浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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次は誰がお話をしますか?

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「本日も皆様お忙しいところお集まりいただきました、そんな皆様に新しい会員をご紹介いたしますわ、会のルールとして本名、お立場があるとしても、会の中では公平に勤めるのが、サメ伝の会、歴史ですの、ですからこちらの方はこの会では払暁(ふつぎょう)さんとお名乗りになります、では払暁さんお願いします」
「ご紹介いただきました払暁です、みなさまはじめまして」
顔を見ればわかるのだが、明神である。
「伝統ある都市サメ伝説の会に参加できることになったので、昨日からワクワクして止まりませんでした」
「おや、これはずいぶんと若い人が来たものだね」
「これでこの会の未来は安泰ですわね」
「払暁さん、この会ではみなさんに色んな話を披露してもらってますの、さあ、あなたのお話をお聞かせになって」
「はい、みなさんはこんなお話をご存じでしょうか、道路の制限速度は実は警察が決めているわけではないと」
そういう切り出しから、話は始まっていく。

「~でさ」
その日は友人の運転する車で帰ることになった。眠かったが、さすがに友人の手前寝るわけには行かず、世間話をしながら夜道を走っていた。
「そういえばこの辺出るって話だよ」
「なんだよ、出るってお化けかよ」
「いや、サメ」
「サメ?海にいるサメ?」
「そう、そのサメ」
速度制限の標識をそこで見送った。
「今みたいな速度制限って細かく決まってるだろう?運転免許の教官なんかに、この区間は何キロでしたか?なんて聞かれたりするやつ、あれな、警察が決めているわけじゃないところがあるんだよ」 
「で、なんで決めてるの?」
「サメだよ、サメ、こういうところに住むサメって、その昔、まだ車が日本で走り出した頃かな、あのすごいスピードが出ているものの中に人がいて、普通に歩いているやつより、襲いやすいって思ったらしいよ」
「それさ、歩いているやつの方が簡単じゃない?」
「江戸時代とかあったから、刀とか、刃物持っている相手だったら」
サメに襲われる前に切る、もしもそこでやられるとしたら、サメも地獄に道連れにする。
「ああ、なるほど」
「だから最初の方のシートベルトなんか、南無阿彌陀仏って縫われていたり、祈祷されていたんだけども、最近はそういうことがないから、また襲いはじめたんだって」
「へぇ~」
それまで笑っていた友人は、いきなり顔を凍らせた。
「?」


「…バックミラーを見た後に、こうなってしまい、そのまま沈黙のまま気まずいドライブをしたそうです、気になって後日調べましたところ、やはりそこはサメが出るようで、あの時彼は恐ろしいサメの顔でも見たのではないか、そう思っています」
「ありがとうございました、なかなかに素敵なお話でしたわ」
明神はKCJの仕事としてサメ伝会に参加している。
たぶんこれが仕事?意味がわからないと思われるかもしれないが、会員というのはなかなかの立場にいる人たちばかりであって、情報収集が主な目的であった。
「それでは次は誰がお話をしますか?」
「じゃあ、儂がしようか、あれはな…」
親密になるに連れて、余計な話も溢したくなる、そこから裏を組み立てて、推測が始まっていくのであった。
KCJ新規事業立ち上げチームの一員明神、彼の前歴はKCJ情報局員である。
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