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(参考にはならないという)参考
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「大丈夫だよ、私が勝手に君に期待して、勝手に失望しただけだから」
俺のどこが悪かったんですか?
そういうことは人付き合いがいい蘆根宇迦にさえ起こるのである。
「あの後どうしても認められたくてな、公園で練習したもんだ」
「大人になってからさほど仲良くない同級生が、変な躍りをしてる最中に目が合い、話しかけてくるって本当に嫌だったな」
久しぶりにカイムが遊びに来ていた。
「あれは変な踊りじゃない、マッサージに必要なやつでな、知ってる?マッサージって簡単に見えるけども、ただ力任せにやると体壊しちゃうだぞ」
「知るか」
「えっ?ずっと仲良かったんじゃないんですか?」
傑は初めて聞く。
「普通だな」
「受験組はな、人生かけてあの学校に来てるんだ、お前らとは違う」
温度差はあるようです。
「こうして訪ねて来られているので、そういうの気がつきませんでしたよ」
「私からするとこいつのように、ちょっと好奇心で他の道行きますっていうのな、余裕があるやつだから、好きじゃない」
「そうだろうな、なんか他のやつに、お前はいいかもしれないけども、遊んでる暇何てないんだって言ってたが」
「そいつはな、落ちたからな」
「それ初めて知った」
「あいつはな、努力の方向間違ってると言うか、自分のレベルに合わせて選べないと言うか」
「それは上手く行かないだろうな」
「そうなんだよ、うちの学校で日本で上から一番行けると思うか?」
「無理かな」
「あれ?でもあそこから合格した人いませんでした?」
「いたよ、でも近年だろう」
「私たちの時にはいなかったし、たぶんあのニュース知ったら、あいつ荒れるかな」
「荒れるだろうな、連絡は取ってるの?」
「取るわけがない」
「そうか」
「ああ、あそこは結果を出せないならば価値はないとか、思い詰めちゃうようなところだ」
「僕は出身じゃないんですけども、やっぱり多いんですか?」
「たぶん外で聞こえているよりは多いな」
「まあ、世間体を気にするからな」
「俺がこの道を選ぶのは道楽か、経営の方だって思われていたし、だから浜薔薇に来る前か、修行してますっていったら、実家がこの仕事してるから、箔をつけるために来たのかな?扱いだったな」
「だろうな」
「でも実家がこの仕事じゃない?違うの?えっ?本当に修行に来たの?って」
「途中で逃げ帰るとか思われていたのか?」
「それは思われていたかな、なんか言ってることちんぷんかんぷんだったし」
「なんて言ってたんだすか?」
「ツボを捉えるコツは、精神統一をしてから探すことだって」
「それだけ言われてもわからん」
「無理ですね」
「えっ?そうなの?よくわからないから精神統一の真似事はしてたんだよな」
タイマーを使って、この時間で統一できるようにする。
「でもさ、全然わからなかったんだよ」
「だろうな」
「そりゃあそうでしょう」
「精神統一、精神統一って考えながら歩いていたんだけども、そしたら、ああ、これかって」
「なんでだよ」
「はっ?」
「いや、なんかこう、腑に落ちたっていうかな、ああ、これは精神統一をしてから探すっていうよな、あってるわって」
「…」
「…」
「どうした、二人して」
「いや、話を続けてくれ」
「そうか?その感覚はわかったんだけども、そこになかなか入りづらい、先生に聞いたら、感覚はとらえても、切り替えが上手く行かない人はいるって、俺はたぶんそれなんだろうな」
「へぇ」
「(参考にはならないという)参考にはなります」
「俺自身が元気にならないと、元気を与えられないとか、難しいこと覚えたらまた次の難しいことを言うんだからさ」
(これは先輩は見込まれたのでは)
(相変わらず妙なものと縁があるやつだな)
「マッサージもな、時間通りにできないですって相談したら、それなら納得行くまでやってみたらどうだ?って先生もいいこというなとは思ったよ、本当さ、俺そこら辺向いてないんだよな」
蘆根が一番マッサージをしているのはケットシーのイツモである。何しろお客さんと違って、時間はあるし、イヤになったらどっか行く。
「子猫の時はもうイヤって顔されたら、そこで終わっていたな」
「先輩でさえ?」
「あれはマッサージがイヤっていうより、触られ慣れてないってやつだ」
「今ではその気配もないが」
自分からマッサージの時間?よろしく!であるし。
「イツモ様はシャンプーしても暴れたりしないのでありがたいです」
KCJでは被毛が生えかわった直後などはシャンプーをしてくれるのだが、職員は厳戒体制でシャンプーやトリミングをしてくれる。
「それなら俺がやったほうがいいかってことで、教えてもらって家でシャンプーするようになったんだわ」
ただである。
シャンプーしてほしいと頼みに来る時が少々問題で。
「洗車した後、次は自分だと思ってる節が、いや、最初の頃はそうだったからなんだけどもさ。田んぼの方まで出張行ってから帰ってくるじゃん?」
そうするとフロントガラスに、虫が衝突して汚れたりするので洗うことになるのだが。
「イツモは車じゃないんだから、車と同じ頻度で洗わなくてもいいはずなのに」
次はこっちも洗うんでしょ?
とやってくる。
「今日は違うんだよって言ってもなかなか諦めなくて、KCJの職員に聞いたら、ケットシーは猫じゃないから、そこまでねだるようなら洗ってあげてくださいって言われたな、洗うと満足するから洗うんだけども、あんまり洗いすぎるのもなって、行程を短縮すると」
パシッ
前足が手をつかんでくる。
「何かお忘れですよ、たるんでるんじゃないでしょうか?って顔するんだよ」
いやいや、そんな、わかるわけ。
「何回か試したら、きちんとやらないとあの顔をされるので、きちんとやらないとダメなんだなって、まあ、やるんだけどもな」
王子は手抜きを許しませんよ!
そのイツモ王子は今どこにいるかというと。
「王子、お会いしたかったです、こちらお土産の地域限定のキャットフードです」
「給料日恒例の一部を猫砂として寄贈します、どうぞお受け取りください」
「王子は今日も元気万歳!」
「万歳!」
「偉大なる王子に栄光を!」
王国の住人たちに祝われてきた。
俺のどこが悪かったんですか?
そういうことは人付き合いがいい蘆根宇迦にさえ起こるのである。
「あの後どうしても認められたくてな、公園で練習したもんだ」
「大人になってからさほど仲良くない同級生が、変な躍りをしてる最中に目が合い、話しかけてくるって本当に嫌だったな」
久しぶりにカイムが遊びに来ていた。
「あれは変な踊りじゃない、マッサージに必要なやつでな、知ってる?マッサージって簡単に見えるけども、ただ力任せにやると体壊しちゃうだぞ」
「知るか」
「えっ?ずっと仲良かったんじゃないんですか?」
傑は初めて聞く。
「普通だな」
「受験組はな、人生かけてあの学校に来てるんだ、お前らとは違う」
温度差はあるようです。
「こうして訪ねて来られているので、そういうの気がつきませんでしたよ」
「私からするとこいつのように、ちょっと好奇心で他の道行きますっていうのな、余裕があるやつだから、好きじゃない」
「そうだろうな、なんか他のやつに、お前はいいかもしれないけども、遊んでる暇何てないんだって言ってたが」
「そいつはな、落ちたからな」
「それ初めて知った」
「あいつはな、努力の方向間違ってると言うか、自分のレベルに合わせて選べないと言うか」
「それは上手く行かないだろうな」
「そうなんだよ、うちの学校で日本で上から一番行けると思うか?」
「無理かな」
「あれ?でもあそこから合格した人いませんでした?」
「いたよ、でも近年だろう」
「私たちの時にはいなかったし、たぶんあのニュース知ったら、あいつ荒れるかな」
「荒れるだろうな、連絡は取ってるの?」
「取るわけがない」
「そうか」
「ああ、あそこは結果を出せないならば価値はないとか、思い詰めちゃうようなところだ」
「僕は出身じゃないんですけども、やっぱり多いんですか?」
「たぶん外で聞こえているよりは多いな」
「まあ、世間体を気にするからな」
「俺がこの道を選ぶのは道楽か、経営の方だって思われていたし、だから浜薔薇に来る前か、修行してますっていったら、実家がこの仕事してるから、箔をつけるために来たのかな?扱いだったな」
「だろうな」
「でも実家がこの仕事じゃない?違うの?えっ?本当に修行に来たの?って」
「途中で逃げ帰るとか思われていたのか?」
「それは思われていたかな、なんか言ってることちんぷんかんぷんだったし」
「なんて言ってたんだすか?」
「ツボを捉えるコツは、精神統一をしてから探すことだって」
「それだけ言われてもわからん」
「無理ですね」
「えっ?そうなの?よくわからないから精神統一の真似事はしてたんだよな」
タイマーを使って、この時間で統一できるようにする。
「でもさ、全然わからなかったんだよ」
「だろうな」
「そりゃあそうでしょう」
「精神統一、精神統一って考えながら歩いていたんだけども、そしたら、ああ、これかって」
「なんでだよ」
「はっ?」
「いや、なんかこう、腑に落ちたっていうかな、ああ、これは精神統一をしてから探すっていうよな、あってるわって」
「…」
「…」
「どうした、二人して」
「いや、話を続けてくれ」
「そうか?その感覚はわかったんだけども、そこになかなか入りづらい、先生に聞いたら、感覚はとらえても、切り替えが上手く行かない人はいるって、俺はたぶんそれなんだろうな」
「へぇ」
「(参考にはならないという)参考にはなります」
「俺自身が元気にならないと、元気を与えられないとか、難しいこと覚えたらまた次の難しいことを言うんだからさ」
(これは先輩は見込まれたのでは)
(相変わらず妙なものと縁があるやつだな)
「マッサージもな、時間通りにできないですって相談したら、それなら納得行くまでやってみたらどうだ?って先生もいいこというなとは思ったよ、本当さ、俺そこら辺向いてないんだよな」
蘆根が一番マッサージをしているのはケットシーのイツモである。何しろお客さんと違って、時間はあるし、イヤになったらどっか行く。
「子猫の時はもうイヤって顔されたら、そこで終わっていたな」
「先輩でさえ?」
「あれはマッサージがイヤっていうより、触られ慣れてないってやつだ」
「今ではその気配もないが」
自分からマッサージの時間?よろしく!であるし。
「イツモ様はシャンプーしても暴れたりしないのでありがたいです」
KCJでは被毛が生えかわった直後などはシャンプーをしてくれるのだが、職員は厳戒体制でシャンプーやトリミングをしてくれる。
「それなら俺がやったほうがいいかってことで、教えてもらって家でシャンプーするようになったんだわ」
ただである。
シャンプーしてほしいと頼みに来る時が少々問題で。
「洗車した後、次は自分だと思ってる節が、いや、最初の頃はそうだったからなんだけどもさ。田んぼの方まで出張行ってから帰ってくるじゃん?」
そうするとフロントガラスに、虫が衝突して汚れたりするので洗うことになるのだが。
「イツモは車じゃないんだから、車と同じ頻度で洗わなくてもいいはずなのに」
次はこっちも洗うんでしょ?
とやってくる。
「今日は違うんだよって言ってもなかなか諦めなくて、KCJの職員に聞いたら、ケットシーは猫じゃないから、そこまでねだるようなら洗ってあげてくださいって言われたな、洗うと満足するから洗うんだけども、あんまり洗いすぎるのもなって、行程を短縮すると」
パシッ
前足が手をつかんでくる。
「何かお忘れですよ、たるんでるんじゃないでしょうか?って顔するんだよ」
いやいや、そんな、わかるわけ。
「何回か試したら、きちんとやらないとあの顔をされるので、きちんとやらないとダメなんだなって、まあ、やるんだけどもな」
王子は手抜きを許しませんよ!
そのイツモ王子は今どこにいるかというと。
「王子、お会いしたかったです、こちらお土産の地域限定のキャットフードです」
「給料日恒例の一部を猫砂として寄贈します、どうぞお受け取りください」
「王子は今日も元気万歳!」
「万歳!」
「偉大なる王子に栄光を!」
王国の住人たちに祝われてきた。
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