浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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あの約束ってまだ有効だったっけ?

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ホラー要素あります。




この街は妖精と共にあった。

気候が妖精たちにあっていたのではないかとはいわれているが、この街では妖精たちが人間より上、貴族と言えばわかりやすいかもしれない。

街中より妖精たちが住まう川沿いの方が賑やかである。

私はこの街の生まれではないが、子供の時から何度も来ているからということもあり、一人で歩き回るのも苦にはならない。

とはいえ、異界には違いないので、大人になってからは時計、エトランジュモデルを身に付けている、これでこの街以外から来たことの証明と保険になっていた。

今回は人と会う約束なのだが、不快な出会いがまずあった。

同郷の人間と会わないわけではないが、その見知った顔が妖精を怒らせたのだろう、寒いなか、半袖でケタケタ笑いながら走っていた。

ああなればもう人の世には帰れないかもしれない。

もしも歩ける人ならば、市を見るのもおすすめである、売っているものによっては、外に持ち帰るとすぐに見せてくれ、物によっては売ってくれと待ち構えていることもある、私は面倒だが、今はやってはないが、昔はお世話になったものである。

さて、約束の人物はどこに、エトランジュモデルはこんなとき便利だ、一度あった人の居場所を示すのだから。




「いつも思うんだけども、この調子で街中を歩かれたら、俺らの立つ瀬はないと思う」

「まあ、いいじゃない、話が早いし、俺は歓迎よ」

来訪者はフードを取ると、長い髪がふわっと落ちる。

「おお…」

その髪に釘付けになったあとに。

「最近変わったことはないよ」

「お前さ、わかってる?そういうのやめようよ、うちに来てくれなくなるじゃん、それにさ、もう相手がいるわけだから、そんなことしているとそのうち切られちゃうよ」

「俺の方が昔から知っているんだけどもな…」

「はいはい、でこれが約束の品」

それは特製の弾丸というやつで…

「いたずら好きでよく跳ねまくってくれるよ」

そういって男はニヤリと笑った。



「予算みた?」

「見ましたが、多いですね」

「うん、二人に慣れてもらうまでは応援もあちこちから呼んでサポートできるようにしたんだ」

「この予算の管理者…」

「あっ?知ってた?実は彼女から昔さ、一度は仕事してみたいですって言われたことを思い出してね、連絡したんだよね」


あの約束ってまだ有効だったっけ? 


「それ本人なんていってました?」

「えっ?って驚いてた」

「驚くと思いますよ」

「でもまあ、元々勝負にならないわけよ、ここまで人とお金なんかを揃えて、ようやく勝負になるかな?だし、それにほら俺には時間制限がある」

「それは…」

「それ持ち出されたら、みんななんも言えないでしょ?まっ、医学がこのままそんな俺を活かしてくれるとはいえね、擬似的な俺の死をみんな感じてくれているから、意外と話はスムーズに進むんだよね、で松灰(まつばい)くんはどういう人だった?」

「前から名前だけは知ってましたけどもね…」



「本日はよろしくお願いします」

面接の相手は、これから組む相手当人であった。

やりにくいだろうなと思いはしたが、松灰はそんな顔をしないで定型のやり取りは終えた後に…

「松灰さんとは実際に会うのはこれがはじめてなのですが、以前から知ってました」

「えっ?俺ってそんなに有名人でしたっけ?」

「奥さんと一緒にですが…」

「ああ、それですか」

「はい、お名前は出しても?」

「構いませんよ」

「私は実は『みふり病院』廃院になってますが、あの病院の調査も携わっていたので、松灰さんたちが勇気をもって調べたこと、それがその後の調査において、被害を出すことなく終えることができましたから」

「調査は終わったけども、あれはまだよくわかっておらず、続いているようですがね、何かをあの時見落としているのか、足りないのか、なんとかなると思ったんだけどもな」

「そんな責任感持たなくてもいいでしょ」

「さすがに数日は夜、目が覚めました」

「あれが数日で済むんですか?」

「そこは愛の力ってやつですよ」

一緒に生き残ったうちの一人が現在の奥さんです。

「いつもチョコレートを買っている、昔ながらの職人さんがいるお店があるんですが、甘くないやつなんですよ、それを帰ってから一緒に食べようねっていう話しはしています」

いきなり惚気を入れられた。

「はぁ…そうですか」

「あれに関しては俺がそのうち決着をなんて過ったんですが、最近はどっかの動画投稿者が上手いこと解決してくれないかななんて思ってますよ」

「自分でやりたいとは思わないんですが?」

「その考えは長生きできない」

「確かに」

「俺は知ってましたからね、こっちの世界、あの時巻き込まれて、新館の方が本当にひどくて、階と階の間にエレベーターが止まって、脱出しようと俺がまず出て、道を確保しようとしたら、彼女が残ったエレベーターがね、動き出したんですよね、お前はこっちだぞって連れてくやつですよ」

手を伸ばして、間に合って、ああ、これは解決しようとしてはいけない、外に出ることを優先しようと思ったら。

「簡単に出れた、俺たちは四人で出ました、俺と彼女以外の二人は、このままこの地からされば問題なく暮らせるのはわかりましたから、まっ、それやったら、その二人に別れ際にね、怒鳴られたからな」


それでお前らが代わりにいろんなもの無くすって、耐えられねえわ。


「ってね」



「松灰くん、本人は気づいてないけども、こっちの業界に向いているんだけどもね」

「それでも普通に生きていけるのならば良かったんですがね」

「んじゃまあ、上手くやっていけそうならそのまま決めちゃうってことで、でもまずは慣れてね、何しろ君は愛剣を破損しているし、松灰くんは前の仕事で使っていた銃は持てないから、新しいものにして、KCJの戦闘許可証取ってもらわないと」

「わかりました、それでは失礼します」

「あっ、○○にもよろしくね」

「はい、伝えておきます」



さすがにその名前が久しぶりに出るとは思わなかった。

まだあれは終わってない、たまに名前が出ると気配を感じることがある、だからなんだろうな、家に帰るのが少し怖く、だけども早く帰らなくっちゃと思うのである。



「お帰りなさい」


何もなかった。


それだけがとても嬉しかった。










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