浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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責任は取りませんが幸せにはなってください

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「おや?君はクーシーかと思ったけども、ちょっと違うね、何かしらがあって、誰かが、悲しいことでもあったのかな?」
ある日気がつくと俺はクーシー、ケットシーが猫ならば、クーシー、犬の姿をしているが異世界やら魔法やらと縁が深い存在になっていた。
彼女は俺のそばに近づいてくるが、どうも足が悪いのか、左足が自由ではない。
「ああ、これは腰痛が原因で、若いときに一家の大黒柱をやったら、それが原因で、金が稼げなくなったから、こうして一人でいるのさ」
そういってそばに座った。
「君は眠りについて、夢を見ている状態だ、それが何故かクーシーの姿をしていて、珍しいことが起きているが、たぶんそれは性格のせいかな、義理堅いとかそんな、ああ、だからとても悲しいんだね」
そういわれると、俺は込み上げてきそうな思いがあった。
「よく頑張ったね、強い子だね」
なんだろうね、久しぶりに誉められた。
頑張っても、頑張っても、誰も誉めてくれなかったのに、やっと誉めてくれた。
「クゥーン」
「どうしたんだ、急に甘えて」
そこでポンポン、子供にするかのように優しくしてくれるのだ。
辛かったよ、辛かったんだよ。
人生は上手く行かない、そうは言われても、俺は上手くいきたかったんだ、努力が足りない、だから努力した、いつかいつか、それが報われると思ってさ、頑張ったんだよ。
頑張ってもね、ダメだったんだ。
そうしたらどうでもよくなった、よくなったとか思ってたくせに、どうして、俺は温もりを求めてしまうんだろうか。
「んっ?どうしたかな?」
彼女は優しく笑う。
俺は彼女に現実でも必ず会おうと思った。
会いたいから会いたい、なんてバカな理由で頑張ろうと思った。
この人がどこの誰かかもしれないし、もうこんなに優しくされるならクーシーでもいいんじゃないかしら、魔法が解けなくてもいいんじゃない?童話でもあるじゃん、
午前0時に魔法が解けるとか言わないで、そこはもっとサービスしてほしいものである。


「目が覚めましたか?」
「ああ、俺、眠ってましたか?」
「ぐっすりでしたよ」
「なんかこんなにぐっすりなの、久しぶりかもしれません」
「そうでしたか、でもきちんとリラックスしないと体に悪いですよ」
「それはわかっているんですが」
その後、体に気を付けるならば、こうしてくださいとかああしてくださいとか教えてもらった。
しかし、驚いた、えっ?そんなの嘘でしょと思っていた。
疲れた時にあの店に行って、髪を切って、シャンプーして、耳掃除までしてもらうと、その間に強烈な夢を見るという話。それかそストレスがあればあるほど、まるで1つの人生を始まって終わるような。それこそ常連の一人は、だからうちの会社の待遇は転職しろって言われるんですが、これがあるからやめられないんですよっていうハマってしまうというコメントを見たことあるが、まさか俺もそれに当てはまるとは思わなかった。
実は夢はさっき以外のシーンもあるが、そこはその…誰にも言いたくはない、自分だけの秘密にしたい。言ってしまったら、夢が消えてしまいそうな気がするからだ。

そんなこんなで俺は現実に戻っていったのだが、次の日から世の中の見え方が少し変わった、なんというか、嫌だなって思うことがそれはそれ、折り畳まれたという感覚があった。嫌なことはそういやあったなと、さすがに許す気にはならないが、怒りが整理されたというか、あれは今の出来事ではない、やっと過去のことになったという、奇妙な感覚である。
すると生活にの余裕が生れた、なんというか、こんなに時間って余っていたんだっけ?というぐらいの目覚めの良さや、仕事が終わったときの体力の残り具合があった。
そうなると、それを今までやれなかった、手が回らなかったに使い出す。
それでまず何をしたのか、掃除である、面倒くさい水回り、あいつは手強かったが、最近の洗剤類すごいのな、なんでこんなに簡単で便利なの、ちょっと高いものほど機能は充実しているが、そこは使った後の結果を見て納得できた。
このまま綺麗を維持していきたい。
しかし、ここまでストレスを知らない間に、溜めていたつもりは…あったとしても減らしていくために頑張っていたが、どうも足りなかったようだ。
そしてだ、あの夢のせいか、現実でも寂しくなった。なったがさすがに紹介してとか、飲み会やるなら呼んでとか友人知人に言えないままだし、できればだ、そのあの夢の中に出てきた人のような子がいいなと、だがあれは夢なのだ、夢と現実を混同しては不味いが、その…神社にだけは良縁をお願いしました、しかも神社はそういう神社です、はい、ここだけガチなのに、見られるのは恥ずかしくて、人があんまりいないとされる時間に来ました。
それで帰ろうとしたところ。
神社は階段を昇った上にあるのだが、一人の女性が昇ってくるがちょっと大変な様子。
「大丈夫ですか?」
「ああ、すいません、大丈夫ですよ、体力つけるのも兼ねているので」
そう笑った。
「そうでしたか…」
「それに腰痛なんで、これは自分で頑張りませんと」
「どうしてそんなに頑張れるんですか?」
「ん~自分のためには頑張れませんよ、これでも怠け者なので」
「そんなことないでしょ、体を壊すまで頑張ったからでしょ」
「その頑張りは残念ながら報われなかった、ああ、でも次は上手くやりますよ」
笑って返した。
「俺のこと覚えてません?」
「なんのことです?」
「茶色の大きい犬とか好きですか?」
「先日なついてきた子がいたので、ブラッシングしてあげたんですが、いい感じで毛がね、とれねね、たまりませんでした」
「換毛期お好きなんですか?」
「動画で見るぐらいです」
「今度一緒に見ませんか?」
「ずいぶん変わったご趣味で、いえ、私がいうことではありませんね」
「最近、少し興味があります」
「最近ですか」
「はい、最近ですね」
「ああ、すいません、この後の事もありますから、日課に戻らせてもらっても?」
「せいませんね、変な話をしてしまって」
「それでは…」
そういって彼女は階段を昇り始めた。

自分がクーシーとなり、名前も知らない女性に心を救われるというのは本当に夢だったんだろうか、夢にしては鮮烈すぎるし、現実としては儚すぎる。
神社での出来事は俺にどっちかを選べと示唆しているような気がした。
現実には夢がない、夢は現実と繋がりもしない、今までの自分はそんな感じ。
でもか細くても異なる道があるというのならば…
「すいません」
俺は彼女に声をかける。
「まだ何か?」
それを選んでみたいという勇気が何故か今はあった。

「私は見てすぐにあの時のお兄さんだとはわかりましたが、さすがにそれでこっち側の話なんてできませんよ」
「それはそうだよね、わかる~」
空調の効いた部屋でで電源オフのこたつに入ってた二人の会話。
「あの話しかけなんで、騙しにきたのかな、でもそれならそれでいいかって気持ちはあった」
「そう思われてもしょうがないかな、お茶は?」
「飲む」
そういって男は冷蔵庫から準備する。
「けどもさ、まともな人でびっくりした、騙す気ない人だとは思わなくて」
「それで慌てたの?」
「うん、さすがにそういう人だとは思わなくて、困ったぐらいだ、でもまあ」
「何?」
「最後に一回だけ信じてみてもいいかなって、どうせ悪さをしたとしても、上手く行かない手筈は整えているんだしさ、でもその尻尾を今も見せないっていうか」
「君には俺は尻尾をブンブン振ってると思う」
「ケットシーならイライラしているのかなって思っちゃうんけどもさ、なんかそれとは違うっていうのかな、こっちがわかったら、認識したらブンブン振りだすんだけども、メトロノームみたいな振り方だし」
「会えて嬉しいからね、そりゃあ振っちゃうよ」
「もうクーシーじゃないのに、今も尻尾が見えるのが不思議なんだよね、あれ?何?好きな人でもできたの?」
「ハッハッ、ナイスジョーク」
「えっ?私は何か面白いこといった?」
「俺が君のこと好きだっていったら?」
「他の子にした方がいいよ」
「なんでそんなこというのさ?」
「なんで?なんでなんだろうね、もう人の喜怒哀楽が理解できないから、怒らせてもわからないんだよね、私は、だから誰かと一緒にいない方がいいんだよ」
「そんなこと言わずにさ、俺と一緒にいてよ」
「どうせあなたも飽きるさ、そういう気持ちは嬉しいがね」
「頑固だな」
「そこは譲れぬ一線があるもんだよ、それでどうだい?こっちの世界に来て、少なくとも前のところよりは待遇もよろしかろうし、この辺でこのまま安定を選んでもいいんじゃないかな」
「安定とは?」
「ご家族に親孝行できる分使うとかね」
「それはそれで考えているよ」
「それは良かった、いいご家族ならば大事にすればいいよ」
「そっちはどうなの?」
「説明した通りそういうのはいないから、適度に世の中に善行を積んでいくとするよ」
「もう少し自分の幸せも考えればいいのに」
「そういうなは食べて寝るのに困らないだけあればいいかなって、他は余分というか、また金蔓として目をつけられるのはごめんだが、この力を寝かせるとそれはそれで良心がいたむんだよ」
「バカだよね、そんなの忘れちゃえばいいのに」
「忘れれるものではないし、何も出来ない私では救われなかったんだ、だからそこは変えれないよ、さてと、ここで休んだらまたすぐに忙しくなるが、何かあるかな?」
「何かって何?そういうのがわかりにくいんだよね、なんというか抽象的すぎる」
「ごめんなさい…」
「そこまでじゃないから、ただわかりずらい」
「わかった、ええっと、足りないものはあるかな?ってことで」
「君と一緒に過ごす時間とかでいいかな」
「それ少し遅かった、もう費やすものは決まってるんだ」
「その生き方が正しいとは思わないでよね」
「そこを言われると弱いな」
「寂しいんだよ、俺は、君とこうしている時間が大事なの」
「えっ?」
「何それ、今わかったの?」
「あっ…はい、わかりましたが、その…」
「何さ、俺はもっと二人の時間増やしたいんてますけどもね」
「そういっていただけるのは嬉しいですが…」
「ダメなの?」
「ダメというわけでは…」
「必要最低限のお金はいるけどもさ、それ以上になると人による、お金大好きな人はいるとは思うけどもね、君がそういうタイプをあまり好きではないということは知ってる、そういう人の顔を見るとき、素直な感情を出さないようにしているしさ。俺は君がそういう態度を取ることになったら、たぶん自分が許せないと思うんだよ、そういうのが苦手なのに、知っていただろうって、それなのに、それなのにってさ」
「でも実際にそうなったわけでは」
「そこは戒めだよ、絶対にそれをしない、しないから感じさせたくもないっていう、疑われたくはないってやつ、勝手だけどもね」
「ずいぶんとまっすぐに生きるんですね」
「生きたくても生きれなかった、だからこそそう生きたいってやつ、たぶん君のそばにいればそういうことができると思うんだよ、勝手な思い込みだよね」
「それは素敵ですよ、そういう姿勢を誰もが取れるわけじゃありませんよ」
「痩せ我慢だよ、君には格好いいところを見せたいじゃん」
「無理はしないで」
「そうやってこちらを気にかけてくれるところがたまりませんね」
その表情はとてもよろしいですね…
「ちょっとあなたは変わってると思います」
「そんなことをいうのは君ぐらいだ」
「えっ?他の人は言わないんですか?」
「俺ってそんなに変わってる?」
「そりゃあ、私にそういうことをいう人はいませんし」
「何度だっていうよ、ただ楽しませるための言葉はないから、そこはごめんね」
「なんで謝るんですか?」
「ほらこういうとき、その気にさせるような言葉で酔わせてほしいとかってあるんじゃないんですか?女の子ならば」
「そこでそんなことを言える男性はちょっと」
「苦手なの?」
「他の人にも言ってるんだろうなって」
「そうはいうかもしれないが、練習してきてる場合もあるんだよ、格好いいところを見せたいから」
「あなたはどっちなんです?」
「俺は練習する、そしてできれば他の男の例は知ってほしくない」
「意外と嫉妬深い?」
「そりゃあ、好きな子が他の男見てたら嫌でしょうよ、嫌じゃない?そういうの」
「嫌だとか思っても止めれないのでは?」
「それは辛いね」
「ええ」
「それとも辛い中で真実の愛とか見つけた方?」
「かもしれませんね、少なくとも信用はおけそうだ」
「それは愛じゃないよ」
「じゃあなんです?」
「なんだろうね、愛ではなく愛情なのかもしれないね、ほら、親が子供にかけるような奴、千尋の谷から落ちたら、親が助けにいくやつよ」
「なるほど待っていてももう迎えには来ないんだな」
「何、待ってたの?」
「少しね、どっかであったかも、でももういいや」
「いいやって?」
「あなたに今言われたら、どうでもよくなった、あの人たちのことは」
「そしたら君はどこに行くのさ」
「ここではないどこかに行くことになるんじゃないかな、ただまあ、今までのKCJの管理にいたときのようには行かないけどもさ」
「そこまで自棄にならなくてもいいさ」
「なってるかな?」
「なってるよ、0か100かは君らしくもないし、もっと君は強かだよ、冷静さを無くしてる」
「結構いいますね」
「まあね、ただまあ、好きにはしてもいいが、自棄になって自分の痛みに鈍感になるのは見られないから、それだけは覚えておいてね、俺はそれがすごく嫌だって」
「その言葉の方が応えるな…」
「お小言でごめんね」
「いえ、私も自棄になってましたからね」
「痛いのはダメだよ」
彼女は彼のことをこう評す。
私が無くしたものを持っている人だと。
「本当にあなたは何故にこっちの世界に来てしまったのか」
彼は彼女の心配に苦笑する。
「責任とって」
「責任は取りませんが幸せにはなってください」
「冷たい、もうそろそろ俺に心許してくれても、いや、許してくれてはいるけどもさ、もっとこう甘えてもいいんじゃないかな」
「甘えたりなんかしませんよ」
「ええ、そうなの、俺は待ってるんだけども」
「行きませんよ」
「じゃあ、俺が行ってもいいの?」
「それはズルいですよ」
その時彼は笑っていた、彼女にはこの時彼の尻尾がパタバタ振れたような気がした。




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