浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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大人も乗れるケットシー

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バシュ
イツモが何かを見つけて、その爪で空を裂いた。
「気配を感じて来てみれば、イツモ様のお手を煩わせてしまいましたか」
東司燭である。
敬礼をした後に、イツモを抱き上げ。
「さあ、ここにいましては空気が悪うございます」
本日、蘆根は支部に出張散髪耳かきに向かい、同期の誕生日のはずなのに。
「えっ?それは俺も頼めますか?」
忙しくて髪を切る暇がなかったり、また髪を切るには興味はないが、浜薔薇の耳掃除はやったみたいという職員たちに群がられた。
「じゃあ、福利厚生にしておくから」
あまりにも支部で生活している職員達が多くなってきたために、蘆根は福利厚生の一つとして出張することになったという。
浜薔薇が休みの日を利用しての出張であり、これが店を臨時休業にしていたら、傑も手伝いに来ていたことだろう。
一室を借り受けて、そこで浜薔薇KCJ出張所とする。
だが困ったことというか、予約はもう一杯で、ご新規が受けられないのが、残念と言えば残念である。
「組合にも声かけようかな」
病院や施設などに出張している同業者も最近多く、蘆根が耳かきに専念できるようにカットやシャンプーも…
「なんでKCJって移動式の洗髪台があるんだろうか」
あるからそちらをお使いくださいと言われました。
お金は稼いでも、敷地から本当に出ることがないから、こういうので自分の髪を洗っていた人がいたらしい。
その方は資金の担当なので、寄贈という形で置いていくと、他の職員も使い始めたからあるという。
「シャンブーを他の人にしてもらうの好きなんですが、最近は本当に、本当に、浜薔薇さん来てくれてありがとう」
そういって洗髪だけを頼んで行った職員にお礼を述べられた。
「そんなに忙しいんですか?KCJって」
「ケットシー方面だけならそう忙しくはないけども、公益とか、そっちが今、浜薔薇さんでも食料支援とか炊き出しとかしているでしょ?彼はその書類の担当の一人でもあるから、行政とかに書類を出すものなんかは、本当に大変というか、決まりごとがあるから、専門家と相談したり、きちんとやろうとすればやろうとするほど時間と手間がとられているのよね」
「それはいつもお世話になっております」
「いいのよ、こういうのは志願して来てるから」
そういって女性職員の要望のカットを始める。
「軽くしますよ」
「お願いします、今のKCJって、そういう公益のために活躍できる人員はいるけども、基本的に志願者のみで構成されているのは、やっぱりしんどいからよ、能力はあってもそれに携わるのを嫌だと、ええっとこれは能力あって昔は携わったけども、安全の確認ができないから、二次災害になるからとかそういうきちんとした理由があったりするから断っていると思ってね」
「まあ、そうでしょうね、人を助けるのはいいことだとは思いますが、自分の身を犠牲にしてもダメですし」
「そうなのよね、安全に出来ることを増やすって感じ、分析と戦略はほぼ全員志願したんだけども、それは自分達が現場のリスクを減らせるからっていう使命感よね、実際に彼らが安全であるっていうことを実証しているからこそ、こういう活動はできるわけだし」
「すごいですね、あっ、すいません、耳はどうしますか?」
「これから暑いし、次はいつ髪を切れるかわからないから短めで、合わせてくれるかな」
「わかりました」
「でも浜薔薇さんには感謝しているのよ」
「何をです?」
「うちのお金担当って、未経験からここにじゃなくて、どっかでお金担当したらうんざりしてやめたタイプが多いから、お金を出して、きちんとやって、しかもパフォーマンスが想像より良かったなんて出してくれるから喜んでいるのよ」
「そうなんですか?」
「そうそう」
お金を自由にとは言わないが、利益を産み出せることに長けると、人生というのは変わるが、いい方に変わる人は実は少ないという。
「ほら、利益を産み出せない人が多いからね」
言葉は濁すが、蘆根も見たことはある、利益を出せるから飼殺しというパターンである。
「それは」
「だからうちは喧嘩っぱやいのがいるし、そういうところから逃げてきましたっていっても、ああそう?じゃあ、ここに住む?みたいな」
そういうパターンがKCの初期、それこそKCJもだ、受け入れてきたので。
「敷地内で全部済むようになっているのはそのせい、そしたらそういう人たちって趣味とか持たないから、仕事に熱心になっていったら、どんどん設備が豪華に」
セキュリティが高いのは、元の職場や家族から逃げてきた利益を出せる人たちが、やることがないから仕事したせいという。
「そっちで来た人たちは定年もないのよ、契約としては」
それか交流のある異世界に移住ないし、通勤してくるそうだ。
「うちの家族がいないところならばどこでもいいってね」
そのためコールドスリープして、ご家族がお亡くなりなってから解凍され、これでしがらみはないぜ!とついでに思春期時代まで戻って好きに生きている人も若干だがいる。
「もうスマホとか便利すぎて…本当、人生色々あったけどもさ!」
それをSSR引かせて解決させているのがKCのようです。

メロディが聞こえてくる。
「これは?」
誕生日を祝う単調なメロディ音が部屋にどんどん近づいてきて。
『誕生日おめでとう!』
その場にいた人たちも隠し持っていたクラッカーでお祝いした。
「あっ、出遅れた、おめでとうございます」
東司であるが。
「それは」
「ああ、見てしまいましたか」
大人も乗れるケットシー、遊園地にあるような奴に乗って東司がケーキを運んできたのである。
「八重野 郷さん誕生日おめでとうございます」
「誕生日プレゼントって耳掃除だけじゃなかったのかよ」
カットクロスをつけた状態で東司の同期、八重野郷(ヤエノ  ゴウ)は祝われた。
「あっ、これ俺からです」
蘆根はUVケアヘアウォーターをくれた。
「これ今の時期からつけてください、八重野さんって、おそらくUVした方が、皮膚が光に弱いと思うので」
「あれ?よくわかったね、だからほとんど内勤なんだよ」
室内でもケアのためのレンズを利用していたから。
「色々あったけども、それで仕事まで奪われたんじゃたまったもんじゃないって、これ使ってるんだ、でも髪は考えてなかったな」
「ミルク系だとベタッとしちゃうんで」
「そうなんだよな、軽めの方が好きだからさ」
「そういうトーク後にして、ケーキ食べてからしようよ」
カットクロスをつけたまま誕生日を祝うという、あまりない経験を八重野はしましたかま、とてもいい笑顔でした。

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