浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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55橙皮香

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ダムの水門にずらりとサメが並んでいる。
『サッ』
水面に向かい彼らがそう唱えると。
ぶくっ…ぶくっ…と音を立てて、水が形作り、大きな水のサメが現れた。
ザバァ!
そのサメが跳ねて、雲の上まで飛ぶ。
水飛沫が虹を作り、そのまま二匹目、そして三匹目のサメが跳び跳ね、ダムの貯水率は65%になった。


ゴゴゴゴゴ
雲の少ないこの地域では、雲がかかるとしたら雨雲ぐらいで、ああやっとしばらくぶりに雨が降るのだと思い、街のものは、まだかな、まだかなと何度も空を見上げているが。
「あれはなんだ」
「化け物か」
誰かの言葉で雲を見ると、切れ目から大きな目が見えた。
「落ち着け、あれは水の魔法だ、奥様が水不足を憂いて、みなのために水を買うことにしたんだ」
「しばらくすれば雨が降るから、すまないがおとなしく待っててくれ」
おそらく混乱することを見越して、配置していた騎士たちは、叫んでいる。
大きな魚、サメが雲から山の近く、溜め池の辺りだろう一匹、二匹、三匹が落ちていくと、ポツポツと街に雨も降りだした。

「しかし、こんな大きい仕事になるとは俺もえらくなったもんだぜ」
「まっ、リーダーのおかげだがな」
「そうじゃなかったら、こういう仕事はくるはずなんかないよ」
「でもすごいわね、水を運ぶと聞いていたけども、実際に見るまでは信じられなかったわ」
水がチャプチャプの溜め池の水面、動いているのはサメたちである。
落下地点は滝のような水流になるということで、気を付けてはいたが無事ではあるが何匹か流された。
「みなさまお疲れ様でした、こちらに休憩所とお食事をご用意さておりますので、是非ともご利用ください」
リーダーはサメたちに向かって声をかけている。
今回の話は、この街が雨が少ないことと友好都市である、世界を越えた都市部が雨が多すぎたからこそ出来たものである。
「ダム、水たっぷんたっぷんなのに、週末台風がまた来るよ」
水をどうにかしたいが、地盤が緩んでて下手に流すタイミングが取れないところ、放水先を異世界にするという手があるという話を聞いた。
「ただその場合、解決しなければならない条件はありますが」
といったのはKCJではある。
「人命には変えれない」
そして話は領主というか、奥さまに持っていったところ夫婦が言い争いになり、期日ギリギリにサメの費用を全額持つから水を買うと言う形で収まったのである。
「それでは説明します。同じ川のサメ、オスからメスへと水を移動させる術なのですが、こちらは世界を越えてもサメの数さえ調整すれば可能であることが証明されております」
その調整役をKCJが行い、無事に本日決行することとなったわけである。
「ただ当日までは情報は公開しないつもりだそうです」
理由としては他の街からも水を買わないか、農作物が値上がりするからと聞き付けた商人たちが動いているからともいってた。
「まっ、俺らはいつものように仕事をするだけさ」
「ただこの仕事を受けると、その後の懇親会にも出席しなければなりません」
何かあったときの警備も兼ねてはいます。
「というわけで山賊は参加できないので、春ちゃんにまたお願いしたいと思います」
「わかったよ」
「後、もう一つ提案が来てて」
リーダーが狙われたら困るから、影武者を立てたらどうだろうか? 
「と」
「誰がやるんだ?」
「それこそサメさんだって」
この時四人の脳裏に自分の代わりに、パーティに加わるサメの悪夢が浮かんだ。
「あ~そうか、うん」
「毒物や体力面で仕掛けられる恐れがあるって話だったんだ」
「サメって人間が死ぬような毒でも死なないもんね」
まずっ、ちょっとこの毒、人間には致死量かもしれないけども、美味しさが足りないんだけども、もっとがんばって!
「これでうちのリーダーは毒が効かないってわかれば、毒を使わなくなるってことね」
「見て禍禍しいぐらいの毒でも、サメは腹を壊す程度とも言うし」
リーダーは毒を笑顔で盛られた過去があるために、仲間は懇親会だけならばいいかと納得はした。
「じゃあ、前日に理容ルーム出張予約取ったから」
さすがに今回は逃げないだろうと言うことで一人で行くことになったのだが。

シャキーン
予約のお客さんを待っていたのは、春…ではなくイホ・デ・ニコラスであった。
「春隣に似てるな、兄弟か何かか」
さあ、どうなんだろうか、おおっとイホ・デ・ニコラス駆け出した。
ガシッ
タックルからのホールド、これはブラッシングですね。
「おいおい、いきなり何を」
そこでドサッと椅子に転がされた。
カーン
遅れて開始の鐘がなる。
シャー~
汚れをブラッシングで浮かせた後は、基本の湯洗いである。
「シャンプー前にこれを行うことがとても大事なんだ」
あなたは、タ…いや、アンセルモさん!ようこそお越しを私はファンなんです。
「イホ・デ・ニコラス!そこだ!そしてこれを使え!」
おおっとアンセルモさんから何かタッグパートナーであるイホ・デ・ニコラスに向けて…
これはあのメーカーの見たことがないです、まさか新製品ですか!
まさかの新製品、55橙皮香(ごーごーとうひこう)と読むのでしょうか、おおっとボトルを開けただけで香る、国産橙の良い香り、これは香料にも今回力を入れた、ええっと何々ここでメーカーの広報の資料が届きました、短時間でも気分転換してもらいたい、そんな思いを込めました。どうぞお楽しみくださいですか、これはジャンパーでなくても洗い上がりが楽しみになること間違いありませんよ。


山賊はその身なりをどこぞの若旦那といってもおかしくないものに変えた。
「こういうとき見かけを変えるってすごい大事なんだなっていうのがよくわかるよ」
「ただその格好で、トラブルは起こすなよ」
「わかってるよ」
懇親会が行われる会場そばなのだが、影武者役と合流するにはまだ時間があるので、最後の打ち合わせである。
「ねぇ彼女!」
あちこちから来たであろう招待客の一人をナンパするものが現れたが、すぐに警備につれていった。
「警備の反応早くない」
「お偉いさんの娘さんかな」
「…どうした?誰か知ってるのか?」
「あれは商会の…ごめんなさい、あまりにもバカなことが起きたためにクラっと来たわ」
商会の深窓の令嬢が、ちゃらいこの街出身の冒険者にナンパされた。
「つまり?」
「何かあったら、あの代表は街に圧力かけるわよ」
「思った以上にこの懇親会、すごいことになりそう」
「リーダーは会場にいても、影武者の魔法のせいで、サメに見えるかもしれないがサメに見えるのは未熟だからという方向でどうにかなるから、ゆっくりすればいいさ」
「そうさせてもらうよ」

今日は私がリーダーなのです。魔法のたすきをかけたサメが、リーダーの影武者を務めてくれたおかげで、仕事の場合はゆっくりと食事ができないいつもに比べたら、好きなものを食べることができたし。
「面白いことしはるな」
影武者に惑わされない人たちもいたりして。
「あれ、君が考えたの?」
それがきっかけで有力者たちと話をすることができ、非常に実りがある懇親会として終わることができたのだった。
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