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『あいうえお』からやり直しておく
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せっかく名車なんで、最後に返却する前に思い出をとドライブしたわけ。
「助手席は瀬旭(せきょく)だけども、楽しいわけよ」
「何よ、私のどこが不満なわけ」
覆木(おおうき)に絡む姿も絶好調といえた。
「で、トイレ休憩となったら」
瀬旭の姿がさっきから見えないと思い、探したらいたのだが。
「何してるの?いや、待ってそれ」
「ああ、今、話してたのこの人のことね、たぶんこれの価値わかるの」
フリーマーケットというやつが開催され、適度にわいわいがやがやなのだが、瀬旭がいた場所ではカー用品が売っていた。
「俺の見間違いでなければ、これは」
「ああ、これ死んだ親父のものなんですが、リサイクルショップでも引き取ってもらえなくて、廃棄する前にフリーマーケットに出してみてもしダメならばと」
「それ、純正品だよね」
「なんか買ってから、車手放しても大事にしてましたから」
「やっぱり当たり?」
「大当たりだよ」
「お安くするからどうです?」
「安くはしなくてもいい、むしろお釣りいりい」
そういって旧車の廃盤ホイールを一揃い手に入れることができるが。
「ああ、こういうのお好きなんですか、それならこれもどうせならばオマケして」
「ちょっと待って、まだあるの?」
「まだあります、なんか売れるんだったらもっと持ってくれば」
「今、こういうの得意なやつ呼ぶから待って」
はい、こちらはKCJの、ああ、覆木さんどうしました?この後、お越しさになるって、えっ?旧車の状態のいい純正パーツ、写真は送れます?はい、今、詳しいやつをそっちに向かわせて、管理にいって泣き叫んで予算獲得してきますね。
30分後に第一陣着。
「おっ、来たみたいだ、じゃあ、あの人たちはたぶん高く買ってくれると思うから」
「だといいな」
ぐらいの店主、この後、KCJから今のお車の車検一回無料と、整備のガソリンスタンドでしたら割引価格で五年利用できますという条件まで提示されて、夢ではないかと己を疑ったという。
「俺だってそういう話をワイワイしていたいんだがな」
さっきとは雰囲気が違う。
「覆木さん大丈夫ですか」
「うん、水芭(みずば)悪いね」
「いえ、これも仕事ですから」
そういって先程まで事件が起きて、検証が行われている現場に水芭は姿を現した。
「お知り合いだったんですか?お亡くなりになられた方」
「そうだね、んでもってその前にたまたまあってね、二言、三言かわして、軽口叩いた後、これよ」
「最後に話したって何を?」
「俺は何をしたかったんだろうななんて哲学的なことだよ、柄でもないねって返した…、危ない!っていって子供守って身代わりになったそうだ、全く羨ましい終わりだよ」
「でも結構とんでもない人だって聞いてますから、そういう人ってやっぱり地獄なんですか?それとも善行の分天国なんですか?」
「いや、あいつのことだから、どっかの異世界に転生してんじゃないの」
「ということがこっちはありましたが」
今日はbarは休みなので螺殻(らがら)ミツはいない。
「俺の方はね」
「その話はこちらから伝えても?」
泉呼(せんこ)から報告があるそうだ。
この場には瀬旭、覆木、水芭、泉呼、その泉呼をこっそりbarに連れてくるための白万(はくまん)もいる。
「水芭くんはたぶん膝から崩れ落ちると思うので、座った方がいいかと」
「瀬旭さん、何をしたんですか?」
「えっ?俺は問い詰められる方?」
「さっき何をしましたか?」
「俺、俺らの首が出来れば欲しい知り合いがいたので挨拶をしました」
「挨拶された方ビックリしてましたよね」
「してたね、でも挨拶って大事じゃない?」
「一応ね、何かあったらダメだから、盾になるつもりでいたわけなのに、瀬旭さんだけ楽しいそうに話されるとですね、警備的にね」
「何もなかったし、あれ?水芭は?」
「カウンターの中で座り込んだよ」
「瀬旭さんはその方とお知り合いで?」
「ちょっとね、なんでその仕事引き受けたの?って聞いたら、生活があるんでって言われた、それじゃあ仕方がないねって」
「そして向こうからは、まだあなた方が美味しい仕事ばかり受けていたのならば、もっと恨めていたのに、こんなんだから恨めないんですよねって苦笑された後に」
「俺らがもっとしっかりしてたら、こんな仕事しなくて良かったって聞いたら、いや、それなら俺はここにすらいないって答えられて、俺よりバカな生き方選んだねっていったら、物凄く怒った」
「それは瀬旭さんにだけは言われたくないです」
泉呼とは口調が違うので、おそらくその相手の真似であろう。
「じゃあ、次に会うときまでに『あいうえお』からやり直しておくって言ってやったさ」
「これは言われた方、今日は悪夢見ますね」
「本当に時々意味わからないこと、わけがわからないことをやるけども、今回は強烈だな」
「そしてこれはあちらの方からこちらの事務所に向けてのメッセージですね、近いうちに動きますって」
「なんでそんな重要情報、敵陣から直接もらえるんですか」
「俺の人徳がなせる技」
「人徳?」
「あるよ、もりもりだよ、でもこれってさ、この言葉は俺らだけにじゃないよ」
「じゃあ何さ」
「昔ね、話した時にいってたの、あいつはね、良いことも悪いことも上手くいった試しがないって話だから、あれは自分にも言ったのさ」
「格好よく決めたつもりでしょうが、この挨拶の話だけはミツさんには言いますね」
「それだとミツに泣くか、怒るか、呆れられるかするじゃねえか」
「そのどれか怖いならもうするなよって話だからな」
「瀬旭さんと長いこと仕事をするってそれだけでも大変なんですね」
「だからさ、組合とかの役職に推薦されることはうちの事務所は全くないんだよね、何をやるかわからないところがあるから」
それを組合の一存と思われては困るというやつ。
「でもそのおかげで助かってることもあるでしょうよ」
「それはそうですが」
水芭復活。
「気を取り直そうか」
「ああよろしければ飲み物はこちらから決めていいでしょうか?」
「何か安かったから」
「それもありますが、今日は暑いですし、特別な品物が見つかったこととかけまして…」
「こういうのがサラリと出てくるようになるとは…」
「泉呼さんからすると不思議ですか?」
「昔の君はこう…寄せ付けない何かがあったし、あんまり笑うとか、こういう覆木さんならさりげなくやりそうとかなかったから」
「時は人を変えるものですよ」
「なんでみんな俺を見るのよ」
「変わらない人もいますからね」
水芭は呆れたようであった。
「ミツさん、クッキー焼いたりしたんだけども食べる?」
「水芭さんお菓子も作られるんですか?」
「昨日卵黄だけ使ったから、ジュースはパイナップルとオレンジがあるけども」
「じゃあ、オレンジジュースで」
「はい、どうぞ」
「サクサクだ」
「卵黄をたくさん使ったときの消費はこれに限るんだよね、あればいつの間にか消えてる」
「お菓子屋さんも出来ますね」
「やるとしたら、その時は店番頼むから」
「わかりました、お任せください」
クッキーはミツが食べ終えた後、真中(ただなか)の家にいるサメ君様に、綺麗にラッピングされたという。
「助手席は瀬旭(せきょく)だけども、楽しいわけよ」
「何よ、私のどこが不満なわけ」
覆木(おおうき)に絡む姿も絶好調といえた。
「で、トイレ休憩となったら」
瀬旭の姿がさっきから見えないと思い、探したらいたのだが。
「何してるの?いや、待ってそれ」
「ああ、今、話してたのこの人のことね、たぶんこれの価値わかるの」
フリーマーケットというやつが開催され、適度にわいわいがやがやなのだが、瀬旭がいた場所ではカー用品が売っていた。
「俺の見間違いでなければ、これは」
「ああ、これ死んだ親父のものなんですが、リサイクルショップでも引き取ってもらえなくて、廃棄する前にフリーマーケットに出してみてもしダメならばと」
「それ、純正品だよね」
「なんか買ってから、車手放しても大事にしてましたから」
「やっぱり当たり?」
「大当たりだよ」
「お安くするからどうです?」
「安くはしなくてもいい、むしろお釣りいりい」
そういって旧車の廃盤ホイールを一揃い手に入れることができるが。
「ああ、こういうのお好きなんですか、それならこれもどうせならばオマケして」
「ちょっと待って、まだあるの?」
「まだあります、なんか売れるんだったらもっと持ってくれば」
「今、こういうの得意なやつ呼ぶから待って」
はい、こちらはKCJの、ああ、覆木さんどうしました?この後、お越しさになるって、えっ?旧車の状態のいい純正パーツ、写真は送れます?はい、今、詳しいやつをそっちに向かわせて、管理にいって泣き叫んで予算獲得してきますね。
30分後に第一陣着。
「おっ、来たみたいだ、じゃあ、あの人たちはたぶん高く買ってくれると思うから」
「だといいな」
ぐらいの店主、この後、KCJから今のお車の車検一回無料と、整備のガソリンスタンドでしたら割引価格で五年利用できますという条件まで提示されて、夢ではないかと己を疑ったという。
「俺だってそういう話をワイワイしていたいんだがな」
さっきとは雰囲気が違う。
「覆木さん大丈夫ですか」
「うん、水芭(みずば)悪いね」
「いえ、これも仕事ですから」
そういって先程まで事件が起きて、検証が行われている現場に水芭は姿を現した。
「お知り合いだったんですか?お亡くなりになられた方」
「そうだね、んでもってその前にたまたまあってね、二言、三言かわして、軽口叩いた後、これよ」
「最後に話したって何を?」
「俺は何をしたかったんだろうななんて哲学的なことだよ、柄でもないねって返した…、危ない!っていって子供守って身代わりになったそうだ、全く羨ましい終わりだよ」
「でも結構とんでもない人だって聞いてますから、そういう人ってやっぱり地獄なんですか?それとも善行の分天国なんですか?」
「いや、あいつのことだから、どっかの異世界に転生してんじゃないの」
「ということがこっちはありましたが」
今日はbarは休みなので螺殻(らがら)ミツはいない。
「俺の方はね」
「その話はこちらから伝えても?」
泉呼(せんこ)から報告があるそうだ。
この場には瀬旭、覆木、水芭、泉呼、その泉呼をこっそりbarに連れてくるための白万(はくまん)もいる。
「水芭くんはたぶん膝から崩れ落ちると思うので、座った方がいいかと」
「瀬旭さん、何をしたんですか?」
「えっ?俺は問い詰められる方?」
「さっき何をしましたか?」
「俺、俺らの首が出来れば欲しい知り合いがいたので挨拶をしました」
「挨拶された方ビックリしてましたよね」
「してたね、でも挨拶って大事じゃない?」
「一応ね、何かあったらダメだから、盾になるつもりでいたわけなのに、瀬旭さんだけ楽しいそうに話されるとですね、警備的にね」
「何もなかったし、あれ?水芭は?」
「カウンターの中で座り込んだよ」
「瀬旭さんはその方とお知り合いで?」
「ちょっとね、なんでその仕事引き受けたの?って聞いたら、生活があるんでって言われた、それじゃあ仕方がないねって」
「そして向こうからは、まだあなた方が美味しい仕事ばかり受けていたのならば、もっと恨めていたのに、こんなんだから恨めないんですよねって苦笑された後に」
「俺らがもっとしっかりしてたら、こんな仕事しなくて良かったって聞いたら、いや、それなら俺はここにすらいないって答えられて、俺よりバカな生き方選んだねっていったら、物凄く怒った」
「それは瀬旭さんにだけは言われたくないです」
泉呼とは口調が違うので、おそらくその相手の真似であろう。
「じゃあ、次に会うときまでに『あいうえお』からやり直しておくって言ってやったさ」
「これは言われた方、今日は悪夢見ますね」
「本当に時々意味わからないこと、わけがわからないことをやるけども、今回は強烈だな」
「そしてこれはあちらの方からこちらの事務所に向けてのメッセージですね、近いうちに動きますって」
「なんでそんな重要情報、敵陣から直接もらえるんですか」
「俺の人徳がなせる技」
「人徳?」
「あるよ、もりもりだよ、でもこれってさ、この言葉は俺らだけにじゃないよ」
「じゃあ何さ」
「昔ね、話した時にいってたの、あいつはね、良いことも悪いことも上手くいった試しがないって話だから、あれは自分にも言ったのさ」
「格好よく決めたつもりでしょうが、この挨拶の話だけはミツさんには言いますね」
「それだとミツに泣くか、怒るか、呆れられるかするじゃねえか」
「そのどれか怖いならもうするなよって話だからな」
「瀬旭さんと長いこと仕事をするってそれだけでも大変なんですね」
「だからさ、組合とかの役職に推薦されることはうちの事務所は全くないんだよね、何をやるかわからないところがあるから」
それを組合の一存と思われては困るというやつ。
「でもそのおかげで助かってることもあるでしょうよ」
「それはそうですが」
水芭復活。
「気を取り直そうか」
「ああよろしければ飲み物はこちらから決めていいでしょうか?」
「何か安かったから」
「それもありますが、今日は暑いですし、特別な品物が見つかったこととかけまして…」
「こういうのがサラリと出てくるようになるとは…」
「泉呼さんからすると不思議ですか?」
「昔の君はこう…寄せ付けない何かがあったし、あんまり笑うとか、こういう覆木さんならさりげなくやりそうとかなかったから」
「時は人を変えるものですよ」
「なんでみんな俺を見るのよ」
「変わらない人もいますからね」
水芭は呆れたようであった。
「ミツさん、クッキー焼いたりしたんだけども食べる?」
「水芭さんお菓子も作られるんですか?」
「昨日卵黄だけ使ったから、ジュースはパイナップルとオレンジがあるけども」
「じゃあ、オレンジジュースで」
「はい、どうぞ」
「サクサクだ」
「卵黄をたくさん使ったときの消費はこれに限るんだよね、あればいつの間にか消えてる」
「お菓子屋さんも出来ますね」
「やるとしたら、その時は店番頼むから」
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