浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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最後まで話を聞きなさい

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「なんかこう、最近って言うか、デスクワークで体を悪くする人が増えたな」
そこに蘆根に連絡。
「あっ?なんとかしてくれって、バカヤローすぐになんとかできるか、普段から気を付けてないからそうなんだよ、よし、来い、出来る限りのことはしてやる」
なんだかんだで面倒見がいいのが、蘆根という男である。
「キッチンカーにも頼みまして、食事も用意しておいたので、それじゃあ、僕は帰りますね」
「おう、また明日な」
「気を付けてな」
問屋のセールの関係で早上がり。
「んでだ、蘆根、髭と耳掃除は俺だな」
「そうですね、館長と同じ感じでよろしくお願いします」
「わかった」
館長はね、ずるいんだ。KCJの管轄になったらね、浜薔薇フリーパスがついてきててね。
いやね、KCJのこっちの支部の幹部さん達もそれはもってるわけ、身なりとか、疲労回復の福利厚生って形で、館長もその扱いなんだわ。
そしてね、ずるというか、解せぬのは、髭剃りとかマッサージとか、なければなくてもいいやって思っている人なんだよ。
「理由は健康だからです」
そう、それなのさ。
郷土の所蔵品のコレクター、その展示の館長をしながらあちこちでバイトしたり、食事とかもそんなにいいもの食べてないとされてたから、まずKCJは検査したよね。
「健康でした」
みんな、えっ?嘘だろ、この食事日記とか見る限り、食べてないじゃん。
「健康です」
「実は人間じゃないとか?」
「人間だよ、何言っているのさ」
自分の道に身を捧げて、しかも健康な人間にはマッサージや耳掃除の良さはわからないらしいぞ。
「みんななんでそれに時間をかけるか、わからないんだけども」
おいおい、それを言ったら、人はなんでしょうもないことで争うのか、そんな下りで愚かな出来事として語られちゃうよ!

『ここは浜薔薇の耳掃除です』

本日のメニュー
「えっ?食事もついているんですか?」
「はい、こちらをどうぞ召し上がってください」
浜薔薇キッチンカー総選挙上位のお店が本日出店していたために、味も栄養も間違いのない一食が提供される。
・モツの味噌炒め
・豆腐の枝豆ソース
・つみれ汁
「デザートの方もございますが、マンゴープリンと、旬のイチゴを使いましたヨーグルトとどちらにしますか?」
「旬のイチゴを使いましたヨーグルトで」
「かしこまりました」
このキッチンカーのお店のかたは、元病院の厨房に勤めていた方です。
「入院設備がお医者さんがいなくなったために無くなったんですよね」
そうして次を探していたときに。
「安いなって」
そう、浜薔薇出張所のキッチンカーレンタル出店は安いのである。
「初めはとんでもないのかなって思ってたんですよ、そしたら…」
えっ?最新のキッチンカー設備なんですけども、今なら予約もすぐ取れるし。
「特に提携しているお隣のアパートのみなさんのための栄養バランスがとれた食事を作ったら、さらに出店料を引いてくれると」
ちなみにですが、意外とこの栄養バランスが取れた食事を美味しく作れる人は少ないので。
「よろしかったら、キッチンカー出してないときも、炊き出しの方でお仕事しませんか?」
「えっ?」
トントン拍子に決まった。
「やってくださるなら、きちんとKCJの所属ということで」
あれ?前の職場より良いぞ。
「設備の方も支部の厨房設備、こちらはお料理教室なんかも出来る設備にはなってますが、ほぼ使ってないようなものなので、一度見学にいらっしゃってから」
正直ここでやりますと言いたかった。
他の人に取られるよりは…
「あの…」
「なんでしょ」
「できればここで決めたいんですけども」
「…」
怒らせたか。
「気持ちはわかりますが、きちんと説明終わるまでは契約をしてはいけません」
説明している人は管理部門の人でした。
「すいません」
「あなたの合否が決まるまでは他の人にはお話は持っていきませんし、不安でしたら…」
そこで連絡。
「日当つけます」
それでいいでしょ?
(これはますます逃すわけにはいかない)
目が光った。
ただそのような眼光も。
(レットドラゴンに比べたらなんでもスライム)
さらっとかわせるのが修羅場を潜ったことがある管理部門のメンタルは、すごいぞ。
いい話ほど、決めてしまいたい、その気持ちを持ったまま、KCJの支部に行き。
「こちらの厨房設備です」
食堂とは別の、イベントなどで料理教室として使われている。
「少し古いですが」
前に働いていた病院より綺麗である。
「清掃などは専門の部署がありますから、グリストラップなどはお任せください」
専門用語が出てきましたが、いわゆる飲食店のカテゴリーで軽食というのがあると思う。
その反対が重食、油を使うので、そのための清掃の設備をつけることを義務づけられている。
それがグリストラップ。
「本当は清掃前のものも見てもらいたいのですが、うちのグリストラップは定期清掃前でもかなり綺麗なままです」
「スライムでも飼ってるんですか?」
「はっはっはっ」
やべぇ、ジョークはずした。
「いや、それだともっと清掃楽なんじゃないかな」
面白いこと言いますねといった感じだ。
「うちの整備部門が開発した紙パックがありまして、それを毎日交換するだけでいいんですよ」
写真は見せてもらった。
「本当、臭いも見てもらいたかった」
「ああ、それほど自信があるんですね、それなら信用いたしますよ」
「ありがとうございます、この厨房設備は、この辺にアクセスのいい公共の厨房の設備がないので、企業や個人の料理教室のために貸し出されています」
「結構予約が入っているのでは?」
「それが今のご時世なのか、実際に人を集めるよりも動画配信するスタイルですね、予約もほとんど入ってませんから、山宮さんのお好きに使ってもいいですし、ここから動画の配信してもいいですよ」
「今すぐ契約を」
「最後まで話を聞きなさい」
その言葉を何回か言われましたが、無事に山宮さんは契約しました。
「食材もこんなに安く買えるの」
「各地の支部の管理部門が担当してますから」
「もうこれでいいじゃん」
電卓を叩いて予算と戦う日々は終了したという。
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