浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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午後七時寸前に駆け込むと、門がガチャンと閉まった。
「セーフ」
なんか疲れたら笑いが出てきてしまった。
でもまあ、何てことはないと、そのまま息を整えて、体についたケガレを落とすことにしよう。
ここは公園として整備されているが、このように旧道、緑が多く、薄暗い側の道は午後七時には毎日門を閉ざす決まりが、昔からあった。
ただまあ、国道側は特にそんなものはないから、みんなは気にならないだろうが。
ちゃんとこれには訳がある。
(なんか最近また多くなっているというか、新しいのが増えている気がするんだよな)
その道をわざと歩いてきては、体にケガレをくっつきむしのようにあちこちつけ、公園に戻ってきてから流水で洗い、地下水に肩まで浸ける、一風変わったことをしているのは彼女なのだが。
「子供の頃はこれをやる人がたくさんいたんだけどもね、今では私ぐらいか、だからあそこら辺すごいことになっててね、そのうち何か起きそうだからって感じで始めたんだけどもさ」
きっかけは交通事故が起きたこと。
「車の底が見えたんだよ、スローモーションだった、髪がそれでフワッと浮いたのを今でも覚えているよ」
街道から旧道と合流する坂で事故が起きるようになった、その一つにこんな感じで巻き込まれたとき。
「それこそ子供の時にやってただろう?って聞かれて、厄落としすることになったんで、旧道歩いていって、公園で流水と地下水、シャワールームの値段で使えるんだよね」
その時に体の被害はでなかったが、荷物、物損は起きたので、慰謝料やら見舞金やらがやって来ましたが。
「どうもその物損もあったらしいんだよな」
ん?
と思うだろうが。
「同級生で魔法を、人を恨むやつとかだな、かじろうとしたやつがいたらしいんだよ」
その時付き合いで買わされたものが事故で破損しましたが、海外からの輸入品だったということで高額のものが壊れたという扱いになった。
「そこまでしてもらうつもりはなかったんだよな」
すいません、すいません、これは気持ちなので受け取ってください。
みたいな感じ。
「まあ、その付き合いのあった同級生とも縁が消えたけどもね」
「そんなの消えて良かったんじゃないの?」
「学校生活の付き合いだったからな…」
男が上着を脱ぎながら。
「ただいま」
「…」
「あれ?お返事は?」
「ちょっと呆れているのですよ」
「なんで?お見合い相手よ」
「それはそうですが」
「巫女みたいなことをしていたら、一生巫女ではなくて、良縁用意するから、少子高齢なんだからさ、結婚しなよってそっちは思われているんでしょ?」
そしてこの男がその相手で。
「よくぞご無事で」
「不思議なんだよ、この公園に旧道使わずに回り道する場合は五時間ぐらいかかるっていうんだが、俺はいつも二時間ぐらいなんだよね」
「よっぽど好かれている、導かれているなんでしょうよ」
「それもあるかもしれないけども、俺が好かれたいのは君だからね」
男は嬉しそうにいう。
「なんでそういうことをいきなり言うんですか」
「言いたくなるからいいんだよ」
ほらほーら、良縁だよ。スペック的にも好みの真面目で根が優しいタイプだよ。ちょっと遠方からになったのは、ごめん、この辺りにそういう人いなくね…
「麦茶、飲みます?」
「いいの?」
こういう神事の一つを自分の身で手伝っているため、冷蔵庫などは使っていいですからねと言われるようになっていた。
「やっぱり冷たいのって美味しいね」
「それなら自宅にいたらどうなんですか?」
「こっちまで来ると、やっぱり気温も湿度も快適なんだよね、後、お風呂も広いというか」
地下から涌き出る水といっても、夏は涼しく、冬は暖かいと感じるので心地よい。
「水道代がかからない広い風呂は独り暮らしには魅力的なんだよな」
「わかる」
「そういえば今日は人も少ないね、なんだったら、俺らぐらいしかいないんじゃないぐらいの静かさだ」
「ああ、ここは合宿施設としては人気ないですからね、ホテルも観光割引があるのならば、そちらを、というか、そっちを今のシーズンに使っていただかないと、地域経済が…」
「そうか…確かに慣れてないと食事をどうすればいいのか困るよな」
「ですよ、先に準備するのならばまだしも、今は人に勧めるにも、営業しているのかわかりませんからね」
「車があると便利なんだけどもね」
「ええ、それはそうでしょうね、国道側は飲食店が多い」
「あっ、夕食食べた?」
「まだです」
「じゃあ、俺が作るから食べない?」
「あら?お料理するんですか?」
「しますよ、一人暮らし歴が長いのと、やっぱりね、体の調整するならできないとね」
巫女への良縁、相手のおすすめポイント。やはり男は試し石を持てなくちゃ。
試し石、力試しのための石、ここら辺の上位存在は武道などが好きなので、それを持ったら一人前の試し石(70キロ)持てる男がいいと思ってる。
(そういう思惑がたまに透けて見えるんだよな)
旧道の木々の枝を刈り取れるような身軽さで、試し石持てるような男がいい男だと思われているんだろうと。
(ただ選ばれるというのも人生に波風が立ってしまうから、穏便に終わらせるのが一番でしょうね)
彼女はこんな意見を持っていた。
(私はいいですから、この人が幸せになってくれたら、それでいいですよ)
ため息混じりで思うのだ。
「そういえばここの武道大会とかって、優勝すると彼女ができるとか言われているから、地方の開催にも関わらず参加者が多いという話を聞いたのですが」
「ああ、そうよ。でも逆に彼女がいたり、既婚者が優勝狙いになると、いろいろ起きたりするから、あんまりおすすめはしないよ」
「俺はそういう人いませんよ、これから出会う、いや、もう出会っているのかもしれませんが」
「そういうのはそういえばあの時出会ってたからかもしれないわね」
「味見をお願いします」
「あっ、美味しいわね、これはすぐにお嫁さんになれるわよ」
(料理の味付けとかは同じ好み)
心のメモ帳に記録した。
「前に作ってくれた、鮭でしたっけ?あのおにぎりを食べながら、この間は帰ったんですが、あれは美味しかったですね」
「あれはトキシラズよ」
トキシラズ、高い鮭、普通はお見かけしない。
「それは…高級品では」
「半身で買うと高いんだけどもね、ギフトシーズン前にお買い得なのが出るから、それをそのままじっくり焼いてね、フレーク作ったのがあのおにぎりよ、一人だったらフレークまでは作らないんだけどもね、あれは美味しいから私も久しぶりに食べたかったのよ」
この辺をあまりにも楽しそうにいうので、聞いている男は結婚したくて、結婚したくてしょうがなくなったという。

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