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額石
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「お~い、この話、誰か行けるやついるか?」
上司が部屋に戻ってくるなり言ってきた。
戦闘許可証持ち限定で、長期出張の呼び掛けである。
「一人で行くなら高い危険手当てがでるぞ、ケットシーといってもそれなりの手当てになる」
「何するんですか?」
「サンタの代わりだ」
そういうだけで危険であることはわかるが。
「いつもはサンタがレッドノーズと熊がでないようにパトロールしているんだがな、緊急の任務で向こうにいかなければならないんだ、帰還が未定だと、熊が人を襲うかもしれない」
「あっ、俺行ってもいいですが、ケットシー次第ですね」
「そうか、じゃあ力を借りれるのか聞いてみてくれ」
支部の、暑い、この昼にどこにいるかというと、ケットシーは涼しいところに決まってる。
ここかな?と覗くと、寝そべっている何びきかかこちらを見た。
「熊のパトロールに一緒に行ってほしいんだけども、手伝ってもらえませんかね?」
そういってもリアクションは特にないかと思ったが。
「ニャー」
一匹がついてきてくれることになった。
その子と一緒に、読みたかった本を何冊かを荷物に入れて、山の中の一軒家にサンタが戻るまで滞在することになった。
朝と夕時の巡回以外は書類仕事、それが終われば簡単な自炊をしたあとに本を読むつもりでいた。
が、山の雰囲気を見てから、その時に備えて槍を振ることにした。
こんなに手槍を振るのは戦闘許可証の更新が近いかなと思っているときぐらいか、ケットシーは縁側でごろごろしながらこっちを見ている。
ここで振ってると修行時代も思い出す、師匠の家には硬い石があって、酒を飲んだ師匠が「お前ぐらいの時はあの石で練習した、同じ石じゃないけどもよ、あれは本当に硬いのよ」
ふ~んと聞いたあとに、どのぐらい硬いのか、実際に突いてみると、ガキン!本当に硬いでやんの。
「はい、お前、死んだよ」
「なんですか?」
「この石は熊の額と同じぐらい硬いの、だから額石といってな、でもさお前は突いてびっくりしちゃったら、そこで熊の爪がザクザクだから、それだと死んでたよ」
「すいません」
「でも悪いことじゃないさ」
師匠は機嫌が良かった。
「話をしても実際に試すような奴は嫌いじゃない、それだけでお前は他の弟子とは違う、ただちょっとのんびりしているから、人よりは遅いかもしれないが、きちんと花は咲くからよ、そこは諦めずにやってほしいや」
優しいなと思ったが、あとで他の人がやめることになったと聞いた、だからなのかなって。
「熊とやり合うなら覚えておきな、そこで渡り合えたら認めてやらぁ」
「俺はそこまでは無理でしょうががんばりますよ」
汗が気になるまで槍を振っていたようだ。
この地域は、サンタの一人が趣味で鳥獣対策をしていたそうだ、趣味って?相撲でも取られていたのだろうか。
「いなくなったとわかると、向こうからくるかもしれません」
「それは絶対に来るやつでしょ?」
定期連絡はそこで終わった。
向こうが今まで恐れていたサンタやレッドノーズが姿を見かけなくなった、そう感じたら動き出すだろう、こちらの姿を見て、弱そうだと思ったら、そのまま襲ってくるかもしれない。
逆にこいつは危険だなと思っていると姿を見せなくなるそうだが、それは向こう次第だ。
ガー~
扇風機の強風ぐらいで室内は涼しく、ケットシーが風上で、その毛を逆立てられながらくつろいでた。
この分ならばまだ近くにはいないだろう。
数日で読みたかった本は読み終えると、もう備えるかと、何をするにしても手早く済ませ、手槍をそばに置く生活を始める。
「にゃー」
遠くを見て鳴いていた。
今晩にでも来るかもしれないなと思ったので、KCJに連絡。
「もし俺から連絡がなかったら、後はよろしくお願いします」
「誰かにお伝えすることはありますか?」
「特にはありません」
「わかりました、それではお気を付けて」
やっぱりこれって危険な仕事なんだなと、ここで実感。遺言だよな、あれ、まさか、聞かれるとは思わなかった。誰かにね…師匠に?いや師匠はねぇは、そういうのを受け止める人じゃないしさ。
そう思ったら笑えてきた。
そしたらケットシーが動き始める。
もう近くにいるようだ、聞き耳をたてるが、う~ん、俺にはわからないな。
タン!
ケットシーが繁みに飛び込もうとすると、熊が出てきて、力任せに叩き落とそうとした。
バシン
しかし、そこはケットシーの障壁、熊程度では割られはしない。そのままケットシーは熊に張り付くと、熊は引き剥がそうと暴れ始めた。
その間に、じりじりと槍を持って詰め寄る。
ブンブンとケットシーを剥がそうと腕を振り回している、その動きをよく見ていくと…だんだん集中力が上がっていくのがわかる。
ついでに体は生命の危機と認識しはじめて、いつもより楽しくなってきた。
グォォォォ
熊の叫びにも、あ~はいはい、そんな感じだし、それもどんどん音量が小さく聞こえてくる。
ケットシーだけでも熊には勝てるが、そうなるとこのまま暴れさせたままになるから、決着は早めにつけるのが望ましい。
下手に突くとケットシーの障壁がこちらの槍に反応する、それでは意味がない、その間を縫うように急所に入れろ、それができなければ戦闘許可証を持っているのだろうが、戦力とは言えない。
ガス!
熊の額に槍を入れて、すぐに引き抜いて距離をとる。
初めて額を突いたから、これがきちんと入ったかがよくわからない、中途半端だったかな、ならばもう一回と次を狙うと、熊の動きはどんどんゆっくりとなってバダン!
糸が切れたように倒れ、ケットシーが足で砂をかける動きをしたので、お亡くなりになったのだなというのがよくわかった。
「はい、こちらKCJです」
「あっ、俺です」
「ご無事でしたか」
向こうでも声を聞いたらホッとさせた。
「それで倒した熊はどうしますか?」
「明日にでも職員がそちらに参りますので」
「わかりました」
「お怪我などはありませんか?」
「無事でした、ラッキーでした、やはりケットシーがいると違いますね」
「今日はゆっくりとお休みになってください、お疲れ様でした」
「わかりました、それでは失礼します」
今日は寝れるのかな?なんか興奮しちゃう。
するとケットシーがすり寄ってきた、なで返してやると、風が吹いてきて、さっきまで聞こえていた音量が元に戻ったことに気がついた。
上司が部屋に戻ってくるなり言ってきた。
戦闘許可証持ち限定で、長期出張の呼び掛けである。
「一人で行くなら高い危険手当てがでるぞ、ケットシーといってもそれなりの手当てになる」
「何するんですか?」
「サンタの代わりだ」
そういうだけで危険であることはわかるが。
「いつもはサンタがレッドノーズと熊がでないようにパトロールしているんだがな、緊急の任務で向こうにいかなければならないんだ、帰還が未定だと、熊が人を襲うかもしれない」
「あっ、俺行ってもいいですが、ケットシー次第ですね」
「そうか、じゃあ力を借りれるのか聞いてみてくれ」
支部の、暑い、この昼にどこにいるかというと、ケットシーは涼しいところに決まってる。
ここかな?と覗くと、寝そべっている何びきかかこちらを見た。
「熊のパトロールに一緒に行ってほしいんだけども、手伝ってもらえませんかね?」
そういってもリアクションは特にないかと思ったが。
「ニャー」
一匹がついてきてくれることになった。
その子と一緒に、読みたかった本を何冊かを荷物に入れて、山の中の一軒家にサンタが戻るまで滞在することになった。
朝と夕時の巡回以外は書類仕事、それが終われば簡単な自炊をしたあとに本を読むつもりでいた。
が、山の雰囲気を見てから、その時に備えて槍を振ることにした。
こんなに手槍を振るのは戦闘許可証の更新が近いかなと思っているときぐらいか、ケットシーは縁側でごろごろしながらこっちを見ている。
ここで振ってると修行時代も思い出す、師匠の家には硬い石があって、酒を飲んだ師匠が「お前ぐらいの時はあの石で練習した、同じ石じゃないけどもよ、あれは本当に硬いのよ」
ふ~んと聞いたあとに、どのぐらい硬いのか、実際に突いてみると、ガキン!本当に硬いでやんの。
「はい、お前、死んだよ」
「なんですか?」
「この石は熊の額と同じぐらい硬いの、だから額石といってな、でもさお前は突いてびっくりしちゃったら、そこで熊の爪がザクザクだから、それだと死んでたよ」
「すいません」
「でも悪いことじゃないさ」
師匠は機嫌が良かった。
「話をしても実際に試すような奴は嫌いじゃない、それだけでお前は他の弟子とは違う、ただちょっとのんびりしているから、人よりは遅いかもしれないが、きちんと花は咲くからよ、そこは諦めずにやってほしいや」
優しいなと思ったが、あとで他の人がやめることになったと聞いた、だからなのかなって。
「熊とやり合うなら覚えておきな、そこで渡り合えたら認めてやらぁ」
「俺はそこまでは無理でしょうががんばりますよ」
汗が気になるまで槍を振っていたようだ。
この地域は、サンタの一人が趣味で鳥獣対策をしていたそうだ、趣味って?相撲でも取られていたのだろうか。
「いなくなったとわかると、向こうからくるかもしれません」
「それは絶対に来るやつでしょ?」
定期連絡はそこで終わった。
向こうが今まで恐れていたサンタやレッドノーズが姿を見かけなくなった、そう感じたら動き出すだろう、こちらの姿を見て、弱そうだと思ったら、そのまま襲ってくるかもしれない。
逆にこいつは危険だなと思っていると姿を見せなくなるそうだが、それは向こう次第だ。
ガー~
扇風機の強風ぐらいで室内は涼しく、ケットシーが風上で、その毛を逆立てられながらくつろいでた。
この分ならばまだ近くにはいないだろう。
数日で読みたかった本は読み終えると、もう備えるかと、何をするにしても手早く済ませ、手槍をそばに置く生活を始める。
「にゃー」
遠くを見て鳴いていた。
今晩にでも来るかもしれないなと思ったので、KCJに連絡。
「もし俺から連絡がなかったら、後はよろしくお願いします」
「誰かにお伝えすることはありますか?」
「特にはありません」
「わかりました、それではお気を付けて」
やっぱりこれって危険な仕事なんだなと、ここで実感。遺言だよな、あれ、まさか、聞かれるとは思わなかった。誰かにね…師匠に?いや師匠はねぇは、そういうのを受け止める人じゃないしさ。
そう思ったら笑えてきた。
そしたらケットシーが動き始める。
もう近くにいるようだ、聞き耳をたてるが、う~ん、俺にはわからないな。
タン!
ケットシーが繁みに飛び込もうとすると、熊が出てきて、力任せに叩き落とそうとした。
バシン
しかし、そこはケットシーの障壁、熊程度では割られはしない。そのままケットシーは熊に張り付くと、熊は引き剥がそうと暴れ始めた。
その間に、じりじりと槍を持って詰め寄る。
ブンブンとケットシーを剥がそうと腕を振り回している、その動きをよく見ていくと…だんだん集中力が上がっていくのがわかる。
ついでに体は生命の危機と認識しはじめて、いつもより楽しくなってきた。
グォォォォ
熊の叫びにも、あ~はいはい、そんな感じだし、それもどんどん音量が小さく聞こえてくる。
ケットシーだけでも熊には勝てるが、そうなるとこのまま暴れさせたままになるから、決着は早めにつけるのが望ましい。
下手に突くとケットシーの障壁がこちらの槍に反応する、それでは意味がない、その間を縫うように急所に入れろ、それができなければ戦闘許可証を持っているのだろうが、戦力とは言えない。
ガス!
熊の額に槍を入れて、すぐに引き抜いて距離をとる。
初めて額を突いたから、これがきちんと入ったかがよくわからない、中途半端だったかな、ならばもう一回と次を狙うと、熊の動きはどんどんゆっくりとなってバダン!
糸が切れたように倒れ、ケットシーが足で砂をかける動きをしたので、お亡くなりになったのだなというのがよくわかった。
「はい、こちらKCJです」
「あっ、俺です」
「ご無事でしたか」
向こうでも声を聞いたらホッとさせた。
「それで倒した熊はどうしますか?」
「明日にでも職員がそちらに参りますので」
「わかりました」
「お怪我などはありませんか?」
「無事でした、ラッキーでした、やはりケットシーがいると違いますね」
「今日はゆっくりとお休みになってください、お疲れ様でした」
「わかりました、それでは失礼します」
今日は寝れるのかな?なんか興奮しちゃう。
するとケットシーがすり寄ってきた、なで返してやると、風が吹いてきて、さっきまで聞こえていた音量が元に戻ったことに気がついた。
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