571 / 1,093
歌詞に思いを伝えてもらいました
しおりを挟む
彼女は買い物帰り、ご機嫌なのか歌を口づさむのだが。
「あっ、こんにちは」
螺殻(らがら)ミツは先日心配していた男性、泉呼(いずこ)にあいさつをすると、彼は険しい顔をして、そのまま泣いた。
「ええ、どうしましたか」
「いや、なんでも、そのね、色々あったからさ、気が緩んだというか」
「泣いちゃうようなことがあったのなら、それは辛いことですよ」
「そうなんだけどもさ、そうなんだけどもさ、自分ではそう感じてなくても、やっぱりあれは傷だったんだなっていうことはあるじゃない、そう心配そうな顔しないで、それ見ちゃうと、もっとね、来るから」
「ちゃんとあたたかいもの食べて、ぐっすり寝てくださいね」
「ああ、うん、ありがとうね」
barの休日だが、店内には四人の男性がいる。
瀬旭(せきょく)に覆木(おおうき)、お酒と食事を提供するために水芭(みずば)、そして先程の泉呼であるが、泉呼はカウンターに突っ伏している。
「ミツが歌った曲が、俺たちの墓前に添えられた歌だったから、それを思い出してダメージ食らうって、お前、そんなに柔だったっけ?」
「いいか、瀬旭、この曲だ」
一度動画で配信されているものをまず流します。
「いい歌だよね、別れの名曲だ、この先もずっと歌われるんだろうなって言うのがよくわかるよ」
「歌詞をきちんとご覧になってください」
聞いているものと文章にしたものだと、また違った意味にもとれるが。
「はい、これをミツが、お前の前で歌う、お前は眠って目が覚めない」
「ミツー!」
カウンターに突っ伏しているのが1人追加された。
「歌い終わった後」
泉呼が突っ伏したまま何かを言い出す。
「何て言ったか教えましょうか?」
「聞きたいけども、たぶん俺もカウンターに突っ伏してしまうと思うが、あえて聞こうか」
「私はあまり言葉が上手くありませんから、この歌に、歌詞に思いを伝えてもらいました」
「歌の中ぐらいなら、もう一度会いたいと、わがままいってもいいですよね、ですよ」
「ミツー!」
はい、もう1人追加。
「ミツさんって、男心を不意に揺らすの上手いですよね」
「でも悪女ってわけじゃないから」
瀬旭はフォローを入れるために起き上がった。
「そうそう、そういう子じゃないよ!」
覆木も続いて起き上がる。
「あれ、お前まだ落ち込んでるの?」
泉呼に瀬旭がそう声をかける。
(勝てない)
もう、人ではない身ではあるが、この人たちには勝てないと敗北感を泉呼は突っ伏したまま味わった。
「あっ、こんにちは」
螺殻(らがら)ミツは先日心配していた男性、泉呼(いずこ)にあいさつをすると、彼は険しい顔をして、そのまま泣いた。
「ええ、どうしましたか」
「いや、なんでも、そのね、色々あったからさ、気が緩んだというか」
「泣いちゃうようなことがあったのなら、それは辛いことですよ」
「そうなんだけどもさ、そうなんだけどもさ、自分ではそう感じてなくても、やっぱりあれは傷だったんだなっていうことはあるじゃない、そう心配そうな顔しないで、それ見ちゃうと、もっとね、来るから」
「ちゃんとあたたかいもの食べて、ぐっすり寝てくださいね」
「ああ、うん、ありがとうね」
barの休日だが、店内には四人の男性がいる。
瀬旭(せきょく)に覆木(おおうき)、お酒と食事を提供するために水芭(みずば)、そして先程の泉呼であるが、泉呼はカウンターに突っ伏している。
「ミツが歌った曲が、俺たちの墓前に添えられた歌だったから、それを思い出してダメージ食らうって、お前、そんなに柔だったっけ?」
「いいか、瀬旭、この曲だ」
一度動画で配信されているものをまず流します。
「いい歌だよね、別れの名曲だ、この先もずっと歌われるんだろうなって言うのがよくわかるよ」
「歌詞をきちんとご覧になってください」
聞いているものと文章にしたものだと、また違った意味にもとれるが。
「はい、これをミツが、お前の前で歌う、お前は眠って目が覚めない」
「ミツー!」
カウンターに突っ伏しているのが1人追加された。
「歌い終わった後」
泉呼が突っ伏したまま何かを言い出す。
「何て言ったか教えましょうか?」
「聞きたいけども、たぶん俺もカウンターに突っ伏してしまうと思うが、あえて聞こうか」
「私はあまり言葉が上手くありませんから、この歌に、歌詞に思いを伝えてもらいました」
「歌の中ぐらいなら、もう一度会いたいと、わがままいってもいいですよね、ですよ」
「ミツー!」
はい、もう1人追加。
「ミツさんって、男心を不意に揺らすの上手いですよね」
「でも悪女ってわけじゃないから」
瀬旭はフォローを入れるために起き上がった。
「そうそう、そういう子じゃないよ!」
覆木も続いて起き上がる。
「あれ、お前まだ落ち込んでるの?」
泉呼に瀬旭がそう声をかける。
(勝てない)
もう、人ではない身ではあるが、この人たちには勝てないと敗北感を泉呼は突っ伏したまま味わった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる