浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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全部ダメ

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目を覚ます。
まだ暗いななんて思っていたら、それもそのはずである。
いつもよりも早い時間に目が覚めた。
二度寝できるじゃんの時間帯、トイレに行く。
そこであっ、昨日は浜薔薇いったからかがわかる。すっきりとした目覚めは蘆根のマッサージのせいだ。
最近寝る時間を多くとっていた、忙しいからという理由で、そこにちょっと時間がとれて、この忙しさがどのぐらい忙しいか見えない状態になったので、よしここで浜薔薇に行こうかとそんな理由で浜薔薇にいってきた。
地方の繁盛店、行くと元気になる店といったところだろうか。
クレンジングシャンプーで頭皮をさっぱりとさせた上で、髪を整えてもらう。
浜薔薇行くということでその日は髭を剃らずに、ちょっとチクチクしている状態で、蒸しタオルからのシェービング。
イライラしていた神経が少し落ち着く。
浜薔薇でうとうとするだけでも、行った価値はあるのだけども。
カサ
レジェンドの耳かき、今日は金属製なのには何か理由があるのだろう?か?私の耳が汚いからかもしれない、金属の耳かきは竹のものとも違ってて、あの感じでガリガリとしてしまうと耳は傷ついてしまう、それを金属の鋭さを活かしつつも優しいタッチ、これは癖になる。
カリ!
そして今回の本命のマッサージとなるのですが。
「疲れてますか?」
「疲れてましたね」
シェービングの辺りでそれを自覚する、椅子を倒して、蒸しタオルが気持ちいいから、ああ、自分の疲れは自分で思っているよりも、かなりしんどいことになっているんだなと思ったのである。
ムニムニ
足の裏を触られる。
「歩けてないですね」
「そうなんだよね」
そこにクリームをつけて、まずはツボを探られていく。
首、目、胃腸、副腎、腎臓、腰、やだ!全部ダメじゃん!
いつもの感じと違っていた、自分の触りかたが悪いから気付かなかったせいなのか、それともプロの目からは逃れられないのか。
ぐ~
お腹が鳴った、マッサージする前の段階でお腹が鳴るのってどうなのさ、これかなりだめなんじゃないかな?
自己嫌悪に陥ってもダメだろう、それは悪い方に行く。
「じゃあ、始めます」
マッサージのためのクリームをつけていく、プロのそれは塗るだけでも気持ちいい。そしてツボを押すのかと思いきや、あれ?ツボやんないのかな、よく痛いぐらいやるって言わないっけ?まあ、それならそれでいいんだけどもさ。
しかし、今回の仕事量何?嫌がらせだよな、あそこまで行くの、だってすんなり行かないじゃん、わかってるのかね?大変なのはこっちだって、あ~やだやだ、そしてそれを口に出せないのも疲れる原因なんだよね。
もっとさ、スムーズに、疲れる前にこうして浜薔薇でマッサージ受けれる人生がいいな。
毎日とは言わないけどもさ、いや、毎日だったら嬉しすぎるよ。
仕事が終わって帰る前に浜薔薇のマッサージを受けれるとかさ、いいね天国だね。
今ってさ無理に気分転換している状態なんで、いつそのバランスがとれなくなるか、怖い状態だって気づいてほしいな、まあ、気づけないからこう問題が起きてやること増えているんだけどもね。
ああ、でも考えただけでいいな、仕事が終わったら、こうして浜薔薇でマッサージ受けてさ、気分転換してから帰るの、ここのマッサージさ、どれだけ我慢しても、そんなの抵抗するだけ無駄だからって強制的にリラックスさせられるんでさ…
そこがいいっていうのかな…
だんだんとうとうとしてきているようだ。
蘆根の目から見るとこのお客さんには神経の昂りが見られていた、こういうときはまずリラックスしてもらわないと、マッサージの効果が減るのである。
短時間でこれをなんとかする方法もあるが、疲れているときは体の負担がとても大きいので、蘆根はそれを選ばない。
寝息が聞こえてきた。
その眠りを覚まさないように、手の動きは優しくなる。
往復させる回数は多くはなるが、それもお客様のため、浜薔薇に来てくれたのだから、浜薔薇に来てくれて良かったな、そんな風に毎回思ってもらいたい。
こういう客商売、満足させれなかったら他のお店に行ってしまう。
そのために力を入れることが大事なのは、店を任される際に特に先生たちから言われたことである。
胡座はかいてはいけない。
さらなる高みを目指さなければ、明日はないと思っていた。
危機感もある。
ただ黙っているだけでは、今覚えていることが使い物にならなくなってしまう、そうなってからではやはり遅いのだ。
学生時代に教えてもらったこと、今はどのぐらい使えているだろうか?大部分が便利なものに入れ替わる、確かにそれもいいのだが、この道は古いものを活かしながらやっていくというものである。
先人へのリスペクトを忘れたくない。
蘆根の胸にはそこがあった。
その道を選ぶ人はとても少なく、蘆根より若手はいたかな?ぐらい。
傑はこれとはまた違うのでカウントはされなかった。
伝わる技術を、現在、未来にも使えるものにする、そこを蘆根に出来るのか?
おそらくそれがこれからキーになる。
(勝手かもしれないが、俺は継いでくれただけで満足よ)
死んだら好きにしていいとは日頃からタモツは言っているのだが、そんな冗談の次の日はやり過ぎるのを見て、嬉しいのだけども少しばかり悲しかった。
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