浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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それが俺の格好いいところなの?

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「はぁ、僕に組合からの依頼ですか」
水芭(みずば)に組合の、広報、一般人向けの冊子に得意の料理を載せたいという話が来たのである。
「すまねえ、これは俺が全面的に悪いんだ」
この事務所との協力者、女の子と飲み会をする際の話のネタ、盛り上がりに水芭の作った料理の写真を見せたりしていたのだが、うっかり酒の力もあって、こういうのがもっと見たいのならば組合に投書するといいさ、なんていったもので、それが次々に広まり、ファンが見たいと組合に向けて手紙を書いたのである。
あまりの反響に。
「組合としてのお願いです」
依頼が来てしまった。
もちろん最初は断るつもりだったが、なんとかなりませんかね?と毎日のように連絡が来てしまい、顔を出さないならということで料理の写真と調理手順の一部、そこに手だけが移るのが、その冊子がおかしいぐらい売れたのである。
「でも水芭は嬉しくないみたい」
瀬旭(せきょく)である。
「そりゃあそうですよ」
「組合もこんなに求心力が無くなってるとは思わなかったな」
驚くのは覆木(おおうき)である。
「昔は違ったんですか?」
螺殻(らがら)ミツが聞くと。
「おじさんだからね、組合に加入した時はそりゃあ嬉しかったぐらいだし、今はなんかちょっと寂しいかも」
「そりゃあ、人手不足で、予算を組合に所属している人たちから徴収して、新人教育に使いますっていうよね」 
「ここまでの状態なら納得だな」
「でもこんなに人気だとまた頼まれちゃったりして」
「さすがに断りますよ、この騒ぎに混ざって、何が乗じてくるかわからないからという理由ならばさすがにいいわけにはなりますよ」
「水芭さんは、格好いいと言われることが嫌なんですか?」
(おおっと俺らが聞きにくいことをさらっと言ったぞ)
(さすがはミツだ)
「う~ん」
そういわれると、水芭は悩んでしまった。
「私は水芭さんが格好いいと思いますよ、格好いいポイントをあげるならば、玉ねぎのみじん切りが細かく丁寧なところと、忙しいとき卵を右じゃなくて、左手で、こう片手で割るじゃないですか、あれを見て、おお!って思ってますね」
「それが俺の格好いいところなの?」
水芭は表情を崩した。
「はい!」
(見ました、覆木さん)
(ああ、見た、あいつ、あんな顔したの、前に見たのいつぶりだよ)
仕事終わりの賄いで、オニオングラタンスープが出たのだが。
「ごちそうさまでした、水芭さんって、賄いで出してくれるとき、野菜の柔らかさ変えてくれるんですよね」
「疲れている体にはその方がいいに決まってるよ、後で一雨来るそうだから、今日は暖かくしておやすみ」
「はい、おやすみなさい」
送り出した後に、barの後片付けを始めると、雷光が一瞬で通り抜けた。
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