浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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ただ一つ約束はしている

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人混みの中でも、その二人はどこか違う場所から来たのだろうなとわかる。
「お父さん!お兄ちゃん!」
そこに手を振る娘。
「久しぶり元気だった」
その後に割って入ったのは彼女のリーダーであり。
「本日はようこそ」
改めて丁寧な挨拶をするのだった。


「しかし、リーダーはマメだよな、俺らの家族や仲間も大事にする、あっ、茶は勝手に飲ませてもらうわ」
「全くお前と来たら」
「ごめんなさいね、私は返却したら帰るから」
「いや、いるなら好きにしていい、今すぐ戻れば小うるさいのに捕まるぞ」
「ああ、それならば恩に着るわ」
「大変だな、貴族社会って言うのは、国は滅びてもまだのさばってやがる」
「本当よね」
「あれは未だに栄えた頃の夢を見ている」
他のパーティーメンバーは、そこそこ広くて、周囲の喧騒から離れている魔法を使える彼の家に集まっているようだ。

少し前の話。
「こっちには父の日という風習があってね」
その日に合わせて贈り物をすると知ると。
「あ~そうなんだ。あっ、そうだ、近いうちにお父さんとお兄ちゃんが山からくるんだよ、それならその時に父の日してもいいかもしれない」
「何を贈るんだい?」
「そういう日は何を贈るものなの?」
そういって話していくと、それならば普段使う、山暮らしに必要な道具がいいのではないかということになった。
「お父さんね、昔から使っている山刀があるんだけども、本当は新しいのが欲しいんじゃないかと思ってるんだよね」
ということで山で使う刃物を贈ることになった。
「日本円とか向こうのお金を使う機会があんまりなかったから、ここで使おうと思う」
日本の刃物は、こっちの街だと領主や騎士でも役職持ちではないと買えないもの、そんな扱い。
「それこそ国がまだあった頃ならば刃物は買えるものだったんだよ、今では交易ルートの関係から、まだ日本からのものを買った方が安いんじゃないかなぐらい」
「そのぐらい遠方からのものは安定してないのよ」
リーダーが知己の商人に連絡したら。
「それなら店頭にご案内しますよ」
「店舗があったの?」
「ええ、一応は、さすがに刃物類はあっちこっちに持って歩くのは…ただまあ、領主様の許可を取ってますし、買い物していただけるお客様も限られた人たちだけなのですよ」
「そんなことになってただなんて」
「同じ世界出身でも、全部を知っているわけではないでしょ」
「そうだけどもね」
「それとその贈り物される方は、山地からお越しになられるとか?」
「うん、そう、せっかくだから挨拶して、お食事をしていただこうかと」
「それならば良い店もありますよ」
「相変わらず商売が上手いな」
「決めるか、決めないかはお任せしますがね」
「店も一から探さなければならないところだったから、好みに合うお店を予算で用意してくれるかな」
そこで食材は山地から取り寄せたものを扱い、評判の料理の腕を持つものがいる、それでいて予算で満足するだろうというお店を紹介してもらった。
「そうか、食べているものも街とは違うのか」
「こちらでは珍しい物も多いです」
「先日、熊肉ソーセージをみんなに出したら、反応がおかしかった」
「どのように?」
「高級食材だったみたい、定番だけども香辛料も今は使われてなかったりするらしくて」
「ただ日本でも香辛料の方は高くなってきましたからね」
「そうなんだよね、戻るたびに値上がりしてて驚くんだけども、KCJの売店行くと値上がりしてないので大丈夫かなって思っちゃうよ」
「KCJは…KCJですから、後は売店に品物出している。それこそ表から裏の裏のみなさんもね、趣味なところがある」
「そこはわかる、それで何回も助けられている」
「お客さんが理解者だと思ってる奴等はも多いですね、まあ、私もそのうちの一人ですね」
「理解者ねぇ…」
「そんなものは売れねえよっていっても、扱うのやめませんでしたから」
「えっ?いつも見せてくれるもの、みんな楽しいのに」
(くっ)
「…世の中そういう人ばかりじゃないんですよね、まあ、そういうのがごめんなんで、あっ、でも利益は利益、こだわりはこだわりで分けているんで、そこは心配しないでください」
「ここで実は売れなかったら赤字なんですって言われたら、困ってると思う」
「それはもうやりません」
(やっぱりやったことはあるんだ)
「ではお越しになられる日を楽しみにしております」
日時がわかったので、そのまま予約し、今日という日を迎えた。

「美味しいですね、これ!」
彼女の父は日本語は理解はしているが、しゃべる言葉が若干違うので、彼女と彼女の兄が意訳している。
「気に入っていただけたようで」
旅先での食事も食べ慣れた食材を、料理人の腕でさらなる魅力を引き出された一皿になって出てくる。
「ここでこんなことをいうのはなんですが、妹が山を下りて働いてから、うちに余裕が出てきたものですから…」
「本家の人たちにも色々言われたけどもね」
「そうなの?」
「どうせ上手く行かないって最初は言われた、確かにそうだったし、今のパーティーを組んでからだもん、本当に組んですぐに人生が変わっちゃったなって」
「それでな、お前を見て、山をおりれば金持ちに慣れるという親戚もいてな」
「無理かな」
「そんなことはないんじゃないかな」
「だって、山と違って、こっちはみんなお金だしさ、お腹減ったらウサギ狙おうって感じじゃ生きていけないし、リーダーがいないときにも他のみんなに助けられているよ」
入り浸る先はやはり魔法を使える彼の自宅になります。
「ごちそうさまでした、なんか久しぶりに食べるものばかりだったけども、美味しかった」
「それでは次はお店になのですが…」
「妹、父さんがな、本当にいいのかっていってるんだよ」
「いいよ、いいよ、父の日っていうことで」
そういってお店に移動する。
「これは…その…貴族が出入りするお店なのではないですか?」
「いえ、日本でも山や畑で使う刃物や道具が売っているお店です」
天井が高いのは陳列の関係なのだが、高貴な人たちが出入りする店などは威厳を保つために高く広くきらびやかに作るものらしい。
「いらっしゃいませ」
店員さんが挨拶をする。
「お父さんの贈り物になるものはこの奥にあるよ、どれか一つ好きなものを選んでね」
娘からの贈り物はうれしいものである。
父も兄もその言葉だけで和んだが、店の中、並べられた山用の刃物類を見た瞬間。
「あれ?どうしたの?」
「…」
「?」
「すまん、ええっとだな、想像以上に良かったと思う、父さん、父さんもそうだよな」
コクコク。
「この中で一つ、本当に大丈夫か?」
「値段もちゃんと確認してもらったから、ここから…」
パタパタ移動して。
「こっちまでのどれか一つならばって感じ」
(その言い方で固まっちゃってるよ)
「お父さんも色々見てみようよ」
こういう時娘は強い、フリーズしてた父親が目覚めた顔をした。
「せっかく色々あるんだからさ、草を刈るもの?それとも枝を切り落とすもの?どういうのがいいの?」
「まぁまあ、そう急かすなよ」
「そうだよ、こういうのはお父さんの好みでいいとは思うし」
「すいません、父、圧倒されちゃったみたいなので、あの椅子を使わせていただきたいのですが」
「ちょっと待ってください」
リーダーは店員さんに聞くと、店員さんが、その売り場のそばにテーブルと椅子のセットを持ってきてくれた。
「お父さん、大丈夫?」
「びっくりしただけだからさ、親父、俺らに気にせずに見てきたらどうだ?」
すると店員さんが。
「よろしかったら、気になったものは実際に手にとられてみてはどうでしょうか?」
「そんなこともできるのか」
こっちの商売としては買わないと触れない。
「そういえばそうだったな、ああいう道具類は実際に触って、しっくり来るか試せたりするもんだから、気づかなかったよ」
「じゃあ、お父さん、まずは気になったものはあるのかな?そういうのって大事だよ」
「店員さんとしてはこんな場合おすすめはありますか?」
リーダーが聞くと。
「使い慣れているものか、初心者でも使いやすいものからでしょうか」
妥当な案内が出た。
「もしも店員さんが個人的に選ぶとしたら?」
「それ、聞いちゃいます?」
こだわりを持つ店員のようで。
「そうですね、山仕事のための刃物だとこれがいいですかね」
すると彼女の父も興味を持って、刃先を見ている。
「こちらはヴァンガードといいます、この辺りの山仕事で使われていた刃物を、日本の職人が取り寄せて、魔…使い勝手をよくしたものですね」
(今、魔改造したものって言おうとしたな)
リーダーは店員を見ると、私はそんなことを言ってませんの顔をした。
彼女の父はそれを選ぶことにした。
「せっかくだから、これが欲しいなって思うものにしたんだってさ、まっ、気持ちはわかるけども」
そういう兄も、気になるものがあるようで。
(ねえ、リーダー、父の日、母の日はあるなら、兄の日とか姉の日とかもあるの?)
(あるのかもしれないが、あんまり有名ではないな、ああ、お兄さんにも何か贈りたいの?)
(うん、あんな顔を見ちゃうとね)
(それなら来月にでも兄の日、再来月に姉の日って感じで、毎月順番に買うとかならばいいんじゃない?)
(ああ、それはいいね)


「リーダーは買い物に付き合うときも嫌な顔、面倒くさいとか思わないのかな」
「ああ、それか」
「何か知ってるの?」
「リーダーは家族とは円満な関係じゃないから、儂らの家族や仲間の買い物に付き合ったりすることで、家族ってこんな感じなのかって思えているらしい」
「もうそんな家族は捨ててしまえよ」
「そうね、まだ付き合いがあるとしても、できるだけ会う回数を減らすとかね」
「儂もそう思うぞ、でもな、そんなリーダーの甘さも嫌いじゃないところはある」
「それは確かに」
「ただ約束は一つしている」
「何の?」
「もしもリーダーの家族が儂らに何かをした場合、そこは儂らを取ってくれるとな」
「本当にうちのリーダーは馬鹿だな、ちゃんと支えてやんないとな」
「そうね、そうしないとね」
「その時が来たら、いや、来ない方がいいのかもしれないし…」
「何を迷っているんだ?」
「正直、その時リーダーがリーダーの家族よりこちらを選んでくれる時を見たくもあるんだ」
「はぁ?」
「相変わらずあなたは偏屈というか、変わっているというか」
「宮廷政治を見続けたら、そういう話は夢物語みたいなものになるからな、自分でもそういう欲があるとは思わなかった」
「さすがにそれを率先したら止めるわよ」
「止めてくれ」
「いくら付き合いが長くなりそうで、今が上手くいってたとしても、仲間の幸せを願うことが一番大事なことだからな」
「私もリーダーのことを笑えなくなってしまった、まさかここで自分にもそんなものがあるとは思わなかった」
「欲は誰でもあるものよ、でもね」
「わかってる、危うくなりそうならば止めてくれ、そしてお前たちもそうなったら儂が止める」
「恨みは無しだぜ」
たぶん君たちは上手く行くだろうし、それぞれ得意な分野があるから、困る場面はそうそうないと思われる。商人の紹介から集められたところから、このパーティーは始まった。
実際にその時から上手くいっているが、明日の話は誰にもわからない。
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