんですが、そこはすいませんね、わがままいって」
「いや、部屋が綺麗になるからいいよ」
「どうしてもあいつは集中するとそのままだからな」
「腰とか辛くならないんですか?」
「ないな」
「うわ、羨ましい」 
「あっ、そうそう」
「なんですか?」
「古巣は蜂の巣つついた騒ぎになってる」
「そう…ですか」
「帰りたくなった?」
「まさか!」
「向こうからの連絡は?」
「…ないですね」
「たぶんこの騒ぎを解決できる人員の一人なんだけどもね、君は、それがわかってないのか、はたまた」
「調査する人は大変でしょうね、証言がまず…その男女問題がありますから」
「生々しい話を聞くことになると」
「そういうのはな、気分悪くなるでしょうね、言い訳とかも酷そうだし」
「そうだね、そんな感じになっているとき聞き取りしないわけにはいかないし、そういうときの言い訳と言うのは聞くに耐えなかったりするものだよ」
「私はその話は聞きたくない」
「聞かなければいいじゃん」
「そうなんですがね、どのぐらい解決に本腰を入れているかもある」
「だってこれ、本当に解決しようとするとすごい額飛ぶよね、何か当てあるの?」
「…」
「えっ?あるの?」
隣で驚かれる。
「まあ、その…手はないわけではないから」
「その手を持ってるって向こうは知らないわけか、それはこっちでは使えるの?」
「無理ですね、向こうに戻って、責任者のサインしたら使えるようなものなので」
「わかった、じゃあ、この話は俺がいいって言うまでは言わないで」
(罪悪感を軽くするつもりかな)
「わかりました、そして出来ればこちらから連絡は…」
「もちろん取らないし、でも言わなければ助け船は考えてた、ほら、溺れる時には藁をも掴むって」
「それは…」
「やらないよ、君の信頼が下がっちゃうからね、ただまあ、俺が敵に回ったら無理だよ」
「それは構いません、あなたはそういう人ですし」
「信頼感があるんだね」
「いや、この人は怖いですから、私は喧嘩を売りたくない」
「なかなかそう思ってくれる人がいないから、珍しいよ」
「このね、ああこれで容赦なく叩きのめせるなっていう顔ね、するんですよね」
「えっ?こっちは…身の安全を確保するだけであって」
「はいはい、それじゃあ、その方針でお願いしますし、何かあったら相談いいですか?」
「もちろん」
「それは問題なく」
こうして失恋一日目に関わったことのおかげで、ガクンと落ち込むことなく、私はなんとかやれているのだが…事が進むに連れて、今までいた場所にもしもいたのならばと悪い予感しか過らない情報が飛び交うので、これで良かったのだなと思う。
「今日はみんなで餃子を焼こうね」
「えっ?皮から?」
「そうは言うけども、意外と簡単なんだよね」
教えてもらったレシピならば、家でも再現できそうである。
「こんなに充実していいのかな」
「人生は充実するためにあるんだよ」
ホットプレートで餃子を焼かれながら言われた。
「なるほど、それは知らなかった」
「どれだけ苦労してきたんですか」
「はいはい、麦茶をお注ぎして!」
「女は姫扱いすれば大抵喜ぶからな」
「お前、そのいい方しているとうち刺されるぞ」
「そこは上手くやる」
「ニュースで名前聞きたくないですからね」
「怖いこと言うなよ、ねーよ」
そんな話をしている間に、餃子は焼け。
『いただきます!』
みんなで食べることになった。
「あれ?食べないの?」
私は食べている他の人間を見ていた。
「ここは楽しくていいですね」
「うん、そうだろう」
そういって、その会話をした二人も餃子を食べ始めた。


    
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