浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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風の頭を潰す

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「あっ、あんたらちょっとこっちも見てくれねえかな」
「どうかしたの?」
瀬旭(せきょく)が立ち話を打ち切って近づいてきた。
「ここにな、潜った後があるんだけども、綺麗だろ、もぐらの大きさじゃないし、もしかしたら変なのが入り込んでいるんじゃないかって」
「わかりました、それも様子を見ておきます」
そこで周囲を螺殻(らがら)ミツと共に巡回すると、いきなり敵意をもって襲ってきたやつがいる。
「早いですね」
「でもサメと比べたら?」
「ゆっくりかな?」
あれ?でもこれも結構早いんだけどもな、ミツは挨拶がてらに撃つが前足を狙うところが、爪を飛ばしただけだ。
「見てみろよ、あいつこれからしばらく深爪で生活が不便だぞ」
今のはミスにも取れるかもしれないが、すぐにこんなことをいうのがやはり瀬旭だし、余裕をもって次のことを考える。
バス!
「いい目しているじゃない、んで堅さがわかったから、わざと受け止めた?そうやって距離をつめるって?いやいや、それはね、シュガーですわよ!」
(なんか急にお嬢様になった)
「おミツお嬢様もこの距離は絶対にキープ、トドメとか考えない、距離を作った上だそこから、見てる方は退屈だって?そんなの考えちゃダメさ」
(誰にいってるのかな)
返事はせずにミツは次の行動でそれを示していく。
「でもあいつこっちの動きよく見てるな」
「人間を予習してくるなんて」
「そこまで勉強熱心だとは思いたくないが、ここで退場はしてもらうぜ」
集中力は上がり、相手の手痛いところへ一撃必殺であった。
(すごい)
この二人の銃器は同モデルであるし、そんな必殺技なんて存在はしないのだが、瀬旭が楽しくなってくるとこんなことが起こりやすくなる、彼には見えてくるらしい。
「三ヶ所ぐらいかな、ここに当たったら痛いんだろうなみたいな」
「それってどうやって身に付くんですか?」
「身に付けようとして身に付いたわけじゃないんだよな、覆木(おおうき)いるじゃん、あいつとまだ若い頃、射撃場で顔を会わせるたびに、張り合ってたわけよ、でそうなるとさ、次も負けたくない、譲れないとか思うわけ、それで色々とやってみたりはしたんだよな」
どうやったら、あいつに参りましたって言わせれるか。
「実家に柿の木があるんだけども、母ちゃんに掃除を命じられてて、掃除してたんだよ」
(掃除のイメージが全然浮かばない)
「風が強い時間があって、落ち葉がまとめられないよって、軽い葉がつむじ風っていうの、それにさらわれて、くるくるって、そこでさ、どうしたら風が止められるのかなとか考えたんだよな」
「で、止めれるようになったから、あんなことが出来るようになったんですか?」
「まさか魔法使いじゃあるまいし、でもああいうのって、風の頭を潰すか、尾を踏んづけるといいんだよ」
(頭を潰す?尾を踏んづける?)
「わけわかんないよね、でもこの話するとだいたいみんなそんな顔してるよ、お前何いってるの?とか、はいはいとか、ずいぶんとあなたにしてはロマンチストな物の見方をしてますねとかね」
(一番目は覆木さん、二番目は水芭(みずば)さんはわかったけども、三番目は誰なんだろう?)
会ったことない人なのかな?というところまでで、そこまで深く疑問はわかなかった。
「まっ、ミツが熱心に努力しているうち、向こうは必ず答えてくれると思うよ」
「まるで人のように語りますね」
「人というか、上位存在というか、人では理解できない何かの世界というか、出来ることはできるんだけども、教えたところで再現できてないのは何故なんだろうなって、何でなのかと調べられたこともある、少し前まで白万(はくまん)も新しい魔法のヒントになるかもしれないって思って、話は聞いてたことはあったよ」
「それでできたんですか?」
「話を何回も聞いている途中で別のことがわかったというか、そっちの方が魔法、技法としては自分に向いているから、その時まで髙火力出せなかったんだよね、だから一人で仕事はできないわけではないけども、毎回生き残ったみまいな顔をしていた、当時より五倍は火力が上がってるし、白万のすごいところは、火力を上げたら、それを防御する魔法をセットで考えるところだね」
「そういえばそうですね、魔法使いの人ってセットじゃないですね、攻撃的なら攻撃的なものばかりなので、怪我をすると大変だし、回復の人は、一人では現場にいけないとか」
「代わりにすんごい時間がかかるらしいけもね、だから真似をする人はいないというか、でもあれを見ている限りでは、セット、攻撃と防御とそれに関しての修復とか、一括で持っている人の方が、どんな人とも組めたりはするし、白万は信頼おける人だからな、だからうちの事務所もセキュリティ任せられるしね」
そこな水芭からの連絡が来る。
「はい、今は瀬旭さんと二人ですが、わかりました」
「どうした?」
「前から定期的に私が同僚に頼まれていたお土産分のお掃除グッズが安く買えるそうなんで、戻ってきてから時間作ってほしいって」
「河川管理部のみんなはこっちの世界で売ってるもの大好きだもんね」
「そうなんですよ、もう便利すぎて戻れないといってますね」
お土産として持っていってるものと、足りない時はお使いとしてお金を用意されたりする。
「この間、静電気使って、ゴミを絡ませやすくするシートを見本で渡したら、それが気に入った人いたんですよね」
ミツの生まれ故郷は掃除機はあることはあるが、騒音レベルのうるささなので、シート状のお掃除グッズがお土産として人気。
「ただちょっと性能がいいやつだと、気軽に買えない値段になるから、迷うらしいんですよね」
その話を水芭に伝えたところ。
「それはね、結構な人が通る道だよ」
そういうわけで水芭の方がミツの同僚へのお土産には熱心であった。

「ただな、そのせいでサンプルを一番試したがるのがヒロシ部長でな」
シートの掃除は音がしない、だから職員が掃除の換気のために開きっぱなしになってるドアから見えたのは、無言でヒロシ部長が天井のあまり掃除をしてない部分を、シートで拭い、どうしたものかとその部分を見ると。
ニコッ
すんごい笑ってた。
(いけないこれは、見てはダメなやつだ) 
気配を殺せ、気づかれるな、職員は後退りし、音を立てないようにするのだが、心臓だけはバクバク高い音がするのだった。
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