浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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自分を誉めてくれるのはサメだけ

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しばらくぶりに会わないか?と言われた友人に怪しさを感じ、同じく誘われていた奴と。
「一緒に行こうか」
「そうっすね」
二人だったら怖くない、そんな感じでいざ待ち合わせに行くと。
(やっぱり…)
(勧誘でしたか)  
ある程度話を聞いたあとに、そういうのは結構です!と伝えると。
「チッ、わかってねえな、でもよ!お前らはチャンスを逃したんだ、チャンスをな!」
本人は熱弁だと思っているが、俺らには捨て台詞にしか聞こえない。
そしてそれを見ているサメがいた。
(あっ)
(どうした?)
(いや…その)
「ん?なんだよ」
サメがあいつを呼び止めた、そのまま何かを話しかけているかのようだ。
(あれって何なの?)
(サメに好かれちゃったんですよ)
(どこに好かれる要素があるの?)
(人だとちょっと…と思う駄目なところや、ああいうその…クズな部分もサメは好きなんです)
「そうか?そうだよな、俺はやっぱり間違ったことはいってないよな、俺の言葉は見る奴が見ればやっぱり正しいってことだよ、あいつらは何もわかっちゃいないんだ、その点お前はわかってるじゃねえか!」
(そう言われたサメが、恋でもしているかのようにキラキラな目になってきたよ)
(あれは連れてかれる)
(どこにだよ)
(川にです)
(それって大丈夫なの?)
「よーし、じゃあ行くか!」
「あっ、行っちゃった」
「一応連れてかれたってことは報告しておかないと」
でも本人は同意なので、はい、わかりました、ありがとうございました。で終わりである。
「そういえばさ、俺にはよくわからなかったけども、あいつサメの言葉わかるの?」
「それも危ないって思った部分なんですよ、本来サメの言葉なんてわからないのに、勉強や関係性もない中でわかっちゃうってことは、サメに惑わされているらしいんですよ」
「それで危害はないの?」
「ひたすらサメにチヤホヤされちゃうだけですから」
「いや、それは十分に危ないじゃん」
「その怖さがわかっている人は陥らないんですがね」
「ああ、あいつみたいに、今に見てろ、絶対に上手くやってやるからみたいなタイプはハマっちゃうのね」
「サメ無しでは生きていけなくなるとか」
「だろうな、自分を誉めてくれるのはサメだけになったら、サメから離れたら現実が見えてくるから、何がなんでもサメから離れなくなるよな」
その後、あいつがどうなったかは知らないが、釣りに行った友人が、この間釣りに行ったら、聞き覚えがある声がしたんだよ、でもあいつだろう?案の定さ、聞こえてくる話は適当っていうか、盛ってるというか、嘘ばっかじゃんって思ったから見つからないうちにすぐにそこから離れたんだけども。
どうもあいつはそんな話をずっと川でしていて、その話を毎回毎回飽きずにサメたちは尊敬の眼差しで聞いているらしい、もっとひどい目あえばいいじゃんって思ってたんだけども…あああいつはもう帰ってこないんだろうなってわかったら、その方がいいんじゃないかと。

「あっ、ごめんね、気分悪い話したわ、それで今日は何食べる?」
抱えていたものを誰かにこぼしたら、不思議なことに俺もまたその日以来あいつを思い出しもしなくなって、顔も今では朧気になっていった。
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