浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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…話聞きましょうか?

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「この間はありがとうございました」
螺殻(らがら)ミツの姿を見ると、彼女は頭を下げた。
先日の『森は遊ぶ』もいう謎の言葉をかけらた後に、ムカデに襲われた彼女である。
「大丈夫です、慣れてますし」
「そういっていただけると…」
なんでも彼女はこういった呪いにずっと苦しんでおり、解こうとしても何故か家族が反対し、家族の元から離れて、勉強をしているそうなのだ。
「今度からあんなことがないように特別教室の授業にだけ参加しようかと」
特別教室、魔法や呪いなどが届きにくい構造をした旧校舎で行われます。
「それは私も受けれますか?」
ミツが言い出すと驚かれた。
「受けれるとは思いますが、巻き込まれるかもしれませんし」
「傘目先生もいるんだったら、人手は多い方がよくありませんか、呪ってくるなら、突っ返してやりましょうよ!」
「ふっふっ、そうですね」
その話を事務所に帰ってから瀬旭(せきょく)や覆木(おおうき)、水芭(みずば)にいうと。
「いいんじゃないか」
「反対されるんじゃないかと思ってました」
「反対してもね…」
「呪いは大変なのは知ってますし、今のうちにこれも勉強と思って、経験を積んでおいた方がいいですよ」
事務所の仕事でも呪いの取り扱いもあるし。
「ほら、あのお屋敷ね、うちは仕事引き継いで預かっているけども、呪い専門ってわけじゃないからさ」
動画配信者は見つかったが、病院にかつぎ込まれた以外、交代した人間が誰かわかってはいないのである。
「それに旧校舎だろ、授業が始まってから呪いが生まれたとしても届くまで、かなり時間がかかるから、傘目くんじゃなくても、警備の人間がいれば、対処は十分に可能だし、ああいう呪いというのは、潰してやると次に出てくる頻度も大分長くに変わったりするから」
「あそこ確か、わざと実力者揃えて、呪いを絞り出させて叩くとかもやってなかったっけ」
「ああ、そうだね、もしミツを送り迎えの際に関わることになったら、父兄参観ってことで駆除するのもいいと思うよ」
水芭がミツを送り、ミツが呪われている当事者の女性と話をしながら、旧校舎に入っていくのを見送ると、ゾクリとしたものが背筋を通った。
呪いである。
カチャ
気配の方向に視線、そしてスッと、装備を抜いた。
「ああ、これは螺殻さんの」
教師の傘目である。
「これはこれはいつもミツさんがお世話になっております」
「いや、彼女には助けられてますよ、ほら、この呪いが生まれようとしてますから、ミツさんと知り合う前の、あの子はこの呪いの気配があると顔をすぐに強張らせましたから」
「教室に呪いが向かう前に駆除しましょう」
「手伝ってくれるんですか?それはありがたい」
剣と銃を持った男二人は校舎に入っていく。
「?これも呪いの影響ですか?」
「歪んでいるのは、呪いを迷わせるための作りなんですよ」
ボヤッとした呪いで反応した陰陰滅滅な黒い光を、傘目は切る。
「お名前、水芭さんでいいんですよね」
「もしかして名前は…」
「みなさんは思ったよりも有名ですから、それこそ私が学生時代、同級生やなんかがファンだったので」
年齢は傘目の方が下になります。
「走れますか?」
「わかりました」
「では私が前に出ましょう」
すると傘目は走りだし、スピードを落とさずに呪いの反応を一閃していく。
「すごいですね」
「これも稽古の賜物ですよ、さんざんうちの流派は走らされるものですから」
(とはいってもあれは誰にでも出来るものじゃないな)
後ろから追ってくるものは水芭が撃ち落とす。
「お見事」
(この人、自分で気づいてても任せるタイプか)
「先生としての評判はミツさんから聞いています」
「悪口とかいってるんじゃないですかね、先生は話が長いとか」
「それは授業なので当たり前では?」
ここで傘目はびっくりする。
「螺殻さんだけじゃないですね、水芭さん、そちらの事務所の方は、きちんと礼儀作法を身に付けていらっしゃる」
「ミツさんと比べるのもなんですが、俺はこっちの世界で家族いない、食えるためにこの世界にきたようなもんですから、そういいものではありませんよ」
「…話聞きましょうか?」
「ここで?」
ここは旧校舎、呪いが集まってきています。
「何かあなたは、他の人に言えないようなものも抱えてそうですし、言うなら今ですよ、さっぱりしちゃいましょうよ」
「先生、あなたは何者なんですか?」
「ただの教師ですよ」
「嘘だ」
「じゃあ、勘で話しますけども、螺殻さんの着ている旧モデル退魔作業服に、何か嫌な思い出ありますか?」
「…」
「あるんですか?それならば螺殻さんに新しいものを買った方がいいかもしれませんよ、見ているだけで辛いことあるんでしょうし」
「あれは、自分が駆け出しの頃によく着てましたからね、己の未熟さが、そして愚かな過ちを思い出すんですよ」
「人間は誰もが愚かですが、でもそのままにしないのも人間ですよ」
「俺も呪われているようなものですから」
「呪いの匂いはしないようですが、花のようなものは些か」
「ピオニーですね、呪われたものに執着されているんです」
「女性問題だと、私じゃ力になれないかな」
「そういう仲じゃありませんよ、若い頃、俺は金を持ってるやつが嫌いだったんですよ、自分は奉仕作業しなければならないのに、金があればしなくてもいいから」
奉仕作業、普通に募集しても人気のない仕事を奨学金生徒に奉仕として課するもの。
「あれは…きついですからね」
「やるしかなかったんですが、その時そんなことをしなくてもいい人間がね、彼女は非常に理想的な考えを持ってまして、努力すれば生き方は変えれるとね、腹立ちましたね」
「それはそうですね、持たざるものからすれば逆撫でする言葉です」
「だから気まぐれで話すようになっても、わかりあえないんですよ、それで奉仕作業中に大喧嘩してからしばらく顔を見てないなって思って、そのうちこっちも今の事務所のみなさんに声をかけてもらって、初めのうちはこの優しさには裏があるとか思ってましたが、そんなことがなかった、その時に比べたら、丸くはなったと思います。だけども…」
あの時喧嘩した彼女というのは、そこから波乱が待っていった。
「助けた人間が、賊になったり、それこそ、生き方は自分で変えれるという考えが捨てるぐらいになってましたから、正直あれには驚いたんですよね、その昔を知ってましたから、あれほどまでに人は変わるのかとね。
生まれが悪い人間は排除すべきだって」
そして水芭と彼女が揉める決定打が起きる。

「そこまでする必要はないだろう」
「ここで始末しておかないとまたやるわよ」
「やりすぎだ!」
「あら、庇うの、あなたもずいぶんと偉くなったわね、その顔で媚びて生きることを覚えたから?」

「うわ…その女性怖い」
「そこからですよ、こっちにも嫌がらせしてくるようになって、特に顔を潰そうとするんですよ、でもその特にの執着の理由もわかったんですよね」
「それが呪いですか」
「はい、呪いがどこから来たのかはわかりません、けどさっきも言った通り呪いというのは臭いがするじゃないですか」
腐敗や焦げた臭いがするそうです。
「それを香りで隠すようになってからは、生きながらにして人霊になったようなものですから」
「それは誰が切れるんですか?」
「今のところ追い払うしかできなくて」
「混ざってると、なかなか一撃じゃ決まらなくなるんですよね」
バサバサバザ
呪いの気配によって、餌にありつけそうだと雑魚どもが集まってきた。
「また聞かせてください、とりあえず今はさっさと終わらせましょう」
「またはあるかはわかりませんが、終わらせましょう」
すると展示されていた折り鶴がカタカタも揺れだす。
「式神ですか?」
「いや、あれはただ憑いただけですね」
禍々しい折り鶴の、羽根を傘目が右、左、左の羽根はまだくっついているかと思ったが、剣が鋭すぎただけでゆっくりと落ち、水芭の弾丸は急所を狙うのだが、ハンドガンとは思えない連射を見せている。
「はい、トドメ」
そして折り鶴を貫くのだが。
「何か不思議なところでも」
「その使い方して、剣が折れませんか?」
「コツがあるんですよ、なんていうか、剣を騙すんです」
剣を?
騙す?
「刺さっていることが相手にはも剣にも気づかれちゃうとね、無理な力が入って、そこで折れる、だからその前にね、抜いてあげるから、残らないんです」


「傘目先生と話したんですけども、その話の意味が全くわかりませんでした」
「それは理解しにくいと思うよ」
帰ってから事務所で覆木はbarカウンター内に入ってきて。
「俺は刀剣類は基本の技しか知らないのだけども、その技は刺してから抜くのがポイントなんだ、さすがに騙すとかまではわからないが」
肉を包丁で切るが、素早く抜き上げた包丁にはドリップがつきにくい。
「これをだらだらすると」
切るスピードと同じ速度であげると、ドリップがつく。
「これをとんでもなく早くやってるんだろうな」
水芭もこの後試しては見るが、傘目はもちろん、覆木のようにもならなかった。
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