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予約は夜にやってくる。
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マッサージも浜薔薇の人気メニューの一つである。
セットメニューは店内のスペースで行われるが、個別のメニューだと、奥の部屋を使うことになる。
その部屋のスゴさは一歩踏み入ればわかるだろう。
(音が違う)
そう、この部屋には余計な音が外から入らないように吸音と免震の技術が使われている。
「よろしくお願いします」
「はい、お願いします」
浜薔薇のマッサージは今は蘆根が専任しているという形で行っているが、彼のマッサージは並みのものではない。
ここに来ればたぶん癒される、本調子になるだろうと、悩んでくるお客さんからの信頼がとんでもなく厚いのであった。
「体、疲れてますね」
「あ~打ち合わせと言うか、交渉しちゃうとね、どうも疲れてしまうんだ」
「わかりました、それでは始めさせていただきます」
部屋の中が薄暗くなり、ヒーリングミュージックがかかる。
時間から解放させる、まずこれが大事なのだと言う。
抱えているものを忘れさせる、それは重要なことばかり抱えていると言うよりは、余計なものをそぎ落とすためにも必要なのだ。
そこから軽くなった状態で、回復のために集中してもらわなきゃならない。
その手助けをするのがマッサージ。
(あ~気持ちいい)
不自然な座り方で長時間いたのだろうか、肩もそうだが、その不自然を支えている場所のこの凝り、これはまず先にツボを押してから、全身を流し、そしてまたツボを押していくの方がいいのではないか。
個別のマッサージのメニューのいいところはこれである、体に合わせて、どういうことをするのか組み合わせてくれるのである。
例えばこのお客さんだと座り仕事で、張ってい場所、刺激した方がいい場所などが既存のマニュアルなどでは対応しきれない。
「浜薔薇に来るから、今日は朝からお湯とか飲んできたよ」
「ありがとうございます」
このお客さんは冷え性もある、お湯を飲むだけで体温も上がるが、体の老廃物も流しやすくなっていく。
「でもリットルはさすがに無理」
「ゆっくりでいいですよ」
「そうする」
蘆根のお客さんたちは協力的なことが多い。
お客さんの比率は孤軍奮闘しているキャリア勢が大半、だからここでお金を使ってくれるのだが、そういったお客さんからすると、蘆根のマッサージは安いらしい。
「ホテルとかだと、数万しちゃうもの」
結構蘆根さんはお安いの、個室のマッサージ万しません、もっと安くするならセットメニューのマッサージおすすめ、髪とか全部やってもらってもこれより安いから。
「選んでもらいやすい値段にしました」
「それでもさ」
欲がないねっていう言葉が続きそうである。
「この辺土地代安いですからね、生活費も安く済みますから、これでも高くもらっている方なんですよ」
「そのうち予約いっぱいになっちゃいそう」
「ちょっと前ならそういう可能性もありましたが、今は二人が店いますから」
カットやスタイリングが傑、シェービングや耳かきがタモツ体制になっていると、蘆根はマッサージに専念できるし。
「マッサージって夜の方が予約来るんで」
店の営業時間ともずれていたりはします。
「ちゃんと寝てる?」
心配されるが。
「自分でマッサージできると、体力の維持が普通の人より上手くなるし、回復も早いんですよ」
「へぇ」
「お客さんにしているマッサージ、あれのセルフのものも一緒に習っているから、自分には毎日練習がわりにしているので、そうすると睡眠の質上がりますね」
「それって私にもできるの?」
「前にもお教えしましたあれですよ」
「ああ、白湯飲んで、体をあたためて、マッサージしての」
「そう、それ」
「あれって、気持ちよくなっちゃって途中で眠くなるんだけども」
「その気持ちよくなっちゃって眠くなると戦いながら完走していくのが大事なんですけども」
「無理、それは無理だわ」
「でもそのまま寝ても朝違ったでしょ?」
「違った、ただそこで寝落ちしちゃうから、明け方気づいてびっくりする」
「マッサージって奥が深いですよね」
勉強中の傑が悩んでいる。
「蘆根さんに教えてもらったマッサージ確かに効くんですけども、足の裏のツボを揉んでいるときに眠くなるんですよ」
「そりゃあ疲れているからもあるぞ」
「疲れているからマッサージをしたいが、疲れているからすぐに眠くなるじゃ、どうやって習得するんですか」
「だよな」
「だよなじゃないですよ」
「その場合はマッサージの動きだけ先に頭に入れておくんだよ、手をこう動かして、これだと実際にはマッサージはしてないが、動きだけ覚えるだろう」
「それでは実際にマッサージはしてないんじゃ」
「ああ、そう思うだろう?そのマッサージをしようという段階で固くなっている、張りがあるとかわかるから、ええっと、セルフだと、自分足とか組み換えてやるだろう?」
足の裏を向けたりするために。
「このときに、組み替えの姿勢が固かったりするとかでもわかる、ヨガとかあっちだな」
「あっ、そういえば、なんでこの姿勢なのか気にはなってました」
「お客さんだとうつぶせだけども、自分のマッサージだと、そのマッサージをする姿勢も一つのエクササイズなんだ」
蘆根から渡された子供の落書きのようなポーズ集は蘆根お手製のもの。
なんでも出来そうな蘆根も、絵だけは画伯である。
「これはなんですか?」
座禅の絵には魔獣が牙を出して襲いかかろうとしている。
「イツモだよ、可愛いだろう?」
「…」
このコメントしづらい絵を描かせたら、天下一品なのが蘆根という男。
「そういえば前に宣伝のポスター書いたら、これはお子さんが書いたんですか?って聞かれたことあるな」
見て絶句してしまうポスターは、浜薔薇に実際にお越しになってごらんください。
セットメニューは店内のスペースで行われるが、個別のメニューだと、奥の部屋を使うことになる。
その部屋のスゴさは一歩踏み入ればわかるだろう。
(音が違う)
そう、この部屋には余計な音が外から入らないように吸音と免震の技術が使われている。
「よろしくお願いします」
「はい、お願いします」
浜薔薇のマッサージは今は蘆根が専任しているという形で行っているが、彼のマッサージは並みのものではない。
ここに来ればたぶん癒される、本調子になるだろうと、悩んでくるお客さんからの信頼がとんでもなく厚いのであった。
「体、疲れてますね」
「あ~打ち合わせと言うか、交渉しちゃうとね、どうも疲れてしまうんだ」
「わかりました、それでは始めさせていただきます」
部屋の中が薄暗くなり、ヒーリングミュージックがかかる。
時間から解放させる、まずこれが大事なのだと言う。
抱えているものを忘れさせる、それは重要なことばかり抱えていると言うよりは、余計なものをそぎ落とすためにも必要なのだ。
そこから軽くなった状態で、回復のために集中してもらわなきゃならない。
その手助けをするのがマッサージ。
(あ~気持ちいい)
不自然な座り方で長時間いたのだろうか、肩もそうだが、その不自然を支えている場所のこの凝り、これはまず先にツボを押してから、全身を流し、そしてまたツボを押していくの方がいいのではないか。
個別のマッサージのメニューのいいところはこれである、体に合わせて、どういうことをするのか組み合わせてくれるのである。
例えばこのお客さんだと座り仕事で、張ってい場所、刺激した方がいい場所などが既存のマニュアルなどでは対応しきれない。
「浜薔薇に来るから、今日は朝からお湯とか飲んできたよ」
「ありがとうございます」
このお客さんは冷え性もある、お湯を飲むだけで体温も上がるが、体の老廃物も流しやすくなっていく。
「でもリットルはさすがに無理」
「ゆっくりでいいですよ」
「そうする」
蘆根のお客さんたちは協力的なことが多い。
お客さんの比率は孤軍奮闘しているキャリア勢が大半、だからここでお金を使ってくれるのだが、そういったお客さんからすると、蘆根のマッサージは安いらしい。
「ホテルとかだと、数万しちゃうもの」
結構蘆根さんはお安いの、個室のマッサージ万しません、もっと安くするならセットメニューのマッサージおすすめ、髪とか全部やってもらってもこれより安いから。
「選んでもらいやすい値段にしました」
「それでもさ」
欲がないねっていう言葉が続きそうである。
「この辺土地代安いですからね、生活費も安く済みますから、これでも高くもらっている方なんですよ」
「そのうち予約いっぱいになっちゃいそう」
「ちょっと前ならそういう可能性もありましたが、今は二人が店いますから」
カットやスタイリングが傑、シェービングや耳かきがタモツ体制になっていると、蘆根はマッサージに専念できるし。
「マッサージって夜の方が予約来るんで」
店の営業時間ともずれていたりはします。
「ちゃんと寝てる?」
心配されるが。
「自分でマッサージできると、体力の維持が普通の人より上手くなるし、回復も早いんですよ」
「へぇ」
「お客さんにしているマッサージ、あれのセルフのものも一緒に習っているから、自分には毎日練習がわりにしているので、そうすると睡眠の質上がりますね」
「それって私にもできるの?」
「前にもお教えしましたあれですよ」
「ああ、白湯飲んで、体をあたためて、マッサージしての」
「そう、それ」
「あれって、気持ちよくなっちゃって途中で眠くなるんだけども」
「その気持ちよくなっちゃって眠くなると戦いながら完走していくのが大事なんですけども」
「無理、それは無理だわ」
「でもそのまま寝ても朝違ったでしょ?」
「違った、ただそこで寝落ちしちゃうから、明け方気づいてびっくりする」
「マッサージって奥が深いですよね」
勉強中の傑が悩んでいる。
「蘆根さんに教えてもらったマッサージ確かに効くんですけども、足の裏のツボを揉んでいるときに眠くなるんですよ」
「そりゃあ疲れているからもあるぞ」
「疲れているからマッサージをしたいが、疲れているからすぐに眠くなるじゃ、どうやって習得するんですか」
「だよな」
「だよなじゃないですよ」
「その場合はマッサージの動きだけ先に頭に入れておくんだよ、手をこう動かして、これだと実際にはマッサージはしてないが、動きだけ覚えるだろう」
「それでは実際にマッサージはしてないんじゃ」
「ああ、そう思うだろう?そのマッサージをしようという段階で固くなっている、張りがあるとかわかるから、ええっと、セルフだと、自分足とか組み換えてやるだろう?」
足の裏を向けたりするために。
「このときに、組み替えの姿勢が固かったりするとかでもわかる、ヨガとかあっちだな」
「あっ、そういえば、なんでこの姿勢なのか気にはなってました」
「お客さんだとうつぶせだけども、自分のマッサージだと、そのマッサージをする姿勢も一つのエクササイズなんだ」
蘆根から渡された子供の落書きのようなポーズ集は蘆根お手製のもの。
なんでも出来そうな蘆根も、絵だけは画伯である。
「これはなんですか?」
座禅の絵には魔獣が牙を出して襲いかかろうとしている。
「イツモだよ、可愛いだろう?」
「…」
このコメントしづらい絵を描かせたら、天下一品なのが蘆根という男。
「そういえば前に宣伝のポスター書いたら、これはお子さんが書いたんですか?って聞かれたことあるな」
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