浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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自然豊か県 麦が美味しくない市

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「初めまして」
「こちらこそ、初めまして、本日はお時間を作っていただき感謝します」
「いえいえ、何しろ僕が頭が上がらない、数少ない大人のうちの1人、その1人がリーダーを務める、現在のパーティーメンバーならば、興味もありますよ」
「そういっていただけると助かります」

『同時刻 某所』
チュイイイイン
「こっちにもセミがいるけども、種類が違うね、鳴き方が、木を削っているような鳴き方だ」
「そっから名前来てるんだわ、チェーンソーゼミ、すんげぇうるせいだろう」

『場所は戻って』

「四人でお越しになられるかと思ってました、そちらにおかけください」
「話が脱線しそうですから、私が代表で」
「それはそれは、でもあなたとの話は面白そうだから脱線はしそうですね」
横目で秘書を見ると、キッ!と目付きが、睨まれた。
「知りたいがリーダーに聞くわけにもいきませんし」
「あなた方の企て、いや試みは見事に成功してますからね、そこからまた藪をつつくのは、あっ、グリーンアイズの件聞いてますか?」
「あれから何かあったんですか?」
「参加者に素人さん、新人育成にためにはしょうがないんですが、やらかしたようですよ」
「えっ?」
「他にも巣があったんですよ、でもその素人さんは薬が効いて成虫がブブブーン飛んでない巣しか見たことがなくて、それと同様だと思ってしまいまして、こう…ツンって」
中からグリーンアイズ達がぶわっと出てきました。
「それで警戒されちゃって、この仕事1日で終わらねえぞって」
大笑いしたあとに。
「あなた方がいれば、それでも当日で終わったでしょうね」
真顔に変わる。
「そうでしょう」
「話の種に、あなたならどうやってましたか?」
「警戒しているのが見えているのならば、その位置に薬を起きますよ、前のと違ってグリーンアイズにしか効かない、人間には無害の薬になりますが」
「なるほど、警戒している個体から減らしていくんですね」
「一時間もあれば、一体が弱るのに一時間もかからないか、元気ではない見張りを立てるのはそれこそ意味がないですから、交代したものに次々と吸わせてしまえばいいのです」
「お飲み物はどうしますか?」
暑いので秘書が気を利かせる。
「麦茶飲まれます?あっ、その辺の奴じゃなくて、いわゆるお客様用、お客さんが料理人に出しているものですが」
「いただきます、麦はこちらの特産ではありますが…その」
「美味しくない市という奴ですか」
「はい」
異世界にはあるがその地は日本語と文化が混ざった街なのである。
「こちらが戦争起きて交流が減ったら、今度はそちらが戦争で、幕末から考えると二世代ぐらいは民間での往来はありませんでしたからね」
やっと交流再開するよと、異世界にあるけども、扱いは飛び地だよ、都道府県の市町村でいうなら…
『自然豊か県 麦が美味しくない市』だよ。
「自虐的なキャッチコピーで有名になりましたからね」
「麦茶です」
「それでは…これは確かに美味しいですね、木の皮の方がマシとされるうちの麦とは大違いだ」
「3月末ぐらいのものだと、柔らかくて意外といけるんですけどもね」
「えっ?」
「僕は家庭の事情で食べたことがあります」
「?」
「失礼、あっ、おかわりもどうせならばお願いしましょうか」
そこでテーブルにはポットが置かれる。
「しかし、こちらは涼しいですね」
現在午後二時27℃。
「話には聞いてますが、なんですか?あの気温」
「いや~それは僕に聞かれても、ただ人もそうですし、食べ物にも被害が出てます、今までの保存方法では悪くなってしまうので」
コホン
秘書が咳払いをした。
「面白い話はあるがままにしたいものですがね、そこは立場を得ることでつまらなくなった部分の一つですね。さて、毒盛りの話ですか」
また表情が変わる。
楽しげなものから少し無になって。
「毒盛りと呼ぶのは、限られた人間たちですからね、よく知られている名前は別にあります」
「だからこそその名前で呼ぶことで、誰のことか我々にだけわかる」
「そうです、そうです、毒盛りには華々しい経歴がありますからね、下手をすればあなたのところのリーダーを犠牲にするぐらいならば…とバカな考えが浮かぶ人間もいるんですよ」
「しかし、追いかけるとは思わなかった」
「それはこちらも、そこまで重きに置くものだとは思いませんでした、いや~嫉妬とは本当に恐ろしい」
「嫉妬?」
「そうですよ、毒盛りにとって執着は嫉妬から始まったんですよ、成果を出していますが、一皮剥けばあのような素行です、面白くないと思う人間がたくさんいましたね、どうしたと思います?」
「皆目検討がつきません」
「毒盛りのような経歴を出せつつ、人格者である人間を育てようとしたんです」
「それは…なかなか難しいのでは?」
「難しいですよ、戦果を出せる人間というのは間近で見ると魅力的に見えるもので、育てようとしたうちの1人なんて、毒盛り側についていっちゃったりね」
「また揉めそうな」
「それでも、まあ、本命がいるんです、その本命とあなた方のリーダーは知り合いだったので、毒盛りはリーダーを見つけてしまった」
自分の後継、とってかわるものを露骨に育てているのはわかった、それは面白くない、面白くはないのだが…
「思ったように成果が出せず、自分と並べもしないのはそれはそれでつまらないと感じたようで、塩を送りまくったところが当時はありました、でもそこがね、ピタリと止まったんですよ」


「すごいね、君は本当にすごい、今のまま君はやっていけばいいよ」
リーダーがそういって雛鳥である後継を誉めた、それを見てしまった。
「その時からなんか違うなって思っていたものがわかったんでしょうね、紆余曲折で来てしまった人生、欲しかったものがそこにあったし、なんでそれをお前が得られているの?って」
自分の感情がようやくわかった。
「それは理解できませんね」
「そこはほら、僕もあなたもリーダーに大事にされてますから、わからないんですよ、大事にされてないからこその餓えみたいなもんですね」

『同時刻 某所』
チェーンソーゼミの鳴き声が煩さを増して、誰も気にしなくなった辺り。
「こんな暑いのによくやるよ」
「どうした?」
「いや、そこに人影が」
「えっ?」
すると向こうも気づいたが、その瞬間リーダーは自分の感覚に魔法をかけ、隣にいた仲間は後ろに下がった。
リーダーが前に踏み込んだとき、見張りは二人、後ろには四人以上いて、手にはチェーンソー、違法に木を切り出している集団である。
「八人いる」
仲間が数えた声を聞いて、見張り二人に感覚を鈍らせる魔法をかけ、そのうちの1人が隙があったので、腹に蹴りを入れたあと、リーダーは走りだし、仲間も一緒に走り出した。
「ナイス判断」
リーダーは後ろを見たあと。
「あれ、こっちが二人ぐらいなら消してくるでしょ」
「だろうな、おっかいないね」
この辺の木材は全て管理されているし、暑い時期は伐採などはしないのである。
「こっちだ」
今まで来た道ではなく、それこそ地元の人が知る路地をいくつか選んで帰ることにした。
「確かに報告は受けとりました、至急人を出向かせてもらいます」
その報告を聞くと二人は安心した。

『後日 KCJ支部』

「それでですね、謎の腹痛がありまして、これは呪いではないかと知り合いに言われ、こちらに相談するようにと」
「お伺いします」
明神と、後ろのデスクの椅子にレッドノーズのマッチャーがいる。
「サッ」
でもこれ自業自得だよね。
訳を相談者から聞く前に、マッチャーにはもう見えているようだった。
「サッ」
木材が高いから、確保するために異世界産のものに目をつけた。そこは江戸時代から藩主が何かあった際の逃亡先として考えもあった場所だから、こちらとも木材の質は同じか、近縁種である。
「サッ」
でも実際に異世界に行ってしまうと、バレバレだから憑依の魔法を使った、悪いやつがよく使う手だ、しっかりと仕事をするかその目で確かめなければ許せないらしい。
「サッ」
腹痛はその時憑依していた人間を蹴った人がいたから、その痛みで魔法が解けてしまったし、痛みはそのまま残ってしまった、それが腹痛の正体だね。
「あの…何かありましたか?」
相談者にはサメの言葉はわからない。
「いえいえ、それではあなたの口から詳しいお話を聞かせてもらいますか?」
明神は愛想のいい笑顔を浮かべた。
マッチャーは自分にご褒美をあげねばと、新しい菓子の袋をビリッと破いた。



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