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歌詞に思いを伝えてもらいました
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彼女は買い物帰り、ご機嫌なのか歌を口づさむのだが。
「あっ、こんにちは」
螺殻(らがら)ミツは先日心配していた男性、泉呼(いずこ)にあいさつをすると、彼は険しい顔をして、そのまま泣いた。
「ええ、どうしましたか」
「いや、なんでも、そのね、色々あったからさ、気が緩んだというか」
「泣いちゃうようなことがあったのなら、それは辛いことですよ」
「そうなんだけどもさ、そうなんだけどもさ、自分ではそう感じてなくても、やっぱりあれは傷だったんだなっていうことはあるじゃない、そう心配そうな顔しないで、それ見ちゃうと、もっとね、来るから」
「ちゃんとあたたかいもの食べて、ぐっすり寝てくださいね」
「ああ、うん、ありがとうね」
barの休日だが、店内には四人の男性がいる。
瀬旭(せきょく)に覆木(おおうき)、お酒と食事を提供するために水芭(みずば)、そして先程の泉呼であるが、泉呼はカウンターに突っ伏している。
「ミツが歌った曲が、俺たちの墓前に添えられた歌だったから、それを思い出してダメージ食らうって、お前、そんなに柔だったっけ?」
「いいか、瀬旭、この曲だ」
一度動画で配信されているものをまず流します。
「いい歌だよね、別れの名曲だ、この先もずっと歌われるんだろうなって言うのがよくわかるよ」
「歌詞をきちんとご覧になってください」
聞いているものと文章にしたものだと、また違った意味にもとれるが。
「はい、これをミツが、お前の前で歌う、お前は眠って目が覚めない」
「ミツー!」
カウンターに突っ伏しているのが1人追加された。
「歌い終わった後」
泉呼が突っ伏したまま何かを言い出す。
「何て言ったか教えましょうか?」
「聞きたいけども、たぶん俺もカウンターに突っ伏してしまうと思うが、あえて聞こうか」
「私はあまり言葉が上手くありませんから、この歌に、歌詞に思いを伝えてもらいました」
「歌の中ぐらいなら、もう一度会いたいと、わがままいってもいいですよね、ですよ」
「ミツー!」
はい、もう1人追加。
「ミツさんって、男心を不意に揺らすの上手いですよね」
「でも悪女ってわけじゃないから」
瀬旭はフォローを入れるために起き上がった。
「そうそう、そういう子じゃないよ!」
覆木も続いて起き上がる。
「あれ、お前まだ落ち込んでるの?」
泉呼に瀬旭がそう声をかける。
(勝てない)
もう、人ではない身ではあるが、この人たちには勝てないと敗北感を泉呼は突っ伏したまま味わった。
「あっ、こんにちは」
螺殻(らがら)ミツは先日心配していた男性、泉呼(いずこ)にあいさつをすると、彼は険しい顔をして、そのまま泣いた。
「ええ、どうしましたか」
「いや、なんでも、そのね、色々あったからさ、気が緩んだというか」
「泣いちゃうようなことがあったのなら、それは辛いことですよ」
「そうなんだけどもさ、そうなんだけどもさ、自分ではそう感じてなくても、やっぱりあれは傷だったんだなっていうことはあるじゃない、そう心配そうな顔しないで、それ見ちゃうと、もっとね、来るから」
「ちゃんとあたたかいもの食べて、ぐっすり寝てくださいね」
「ああ、うん、ありがとうね」
barの休日だが、店内には四人の男性がいる。
瀬旭(せきょく)に覆木(おおうき)、お酒と食事を提供するために水芭(みずば)、そして先程の泉呼であるが、泉呼はカウンターに突っ伏している。
「ミツが歌った曲が、俺たちの墓前に添えられた歌だったから、それを思い出してダメージ食らうって、お前、そんなに柔だったっけ?」
「いいか、瀬旭、この曲だ」
一度動画で配信されているものをまず流します。
「いい歌だよね、別れの名曲だ、この先もずっと歌われるんだろうなって言うのがよくわかるよ」
「歌詞をきちんとご覧になってください」
聞いているものと文章にしたものだと、また違った意味にもとれるが。
「はい、これをミツが、お前の前で歌う、お前は眠って目が覚めない」
「ミツー!」
カウンターに突っ伏しているのが1人追加された。
「歌い終わった後」
泉呼が突っ伏したまま何かを言い出す。
「何て言ったか教えましょうか?」
「聞きたいけども、たぶん俺もカウンターに突っ伏してしまうと思うが、あえて聞こうか」
「私はあまり言葉が上手くありませんから、この歌に、歌詞に思いを伝えてもらいました」
「歌の中ぐらいなら、もう一度会いたいと、わがままいってもいいですよね、ですよ」
「ミツー!」
はい、もう1人追加。
「ミツさんって、男心を不意に揺らすの上手いですよね」
「でも悪女ってわけじゃないから」
瀬旭はフォローを入れるために起き上がった。
「そうそう、そういう子じゃないよ!」
覆木も続いて起き上がる。
「あれ、お前まだ落ち込んでるの?」
泉呼に瀬旭がそう声をかける。
(勝てない)
もう、人ではない身ではあるが、この人たちには勝てないと敗北感を泉呼は突っ伏したまま味わった。
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