浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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このプルプル

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「ん?」
毒盛りは、探していたはずの人間を見つけたと思い、腕を引っ張り顔を見たのだが。
(違う)
違和感があった。
その違和感で興味は完全に無くなってしまったのだ。

「…」
「リーダー、こっちだ、歩けるか」
頷いて、仲間の声に向かい歩いていき。
「私たちはKCJです!」
一緒にいたKCJの医療班がそう声をかけると、気が抜けたようで、そのまま座り込んだ。


このメンバーで、二回目の探索も無事に終了、お疲れ様でしたとなったが、リーダーと魔法が使える二人は残った。
「あっちの二人は一回戻ると、ただなんかあったら呼んでねだそうだ」
「それはありがたいね」
「そうね、戻ってきて、毒盛りがまだリーダーのことを探しているのは驚いたんだけども」
「ああいうのはな、魔法でも科学でも説明できないところがある」
そこでもしものことを考えリーダーにはまず結界が張られた。
「今できる範囲で対策をするならばもう一つあるわよ」
「それはどういう手ですか?」
「リーダー自身に時の魔法をかけることね」
「でも干渉受けないんだけども」
「だからよ、だから見た目がわからずに経験だけを積めるでしょ、同じ人間であったとしても、時は人を変えるわけだし、毒盛りが探しているのは今のリーダーだから」
「あ~なるほど、理屈はわかったな」
「最低10年だろうな、それまで気づかなければ後は確率がどんどん上がっていって、30~50年分の経験で、おそらくわからなくなるだろう」
「そのぐらいなの?何百年とかいらないの?」
「それはかえって精神が…時の魔法が使えないならもたない、リーダーの場合は、魔法を使った際に痛みとかはあるかな?」
「ないですね、あまり才能もないので、無理すると、すぐに使えなくなるタイプなんで」
「あ~じゃあ、大丈夫ね」
「あっ、そうそう、これが例の化粧品です」
「いいのかしら?」
「他のメンバーにはお酒で出しましたから」
「向こうの、王族や重要人物を招待するときに振る舞われた酒は旨い…」
「美味しかったですか、良かったです」
自分が使える予算で買える良い酒のリストを、KCJから手数料で用意してもらいそこで準備をした。
「意外とあれ安いんですよ」
「あら、そうなの」
「三合、あの小さい瓶一つでこの化粧品一本ですかね」
「思うんだけども、そちらの品質はどうなっているのかしら」
「みんな美味しいもの好きだし、綺麗になりたいんですよ、どちらも他の国のおみやげとしても人気ですし」
「ただあれだな、ここまで持ち込むまでの管理がな」
「リーダーが持ち込んだのは劣化してないものなのね」
「こっち冷蔵庫が一般的じゃないから」
「食糧保管の大きな場所も欲しい」
「化粧品だけじゃなくて、薬もお願いしたいわ」
こちらの人間が食べ物だけではなく、化粧品も欲しがるようになったのは理由がある。
夜は暑く明るいので夜会というのが開かれる、偉い人たちが寛ぐためには、警備を任せられる騎士も軽装というわけにはいかない。
いつも暑い~とか、肌が赤くなってるのを我慢していたのだが。
この夏は何か違った。
気づいたのは、奥さまであった。
いつもはこの辺でぐったりしている者もいるのに、差し入れの飲み物を持っていっても、ぐったりしているものはいなかったのである。
「それは何があったの?」
「ああこれはですね」
先日合同の任務をしたKCJの職員たちがいた。
KCJ職員が吸血鬼に襲われたので、吸血鬼退治の歴史と経験があるために、夏前の吸血鬼の住み処に向かい、異変があったら叩き潰す任務に加わりたいと言われた。
「あれには大変助かった」
領主が夜会の費用をどうするべきかと悩んでいる時でもあったので、すんなり話は通り、顔合わせがあったのだが。
「何故に似たような装備をしても涼しい顔をしているのか?」
「向こうの人間は暑さに強いんですか?」
「たぶんこちらより暑いです」
こっち昔の日本ぐらいの暑さ、30度を越える日が年に二週間程度らしい。
「そんなところから」
「だからこんなのがあるんですよ」
警備はこれを塗っているんだよ。
装備をつけても蒸れないし、涼しい、それでも汗をかき出したら、塗り直ししなきゃならないけどもねという話をしてくれた。
「それは支給品か?」
「いや、こっちだとコンビニ、営業時間の長いあちこちにある食料品店でも置いてあるし、なんだ?気になるのかな?」
「おおいにあるね」
「じゃあ、こっちの新しい方…みんなで使うなら大きいのがいいか」
そういって押し出し式の容器に入ったものを一本譲ってくれることになった。
「化粧品った花の匂いしないのか?」
「これはしない、そういうのもあるが、花の匂いなんてここでさせたら」
ここは緑の多い地域。
「蜂が来るし」
「違いないな、それに俺らでもそういうのをつけているって匂いに気づかないものだしな」
「かなり寒いところの植物使ったものもあるが、まあ、物は試してくれ」
休憩が来たので塗ってみる。
みんな一回塗ると塗った場所から熱が抜けていくのがよくわかったので、お互いの顔を見合わせた。
「今すぐ全身に塗りたい」
「わかる」
「さすがにそれはまずいので、熱がこもりやすい場所にだけ塗ってください」
多目に持ってきたが、足りるかな?とKCJの職員が確認すると。
「たぶんいけるかと、ただ戻ったらすぐに向こうから持ってきてもらいましょ」
ということで夏の極悪な任務を涼しく行うことができた。
「ええっと我々でも個人的に買えなくもないんですが、手数料と保管などを考えますと、KCJさんにお願いした方がいいということがわかりました」
高級取りではないのだが、背に腹は変えれないといったところだったのだが。
「定期的にお求めで?」
「とりあえずこの夏は」
「雪が降る頃にはかえって寒いですからね」
経験者は語った。
「そこは気を付ける」
「こういうのを買い付けるとうまいものがあります、今提示していただいた額で…ああ、来ましたね、早速ですよ」
こんなときは名伏せに限る。
「初回なので、お試しもありますから、いくらか安い値段で数は揃えられそうです」
「この値段で買えるのか?」
こちらのお金を向こうで使えるお金に変える手数料を込みで考えると、かなり安いと言える。
「ああ、これは旅行者用の減税も入ってますね、受け取り側に誰か来てもらえば安くなります」
「もちろん、お願いしよう」
異世界からの来訪者とはいえ、交流がある地域からならば両替が可能で、両替が可能ということは訪日を歓迎しているということだ。
騎士団に化粧品保管用のポータブルの冷蔵庫がやってきた。
「酒冷やしたい」
「わかるがやめておけ」
化粧品を届けに来た際に、充電されたバッテリーも交換するという形で落ち着いた。
「冷たいおしぼりはサービスです、使い終わったらこちらにいれていただければ、交換の際に回収もしますので」

「そんなことになってたの」
「はい、申し訳ありません」
「でも倒れられるよりはマシね」
「はい、おかげで肌もプルプルになりました」
「どういうことかしら?」
「こちらは化粧品なので、肌がプルプルになります、今騎士団は騎士団史上最高の肌艶です」
「私の分もあるかしら?」
「はい、奥様」
そういっていわゆるお試し用の小さい瓶をもらい、試したところ。
「このプルプルは、当家の正式な装備にします」
当主は化粧品?なんでなのだが、この家の台所を握るのは奥様であった。
これにより、当主のご家族と、夏の重装備の騎士用に確保され。
「いいか、この冷蔵庫だけは命に変えても守るんだぞ」
暑さで劣化すると落ちてしまうので、騎士団は信頼がおけるものを三交代でつけたし、誰も反対はしなかった。
長年務めているものは当然として、この夏一回でもあの重装備をつけたものは、もう二度とキツさを味わいたくないと、その規律は守った。
「他の家でも知りたいやつはいるんだけども、あそこは粗悪品とか売りさばきそうで」
「ああ、前に雪の下でもこの手袋があれば寒くないんだよって言われて騙された話とかあったから」
「そのうち、うちから、KCJ以外でも買えるってわかれば、わざわざ話を持ってこなくなりますよ、えっ?手袋はそんな感じなんですか?」
「ああ、そうだよ、水汲みとか辛いんだよな」
「ああ、でしたらうちの、北部にある支部御用達の手袋あるんで、使ってみてください、冷蔵庫から化粧品取り出す時に試すといいかな」
うわ…冷たくない。
「えっ?化粧品かなり冷たいぞ」
「それなのに指が自由になる」
「すまないが冬用にこちらもいくつか」
「お持ちしましょう」
大雨でとても寒い日に、外で仕事をしなければならないものたちに、手袋は渡された。
「手袋は終わったらきちんと返すように」
そういわれたのだが。
「いくつか返ってきません」
「なんだと!そんな奴が当家に!」
「今後返却態勢に対しては考えるとしまして、あの手袋は今回は諦めましょう」
「しかし」
「あれより良いものがあると報告が来ましたので」
「あれより!」
「あちらは枝などの突き刺しに弱いし、また日光にだ割れてきますが、こちらはそうじゃないですし」
現物を見せる、濃い目の青の色をしている。
「騎士団の色と同じだな、なるほど、これは盗まれてもうちの騎士団から持ち出したがすぐわかる」
足がつきやすいとわかると盗難はすぐに無くなり、前に盗んだとされる者は騎士団によって特定されたが。


「そのためKCJから捜査が得意なケットシーを派遣することになって、犯人あげた後に帰還する途中に呼び止めたの?」
「その呼び止められましたKCJの職員です」
捜査員のケットシーはご飯中である。
「化粧品を試してみようと離れた時に、まさかリーダーが見つかりそうになってそのまま追われることになるとは」
「あれは運が悪かっただけだ、準備だけは先にしていたから、後はタイミングだけだとしても」
リーダーが毒盛りのことを話題に、口にした瞬間、世界が揺らいだ。

やっぱりいたんだ

見えるはずがないのに、方向を感じ取られた。
そのまま追いかけっこが始まりである。
もちろんリーダーは逃げる。
毒盛りはその姿を見て追いかける。
「私の足ではあそこについていけないが、それでも視界にはずっと入れていたからな」
途中、KCJの職員を見つけた。
「リーダーを助けてくれ」
ただこの職員は戦闘証ではなく医療班のもので、リーダーと毒盛りに割って入るというわけにはいかなかったが、それでも応援は呼んだ。
時の加速は進んでいく、追いかけっこは毒盛りの勝利に終わるところを、顔を見た瞬間毒盛りは表情を変えた。

違う

見つけた、本人だと思った、でも顔を見た瞬間、今まで自分が執着していた存在ではない。
これはなんだ?
そういって呆然として離れていった。



「だからといって可哀想とか思わないように、今のリーダーに執着されても困るから」
「わかりました、もう話しはしません」
「そいつ捕まらないの?」
連絡を受けて駆けつけたメンバーから、ごもっともなことを聞かれた。
「執着受けた人にしか被害がないのと、向こうは向こうでパーティーを組んでいたりするそうなんですが」

あれはよく働いてくれる、こちらが執着を受けないように振る舞い、向こうの執着を邪魔しなければいいことだ。

「今回のことは報告されますからね、それでも拘束にはすぐにはならないそうです」
「もう少し警備隊働けよ!」
「そうよ、そうよ!」
「そういう理由で自由にさせているとしたら、災禍はまだ続くだろう、規律も何もあったものではないからな」
「お金がたくさん動いているそうなんで、その流れが止まったら、悪いことは始まりますよ」
「KCJも大変だな」
「まあ、これも仕事のうちですから」
ニャーン
「えっ?なんでここに猫が」
「いや、これはケットシーですよ」
「なんであそこから脱出して…、すいません確認してきますから、その子お願いします」
KCJの職員たちは急いで確認のために走り出した。
「これ、鍵どうやって開けたの」
さすがはグレートエスケイプと呼ばれるだけのケットシーである、抜け出して、一匹だけの大運動会をしたようだ。
「とりあえず片付けましょうか」
「そうだね」
お仕事終わったから興奮しちゃったのかな。なんていいながら片付け始めた。






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