浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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その依頼、お引き受け致します。

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お知らせ
添付された地図の赤丸の位置に、ダンジョンが発見されました、地域の生体が変わる恐れがあります、ご注意ください。

公式発表が行われた。

「やっぱあったか」
「とりあえずダンジョン行くとしてもずっと後、その前に下調べだ」
「そうじゃなくてもいつの間にかダンジョンの中に来てしまってることもあるわ」
「そうそう、同じような木や草を生やしたりしてね」
ザッサッ
かき分けて進むのだが。
「なるほど鳥の動きも違うね」
警戒していていつも以上に距離をとる。
「そりゃあ命がかかってるもん、そうなるよ」
「そういうやつほど長生きするしな」
「そりゃあ確かに」
「見ろ、花が枯れている」
「となると、ダンジョンの中はこことは違う気温なのかしら」
手帳で書き留めている。
「この花が枯れるって、中は暑いのかな」
「どういうことだ?ああ、初夏の花だからか」
「寒いならば根本から枯れるけども、これは花だけが枯れているものね」
「倒れ方からするとあっちに何かありそう」
リーダーは持ち物を確認する、みんなKCJ系のアドベンチャークリニックで診察してもらった、持っている薬で彼ら彼女らに使えない薬はない。
それでもほとんどの人がアレルギーなどを起こさないタイプの薬を選んでいるところが、リーダーの性格らしいといえる。
「止血剤はあるな」
「もちろん」
「あれがあると回復させるときの疲労感が違うからな、金がかかって申し訳ないとは思うが」
「お金が通用しないところに赴くんだから、そこでケチってもね、しょうがないさ」
ほしいものがすぐに買える、それはすごいことなのだが、ここは残念ながらそうではなく、ダンジョンなどは特にそう。
「たまにそこで店を開いている物好きもいるらしいがな」
「うん、それ知り合いだ」
「本当にいるのかよ」
「二人に持ってきた手帳を扱う人がそれ」
「なんだ?そこで手帳でも売ってるのか?」
「手帳もだろうね、その人は元々趣味人で」
利益をきちんと確保すれば後は好きにやります。
「ご実家が没落しても趣味の力で復活させたんだ」
そういうのがないと生きていけないんで頑張りました。
「だから二人のその手帳も大分その人の趣味が入ってるよ」
そこで手にいれた手帳の二冊目を男は使っていた深緑の手帳で、背表紙には『Il faut de tout pour faire un monde』とある。
フランス語であるが、言葉の意味というより、手帳としての意味をまず聞いてもらいたい、手帳の名前はポワブロン、表紙をめくるとピーマンの絵がある、そうフランス語でピーマンの名前がつけられた手帳で、ピーマン嫌いといったら、背表紙の言葉をお母さんに言われたという話からで作られた。
まだ一冊目のアウローラに書き込む彼女は、その合わせで、紫色の装丁と、裏表紙の言葉、こちらは茄子の絵があり、オーベルジーヌと呼ばれるものを二冊目として渡してある。
「ダンジョンのなかで仕事すると、変なお客さんに絡まれないし夏は涼しく、冬は暖かいから快適だってさ」
「中でそういえるぐらいの実力者なら、俺だって住んでみたいさ」
「そりゃあ確かにね」
そこで笑い話をしてたところ、全員が素の表情に戻った。
「これは」
「ああ、わからないもんだな」
「鳥の声が遠いから決定だよね」
「ここまでダンジョンとの繋ぎめがわからないものだとは」
「似たような木や草を生やしてわからなくするなんてものじゃないぞ」
「ちょっと待ってね」
こんなときに頼りになるのが山野歩きに優れている彼女だ。
「ここから変わってるね、特に罠はないよ」
出入りは自由な入り口らしい。
「撤退する?それとも」
「消耗はないから一度だけ戦闘する、そしたら戻る」
「わかった」
「魔避けの薬で印はつけるよ」
この場合はモンスターが近づかないというよりは、目印が消えないようにするため。
「兄さんたちが私たちを探しに来ればそんなの無くても、足跡ぐらいで見つけちゃうけどもね」
「リーダーがいれば逃げるのも楽だしな」
相手の速度を落とします。
「観察も楽々だな」
「そこは戦えよ」
「そういう冗談はいうけども、一回も戦闘中に観察に回ったことはないから、信頼はしてる」
「でもそれ言われると命張りにくい」
「魔法使いジョークはブラックなもん、ただ真面目にそう返されるとなかなかジョークをいう雰囲気にもならないものだな」
そこで仲間の一人は何かに気づいたようで、みんなに声をあげないようにと指示をする。そのまま彼女は気配を景観に混ざるかのように薄くなり、歩き方も変えて進み出した。
自然とその後ろで武器を構え、緊張感のある時間が始まるのだが。
「うわぁぁぁぁ!」
叫びでそれが終わり、四人は黙視できる位置にたつ。
(あっ)
(そういえば)
(今の声)
(男だったな)
状況を飲み込むにはまだ欠片が足りない。
「酒場でよく見る顔だから大丈夫だよ」
そういわれてから、あれ?なんでこんなところにいるの?という顔になった。
「ダンジョン内探索してたんだよ」
「えっ?そっちっていつも前を歩くのは」
「怪我したの、壁から刃物出て来てな」
「案内して」
「治療しよう」
「あっ、そうだ、うん、そうだな、そっち回復いるもんな」
怪我人はこっちだと、他の仲間がいるところを案内される。
「酒飲みの魔法使いじゃないか」
「えっ?何、そんな風に呼ばれていたの」
「一時期酒屋のこだわり酒にはまってた時期があったんだが、お前ら…私をそんな風に呼んでたのか」
険悪な雰囲気になるが。
「はいはい、先に治療するよ」
リーダーが中に入った。
「水はある?」
「ない、さっき色々あってな」
「そう」
そこで使うのは水無しで飲める止血剤だ、これを飲ませてから、魔法が始まる。
塞がりはするが、内出血したような見た目にまで戻る。
「このまま、私たちが来た道まっすぐでダンジョンの外に出れる、東に向かえば街だ」
「本当は護衛をしてもらいたいんだがな」
「すいません、まだ探索中なので」
リーダーが謝る。
「じゃあ、しょうがねえな」
「体大丈夫か?」
「ああ、歩くぐらいなら問題ねえよ」
そこで彼らとは別れた。
「護衛をしても悪くはなかったのに、なんで断ったの?」
「不快なあだ名を勝手につけるような人間は、何をするかわからないからです」
「酒飲みは本当なんだがな、あの言い方だともっと下賎なことを口にしているだろうし、今のやり取りはまだいいほうだな、切羽詰まるともっと口が悪くなるから、あそこで治療して返した方がいい」
「それも気になるのだけども」
「水を持ってないのが気になったかな?」
「わかりやすいんじゃない?」
「わかりやすい?」
「水を置いてまで持っていきたい何かがあった、水の代わりに宝石とかね」
「俺たちに会わなきゃ死んでるんじゃないか」
「宝石は水の代わりにはならないのにな」
「それぐらい一攫千金の魅力には購えないのだろうな」
「でもなんでこんなところに宝石が?」
「さあな、ただ可能性としては…あいつらが引っ掛かった罠の位置わかるか?」
「任せて」
すぐに見つけて案内してくれた。
「これは…このダンジョン、吸血鬼が雨風凌ぐのに使ってるぞ」
「えっ?なんで?」
「この間、ほら、西の丘、吸血鬼たちが廃墟を利用したり、築城しようとして住み着きやすいんだが、そこを潰したんだけども、散り散りになって逃げたから、このダンジョンにも逃げ込んでるんだろうな」
「この罠はダンジョン側が仕掛けた、外からやってきた吸血鬼避けの罠だな、使われている金属が吸血鬼殺しのもの」
「ええっと人間から吸血鬼にならないように刃物を突き刺して埋葬するんだよね」
「そうその時の刃物は、吸血鬼殺しの力をえるからな、一部を溶かして作られた刃物が市販されたりするが、これはそのものだから、ダンジョン産の吸血鬼を殺すための刃物なので、解体して、持って帰ろう」
「高値で売れるの?」
「売れるが、これはパーティーで持っておいた方がいいだろう、もしも出会ってしまったとき有効打を与えれる」
「吸血鬼になりそうな人の葬儀、その仕事もできるようになるわよ」
「そういうのって参列者もいねえ、寂しいものになるんだよ」
近親者と何かあったときの護衛を用意して執り行われる。
「昔、この辺が国だったとき、それを治めた贅肉ぶよぶよの王がいた」
ある時美しい女惚れたが、それは吸血鬼であった。
「吸血鬼に噛まれた時の薬というのがあるんだがな、それは贅肉ぶよぶよでは効果がなくて、そこがきっかけでもう我慢がならないと戦争だよ」
そこで国は滅びて、街単位の自治となる。
「それでどこと組むかってことが大事になるので、そちらでいう戦国時代の出来事を持ち出して、なんかあったらそちらと協力するという話、その話はまだ有効でしょうか?」
さすがにその契約した武将は無くなっていたが、子孫が生きてましたと、そこで伝えられている文書などを確認して、平和的な交流を再び始めることになった。

「あっ、こっちにも吸血鬼の罠があるよ」
「刃渡りから、三振り分あれば問題ない」
「全員分じゃなくていいのか?」
「罠は全部同じものにはしないんだよ、一つ対策見破られたら、全部突破されちゃうから」
「このぐらいでいいだろう、いや~こういうの緊張感はいいものだ」
そんな中だ。
「あれ?」
「えっ?なんでここに?」
リーダーは知己にあった。
「どちら様だい?リーダー」
「さっき話してた手帳買ってる商人さん」
「あなたが神の使徒か!」
「ええ、どういうこと?話見えない」
「ええっとこちらは探索ですが、そっちは?」
「避暑!」
その瞬間五人は不可解な顔をした。
「避暑も兼ねてだよ、避暑メインではないけども、こっち側夏も涼しいから、店を出せる立地かどうかを見に来たの」
「もしかして仲間はいないでお一人ですか?」
「この方はKCJの戦闘許可証を持ってるし」
ピィ
そこで口笛を吹くと、中空に魔方陣が現れ。
「あっ、サメちゃんだ」
中から呼んだ?といって河川ザメが顔を見せた。
「いや、これはただの河川ザメじゃなくて」
リーダーはムキムキしている体つきでわかった。
「そう、結婚退職した元レッドノーズさ!」
いつもこの子は返り血浴びている、レッドノーズが恐れられる原因、そのうちの一匹である。
「出てきたら魔王も死ぬ」
有名か逸話をリーダーは思い出したが。
「サッ」
そうはいっても実際はあいつは雑魚だったからな。
「これは信用できる仲間がいないなら、ソロでもやっていけますね」
「商売してると、そこが本当に大事なんだ、あっ、そのうちこの子をそっちのお使いに出そうと思ってるんだ」
「何かありましたか?」
「ドラゴンゴールド、あの件であの人に質問したいんだろ?そのための手紙を配達要員」
「ああ、なるほど」
「後さ、こっちから聞きたいんだけども、ここって、吸血鬼出る?」
「雨風をしのぐために吸血鬼が入り込んでいるみたいですよ、そのためにあちらこちらに罠があって」
「通りで、吸血鬼たちっていつでも逃げれるように金貨やら宝石やらもってるんだよね、彼らが好きそうなものが落ちてたから、罠にやられて灰になって、金貨や宝石が散らばったってところか」
「回収は?」
「しないよ、回収しようとすると次の罠が用意されているタイプだろうし、みえみえの手には引っ掛かる商人は、商売向いてないと思うよ」
つまりさっき会ったあいつらは、そのみえみえの罠に引っ掛かった。
「ここから僕が入ってきた出口まで二時間ぐらいかかるんだけども」
そこでリーダーに小さい皮袋を見せた、これはいわゆる商人たちの単位で、中には決まった価値の金銭や宝石が入っている。
「君たちがやってきた入り口から私をダンジョンの外に出してもらうことと、街までの道案内分でどうだろうか?」
「拝見しても?」
「もちろん」
きちんと中身はつまっている。
五人は顔を見合わせると。
「わかりました、その依頼お引き受けいたします」
これは五人にとってもありがたい申し出であった、何しろ迷宮を独り歩きできるような実力の商人と、魔王をぶん殴ったことがある元レッドノーズがいれば、迷宮で起きる不測の事態にも余裕がある。
「やっぱり迷宮は緊張するもんだね」
迷宮から出て、しばらく、聞きなれた鳥の声が聞こえたら、リーダーはそんなことを言った。
「休憩しようか、実は夏野菜のカレーがあるんだよ」
多めにあるのはサメがたくさん食べるからと思っていたが、この人数だとここではサメには少し量を我慢してもらって、街に戻ってから美味しいものを食べてもらおう。
「冷たいミルクもつけてあげよう」
「こういうとき日本人ってすごいよね」
「いや、こういうのはどっちかっていうと日本人じゃないんだよね、野外のこういうのを休日の楽しみにしているところがあってさ、そっちの地域の人が、どんなところでも快適に過ごせる道具類を開発しているんだよ」
サメがご飯を盛り、夏野菜たっぷりのルーをかけてくれた。
「サッ」
警戒は引き受けるのでご飯は先に食べてね。
そういって彼は繁みに消えていった。
「じゃあ、ありがたく、いただきます」
『いただきます』
具材はトマトなどの夏野菜、その中でも苦手な人が多い野菜とされるピーマンも茄子も、カレーの力で美味しく食べることができる。
『サッ…』
そんな時に、サメの重低音ボイスがそこで聞こえる。
バサバサバサと鳥たちが急いで逃げ、どうなるかカレーを食べる手を止めて全く、それから全く生物の気配がなくなり、みんな急いでカレーを食べきると。
「サッ」
ゆっくり食べても大丈夫だよ、もういなくなったから。
何がいたのかは聞けなかったが、もしかして餌食になっていたかと思うとゾッとするし。
「やっぱり面白いな」
そこで面白いと言える知己の商人のようには自分は決して慣れないなと思うのだ。
「大丈夫さ、君は君でいいんだよ」
「そんなにわかりやすかったですか?」
「そんな顔してればね、まあ、こっちはそうなるしか生きてこれなかったから、そうなんだってことで」
「自分も結構そうなんですがね」
「君はさ、人間を信じているじゃないか」
あなたは違うのですか?と聞き返そうとしたときに。
「リーダー、そろそろ片付けるぞ」
「わかった」
荷物をまとめて、槍がすぐ使えるように鞘をスライドさせた。





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